小説むすび | 2018年12月発売

2018年12月発売

この星の絵の具(上)この星の絵の具(上)

画家・小林正人による初の自伝小説。3部作の記念すべき1作目! 「これが小林くんの最初の画ね」。 何も描かれていない真っ白なキャンバスを目の前に、「せんせい」は小林青年にこう言った。 恋心をよせていた音楽のせんせい。 そのヌードを描く絶好の機会を得た小林青年であったが、初めて手にした油絵の具では、目の前に横たわる輝くばかりの裸体をキャンバスに写し取ることができなかった……。 1980〜90年代にかけて、国立のアトリエで描かれた宝石のような初期作品群。 《天使=絵画》《絵画=空》《天窓》《絵画の子》……、といった傑作の数々はいかにして生まれたのか。 小林正人にとって、「画を描くとは?」「絵画とは?」「愛とは?」……。 ひとりの青年が、画と出会い、画家として成長していく姿を、自伝小説の形式で語るビルディングスロマン3部作の第1作。時代を正直に生き、つかみとった“真実”だけが言葉となる。 伝説のキュレーター、ヤン・フートに才能を認められ、国際デビューをはたす直前までの「国立時代」を著した“青春編”。 一 絵画=空 1985-1986   そこに描くんじゃ、遅すぎる!(美しい四角)   周吾 二 太陽に描いてもらう/拾ったパネル   クリスマス ホワイト 1989-1990 三 空戦 1990-1991   キャンバスを張りながら手で描く!   空戰をする“或る場所”   オープニング (四月十七日)   春の嵐〜作品=音楽   五月三日の朝だった 四 昔々あるところに……   「小林くん、画、描いてみない?」   新品の絵の具セット   初めての画   先に寝たやつ相手を起こす(眠りと死) 五 絵画の子 1992-1996   新しい光   国分寺の画材屋   明るさについて   ライトくん   約四角、約平面のオイル・ウィズ・キャンバス!   トワイライトーーマジックアワー   一橋大学の木の下で   存在することで失墜していないもの    この星の絵の具ーーたくさんの明るさ 図版

現代の地獄への旅現代の地獄への旅

『タタール人の砂漠』以来、ブッツァーティ本は出れば必ず買って読む。すべて訳されて、読み尽くすその日までは。--山尾悠子 ミラノ地下鉄の工事現場で見つかった地獄への扉。地獄界の調査に訪れたジャーナリストが見たものは、一見すると現実のミラノとなんら変わらないような町だったが……。美しくサディスティックな女悪魔が案内役をつとめ、ジャーナリストでもあるブッツァーティ自身が語り手兼主人公となる「現代の地獄への旅」、神々しい静寂と詩情に満ちた夜の庭でくり広げられる生き物たちの死の狂宴「甘美な夜」、小悪魔的な若い娘への愛の虜になった中年男の哀しく恐ろしい運命を描いた「キルケー」など、日常世界の裂け目から立ち現れる幻想領域へ読者をいざなう15篇。 後期の作品には、それまでになかった新しいテーマや傾向も見出される。そのひとつが、恋愛、より正確に言えば、愛の妄執をテーマにした作品群であるが、そこには作者の実体験が色濃く反映している。(中略)恋愛体験以外にも、彼の人生にとってはかりしれないほど大きな、そしてかけがえのない存在であった母親や、あるいは人生の苦楽を共にした友人や同僚たちとの死別といった実人生に関わる要素が作品に取り上げられるようになるのも特徴である。そして、そうした傾向と並行しながら、作者自身が語り手や主人公として作中に登場したり、物語の背後に老いや死の意識が顔をのぞかせたりするようになってゆく。--「訳者あとがき」より 【収録作品】 卵 甘美な夜 目には目を 十八番ホール 自然の魔力 老人狩り キルケー 難問 公園での自殺 ヴェネツィア・ビエンナーレの夜の戦い 空き缶娘 庭の瘤 神出鬼没 二人の運転手 現代の地獄への旅

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