2017年9月発売
名前も身元も定かでない娘が、 伯爵の心に留まるはずもなく……。 嵐が迫るなか、ずぶ濡れの娘は夜道を当てもなくさまよっていた。 寒さと疲れで事切れる寸前、通りがかりの伯爵ジョナサンに救われ、 彼女は近くの牧師館へ運ばれたが、自分の名前も出自もわからなかった。 牧師夫妻は彼女を仮に“ベス”と呼び、親戚として共に暮らし始めるが、 一部の上流階級からは怪しまれ、冷遇されてしまう。 ああ、わたしを助けてくれた優しいあの人にまた会いたい……。 自分の名前は忘れても、彼のことは一生忘れられない。 そんなベスの願いは叶うこともないまま半年が過ぎたころ、 夢にまで見たジョナサンと再会を果たすが、彼の挨拶に色を失った。 「はじめまして。自己紹介させてもらえないか?」 記憶喪失に陥ったベスはひけめを感じながらも伯爵への想いを募らせますが、半年ぶりに会ったジョナサンは彼女のことをまったく覚えていないうえに、彼は上流階級にふさわしい花嫁を娶ることを求められていて……。悲しい定めに翻弄される娘を劇的に描いたリージェンシー。
無口で無表情な伯爵は、 困窮する娘の身柄を要求した! 嘘よ! 私があの伯爵に買われたなんて。 おじが賭事で作った借金を肩代わりする見返りに、 冷徹と名高いコールドベック伯爵は私との結婚を要求した……。 激しく動揺するキャサリンの耳に、力強いノックの音が響いた。 「コールドベックです。あなたとお話ししたい」 伯爵はキャサリンに反論を許さず、その日のうちに式を挙げ、 2日後には彼女をヨークシャーの領地へ連れ去った。 そのときのキャサリンは夢にも思わなかった。 自分を買った夫に、狂おしいほど恋い焦がれる日が来ようとは。 いっさいの感情を封じた冷淡な伯爵と、孤児たちを救いたいと願う心豊かな乙女。対照的なふたりが夫婦となって、どんな結婚生活が始まるのか? 甘く切ない想いが交錯する、リージェンシーの名作。
こんなに優しくしてくれるあなたが、 誰も愛せない冷酷なひとだというの? 自動車事故に遭い、病院で目覚めたエイプリルは愕然とした。 自分の名前も、過去もまったく思い出せない。 見舞いに訪れた黒髪のハンサムな男性ーーセスのことも。 胸がこんなにどきどきするのはなぜ? 彼は……私の恋人? だが、セスは有名ホテルチェーンの経営者で、初対面だと告げた。 彼の弟がエイプリルの同乗者で、事故で命を落としたのだが、 直前にホテルの一つを譲る契約を結んでいたらしい。 入院中、ずっと彼女の体調を気遣い、優しく接してくれるセスに エイプリルは日々癒やされていった。まさか彼がホテルを取り戻すため、 自分を誘惑しようと企んでいるとは夢にも思わず……。 愛を信じない非情なホテル王セスに、ひと目で惹かれてしまったエイプリル。一方のセスは、彼女が色仕掛けで亡き弟のホテルを手に入れたと疑い、彼女の記憶喪失さえ演技だと思い込んでいて……。
私は彼を欺いているーー この世でいちばん愛しい人を。 家政婦のセイディは雇い主の命令で、愛するザカリーの住む町を訪れた。 罪なほどセクシーな町の英雄ザカリー・ガトリンと激しい恋に落ち、 別れも告げずに姿を消して5年になるが、今も彼は夜ごと夢に現れる。 本当はやりたくない。ザカリーの身辺を嗅ぎまわるなどという仕事は。 でも、病気の妹の高額な治療費を稼ぐ方法はほかにない。 だから、雇い主であるザカリーの異母弟に協力するしか道はないのだーー 遺産相続を阻むためにザカリーの汚点を探れ、という卑劣なことでも。 高鳴る鼓動を抑えこみ、勇気を振り絞ってザカリーを訪ねたセイディは、 冷ややかな黒い瞳に一瞥された。「ここは君のいる場所じゃない」 それでも愛の残り火は燃えあがり、セイディは思いがけず妊娠するが……。 決死の思いで再会した初恋の人は、近寄りがたい成功者となっていて……。どこまでも不遇で健気なヒロインと、どこまでもゴージャスでセクシーなヒーロー。数奇な運命に弄ばれた二人のドラマチックなラブストーリーです! 『天使を抱いた氷の富豪』関連作。
ギリシア富豪の屋敷でナニーとして働くケイトは、 ある日、尊大な当主ダモンに驚くべき提案をもちかけられた。 「ぼくと結婚してくれないか? もちろん寝室は別で」 耳を疑うケイトに、彼は説明した。 結婚する気はさらさらないが、母に結婚を急かされ困っている、 姪のナニーであるきみが相手なら母も納得するだろう、と。 折しも気の進まない結婚を父に迫られていたケイトは、 1年の期限付きという条件で、彼の提案を受け入れることにする。 だが挙式後、バハマへの新婚旅行を強制されてしまったケイト。 まさか彼と衝動的に情熱を交わすことになるとは夢にも思わず……。 〈ロマンス・タイムマシン〉と題してその年の名作をお贈りする企画、1996年の今回は、大人気テーマの1つ、ナニーがヒロインの物語。傲慢富豪ダモンの頼みで、形だけの夫婦を演じるはずだったのに、突然、嵐のような情熱にのみこまれてしまい……。愛なき結婚生活に悩みだすヒロインの、せつない恋のゆくえは?
19歳のデイヴィナは、プロポーズされて夢見心地だった。 その男性が、彼女の姉と通じていると知るまでは。 裏切りに打ちのめされたデイヴィナは故郷を捨て、ロンドンに出た。 2年が経ち、いまは大企業の重役ジェイクの秘書を務めている。 彼はハンサムな独身とあって、恋人はいつもとびきりの美人だ。 ある日、デイヴィナのもとに姉から結婚式の招待状が届く。 相手は元婚約者だった。傍目にも明らかなほどうろたえた彼女は、 ジェイクから問いただされたとき、つい心の内を漏らしてしまう。 彼はしばらく何か考えていたが、暗く光る目でデイヴィナを見ると、 こう言ったのだ。「僕が結婚式に付き添うーーきみの婚約者として」 S・アレクサンダーは80年代に4作だけを残した幻の作家ですが、今作の初版は、同日に刊行されたC・モーティマー、B・ニールズ、J・デイリーといった人気作家を大きく引き離してトップの売上を誇った作品でした。幻のロマンスをどうぞ。
パーティでケータリングをするサマンサに、男性が声をかけてきた。マシュー!ハンサムな彼はイギリスとギリシアの血を引く、船舶会社アポロニアス・コーポレーション後継者という有名人だ。彼は、祖父の誕生日パーティの手伝いをしてほしいのだという。仕事の話にしては、まなざしや態度が親密すぎる気がしたが、彼のような男性がわたしなんかに興味を持つはずがないと、サマンサは恥ずかしくなり、慌てて仕事を請け負った。まさかそのパーティが、ギリシアの美しい孤島で催され、その間ずっと、マシューと寝食をともにすることになるとはーそしてそれこそが彼の思惑だったなど、彼女はまだ知らなかった。
フィアのもとを、イタリア富豪のサントが訪ねてきた。フィアとサントの家には3代前からの確執があるが、3年前、二人は一度だけ夜をともに過ごしたことがある。その後サントはまったく連絡をくれなかったけれど、フィアは妊娠に気づき、一人で息子を育ててきたのだった。何も知らないサントは、彼の一族の事業拡大のため、フィアが息子と住む家を、土地ごと買いたいのだと言う。足元にまとわりついてきた幼子を慌てて隠そうとしていると、サントの顔色が変わったーそう、息子は彼にそっくりだった。彼が強ばった表情で言う。「土地を買うまでもない。結婚しよう」
「僕たち、結婚してもいいんじゃないかな」唐突で、思いがけないプロポーズに秘書のアンバーは、ボスの真意がつかめず目をみはった。ボスの包容力に安らぎを覚えながらも、男としてのそぶりを彼はいっさい見せなかったから…。しかもアンバーは、ある出来事のせいで、二度と恋愛には夢中にならないと決めていたのだ。ところがボスは、この結婚に情熱はいらないという。意味深な言葉を囁かれ、アンバーの心は複雑に揺れた。
エヴィの恋人の名はシーク・ラシード・アル・カダー。父の跡を継いで国を統治し、いずれ一族の女性を妻にするという定めを負った、見惚れるほど美しいアラブのプリンスだ。ラシードの立場を慮り、身ごもっていることを打ち明けるのをためらっていたエヴィだったが、いつものように抱きあい、甘美なひとときを過ごしー妊娠したことを告げると、冷たいまなざしでラシードに、「赤ん坊は僕の子か」と突き放されて、エヴィは青ざめた。しかも追い打ちをかけるように、彼の婚約を知らされ…。
婚約間近のステファニーは、海辺の町で静かに暮らしていた。 しかし、その平穏な日常もジェラードが現れたことで一変する。 18歳。大人になりかけていた清純なステファニーは、 洗練された美貌のジェラードと恋に落ちた。 だが悪夢のような出来事によって、地獄に突き落とされーー ジェラードは彼女の愛と純潔を疑って、去ったのだ。永遠に。 5年の月日が流れ、再会した彼の瞳には凶暴な光が眩いていた。 「綺麗で汚れていないと思っていたのに。君はまた人を欺くのか」 君の真実の姿を君の恋人に暴くとでも言いたげに。
財産目当てで、年の離れた大富豪の後妻となったいとこのために、ケンドラはギリシアを訪れていた。アテネ空港で出迎えたのは、ハンサムだが傲慢なデーモン。大富豪の親戚筋にあたる、彼自身も億万長者の会社経営者だ。ケンドラは彼のことが気になるのに、いとこと同類と決めつけて、皮肉っぽい目つきでじろじろと見つめてくる。ある日、大富豪の息子と出かけたケンドラは、車の燃料切れで帰宅が深夜になってしまう。するとデーモンはここぞとばかりに、「君は金持ちなら誰でもいいのか」と辛辣な言葉を放った。
勇者一行の歩みが止まる事はない。何故ならそれこそが聖勇者としての証明なのだから。 ユーティス大墳墓での戦闘を経て、魔王クラノス討伐のために召喚された勇者・藤堂直継とその仲間たちーー魔導師リミス、剣士アリア、氷樹小竜のグレシャのパーティー一行は、さらなるレベルアップを図るため「魔導人形の谷」に足を踏み入れた。 そして今、そのフィールドにアレスの嘆きが木霊する。 「ああああああああああ、何故俺は……ステファンなんて呼んでしまったんだああああ」 ステファン・ベロニド。新たなるサポートメンバーにして高レベルの白魔導師。しかし彼女を知る者はこう言って自らを慰めるーー致命的な「ドジっ子」だと……。
巨大な城壁を擁し、長く平和を誇った聖王国を亜人連合軍が突如、襲撃。 連合軍の総大将は魔皇ヤルダバオト。 残忍冷酷な魔皇によって聖王国は国崩壊の危機に直面する。 苦難の民を救うため解放軍が救いを求めたのは 聖王国にとって不倶戴天の敵であるアンデッドを王に戴く魔導国。 アインズ・ウール・ゴウン魔導王に導かれ 聖王国は魔皇ヤルダバオトの討伐に乗りだす。
「迷宮踏破」に挑むフィーレンダンクの一行。 強さを増す「魔獣」と立ちはだかる「階層主」。 隠された迷宮の「秘密」、そして「過去の転生者」の願いーー。 アリアたちの“想い”に、ジンは“新たな覚悟”を導き出す。 リエンツに集う“仲間たち”は、ジンに“さらなる力”をもたらす。 紡いだ絆を力に変え、冒険者たちはリエンツを襲う“最大の脅威”に立ち向かう!! シリーズ累計10万部突破の大人気ファンタジー、待望の6巻!!
村人・鏡は湧き上がる復讐心に葛藤していた。 仲間を失い、しかし得たものは一つもなかった。 それでも、前に進むしかない。 逃走した來栖を追うために。アリスの命を守るために。アースクリアの世界を救うために。 鏡は、フォルティニア王国を管理する、北の大地ロシアへと向かった。 「役割による強さの限界とか…… 数による力の差とか……そんなの関係ない。 負けるからなんて理由で俺は立ち止まりたくない……。 この命が尽きるまで、あいつとの約束を…… いや、俺自身が叶えたい夢のために!」
エンダルジア王国は『魔の森』のスタンピードによって滅亡した。 錬金術師の少女・マリエラは『仮死の魔法陣』の力で難を逃れたものの、 ちょっとした「うっかり」で眠り続けてしまい、目覚めたのは200年後。 ーーそこは錬金術師が死に絶え、ポーションが高級品と化した別世界だった。 都市で唯一の錬金術師になってしまった少女・マリエラの願い。 それは、のんびり楽しく、街で静かに暮らすこと。 ほのぼのスローライフ・ファンタジー、ここに開幕!
華文(中国語)ミステリーの到達点を示す記念碑的傑作が、ついに日本上陸! 現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。 本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。 2015年の台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、各国で刊行中。映画化権はウォン・カーウァイが取得した。著者は第2回島田荘司推理小説賞を受賞。本書は島田荘司賞受賞第1作でもある。 〈目次紹介〉 1.黒與白之間的真實 (黒と白のあいだの真実) 2.囚徒道義 (任侠のジレンマ) 3.最長的一日 The Longest Day (クワンのいちばん長い日) 4.泰美斯的天秤 The Balance of Themis (テミスの天秤) 5.Borrowed Place (借りた場所に) 6.Borrowed Time (借りた時間に)
あなたはなぜ書いたのか、一人で子を成す孤独を。あなたも知っていたのか、子を奪われる苦しみを。千年の時を超え、平安時代の王朝物語「夜の寝覚」の作者とともに、人間の幸福の意味を問いかける名著。 解説=木村朗子(津田塾大学国際関係学科教授) 夜の光に追われて 人間存在が時の流れを超えるとき 木村朗子