2016年発売
昭和の新宿。「雨の日だけ営業」と噂される、元神主・水上櫂の探偵社をめぐる物語ー。幼馴染の慎吾が「近ごろ、会社に間違って届く郵便物が多くて、受付の女性が困っている」と櫂に相談した数日後、その女性は失踪して…(表題作)。◎友の死を悼みつづける女の真意を見抜く「沈澄池のほとり」。◎破格の待遇で募集されたカメラマン採用試験の謎に迫る「好条件の求人」など、四作品を収録した連作短篇推理小説。
刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのかー。京都府警捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。文庫書き下ろし。
蜘蛛の糸を駆使した魔物とのバトルにも慣れてきた「私」。危険な地下迷宮を目指し新エリア「中層」へと飛び出したはいいけどーそこはマグマ吹き出す灼熱の大地だった!立ってるだけでHPは減ってくし、唯一の武器の糸が片っ端から燃えるんですけど?瀕死状態に追い打ちをかけるのは、容赦なく炎の弾丸や魔法をぶつけてくる魔物たち。おまけに中層の主・火竜は奴らを従えるスキルまで持っていて…。蜘蛛子ちゃんの生存戦略、業火の獄炎迷宮で第二章開幕!
文芸編集者として忙しい日々を過ごす那波田空也は、あるきっかけで再びボクシングとの距離を縮める。初めての恋人・つた絵の存在、ジムに通う小学生ノンちゃんの抱える闇、トレーナー有田が振りまく無意識の悪意、脅威の新人選手・岸本修斗。リングという圧倒的空間に熱狂と感動を描ききる!傑作長編小説。
参事官の後山の指令で、完全黙秘を続ける連続窃盗犯の取り調べを行うことになった刑事総務課の大友鉄。その沈黙に手こずる中、めったに現場には来ないはずの後山と、事件担当の検事まで所轄に姿を現す。背後にはいったい何が?異色のシングルファーザー刑事の活躍を描き人気を博す「アナザーフェイス」シリーズ長編第七弾。
「俺、高校に受かったら、本とか読もうっと」。幼馴染みの慎也は無事合格したのに、卒業式の午後、浜で行方不明になった。分厚い小説を貸してあげていたのに、読めないままだったかな。彼のお母さんは、まだ息子の部屋を片付けられずにいる(「しおり」)。突然の喪失を前に、迷いながら、泣きながら、一歩を踏み出す私達の物語集。
死んだ男を囲む、二人の女の情念。ミッションスクールの女子たちの儚く優雅な昼休み。鉄砲薔薇散る中でホテルマンが見た幻。古い猫の毛皮みたいな臭いを放つ男の口笛。ダンボールに隠れていたぼくのひと夏の経験。日常に口を開く異界、奇怪を覗かせる深淵を鮮やかに切り取った桜庭一樹の新世界、6つの短編小説。
すれ違う子供が泣きだすほどの醜男の、愚直な恋のゆくえ(「甚三郎始末記」)。騙されていると知りながら待ち続ける遊女の哀しき運命(「風を待つ」)。自ら始末をつけるべく散り急ぐ男に、残された妻の覚悟を描く表題作など、心に染み通る5篇。四季の彩り溢れる情景と、男女の一途な愛を細やかに綴る傑作時代小説。
殺し屋・月影を追う北町奉行所筆頭与力・仙波一之進・仙波は平賀源内に依頼して、事件のカギを握る記憶喪失の娘をエレキテルで治療するが、娘が思いだしたのはただひとつ、「おとっつぁんは歌麿」!?表題作などテレビドラマ「だましゑ歌麿」シリーズの原作2篇を含む中篇集。巻末座談会・水谷豊、岸部一徳、中村橋之助。
うちの塾の生徒が誘拐された?小学6年の山下愛子を誘拐したという奇妙なメール。身代金は何と5000円、それを1円玉にして1000円ずつ塾の講師5人が持ってこいというのだ。国語、数学、理科、社会、それぞれに個性的な講師たちが愛する教え子のために謎に挑む!読むと勉強が好きになる、心優しい塾ミステリー。
豊後国森藩から奉公を解かれ、浪々の身となった赤目小籐次、四十九歳。彼には胸に秘する決意があった。旧主・久留島通嘉の受けた恥辱をすすぐこと。相手は大名四藩。備中次直二尺一寸三分を手に、小籐次独りの闘いが今、幕を開ける。時代小説ファンを驚喜させた小籐次シリーズが一層の鋭さを増し、“決定版”として帰ってきた!
おれは遊蕩児だ。後継ぎにはなれぬー荘内領清川村の素封家の長男として生まれた斎藤元司は、自我をおし立て貫き通す、ど不敵な性格であった。孤独と閉塞感から逃れ、広い世界を見て学問をおさめたいと、十八歳で出奔して江戸へ出たが…。山師・策士と呼ばれ、いまなお悪評と誤解のなかにある清河八郎の波瀾に満ちた生涯。
何度も郷里に引き戻されながら、江戸で学問と剣術を極めていく元司。二十五歳で清河八郎と改名、自ら塾を開くも、やがて学問の世界を離れ虎尾の会を結成、尊皇攘夷の急先鋒となっていく。しかし倒幕の機いまだ熟さず、早すぎた志士として凶刃に倒れるー悲劇の孤士の生涯をあますところなく描いた傑作長篇。
札幌で暮らす小学六年生の瀬川大介には、自らの鬱屈を晴らす、ささやかな楽しみがあった。それは隣家に住む、指が二本ない謎の老人佐藤北海が見守る貧弱な樹がつける花芽を削り取ること。開花を待つ北海の喜びを奪うことで、不満を溜めた老人が“暴発”することを願っていた。だが、夏休みに入ったある日、大介の油断を衝いてその樹が白い花を咲かせる。それを見た北海は突如ボストンバッグを抱えて旅に出発、両親と喧嘩して家出をするつもりだった大介は、急遽彼を追うことに…。一人の少年の好奇心と冒険心が生んだ心に沁みわたる感動の物語。
戦勝の歓声が上がる中、会戦から帰還したマナスは戦場での恐るべき死の光景を嘆き、自ら死を求めて亡者が原へと赴く。彼はそこで悲惨・非道の様々な亡霊を目撃する。シヴァ神配下の三悪鬼などとの闘争の末に死んだマナスは、愛妻サーヴィトリーによって甦るが、最終的に彼が見出したものは…。
男爵未亡人カッサンドラは、ある罪に問われて家を追い出され、かつての使用人たちを引き連れて困窮極まっていた。つらい過去を陰で支えてくれた家族同然の彼らを守るため、彼女に残された唯一の方法は、大金持ちの貴族の愛人になること。決意を胸に秘め、カッサンドラは招かれてもいない舞踏会をひとり訪れる。ほかの招待客がみな、悪評がつきまとうカッサンドラと距離を置こうとするなか、ハクスタブル家の長男である伯爵スティーヴンは謎めいたその女性が気にかかり、周囲の視線も気にせず彼女を誠実にもてなした。社交界でも“理想の結婚相手”として評判が高い、清廉潔白なスティーヴンは、何かに導かれるようにしてカッサンドラとそのまま一夜を過ごす。翌朝、彼女の真実を知ったスティーヴンは、「きみを守る」と宣言するが…。
ハイランド地方最大勢力の氏族の次男アランは、氏族間の同盟のために政略結婚をさせられることが決まっていた。そんななか、アランは仮面舞踏会で出逢った聡明な女性メアリーに魅了される。ところが、メアリーはアランにとって宿敵の一族の娘だった。彼女にもまた、望まぬ結婚話がすすんでおり、ふたりは互いの家族の厳命によって近づくことさえ禁じられる。それでも、あの出逢いのときめきを忘れられないふたり。想いあふれるまま、人目を忍んで逢瀬を重ねていたところを、ついに両家に見つかってしまう。強引に引き離された翌日、メアリーの結婚が2週間後に決まったことを知ったアランは…。ハイランダーとしての誇りを胸に領地を守ってきたマクローリー3兄弟が、イングランドの上流社会へ乗りこむ“スキャンダラス・ハイランダー”シリーズ、第2弾!
パパイヤにグアバ、鮮やかな南国フルーツのカクテルと、スパイシーな伝統料理が所狭しと並ぶ贅を尽くしたテーブル。シンガポールでカフェを営むアンティ・リーはビュッフェパーティーの注文を受け、大豪邸で自慢の腕を振るった。ところが、鶏煮込み料理を口にした主催者の女性弁護士とその息子が、帰らぬ人となってしまった!たしかにこの特別な料理に使われている木の実は、毒を含んでいる。しかし、アンティ・リーは毒抜きに絶対の自信があった。では、何者かが巧妙に仕組んだ殺人なのだろうか?裕福で何不自由なく見えた弁護士一家の底なしの闇に、アンティ・リーの鋭い目が光る!ところが有力な手がかりをつかむ寸前、カフェは営業停止に追いこまれてしまい!?