2020年10月15日発売
古く蝮を「くちばみ」と呼んだ。鋭い毒牙を持つその長虫は、親の腹を食い破って生まれるというー。時は戦国、下剋上の世。母に見捨てられ、父の油売りを手伝い、どん底から這い上がった峯丸は、いつしか国盗りの野望を抱くようになる。狙うは天下の要・美濃国。調略と誑かしで政敵を次々に抹殺し、主君の土岐頼芸をも追放する。だが、その頃、息子義龍の胸中には、父への嫉妬と憎悪が渦巻いていた…。「美農の蝮」と畏れられた乱世の巨魁・斎藤道三が義龍に命を絶たれるまでの父子の相克を、芥川賞作家・花村萬月が描ききる。戦国大河小説の最高傑作、ついに誕生!!
新設された東京スペリオール・バレエ団。旗揚げ公演『眠れる森の美女』を“バレエ界の至宝”シルヴィア・ミハイロワが演出することになるが、主役に決まった客演のユリカ・アサヒナは我が侭で、嫉妬と反感から人間関係は軋んでいく。そして、悪の精“カラボス”を名乗る人物から不気味な脅迫状が届き、不幸な連続殺人事件が起きるー。カラボストは何者なのか?花音は事件の真相を追う。嫉妬と愛憎渦巻くサスペンス。
元・伝説のレコード店主、いまは哀愁のカウチサーファー。家賃滞納でアパルトマンを追い出された五十路の男、ヴェルノン・シュビュテックスは、輝かしき90年代に彼の店に集っていた旧友たちの家を渡り歩く。かつてはバンドマンやその取り巻きとして青春を謳歌していたが、いまは家族の問題や病、老いに直面している仲間たち。それぞれの心に、まだ音楽は響いているのか。そして、人々のあいだを転がっていくヴェルノンの行きつく先はー。ルノードー賞受賞のフランス人作家が現代フランスの市井で生きる人々をおかしみをもって描く文芸三部作、開幕。
自国第一主義による地球温暖化は終局を迎え、人類の生存域が北欧地域に限られた2060年代。グーグルによる個人データの完全な可視化は、人間から共感という能力を失わせていた。そんななか、アイスランドで暮らすトランスパランス(透明性)社の元社長が、個人データを人工的な体に移植し、不老不死を可能とする“エンドレス・プログラム”の準備を進めていた。それは、“考えること”を放棄した人類への最後の抵抗にして、ささやかな願いだったー仏のドゥ・マゴ賞受賞作家が放つ、この現在の先にある、不可避な未来への警告。
妹アニーに起きた忌わしい出来事が再び起こる。そう告げる不吉なメールでぼくは故郷に呼び戻された。ぼくの前任の教師は、「息子じゃない」という血文字を残して息子を惨殺したのち、自殺したという。その血文字にこめられた真意を、ぼくは知っている。8歳のアニーが姿を消したのは、25年前、ぼくが友人たちとともに探検に行った鉱山跡の洞窟でのことだった。あの夜、あそこで恐ろしいことが起きた。そしてそのあとアニーにもっと恐ろしいことが起きたのだ…。過去の忌まわしい記憶と、現在の忌まわしい事件。友人の不可解な自殺。惨劇の家で起こる怪異。封印した恐ろしい記憶。それらがすべて明らかとなり、ひとつになるとき、恐怖に満ちた真相が姿をあらわす!ホラーの恐怖とミステリの驚愕を見事に融合させた新鋭の傑作ホラー・ミステリ。
不結論馬は大学院で建築史を研究している学生である。論馬は高校時代に義兄の秀一と共に旅先で不可思議な事件に遭遇する。それから九年経った今、論馬を訪ねてきた女性歴史学者、由布院蘆花との出会いをきっかけに、再び奇妙な事件に巻き込まれていく。鍾乳洞内で発見された首無し死体、新雪に覆われて密室状態になったログハウス内での大量殺人、誰もいない場所での謎の発火。それらの事件に向き合うことで、「世界七不思議」という歴史的建造物の謎を解明することとなる。
大勢の人で賑わうクリスマスイブの新宿。通称“ギンイチ”こと銀座第一消防署の消防士・神谷夏美は恋人や同僚らが待つ店へと急いでいた。ところが、新宿地下街・サンズロードで火災発生との通報が入り、ギンイチにも特命出場の指令が出る。夏美らは管轄の消防署とともに消火作業を開始するが、地下街は延焼が拡大し人々は大パニック、出入り口は黒煙で封鎖され、負傷者が続出する。さらに地下街の特設ブースに陳列された電化製品にマグネシウムが含まれていることが判明。マグネシウムに火が燃え移り爆発すれば新宿駅近辺は壊滅、何万人もの死傷者が出る。絶対絶命のギンイチは、ある秘策を打ち立て地下へ潜るが…。何があっても必ず市民の命を守るー消防士・神谷夏美シリーズ三部作、完結!焔に呑まれるダンジョンで闘う戦士を描く、ノンストップ・パニック小説!
「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する三十六歳。近頃、何もかもうまくいかない。男性器も心も折れてしまい、おまけに仕事も絶不調ー通称“川の家”と呼ばれる高台にある家に住む、夫婦への立ち退き交渉が難航していたのだ。夫人によれば、立ち退きを強く拒否しているのは夫の方らしいのだが…。夫人の協力を得て交渉を続けるうちに、やがて思いもよらない事実が判明しー(表題作)。この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまでーままならぬ心と体を描いた美しくも不穏な、極上の10の物語。
駆け出しの貧乏ライター湾沢陸男。この男の行くところに、奇っ怪な事件あり。癖の強すぎるスタッフが集うウェブマガジン『アウターQ』。エンタメサイトのはずなのに引き寄せてしまう、ホンモノを…。ホラー界の俊英が描く、あなたのヨミを必ず裏切る新感覚ミステリー!
寿永二年(一一八三)、木曾義仲により、京都六波羅を追われ西へと落ちた平家一門。同年冬、清盛の弟・頼盛の姿は鎌倉にあった。正妻の子として、一時は清盛に代わる平家の棟梁と期待された頼盛は、なぜ一門を離れたのか。偉大な兄をひとえに支え続け、決して野心を表にすることのなかった頼盛と、兄があえて殺さず流罪とした宿敵・源頼朝を結ぶ因縁とは?後白河院、白拍子、仮面の童子蜻蛉…異能のものが、平氏の世の終わりに演じた役割は?歴史の急変期における英雄の生き様と、たえまない無常の流れを記す幻想の歴史小説。不世出の成功者を新たな視線から描く。
女性関係にだらしない婚約者から、長きにわたり苦しめられてきた子爵令嬢ティーナ。けれど婚約を解消することは難しく、このまま心を殺して生きていくしかないと諦めていた折ー偶然、出会った男性が彼女に救いの手を差し伸べてくれる。隣国の騎士で公爵家の嫡男でもあるという彼は、見目麗しく頭脳明晰で、非の打ち所がない。住む世界が違いすぎる彼だが、どうやらティーナのことを以前から知っているようで…虐げられてきた薄幸令嬢と謎めいた騎士の運命の恋物語。
誰にも負けたことがなかった少年、立脇如水。大関・大破山を父に持ち、生まれながらに強かった。立脇はなぜ北辰館の門を叩くことになったのか?なぜ父を殺した葵文吾と闘っているのか?カイザー武藤、マンモス平田、姫川勉、京野京介ー万博コロセウムで繰り広げられる死闘の果てに、漢たちの真実が見えてくる。この大会にあたって「闘人市場」を主催する道田薫は、松尾象山と巽真に「翁九心と闘りたくないかね」と話を持ちかけていた。そんな中、次の試合で丹波文七と闘う予定だった梅川丈次の前に、翁九心が現れた。いったい、何のためにー?
弟子に殺され、200年後の世界に生まれ変わった祝福の魔女アリシア。弟子は、アリシアを殺した呪いで不老不死になっていて…えっ!?死の間際まで弟子の幸せを願ってはいたけれど、呪いなんてかけてません!呪いを解くため、弟子に会いに行ったはいいけれど、この200年で全く心を開いてくれなくなっていて…。これは「好感度上げ作戦」決行です!!書き下ろし番外編が豪華2本立て!!「小説家になろう」発・すれ違い続けた魔女と弟子の200年越しラブコメディ。
ある日、高校に迷い込んだ子犬。生徒と学校生活を送ってゆくなかで、その瞳に映ったものとはー。最後の共通一次。自分の全力をぶつけようと決心する。18の本気。鈴鹿でアイルトン・セナの激走に心通わせる二人。18の友情。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件を通し、進路の舵を切る。18の決意。スピッツ「スカーレット」を胸に、新たな世界へ。18の出発。ノストラダムスの大予言。世界が滅亡するなら、先生はどうする?18の恋…12年間、高校で暮らした犬、コーシローが触れた18歳の想いー。昭和から平成、そして令和へ。いつの時代も変わらぬ青春のきらめきや切なさを描いた、著者最高傑作!
通学中に交通事故に遭った私は、乙女ゲームのモブ令嬢リリアンに転生したのだが…乙女ゲームのラスボス兼攻略対象でもある、婚約者オーウェン公爵に『地雷を踏まれた』という理由で1年後に殺されてしまう。地雷の内容が全く思い出せないので、地雷を踏んでも殺されないように全力で媚びるしかない!と、オーウェン様への必死の媚び媚び生活を始めたはずが、逆に溺愛されているようでー!?「小説家になろう」発。書き下ろし番外編も収録!!
大好きだった家族や王太子に騙され、裏切られ、処刑された公爵令嬢シェリー。気づけば6歳の姿に時戻りし、再び王太子の婚約者にされていた。今世こそは破滅回避するために、彼女を溺愛する親子冒険者と逃走中!しかし、道中で訪れた村の様子が何やらおかしくてー!?最強の仲間達と共に、村の事件解決を引き受けるのだが…。書き下ろし番外編「ある日の休日」〜コハク視点〜を収録!!!!「小説家になろう」発!!仲間の溺愛っぷりも加熱!?破滅回避逃亡劇、第二巻!
突然、やり込みまくったRPGゲーム世界に放り込まれたオタク女子大生・榎島未結。彼女は、呟いたゲーム知識を“予言”に勘違いされ、覇王・アーダルベルトに無理やり参謀にされてしまう!アーダルベルトは確かにイケメン獅子獣人だし推しだし、「こうなったら死亡フラグをへし折ってやる!」ところが、城で反感を買い刺された未結は、目を覚ますと現代日本の病院にいて…?
「夫は必ず戻ってきます」。彰義隊に入った夫が金が必要になり妻・けいを質屋に預ける。けいは夫を信じ、帰りを待っている…。エンターテインメント性を高く評価された時代小説の新しい波!第12回角川春樹小説賞受賞作。