2014年発売
舞台は京都にある美代ちゃんの築百五十年のお家。その古くて暗い台所には竃神が祀られたおくどさんがあった。そして、代々女性にしか見えず、見る者によって形や姿が異なるといわれる“そこはかさん”なる存在がー。はたして美代ちゃんの目に映ったそこはかさんとは…。第8回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞作品。他、書き下しの二編を収録。
学芸員という職業柄、私は旧家や辺鄙な土地を訪れる機会がある。野々宮先生の喜寿を祝う会に出席した折、そうした場所で見聞きした話をまとめるよう先生に勧められた。漁師町で異様な虫に寄生され、瓢箪から這い出る子供に甘えられ、紛失した「天竺」の行方を追う。土地の因習を幻想的に書き上げた九つの奇譚が綴られる。第8回『幽』怪談文学賞・長編部門大賞受賞作。
「彼女が消えた。一冊の本とともに。」 小学校の教師をしている25歳の研介。ある日、恋人の品子に一冊の本が届くと、彼女は失踪した。本の贈り主は彼女が以前話していた「忘れられない初恋相手」なのか?
ドキュメンタリー映像のニュースプレゼンターとして働く夫、地方紙にパートで働く妻。ふたりには17歳の娘と8歳の息子がいた。郊外の美しい町に暮らすこの平和な一家に事故は訪れた。家族は、一瞬にして崩壊へと追いこまれていく。しかしそれは偶然の事ではなかった。静かにうかびあがる殺意の痕跡。だが傷ついた家族に、立ちむかう力はもう残っていなかった…女性捜査官セーラは、愛する弟の家族のため、禁じられた非合法捜査に踏み込んでいく。美しい町の裏側。そこには隠蔽された幾つもの事件があった。言葉がナイフのように、人の心をえぐる心理的サスペンスの傑作。『シスター』の著者、ロザムンド・ラプトンの第2弾!
19世紀中葉のパリ。急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物となったクレマン。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた。だが、ある過去の殺人事件の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始める。19世紀の知られざる奇才の代表作、ついに本邦初訳!
宮澤賢治は、親友の女学校教師・藤原嘉藤治から不思議な話を聞く。教え子の父親が、電信柱が歩くのを見たというのだ。まるで、賢治が書いた童話「月夜のでんしんばしら」のように。さらに教え子自身も川を流れる河童を目撃していた。現場を検分した賢治は、驚くべき推理を繰り広げるのだった。心優しき詩人が、数々の怪事件を鮮やかに解き明かす、新シリーズ始動!文庫書下ろし&オリジナル。
北海道東千歳の駐屯地で自衛隊員三人が反乱を起こし、大量の武器を奪い逃走した。三人は過激な地下組織に属することが判明。警察庁直属の秘密捜査官・西城秀夫が、組織潜入の命を受ける。警官殺しの逃亡者として彼らに接近した西城は、北海道の原野に潜む組織の一大戦闘部隊へと乗り込んでゆく(表題作)。疾走する暴力、セックス、破壊。衝撃のハード・アクション!
古今東西、書物にまつわる小説は枚挙に遑がないが、近年は、古書を題材にした作品が注目されている。推理文壇の名匠たちが古書への深い知識と卓抜した技巧を凝らして綴った粒揃いの傑作を収録。好評を博した推理アンソロジー第二集!口絵・江戸川乱歩。
手軽でお洒落。若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」の正体は覚せい剤だった。密売ルートを追う鮫島は、藤野組の角を炙り出す。さらに麻薬取 締官の塔下から、地方財閥・香川家の関わりを知らされる。薬の独占を狙う角、香川昇・進兄弟の野望……。薬の利権を巡る争いは、鮫島の恋人・晶まで巻き込んだ。鮫島は晶を救えるか!? 直木賞受賞の感動巨編!
蛟堂ー江戸時代より続く漢方薬局兼雑貨屋。その陰には、大金と引き換えに依頼人の恨みを晴らす、「報復屋」としての姿があった。蛟堂のあり方を巡って対立する辰史と丑雄は、決着をつけるために思念世界へと入る。もはや互いの心に親族としての情はなく、あるのは、憎しみのみ。天才陰陽師と異能者に待ち受ける運命はー最終話「黒塚」累計38万部突破!報復にかかわる妖しく愛しい人間模様を描いた大人気陰陽師シリーズ文庫版、堂々の完結!
父の蒸発。女手ひとつで息子2人を育てた母。そんな両親のもとで育ったジローは若くして結婚し3人の娘に恵まれた。必死で働いた。蒸発した父が戻ってきた折には世話もした。娘3人が成人した今、ジローは酒場でふと思う。「俺の人生はどんなだったのだろうか」。父と息子の関係を軸に家族とはを綴る酒場エッセイの名手による処女小説。
ある晩、中学3年生の愛川広樹は、目の前で恋人の中野美幸をレイプされた。数日後、美幸は自殺する。周囲から“恋人を売った”と責められ、失意のまま高校に入学した広樹は、美幸をレイプした犯人が元クラスメイトだと知る。高校で出会った少女・赤嶺由奈とともに、広樹は元クラスメイトへの復讐を開始したー。
「おまえは今日から七代目の夜這い屋だ」。郷里に帰省した大河内和夫は、父親から唐突に告げられる。村の平和は女たちの身体を鎮めることからという考えのもと、庄屋の末裔である大河内家の当主は代々「夜這い屋」という裏稼業を担っているというのだ。否応なしに跡を継いだ和夫だったが、実は未だに女を知らぬ身で…!?日刊ゲンダイで圧倒的支持を得た人気連載、待望の書籍化。
なんだって、あの遠藤が出社拒否!?--航空業界の低迷に親会社の危機。人員削減の重圧とエリート出向社員の思惑に翻弄され、人のいい遠藤が遂に、折れた。感動の空港物語。 航空業界に吹き荒れる逆風のなか、遠藤たち空港で働く大航ツーリストの現場にも人員削減の圧力がかかってきた。あと三か月後には成田空港所が閉まり、グランドホステス業務は大航エアポートサービスに委託される。その時点で半数がリストラされてしまうのだ。本社出向組のカスタマー事業部部長の星名は、感じよく丁寧に理詰めで苦境を乗り切ろうと何かと遠藤にも声を掛けるのだがーー。OGの復帰とセンディング業務で立て続くミス、これはいったい何が原因なのか。「常にお客様のため」にトラブルを奇跡的に解決させてきたスタッフたちの奮闘に胸が熱くなる連作短編。
山で野生児として育った虎が、ある日村人に捕まってしまう。その窮地を四郎という少年に助けられる。天草四郎と虎の出会いだった。当時、島原と天草では切支丹迫害が苛烈を極め、蜂起が企てられつつあった。他方、老中・松平信綱は、幕府という権力の箍を締め直そうとしていた。父の邪心で切支丹の旗頭にされた四郎。純真な心で四郎の護衛役となった虎。乱を欲する、心の闇にとらわれた信綱。交錯する三人の思惑。時代が大きく動きはじめたー。「島原の乱」新解釈、衝撃の歴史長編!
この愛は、何という呪いだろうか。友人同士を、そして愛する者と愛される者を仲たがいさせるとは。医師コンスタンスへの愛と、深く帰依するグノーシス主義の掟との間で引き裂かれるセバスチャンことアッファド。彼の苦悩を軸に、死の儀式を告げる手紙、迫り来る殺人者などサスペンスの要素も加わって、物語はスリリングに展開する。
手と手を取り合って房州館山から江戸に駆け落ちしてきた三次とおとせ。掏摸にあい、公事師に騙され、おとせに代わり妓楼の女主人に買われた三次。料理屋の女将となったおとせは、「おらもあとから逃げる」という三次の言葉を信じて、ひたすら待ち続けた十年の月日。強引に林之助に口説かれたその日、偶然三次に会えたおとせの心はなぜか二人の間で揺れて…。(「恋情の果て」より)。見栄、嫉妬、未練、欲望…静かに熱く葛藤する女たちを描く、珠玉の時代小説短編集。