2020年11月26日発売
時は2028年。第三次世界大戦により滅亡の危機に瀕した日本人。その数少ない生き残りの少年・ヒカルはある日避難先のノルウェー・ヴェストヴォーゴイで、一冊の画集を手にする。その中にあったKという画家による“塔と女三部作”では、日本のカタストロフがすでに2000年前後から予言されていた。一方、2015年の東京で、「黒淵教授」シリーズ最新作の担当になった新米編集者の未歩は、作者のスランプが過去の三角関係にあると知り、二日酔いで夢現のまま、その友人画家・Kの自宅へ向かう。だが、そこで待っていたのはKの首なし死体だったー!過去と未来、現実と創作世界が錯綜する先に待ち受ける結末とは?
迷信の国へ、ようこそ。スピリチュアルと科学が逆転した、心の絆が生み出すユートピア・ニッポン!『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した期待の星による連作小説集。結婚式場に勤める星屋は、38度の熱が続いていた。解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。(『三十八度通り』)。真弓の母は、全身が末期の蟠りで病院のベッドに横になっていた。すぐに退院させられ、蟠りを「るん(笑)」と名づける治療法を始めるがー。(『千羽びらき』)。真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった。(『猫の舌と宇宙耳』)。奇才・酉島伝法がはじめて人間を主人公にした作品集!
13歳で故郷を離れて流浪し、帰還して苦難の末にモンゴル族を統一したテムジンは、ついに“チンギス・カン”を名乗る。モンゴル族を統一し、さらにケレイト王国を滅ぼしたテムジンは、弟のカサル、テムゲ、長男ジョチらに出動を命じて、タヤン・カンが統べるナイマン王国との戦いを進める。そのナイマン王国の大軍の中に、ジャムカがホーロイ、サーラルとともに千五百騎で潜んでいた。崩れたナイマン軍を見届けて馬首を回したテムジンは、そこにあるはずのない旗ー玄旗を見る。ジャムカの強烈な斬撃がテムジンを襲ったー。
スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は…東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づくー。
最高の出来事も、最悪の思い出も。生まれるのも、壊されるのも。人生の分かれ道は、たいてい夜に姿を見せる。ボクサー、タクシー運転手、警察官、高校教師。その夜、四人の男女は、闇に侵されたー。人間の強さと弱さを繊細な視線で見つめ、生まれた、忘れられない物語。
弁護士の澤田花が教育を担当することになった修習生の藤掛。その派手な容姿に引っかかる花だったが、仕事をする内、彼の意外な才能を発見する(「第一章 人は見かけによらない」)。十代で司法試験を突破した天才少年・柳が検察修習にやってきた。周囲が浮き足立つ中、柳の過去と重なるような事件の裁判が始まりー(「第三章 うつくしい名前」)。全四章。
疫病が猛威をふるい、死臭でむせかえる平安朝の洛中ー一生消えぬ傷を負い、人と世を呪詛しながらしかし、イチは変わりかけていた。空也上人、命拾い、救った命、身寄りをなくした身重のおなご…。NHKドラマ『雲霧仁左衛門』ほか執筆。着実にキャリアを重ねた脚本家が満を持して挑み、心血を注いだ長篇小説。京都文学賞受賞作。
交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せかけて殺害した牧村花音。平凡な容姿の彼女に、なぜ男たちは騙されたのか。友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介は、真相を探るべく花音に近づくが…彼女の裁判は“花音劇場”と化し、傍聴に通う女性たちは「毒っ子倶楽部」を結成。花音は果たして、毒婦か?聖女か?裁判が辿り着く驚きの結末とは。「○○者」シリーズ6年ぶりの最新刊!
この扉の向こうに、秘密を抱えた旅人たちがいる。豪華寝台列車「ななつ星」の旅から生まれた5編の物語と2つの随想。ゆっくりと流れる時間の中、人は、それまで口にしたことのない言葉を語りだす。
大きな体で大酒飲みの荒くれ者で、長屋や近隣の住民たちから嫌われていた通称「らくだ」。ある日、らくだの兄貴分、半次が長屋を訪ねると、らくだが死んでいた。半次はその弔いの金を工面するため、たまたま通りかかったくず屋の久六を呼び止める。らくだの死を知らされ、驚く久六だったが、半次に脅され、長屋の月番や大家に金品要求の言伝てを行うはめに。出し渋るところには、らくだの死骸を運んで「かんかんのう」を踊らせ、ついには香典や物品をせしめる。やがて、久六はらくだの母親のもとに使いに出かけるがー複雑な滑稽咄を人情咄として再構成、シリーズ第3弾!