2019年6月27日発売
ーいいか、君、この世界はまちがってるんだぜ…。第二次世界戦争で無条件降伏したはずの日本。しかし、少年の手には銃が携えられ、本土抗戦が繰り広げられていた。瀕死の重傷を負った彼の前に、美しい金髪を持つ男が現れた。あと5時間でこの世界は消滅するという。時空を超えて変革を図る人物が犯した罪とはー。著者が生涯追い求めたテーマがここに!表題作を含む短編2編、ショートショート集(「ある生き物の記録」)を収録。
刑務所を出て、誰とも関わらずひっそり生きていくつもりで住み始めた、変わった名前の古びた木造アパート。出会ったのは訳ありな大家と、世の中から落第した隣人たちだった。友達でも家族でもない。でも、孤独ではない。“ひとり”が当たり前になった時代に、静かに寄り添って生き抜く人々の物語。
一一六〇年、平治の乱の後、平清盛はなぜ、源氏の嫡男・頼朝を助命したのか。平氏滅亡後、兄の不興を買い、非業の死を遂げた源義経は怨霊になったのか。二つの謎が解けるとき、源氏と平氏の真の姿が現れる!
男として生まれた。でも、きれいな女の人になりたいなー。蔑みの視線ー。親も先生も、誰に何を言われても関係ない。「どうせなるのなら、この世にないものにおなりよ」その言葉が、糧になった。生まれたからには、自分の生きたいように、生きてやる。リスペクトがあるからこそ、想像力のリミッターを解除できた。事実と虚構の化学反応が生み出す、過酷で、美しく、孤独で、切なく、劇的で、潔く、笑えて、泣ける、ザッツ・エンターテインメント!
大阪南部のある一族に持ち上がった縁談を軸に、わがままな母を甘やかす本家の祖父母、学生運動をしていた婿養子の父、穏やかで優しい精神を病んだ叔母、因襲的な親戚の姿を、河内弁で幼女の視点から鮮やかに描き出す。三島由紀夫賞受賞作にして新潮新人賞受賞の驚くべきデビュー作。
20世紀初頭、幼くして母を亡くし、アルプスの農場主のもと過酷な労働をしいられて育ったアンドレアス・エッガーはある日、雪山で瀕死のヤギ飼いと出会い、「死ぬときには氷の女に出会う」と告げられるー。生まれてはじめての恋、山肌に燃える文字で刻まれた愛の言葉。危険と背中合わせのロープウェイ建設事業に汗を流す、つつましくも幸せな日々に起こったある晩の雪崩。そして、戦争を伝えるラジオ。時代の荒波にもまれ、誰に知られることもなく生きた男の生涯。その人生を織りなす瞬くような時間。恩寵に満ちた心ゆすぶられる物語。
父がある事件で逮捕され、中学二年生の悠馬(ゆうま)は、いじめられるようになった。父の無実が明らかになっても、いじめは続き、学校での居場所はない。そんな悠馬の唯一の理解者が、転校生の暁斗(あきと)だった。ある日、悠馬は暁斗から「お父さんの事件の真犯人を捕まえられるんじゃないか」と提案され、二人は事件を調べ始める。ところが、悠馬たちを謎の男たちが追い続ける。はたして悠馬は真相にたどり着けるのか!?
日常の中にも、一瞬先のカタストロフ。自我の輪郭があやふやなぼくは、愛と生活を取り戻せるのだろうか。交錯する優しい感情。新しい関係の萌芽を描く、パラレル私小説3部作。芥川賞作家の新境地。
夜更けの蔵前で、どくろが長い髪を曳いて舞い飛ぶという奇怪な出来事が!!さらに、小石川の寺で墓荒らしがあり、若い娘の首が盗まれていた!?命を削るようにして妖を癒やす十七娘・お光を、なるべく、怪事件に関わらせまいとする同心・和泉京之介だが…。娘陰陽師・長谷部透流の悲しく壮絶な過去とは!?そして、京之介たちの前に、最強最悪の“敵”が立ちはだかる!!怪奇な謎を追う同心と可憐な娘との恋心を絡めて好評!!大人気シリーズ第五弾の登場!!
時は文久二年。旅籠「つばくろ屋」の跡取りとして生まれた高弥は、生家を出て力試しをしたいと考えていた。母である佐久の後押しもあり、伝手を頼りに東海道品川宿の旅籠で修業を積むことになったのだが、道中、請状を失くし、道にも迷ってしまう。そしてどうにか辿り着いた修業先の「あやめ屋」は、薄汚れた活気のない宿でー美味しい料理と真心尽くしのもてなしが、人の心を変えていく。さびれたお宿の立て直し奮闘記。
過酷な冬を越すために人間が冬眠する世界での物語。ふとした偶然からチャーリーは冬季取締官に志願する。冬季取締官は眠らずに盗賊や冬の魔物に対処する過酷な仕事だ。無事取締官になったチャーリーは、冬眠に失敗しナイトウォーカーになった女性を別の地区まで送り届けることに。ナイトウォーカーは普段はおとなしいが、空腹になるとひとを襲うちょっぴり危険な存在だ。途中で思わぬ事件に巻き込まれながらも、“セクター12”にようやくたどり着いたチャーリーは、夢の中の夏の楽園で、美しいベルギッタと出逢うことになるのだった。二度と還らぬあの夏の砂浜で。
“セクター12”に到着したチャーリーは、ナイトウォーカーを食べると言われている局長のトッカータをはじめとして変人ばかりの冬季取締局のメンバーたちと働くことに。さらに“セクター12”で噂される、“伝染性の青いビュイックの夢”を見た彼は冬眠薬モルフェノックスをめぐる謎と奇妙な事件に巻き込まれてゆく。その夢は見たひとを殺すというのだが、何人ものひとが同じ夢を見るなんてことがありえるのだろうか?そしてチャーリーはベルギッタを守ることができるのだろうか?奇才ジャスパー・フォードによる、厳しい冬の中の切ない夏の物語。
私たちの内側はどうしてこんなにも、一寸先も見えない闇なのだろう。まるで誰も住む者のいない、がらんどうの木の洞のように(「ストロベリー・フィールド」)。私はその明かりが怖くてぎゅっと目を閉じた。そのころ、闇より怖いのは光だったから(「夏の正午」)。先輩の浅黒い手に、白くてもろい雪が静かに、そして永遠のごとくゆっくりと舞い落ちた(「初恋」)。光と闇、生と死。心は彷徨いながら揺れ動く。初邦訳作家の十の短編。