2019年12月発売
御国入りで初めて見る故郷の美しさ、初めて知る兄弟の情。若殿は倒産阻止を決意するが、家臣共々の努力も焼け石に水。伝家の宝刀「お断り」で借金帳消しの不名誉を被るしかないのか。人も神様も入り乱れての金策に、果たして大団円なるかー
遠州白須賀宿に愛しいきぬを残し、加賀百万石の城下・金沢へ隠密の旅に出た佐久間音次郎。だが、金沢で落ち合うはずの公儀お庭番・村垣重秀は、何者かに捕らわれたという。北の大藩で何が起きているというのか。一方、お庭番の詮索を嫌い亡き者にしようと江戸表から放たれた二人の男が、音次郎たちに迫り来る…。実戦剣法東軍流の剣客が愛刀・左近国綱を手に悪を斬る!
井戸警部の夢の中に、六年前に自殺した身元不明の女性が現れた。その直後に起きた殺人事件の被害者は、夢に出てきた女性にそっくりだった(「死者は瓜二つ」)。直美は、何度も自殺を繰り返すが、偶然に救われていた。そんなとき、彼女の娘がひき逃げに遭い、死亡する。捜査に乗り出した久我山署の刑事たちは…(「死にたがる女」)。長年の経験を活かした刑事たちの推理が冴える傑作五篇。
先手鉄炮組与力・宇佐見伸介は、大川端での火盗改の捕物の首尾が、お忍びの将軍・吉宗の目に留まり、お目見えのうえ業物の鉄砲を拝領する栄誉に浴した。日々のお勤めに戻った伸介は、南町奉行所の笠原彦四郎を通じて秦野諌山という兵学者を知る。立て続けに浪人者が辻斬りに遭った事件と諌山の学塾との関わりが次第に浮かび上がり、不穏な陰謀の影が伸介の前に立ちはだかった。
腕は確かだが難物ばかりが揃う浅草東署。その署で任に当たる新海悟には、二人の親友がいる。テキ屋・瀬川藤太と政治家秘書・坂崎和馬だ。ある日、新海が「三度目の、正直」の言葉と共に撃たれた。犯人を追って奔走する瀬川と坂崎だったが、それぞれにヤクザの跡目、政治家として出馬という人生の選択が訪れる。そして、その選択が友を救う障壁となり…。シリーズ第三弾!書下し。
殺し屋に家族を殺され、独り生き残った少女は復讐を誓う。犯人にたどり着く手がかりはタンゴとシェイクスピア。東京とブエノスアイレスを舞台に、“ロミオ”と“ハムレット”の壮絶な闘いが幕を開ける。アルゼンチン軍事政権時代の暗黒の歴史を絡めた復讐劇はどこへ向かうのか?タンゴのリズムに乗せて破滅へとひた走る、切なく痛ましい殺し屋たちの宿命。圧巻のノンストップ・ノワール。
この世には勝者と敗者しかいない。あらゆる策を弄して自分は勝者になるー幼時に両親を失いアルバイト生活を送る早川吾郎は、新聞・テレビ界を牛耳る“マスコミの帝王”五味大造を叩き潰すことを決意する。手始めに五味の愛娘・奈美子に近付き、背後にうごめく疑惑を探ることに。手を変え品を変えて五味を罠にかける早川、反撃に転じる五味。手に汗握る死闘の行方は!謎とサスペンス満載の傑作長篇!初期代表作!
辻斬りまがいの所業を繰り返している同心がいる!?南町奉行所に投げ文が届いた。笠井半蔵は、旧知の内与力から依頼を受け、真相を探ることに。果たして、同心の目的とは?愛妻の制止を振り切り、事件に深入りする半蔵の前に強敵・三村兄弟が立ちはだかるー。一方、矢部定謙のもとには南町奉行の座を虎視眈々と狙う悪しき影が忍び寄っていた。時代剣戟の好評シリーズ第五弾。
大学で非常勤講師をしている小松は、新幹線で知り合った同い年の女性みどりに恋心を抱いたが、この先どう進めていいか分からない。呑み仲間の敏腕サラリーマン宇佐美のアドバイスで、ふたりは少しずつ距離を詰めていくのだが、そこにみどりの仕事を取り仕切るいかがわしい男、八重樫が現れて…。おっさん二人組の緩やかな友情のなかに、人生の切実さを見つめる傑作。
天才詩人アリス・ウォンが謎の存在“忌字禍”に倒れた。その怪物を滅ぼすために、七十三人を言葉の力で殺害した稀代の殺人者が、いま召還されるー星雲賞を受賞した表題作、同賞受賞の「海の指」他、全七編。最先端の想像力、五感に触れる官能性、現代SFが生んだ最高峰作品集。第38回日本SF大賞受賞。
高校時代に永遠の愛を約束したイフェメルとオビンゼ。アメリカ留学を目指す二人の前に、現実の壁が立ちはだかる。オビンゼと離れてアメリカに渡ったイフェメルを待っていたのは、階級、イデオロギー、人種で色分けされた、想像すらしたことのない世界だった。世界を魅了する物語作家が三つの大陸を舞台に描く傑作長篇。
人種問題を扱う先鋭的なブログの書き手として注目を集めるイフェメル。一方オビンゼは、イギリスからナイジェリアに帰郷し、不動産取引で巨万の富を得て、美しい妻や娘と優雅に暮らしている。別々の道を歩んだかつての恋人たちに、再会の時が訪れる。全米批評家協会賞受賞の長篇代表作、待望の文庫化。
ポーランドの南西部、国境地帯にあるとされる架空の村プラヴィエク。そこに暮らす人々の、ささやかでありつつかけがえのない日常が、ポーランドの20世紀を映しだすとともに、全世界の摂理を、宇宙的神秘をもかいま見させるー「プラヴィエクは宇宙の中心にある。」2018年ノーベル文学賞受賞作家トカルチュクの名を一躍、国際的なものにし、1989年以後に書かれた中東欧文学の最重要作品と評される傑作、待望の邦訳刊行。
第六地球宙域駐留軍所属の従軍複製僧兵で、住職階級の「HTF-OB-03」は蟲人との死力を尽くした宇宙戦の果て、力尽きようとしていた。死の世界を目前にしたその時、神の思し召しか仏の救いか、不思議な力が働いて、彼の体は見知らぬ世界へと転移していた。召喚主の少女ケイトから魔皇討伐への同行を求められる。異世界で出会ったけなげな少女の願いをかなえるべく、鍛錬を積んだ孤高の戦士は、己の肉体と武芸を駆使して、新たな道を突き進む!
迷宮の王となったミノタウロスに勝つため、英雄パンゼルの息子・ザーラは修行の旅に出た。道中ザーラは、女騎士ラウラの一団と出会い、冒険を共にすることになるが、ラウラの故郷である砂漠の都市ビア=ダルラでかつてないほどのすさまじい戦いに巻き込まれることになる。果たして、ザーラはサザードン迷宮に帰りつき、迷宮の王であるミノタウロスの首級を挙げることができるのか!?史上最高のダンジョンファンタジー、感動と驚愕のクライマックス!
そなたの罪を告白せい 恐ろしくもいとおしい極めつきの怪異と不思議。おちかに代わり、新たな聞き手は富次郎。心揺さぶる江戸怪談、新章突入ー宮部みゆきのライフワーク新たな(変わり百物語)の幕が開く!
広島三次藩に生まれた阿久利は、播磨赤穂藩の浅野内匠頭に輿入れし、大名火消しや勅使饗応、藩の政治に励む良人を支えてきた。が、内匠頭が高家筆頭・吉良上野介の「ある依頼」を断り、さらに五代将軍徳川綱吉の側近・柳沢出羽守から「ある事件」で不興を買ったことで、平穏な暮らしに目に見えない罅が入りはじめるー。政務多忙に加え、執拗な吉良の嫌がらせに、やがて身心を病んでゆき、つかえを発症した内匠頭は、ついに江戸城中で刃傷に及んでしまう。良人の即日切腹を聞かされながらも、家臣へ気丈に差配する阿久利に、堀部弥兵衛・安兵衛親子、片岡源五右衛門、磯貝十郎左衛門らは血涙を流す。吉良邸討ち入りまで、赤穂浪士の希望となった阿久利の半生を描く。
舞台は横浜。志村亮子は才気と実行力を買われ孤児院「双葉園」の運営に奔走する。そこへアメリカ人実業家、文芸評論家、婦人運動家と三流プロ野球選手など、個性的な人物が集まりドタバタ劇が始まる。一方、夫の志村四方吉は戦争による虚脱症で無為の生活を送っているように見えたが…。戦後の社会問題を巧みに取り込み、鋭い批評性と高い諧謔性で楽しませる傑作。