2018年発売
わたしはタレント猫のリリアン。一発OKカットだって簡単にできるわよ。それでも幾つかNGを出してるのは、編集のときに、そういう映像が意外とうまくはまるって知ってるからなの。人間が思ってるよりも、いろいろと考えてるものなのよ。(「女優のプライド」)。人生の山あり谷ありを、動物たちが優しく、時に厳しく見つめた八つの物語。
妻を失った警視庁元SPの小津良介に、元経済産業大臣の平泉凛太郎から突然の依頼が。政界での再起を期した大勝負を前に、息子の交友関係を調べてほしいという。先代から仕える辣腕の“執事”、平泉の元秘書である大崎靖からの情報提供を受けながら調査に乗り出した小津だったが…。衝撃のラスト!カズオ・イシグロ『日の名残り』へのオマージュを込めた傑作。
やり手の元商社マン・安積啓二郎は、兄に代わり、経営が傾き始めた実家のガラス工場の社長になった。当初は工場を売り払うつもりだった啓二郎だが、ガラス工芸作家の透子との出会いから、次第にガラスの魅力に目覚めてゆく。難問山積の工場再建に向け、彼が放つ起死回生の一手とは?ものづくりの現場に再起をかけ、悪戦苦闘する男の姿を描く長編企業小説。
本城麻里奈は格闘技の女子チャンピオン。その素顔は、女子高校生だ。格闘技好きの藤怜士は、応援している彼女がクラスメイトであることに気付く。そして、週に一度、試合の話をする関係になった。ある時、次の相手が、同門の九条亜美に決まったと喜んでいると、彼女から思いもよらないメールが届く…。最強の女子高校生格闘家・麻里奈登場!
日本ミステリー文学大賞新人賞が誕生してから二〇年。幅広く活躍を続ける受賞作家から、大石直紀、岡田秀文、新井政彦、望月諒子、嶺里俊介の五名が「街」をテーマに競作。普段、ぼんやりと見えている風景、行き交う人たちの何気ない行動…その中に数々の謎が潜んでいる。五つの味わい深い短編を収録した、珠玉のアンソロジー第一弾!
三年前、同心の塚越が殺された。塚越は大店を強請って大金をせしめていたが、その事実は封印された。十手持ちの辰三が姿を消して四年。茶問屋の後家が、芝で辰三に二十両を奪われたという。十手を受け継いでいる文治には、同心の栗山を殺した疑いが向けられる。栗山は、塚越の死には裏があると嗅ぎ回っていたのだ。辰三の行方、そしてすべての真相とは!?
裏長屋のお糸が、震えながら木戸番小屋に持ち込んだ血のついた古着。すわ殺しの手証ではと杢之助が古着の出処を探れば、困る者を救い助けると小伝馬町で評判の一家「稲妻屋」にたどり着く。稲妻屋が殺しにかかわる裏の稼業に手を染めていると見た杢之助。一方その動きを察知した一家の主・吉兵衛は米沢町に目を光らせ始め、一触即発、二人の静かな対決が始まる!
“かわせみの清兵衛”なる盗賊を追い、悪の巣窟と呼ばれる高津町に潜入した定町廻り同心の近藤信吾。ところが一月前からとんと姿を見せない。彼の消息を気に病む馴染みのお蔦や八朔たちが件の町に赴き、信吾を見つけ出した。ところが声をかけてもまるで他人のよう。咎人を騙すための芝居か、あるいは本当に“物忘れ”に…!?大法螺で事件を解決!痛快な時代シリーズ第六弾。
南町奉行所臨時廻り同心の山本市兵衛は、南町奉行・筒井伊賀守政憲の内与力・坂崎忠右衛門から江戸を騒がす輩について「密命」を受ける。商家のあるじを毒殺した下手人、金で人殺しを請け負う暗殺集団など、江戸の治安を乱す「悪」に、冴えた推理と名刀「石斬丸」で立ち向かう。めっぽう腕が立つが、困っている者には底抜けに優しい爺侍!期待の新シリーズ第一弾。
いまは船頭となった南町奉行所の元定町廻り同心、沢村伝次郎。女房千草の店の常連で気心の知れた畳職人の為七が何者かに殺された。悲痛な思いで町方の探索を手伝っていたところ、ある日、二人の侍に突然襲われる。下手人探しの一方、敵討ちの助を頼まれて悩んだ末、お人好しの伝次郎が下した決断は、はたして…。江戸の風情と人の情が心に響くシリーズ第十九弾。
だけど、大人ってなんだ、それに老人ってなんだ?歳を取った子どもだよ。老いるとは?長年つれそった夫婦の愛情とは?共産党時代のソ連への旅のなかで、ささいな誤解から生じた老年カップルの危機と和解。男女それぞれの語りが視点を交互に替えて展開される。老いをみつめた傑作小説。
ちいさな村に待望の春がきた。ラッキーは親友ソフィーの結婚式の準備に大忙し。ソフィーの結婚相手はラッキーの営むスープ店のシェフ。常連客をはじめ村じゅうの誰もが若い二人を祝福していた。そんななか、夜の森で行われた春の訪れを祝う集会で、女性がハーブで香り付けしたワインを飲んで急死してしまう。しかもこのハーブを用意したのはラッキーの祖父だった。さらにソフィーの実家近くの川で遺体が発見される。身元がわからなかったが、長年交流のなかったソフィーの兄かもしれない可能性が出てきた。自分のせいで人が死んでしまったのではないかと思い悩む祖父、家族を思って不安定になるソフィー。ラッキーはそんな二人を元気づけ、なんの心配もなく結婚式を挙げられることを目指すが!?
カイル公爵ヒュー・フィッツロイは、晩餐会に出席した真夜中の帰り道、暴漢に襲われた。そこに現れたのが「セントジャイルズの亡霊」と呼ばれる謎の人物。二本の剣を操る身軽な「亡霊」はヒューを助け、キスをしたかと思うと、たちまち姿を消した。「亡霊」は女性だった。自分を襲わせたのは誰なのか?晩餐会で目撃した密着のやりとりが関係しているのか?謎の秘密組織“混沌の王”が黒幕か?調査を進めるため、ヒューはセントジャイルズの情報屋の少年、アルフを呼び寄せる。ところがこのアルフこそ、「セントジャイルズの亡霊」だった。男装することで身を守って貧民窟で生き抜いてきた彼女は、正体がばれたのかと警戒しながら公爵に会いに行くのだが…。大人気“メイデン通り”シリーズ、新展開の第11巻!
幸せのレシピ。隠し味は、誰かを大切に想う気持ちー。うつくしい高台の街にある小さな洋菓子店で繰り広げられる、愛に満ちた家族の物語。さりげない日常の中に潜む幸せを掬い上げた、心温まる連作短篇集。
幼くして母と別れたルーシーは、一人で苦労しつつ育った。今はウエイトレスをしているけれど、稼げるお金はわずかだ。その日、彼女が緊張しながらコーヒーを運んだのは、かつての恋人、ギリシアでも有数の大富豪イアスだった。だが彼の目は、ルーシーへの怒りと軽蔑で燃えていた。ひょっとして…イアスは真実を知ったのだろうか?2年前、彼に捨てられたあと妊娠に気づき、一人出産したことを。悲しい衝撃とともに、ルーシーは悟った。つまり今後、私はイアスから逃げられないのだ。娘を取りあげられたくなければ。
「僕の妹の婚約者には、二度と会わないと約束したまえ」王族らしい高慢さをたたえ、カシムは嘲るような口調で言った。君のような女に妹の晴れ着を作らせるわけにはいかない、と。カシムの妹のドレスを縫うことになっているアンジェリクは、内気ながらその美貌ゆえにありもしない男性遍歴を噂されていた。私は彼の愛人じゃないー必死の抗弁は聞き入れられず、アンジェリクは気づくと力強い腕に抱きすくめられていた。「もう話すことは何もない。君の特技を見せてもらおうか」熱を帯びた褐色の瞳に絡めとられ、彼女は我知らず唇を開いた。
「子供の父親が僕だと言い続けるなら、君を名誉毀損で訴える」1年ぶりに会ったコルテスの瞳の冷たさに、エリンは凍りついた。迷うことなく純潔を捧げた魅惑の恋人はどこへ行ったの?私は彼への想いを胸に、必死に息子を産み育ててきたのに…。相変わらず強烈な彼の魅力に心乱されるエリンをよそに、コルテスはDNA鑑定で親子関係が証明されると母子をプライベートジェットでスペインの屋敷へ連れ去った。ひたむきに息子を愛するエリンの素顔を見ようともせず、金目当ての俗悪な女と決めつけたまま。
旅で訪れたギリシアの島で気品に満ちた男性と出会ったベス。浜辺で言葉を交わすうち強く惹かれ合い、めくるめく夜を過ごしたー連絡先も名字も告げず、ただ思い出だけを分かち合い、ふたりは別れた。やがて妊娠に気づいたベスは厳格な両親の不興を買って実家を出たが、数カ月後、仕事でロンドンにいる間に激痛に襲われ、破水してしまう。搬送先の病院で早産の赤ん坊を取り上げることになったのは、なんと、あの忘れえぬ一夜を共にした、おなかの子の父親エリアス!再会の衝撃に動揺するベスとは対照的に、彼はいたって冷静だ。生まれてくるのが我が子だと知ったら、彼はなんと言うかしら?しかし、エリアス側にもまた、重大な秘密があるのだった…。
貧しい家に生まれたクレアは幼少期にいじめられ、今は身寄りもない。苦学のすえ弁護士になるも、同僚の陰謀で失業してから孤島暮らしだ。ある日、嵐の海で溺れかけていた男性ラウールを助け、彼女はしだいに友情以上の気持ちを抱くようになっていった。そんな中、ラウールが衝撃の告白をする。「僕はさる国の皇太子なんだ」驚き、動転するクレアに、彼は一緒に王国へ来ないかと提案した。彼女は悲惨な身の上から、人前に出るのが怖く、内気だった。妃なんて務まるはずがない。つかのまの慰み者になるのがおちだわ。しかし、平民と皇太子の間に未来なんてないと知りつつも、彼を愛してしまったクレアはつかのまの夢に溺れていくのだった…。