2018年11月発売
トニーは高校時代の友人の訃報を受け、急遽故郷に戻った。友人はミリセントという悪女のせいで、自殺に追い込まれたという。猛烈な怒りに駆られたトニーは、弔問に現れたミリセントを罵倒し、憤怒の形相で詰め寄った。とたんに彼女の顔は青ざめ…(『指輪はイブの日に』)。3人の子供に手を焼く実業家ニックの屋敷に派遣された、天使のベス。子守をすることが使命だと思ったが、ひどく不幸せそうな彼を見て、自分は彼の心を救うために天上から遣わされたと気づく。ベスはニックの心に人間らしい感情をよみがえらせるが、いつしか彼に恋をしてしまう(『地上に降りた天使』)。5年前、ヘレナは憧れの子爵カールトンと結婚したが、翌朝夫は失踪した。その後妊娠がわかり、夫の家族に財産目当てと冷遇されながらも懸命に息子を育ててきた。ある日、みすぼらしい姿の男が現れ、ヘレナの前で倒れる。それは死んだと思っていた夫だった!(『帰ってきた子爵』)。アリーはクリスマス休暇を過ごすため、スペインのピレネー山脈にやってきた。宿泊先のホテルで出会ったのは、巨大ホテルチェーンの経営責任者デス。女性不信に陥っているデスは、アリーに対して何かと不機嫌な態度をとった。ところが彼女の暗い秘密を知るや…(『アリーの秘密』)。
2年前の出逢いで、ヘレンは大富豪カルロの虜になった。魅力があるぶん、何かがあるだろうとはわかっていたが、惹かれる心をとめられなかった。彼の素性を知るまでは。カルロはかつて、婚約者をヘレンの父親に奪われていたのだ。自分が仇の娘だと知っては、この恋を諦めるしかなかった。その父と継母も今は亡く、そんなときにヘレンの前に現れるー暗く熱を孕む目をしたカルロが。そして吐き捨てるように言った。「君の父親に奪われたものを、君から僕は奪う」カルロの復讐ーそれは結婚し、ヘレンを妊娠させること…。
美しく狡猾な姉に虐げられ続け、幸福すらテッサは奪われた。焦がれていたギリシア人富豪ポールと、姉は婚約したばかりか、テッサの恋心を「気味が悪い」と嘲笑ったのだ。骨の髄まで恥辱を味わわされたテッサは、耐えきれずに家を出た。2年後ー帰郷したテッサはあまりに残酷な現実を知らされる。ポールが火傷を負い失明したというのだ。しかも姉は彼を捨てた。身代わりでいい。側にいられさえすれば。一途な想いを貫くため、テッサはいまも姉を待つポールが住む、キブロス島へと向かった。姉のふりをして。そして…彼の妻になった。
病で倒れた父の負債を肩代わりしてもらうため、 18歳のリサは、年上の大富豪ジャレットとの結婚を受け入れた。 5年間、彼の幼い娘の面倒をみるという条件付きで。 肉体関係は要求しない約束だったのに、当然だろうとばかりに ジャレットは、まだ何も知らないリサの体を求めてくる。 強引で執拗な愛の行為に夜な夜な翻弄されながらも、 その甘さに目覚め、リサはどうしようもなく夫に惹かれていく。 それなのに、「愛情は二の次だ。これは欲望の処理にすぎない」 平然とそう言い放つ夫に、無垢な心は砕け散って……。
サマーは凍りついた。あれはチェイス・ロリマーではないか。二人の出会いは、5年前の夏の日までさかのぼる。恋人の浮気現場を目撃し、心が傷つけられたサマーに、チェイスは大人の魅力を漂わせ、近づいてきたのだ。若く未熟なサマーはわけもわからず、彼の掌中で弄ばれーひどい男性不信に陥った彼女は、そのせいで未だ純潔だった。望まぬ再会を果たしたサマーを見つめ、彼は冷笑して告げた。「僕と結婚するんだ。さもなければ例の写真を…」なぜいまごろになって?思い出したくもない古傷がまた疼く。
マリーサは幼い息子を連れて散歩に出かけていた。その途中、わずかな隙に息子が乳母車ごと消え失せてしまう。大富豪ガブリエルに見初められての身分違いの結婚だったが、所有欲の強い夫に耐えられず、逃げだしたあとに妊娠が発覚。一人で子供を産み育てていた矢先の出来事だった。だからどんなに問いただされようと、夫の名を言うつもりはない。ところが事件が報道されたために、彼に見つかってしまったのだ。また戻る、籠の鳥の人生へー絶望するマリーサの視界に、近寄りがたいほど端整な美貌の夫の姿が、近づいてきて…。
父を亡くし、天涯孤独となったスカイは打ちひしがれていた。頼みの綱の母方の祖父も、産後すぐに母が亡くなったせいで父を嫌い、その後、いっさいのかかわりを絶っていたのだ。それなのに今日、祖父の会社の重役だというガイが迎えに来た。猜疑心を抱きながらも、ガイの抗いがたい魅力に捕らわれて、スカイは祖父のもとへー上流階級の世界へといざなわれる。だが満たされた至福のなかに、いつしか暗い影が射す。いとことガイの婚約の噂を聞いて、スカイは気づいてしまう。知らぬ間に宿っていた、美しいガイへの仄かな思慕に。
芥川龍之介にホメられて有頂天、 永井荷風を敬愛しつつ、その存命中に「絢爛の情話」を著し(荷風も大激怒)、 安藤鶴夫を妬み、 稲垣足穂や金子光晴を友とし、 城左門、今日泊亜蘭、そして小沢昭一、桂米朝、都筑道夫に師事され、 酒癖が悪く、家賃滞納、夜逃げ、女性遍歴を重ねた、べら棒な奇人。 絶交と破門を繰り返し、「孤立」を貫いたこのサイテーな男はしかし、 寄席を愛し、市井の文学を愛し、江戸好みの詩情で歿後、再評価を受けた。 神田の生まれで明治・大正・昭和を駆け抜けた著者が描く、 かくもはなはだしきモダン東京。 歿後60年/小説・随筆35篇
『貴銃士』-それは美術・骨董品として残された古銃の化身。世界帝府の独裁により自由を奪われた人々の前に現れ、気高く、そして華麗に戦う彼らの姿は、世界に一筋の希望をもたらした!これは、生命を得て、ひたむきに自らの“絶対高貴”を追い求める若者たちの物語。僕たちは何のために戦い、何を守るべきなのかー。シャルルヴィル視点で追う、もう1つの物語。
“悪王女"鮎子が生きることの意味を探す、究極の純愛小説。 画家を父に持つ鮎子は、逆子だったため帝王切開で生まれた。一度お腹を開くと次から自然分娩はできない。出産が一番の快楽だという母は、それを奪われたとして鮎子を責めた。 両親の画才を受け継いだ鮎子は東京藝術大学に進学し、京都から上京する。ある日、藝大の裏山でイボテンと名乗る男と出会い、ひょんなことから関係を持つことに。それ以後、四六時中、セックスばかりの毎日を送るようになる。そんななか、夏休みに帰省することを告げた鮎子を、イボテンさんは殴って出ていった。 鮎子は、実家で小説家の我謝さんと会い、彼の故郷である沖縄で共に夏を過ごす。そして大学に戻ったとき、イボテンさんが自殺したことを知った。突然の“不在"に足元から崩れ落ちるような感覚に陥る鮎子。 こっそり忍び込んだ彼の家には、キャンパスに描かれた裸の鮎子が残されており、なぜだかその絵に釘づけになってしまう。そして鮎子は思いもよらずその絵を盗み出す。 イボテンさんの存在の大きさと絵を描くことの本質に行き当たり、ひたすら絵を描くようになった鮎子は、ついに自分だけのモチーフを見つけることに……。 若い女性芸術家の視点で描く、濃厚でみずみずしい長編小説。 【著者略歴】 1955年東京生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。98年『皆月』で吉川英治文学新人賞を、『ゲルマニウムの夜』で芥川賞をそれぞれ受賞。2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞受賞。『眠り猫』『なで肩の狐』『鬱』『二進法の犬』『百万遍 青の時代』『私の庭 浅草篇』『たびを』『愛情』『錏娥哢た』『少年曲馬団』『ワルツ』など著書多数。
「まゆたん、今年の夏祭りも山車を引かないのか?」 中学で女官を卒業して以来、祭りは見ているだけだった真弓。今年はどうしようかと迷う真弓は、勇太を見て内心びっくり!!顔を顰め、なぜかとても嫌そうなのだ。けれど勇太は、理由を決して言ってはくれない──。 一方、花屋の龍も、恋人の明信の様子がおかしいことに気づく。誰より早く囃子隊の笛の稽古を始めているのに、明らかに酷く憂鬱そうで…!?
「謎解き」と「解かれざる神秘」芥川龍之介がこだわった二重の意味のミステリ。犯罪、探偵、風刺、幻想、神秘、そして心の声が現代仮名遣いによって甦る!
乃木坂46から初の小説家デビュー! 現役トップアイドルが、アイドルを目指すある女の子の10年間を描いた感動の青春小説! 高校1年生の東ゆうは「絶対にアイドルになる」ため、己に4箇条を課して高校生活を送っていた。 「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」……? 努力の末、ついに東西南北の“輝く星たち”を仲間にした東が、高校生活をかけて追いかけた夢の結末とは!? 「これは一つの青春の終わりから、次の青春へ向かう物語」 ーー中村文則 小説家 「時折あらわれる、鋭い“いじわる”表現が良い」 ーー羽田圭介 小説家
文久三年。やくざ者の蓮八は、苦界に沈んだ幼馴染み・八穂を救うため、やくざの賭場から大金をせしめた。報復として蓮八に差し向けられたのは、凄腕の殺し屋・夜汐。京で新選組の一員となり、身を隠すことにした蓮八だが、ある日八穂からの文を受け取る。帰ってきてほしい…その想いを読み取った蓮八は、組から脱走することを決意。土方や沖田からも追われながら、八穂の待つ小仏峠に向かうべく、必死で山中を進む。だが、夢で蓮八に語りかけ、折りに触れ彼を導くのは、命を狙っているはずの夜汐だったー。
それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在を SNS がつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。あいみょん、相澤いくえによるエッセイ&漫画を収録。