2018年10月発売
彼女は、孤独だった。親にも顧みられず、なにも与えられなかった。彼女を救い出してくれたのは、兄・リシャール。彼は、教えてくれた。人の心を読む術を、人を操る方法を。そして彼女に命じた。自分にとっての駒になれと。エンマは、兄のためイングランドに嫁ぐ。待ち受ける運命も知らず。 ノルマンディ公国のためイングランドへ嫁いだエンマ。年の離れた王は、彼女に溺れ、やがてイングランドは、崩壊の道を歩む。「ノルマンの宝石」と讃えられた、稀代の悪女の生涯。
<b>我々の取り繕った世界を、皮を、作者は次々と引っ剝がす。 人間の暗部を見せてくれる。 ーーこだまさん(作家)絶賛!! (『夫のちんぽが入らない』『ここは、おしまいの地』)</b> 七年余り雌兎だった記憶を持ち、雄との交尾に開け暮れた一生を送った女。現世でも常に交尾を欲し、数々の奇行に走る。そして前世でつがいだった男と再会するが、その先で遭遇した恐ろしい出来事とはーー(前世は兎)。 36歳、教員で休職中の独身女が日々「ヌッセン総合カタログ」を詳細に書き写す訳は、「スティレス」を解消する為だった。同僚が次々と部屋を訪れ、職場復帰を促すのだがーー(宗教)。 破滅を迎えた世界で、国のマラソン競技に選抜された姉。労働力として認められないものへの唯一の栄誉だが、自殺や逃亡は許されない。選手村への出発を翌日の向かえた夜、姉がとった行動とは……(ランナー)。ほか、全七話。 現実感覚を揺さぶる快作集! 【著者略歴】 吉村萬壱(よしむら・まんいち) 1961年、愛媛県松山市生まれ。大阪府枚方市育ち。京都教育大学卒業後、東京、大阪の高校、支援学校教諭を経て専業作家に。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文學界新人賞、2003年「ハリガネムシ」で第129回芥川賞、2016年『臣女』で第22回島清恋愛文学賞を受賞。著書に『バースト・ゾーン』『ヤイトスエッド』『ボラード病』『虚ろまんてぃっく』『回遊人』など多数。
モンゴル族の覇権を懸け、テムジン率いる二千騎が、トドエン・ギルテとタルグダイのタイチウト軍六千騎と対峙し、闘いが始まった。テムジンへの助勢を考えたジャムカは二百五十騎を率い、戦の様子を見守る。数の上では劣勢のテムジン軍が、タイチウト軍の半数を滑走に追い込もうとしたその時、黒い旗を掲げた少数の騎馬隊が新たに出現した。その隊は、テムジン軍を断ち割り、ジャムカのほうに向かってくるー。
文房具メーカーで派遣社員として働いていた26歳の女性は、正社員になれず、家賃が払えなくなりあっという間に貧困になだれこんでいく。漫画喫茶で寝泊りして、菓子パンで腹を満たす生活から抜け出すために、彼女が選んだのは「出会い喫茶」でお金を稼ぐことだった。生きるために「ワリキリ=売春」をしなくてはいけないのか。
男尊国にっほんで側室奴隷の子として生まれ、女尊国ウラミズモに移民した市川房代は、男性保護牧場歴史資料館の責任者となり、館内で「保護」する性犯罪者たちの生死を委ねられていた。請願、要求も房代に集中する激務の中、警視総監、法務大臣を輩出する白梅高等学院の少女たちに銃で脅され、にっほんの少女遊廓からの訴えをきき、死者のメールに耐え…。そんなある日、齢数千年の石の女神が訪れ…。自由か、死かー女性たちの存亡を賭けた闘いが、いま幕を開ける!
西郷の暗黒面を支えたあの男を追え。“二度目の明治維新”は、なぜ歴史の闇に消えたのか?中江兆民とあの男が、勝海舟と図り、西郷を動かした!明治政府転覆計画が実行直前で消えた謎に迫る、傑作歴史小説。
ある日を境に、女たちが、手から強力な電流を発する力を得る。最年少かつ、最強の力を持つ14歳の少女ロクシーは母を殺された復讐を誓い、市長マーゴットは政界進出を狙い、里親に虐待されていたアリーは「声」に導かれ、修道院に潜伏する。そして、世界中で女性たちの反逆がはじまったー。オバマ前大統領のブックリストや、エマ・ワトソンのフェミニストブッククラブの推薦図書となった男女逆転ディストピア・エンタテインメントがついに邦訳!
「性」の“寓話”でも“神話”でもなく。生殖革命を超えて性を科学から文学に取り戻す、現代詩の第一人者による性の神曲。現代詩のトップランナーが贈る哲学的にしてポルノグラフィックな“小さき者たち”の物語。
彼の甘いキスも熱い愛撫も、 すべては私への報復。 ようやく内定をもらえたホテルから採用を取り消され、 納得のいかないカメオは担当者を訪ねた。 するとそこで思いもよらぬ人物に遭遇する。 ダンテ・ガッロ──10年前、カメオの父を泥棒だと糾弾し、 イタリアから追放した張本人がホテルの社長だったなんて! 逃げるように立ち去った彼女は、途中、体調を崩した老婦人を 助けるが、偶然にもそれはダンテの祖母だった。 後日、彼から礼を兼ねた食事に誘われ、出向いたカメオは 後悔するも遅かった。誘惑に抗えず、強引に唇を奪われて……。 気鋭の作家ダニー・コリンズ渾身のドラマティックなロマンスをお楽しみください。自身が愛人同然に扱われていると気づかないほど、ヒーローを愛してしまった無垢なヒロインの運命は……?
病身の母との生活を支えるため、仕事を掛け持ちし、働きづめの毎日を送っているジャズ。思い余って母の元雇い主に窮状を訴える手紙を送ったところ屋敷に呼ばれるが、現れたのはその息子、レロヴィア国の皇太子ヴィターレだった。ああ、かつての想い人とまさかこんな形で再会するなんて…。ヴィターレは、弟との賭に協力し、しばらく宮殿に住みこむなら援助をしようと約束した。だが7週間後、事態は急変する。ジャズが妊娠したのだーたび重なる彼の誘惑の罠に落ちて。「婚外子では世継ぎにできない。入籍する」冷淡な一言が飛んだ。
結婚や妊娠を望む相手とはつき合わない。 5年前、彼はそう言って去っていった……。 夫の葬儀の日、クリスティンはアナトールの訪問を受けた。 夫の甥で、一族が率いる企業帝国のCEO、そしてーー元恋人。 彼は私に、伯父を結婚の罠にかけた金目当ての女と、 容赦ない言葉を浴びせるに違いない。 けれど5年前、余命僅かな彼の伯父と結婚したのは、 生まれてくる子に、家と家族を与えるため。 アナトールに捨てられたあと妊娠を知って、 途方にくれていたとき、形だけの結婚を提案されたから。 でも、その事実はアナトールには知られたくない……絶対に。 母の看病で恋に無縁だったヒロインは、恋におちた大富豪との夢のような日々から一転、どん底へ。やがて訪れた皮肉な再会は……。健気なヒロインと傲慢なヒーローのジェットコースター・ロマンスの名手、J・ジェイムズが綴る珠玉のシークレットベビー物語!
リディアは亡父の莫大な債務を肩代わりするはめになり、債権者である銀行のCEO、ラウルとの話し合いに臨んだ。「僕と結婚すれば、きみの父親の借金は清算される」この人は何を言っているの?リディアは唖然としたが、どうやら生前、父は実の娘を担保として差しだしていたらしい。だが、リディアはかつてラウルから手酷い侮辱を受けており、彼ほど傲慢な億万長者と結婚するなどまっぴらだった。すると、まずは同居をしてもらう必要があるとラウルが続け、悩ましい視線が絡みついた。ああ、やはり彼は危険すぎる…。
毎朝、ボスから届く黄色い薔薇。 その花言葉は“友情”だけれど……。 著名な大富豪ディーコンに雇われ、住み込みの助手となったギャビー。 出入りが許されるのは、彼女の住居部分と仕事部屋だけで、 屋敷につながる扉には鍵がかけられ、雇い主は姿を見せない。 仕事の指示は電話かメールのみ。もどかしさを感じていたある日、 ギャビーは鍵があいていた隙に、扉の向こうへと足を踏み入れた。 ついに現れた彼は、写真や映像で見たのとは別人のようだった。 伸び放題のひげと髪に覆われて顔は見えず、その姿も声も、 まるで野獣のようで、わずかにのぞく瞳は暗く陰り謎めいている。 でもギャビーは不思議と恐れなかった。彼の心を開きたいとさえ思い、 彼女はひたむきに一歩ずつ、信頼を得ていった。 そしてあるとき、思いきって彼のひげ剃りと散髪を提案するとーー 車椅子生活の父の医療費と生活費を稼ぐため、ギャビーは2つの仕事をかけ持ちしていましたが、とある事情でディーコンに雇われたのでした。彼女の一族と彼とのあいだに横たわる深い溝と運命、そして二人の切ない愛は、どのような結末を迎えるのでしょうか?
昨年失恋してから、助産師のフローは男性とつき合わないと決めていた。しかし放蕩者として噂の王子、ハジーンの魅力には逆らえなかった。きらびやかな流行の店で、彼がフローだけに目をとめたからだ。豪勢なベッドで朝まで過ごしたときは、彼こそ運命の人だと実感した。正直でいようと、彼女は告白した。「あなたが王子だと知っている」と。するとハジーンは、金めあてと罵り、彼女を置き去りにして出ていった。とりつく島もない彼の態度に、フローは涙がかれるまで泣いた。そんな惨めな彼女を待っていたのは、親友の結婚式への招待だったー相手はハジーンの兄。弟であるハジーンも必ずや出席するはずだ。想いを踏みにじられたばかりなのに、淡い望みを抑えきれず…。
結婚なんて私には縁がない……。 愛も夢も、あの日に封印したから。 きっちり結った髪に、灰色のさえないドレスの住み込み家庭教師ーー そんなソフィにも、人生でただひとり、心から愛した人がいた。 8年前、愛するピーターの父に、住んでいた屋敷を出ていくよう迫られ、 ソフィはやむにやまれず彼と別れて、自活する道を選んだ。 彼と別の女性の結婚予告が出されたのを知り、あまりにつらかったから。 以来、名前を変え、結婚もあきらめて、ひっそり暮らしてきたが、 雇い主から、母のいない娘のためにと名ばかりの結婚を提案された。 愛なんて無縁の私が結婚? でも、かわいい教え子のためなら……。 一歩踏み出すべきか迷いつつ迎えたクリスマスイブの前夜、 吹雪のなか屋敷へと向かってくる人影に気づき、ソフィは声を失った。 ピーターことシルボーン伯爵の冷たい瞳が、そこにあったのだ! 物心ついたときに母は亡く、父とも死に別れたソフィの人生は孤独でした。唯一愛したピーターとの恋からも泣く泣く身を引いた彼女に幸あれと願うばかりですが、彼との再会は穏やかではなく……。エリザベス・ビーコンが描く、出色のシンデレラ・リージェンシー!
付き添い人をして生計を立てているアニスは、年頃の令嬢のいる貴族から縁結びの依頼をたびたび受けている。そんな彼女には、ある悩みがあったー美しすぎるのだ。令嬢に引き合わせた相手男性から関心を向けられないよう、アニスは古ぼけた服をまとい、豊かな金髪を帽子に押し込んで、決して目立たぬよう、つねに地味に振る舞っていた。ところが、偶然知り合った悪名高き放蕩伯爵アダムが、彼女の慎重に隠された美貌に目ざとく気づき、誘惑を開始した。その場面を社交界のうるさがたに見咎められてしまい、もはや失業同然のアニスに、伯爵はやむなく求婚するが…。
亡き妻を愛する大富豪との契約結婚。 承諾したのは母になりたかったから。 執事によって広大な屋敷の中へ通されるあいだ、タリアは緊張していた。 これから会うニックは、テキサスでも古くからある名家出身の、 とんでもない億万長者だ。しかも、セクシーでハンサムでもある。 そんな男性に、「実はあなたには娘がいる」と言わなくてはいけない。 生前タリアの親友は、自分の娘の父親は彼だと話していた。 どんなに愛していても、血縁でないわたしは親友の子の母になれない。 でもニックに託せば、今後も会うくらいはさせてもらえる? 必死なタリアの目に光る涙を見て、ニックは驚くべき提案をした。 「きみが母になれる方法がひとつだけある。ぼくと結婚すればいい。 ただし愛はなしで」そう言って、彼はタリアの唇を奪った。 今回、サラ・オーウィグが描くのは読者から大好評の、愛なき契約結婚もの。ヒロインはいつか振り向いてもらえることを願って、いい妻、いい母になろうと努力しますが、ヒーローはひたすら「ぼくが愛しているのは亡き妻だけだ」と言うばかりで……。
ボスからのプロポーズは、 子どもに母親を与えるためだけのもの? デリアのボスは、億万長者の会社経営者イェーガー・マクニールだ。 偶然出会った彼に苦境を救われ、秘書として雇用されて2年。 ボスは自分には手の届かない人だとあきらめていた彼女だったが、 ある日思わぬ出来事が起こり、彼の豪邸で熱く激しい夜を過ごした。 数週間後、デリアは驚愕の事態に見舞われ、イェーガーに妊娠を告げる。 すると、彼は“責任”という言葉を口にしてデリアの手の甲にキスし、 彼女を見つめて言った。「ぼくと結婚してくれるかい?」 こんな愛情の感じられないプロポーズを受け入れるなんて無理だわ! デリアは結婚をためらうが、音信不通の名門一族と会う彼に説得され、 プライベートジェットでクリスマスシーズンのニューヨークを訪れ……。 『メールオーダー・ブライド』『この結婚は期限付き』に続いて、名門マクニール一族のいい男がヒーローを務めるロマンスをお贈りします。数々の受賞歴を誇るJ・ロックの筆才をご堪能ください。
一夜だけでもいい、自信に満ちた魅惑的な女性になれたら。 その一心でティナはベネチアの仮面舞踏会へ出かけ、 身を捧げたいと思えるすてきな男性とめぐりあった。 「仮面はつけたまま、名前も明かさないことにしよう」 耳元でささやかれた言葉に、彼女はうなずいた。 ところが、夢のような時間を過ごしたあと、 どうしても素顔を見たくなり、眠る彼の仮面をそっとずらした。 まさか初めての男性が、兄の仇敵の侯爵ニコだったとは! 皮肉な運命に愕然とし、ティナは無言でその場を逃げだした。 だが2カ月後、ティナはその身に小さな命を宿していて……。 父親の愛を知らずに育った自分と同じ思いをさせるにしのびなく、侯爵ニコに妊娠を告げたティナ。ですが、強引に城へ連れ去られて……。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を彷彿させるドラマチックな恋を、リン・レイ・ハリスが繊細な筆致で綴ります。