2016年5月31日発売
ようこそ、謎と人間の新しい可能性へーー。 『アリス殺し』の鬼才が贈るブラックSFミステリ、ここに開幕。 全人類が記憶障害に陥り、長期記憶を取り外し可能な外部装置に頼るようになった世界。 心と身体がバラバラになった今、いくつもの人生(ル・ものがたり)を覚えている、「わたし」は一体何者ーー? ◆女子高生の結城梨乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した梨乃は急いでSNSに書き込むーー「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」。それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置」(メモリ)に頼り、生活するようになった。 ◆「わたし」の中には、なぜか何人分もの記憶、思い出が存在している。「替えメモリ受験」をしようとした学生の話。交通事故で子供を亡くした父親の話。双子の姉妹の話。メモリの使用を拒否する集団の話。謎の「声」に導かれ、「わたし」は自分の正体をついに思い出す……。 物語の終幕に、「進化の果て」が浮かび上がる。
朝倉かすみが挑む少女×ふしぎの物語。表題作のほか「留守番」「カワラケ」「おもいで」「へっちゃらイーナちゃん」の全5話。少女たちの日常にふと覘く「ふしぎ」な落とし穴。
正義など、どうでもいい。俺はただ、可愛い嫁から幸せを奪う可能性を、迷わず排除するだけだ。明日も明後日も。県警本部捜査一課の番場は、二回りも年の離れた身重の妻コヨリを愛し、日々捜査を続けるベテラン刑事。周囲は賞賛と若干の揶揄を込めて彼のことを呼ぶーー現場の番場。ルーキーの船越とともに難事件の捜査に取り組む中で、番場は自らの「正義」を見失っていくーー。新江戸川乱歩賞作家が描く、新世代の連作警察小説。 正義など、どうでもいい。 俺はただ、可愛い嫁から幸せを奪う可能性を、迷わず排除するだけだ。明日も明後日も。 県警本部捜査一課の番場は、二回りも年の離れた身重の妻コヨリを愛し、日々捜査を続けるベテラン刑事。周囲の人間は賞賛と若干の揶揄を込めて彼のことを呼ぶーー現場の番場。 ルーキー刑事の船越とともに難事件の捜査に取り組む中で、番場は自らの「正義」を見失っていくーー。 新江戸川乱歩賞作家が描く、新世代の連作警察小説。 「月に吠える兎」 「真夜中の放物線」 「沈黙の終着駅」 「かくれんぼ」 「蜃気楼の犬」
人生の岐路を描いた7つの物語。父譲りの短篇の名手による、鮮やかな初作品集! 親友のランナーがゴール前で見せた、奇跡の追い上げ。和やかな送別会から突如勃発する乱闘騒ぎ。トラウマを乗り越えるため参加した水泳教室での、予期せぬ出来事。廃れゆく自動車産業の街で生きる、ひとりの労働者。人生は、驚くべき瞬間に満ちているーー。故アリステア・マクラウドの血を継ぐ新鋭、瞠目のデビュー短篇集。
かつてミュージシャンとして活躍していた神代広平は、自らの才能に限界を感じ、音楽業界から離れてしまう。それから20年が経ち、臨床心理士として過ごしていた神代だったが、音楽への情熱を断ち切ることはできずにいた。そんな神代の前に、コンプレックスを抱え苦しんでいる孤独な女性・佐野さくらが現れる。彼女の“天賦の歌声”に惹かれた神代は、再び音楽と向き合い、モノトーンだった人生が、少しずつ色づき始めていく…。
本は読むことはできない。 再読することしかできない。 自らの伝記的事実と作品をパロディー化し、物語のそこここに多様なモチーフ(サーカス、コンメディア・デッラルテ、気象、右と左……)を潜ませるーー ナボコフが仕組んだ「間違いさがし」を解き明かす訳注付き。
軍事政権下の1980年代の韓国社会を主人公15歳の少年を通して、寓話のように戯画化した作品である。 本作に度々登場するおびただしい宇宙的な数字は、数の世界を情緒的なレベルへと導く。「僕」は量子論の世界を知り「他の宇宙」の可能性を信じる。「3000億分の1」という地球の孤独と「1065億分の1」という「僕」の孤独。その宇宙的な孤独に出会うのと孤独を宇宙化することの間で、「僕」は成長していき、読者は宇宙的な労わりと癒しの瞬間と対面することができる。その労わりは「1065億個の中の一つというのは、ないのに等しいことではなく、とても特別なことを意味する」ということ、「私たちの夜が暗い理由は、私たちの宇宙がまだ若くて成長しているから」と。