小説むすび | 2020年12月発売

2020年12月発売

いかさま師ノリスいかさま師ノリス

恐怖はいつの間にか、もうそこに。  1930年代、ワイマール文化が咲き誇るベルリン。語り手ウィリアムはアーサー・ノリスと知り合った。立派な身なりをした教養人で貿易業をしているという。ノリスを介しウィリアムは癖のある面々と出会う。ノリスは贅沢な乱痴気生活をしては困窮して姿を消し、次に現われたときには大金を手にしている。彼はまた、多くのベルリン市民と同じように政治にも関心を見せた。ある時、ウィリアムは彼に代わり、取引先に知り合いの男爵を引き合わせるよう頼まれる。だが実は、ノリスの取引先とはさる情報機関だった……。  ノリスの滑稽な言動には毎回笑わせられるが、本書は単純な喜劇に終わらず、奥深い。共産党やナチスに対する市民の熱狂が渦巻いていた当時、ベルリンに暮らしていた著者イシャウッドは、1935年に本書を発表した。ナチスによる敵対者への残虐な弾圧が広く知られる前にその危うさを描きこんだ鋭さには驚くばかり。熱狂の影で進む恐怖はいつ、どこの国でも起こりうる。いま我々もノリスを笑っていられるだろうかと背筋が寒くなる。  ナチス台頭前夜の狂乱の日々を鋭い洞察力で描く、イシャウッドの予見的傑作、新訳で登場。

ACTT PROJECTACTT PROJECT

出版社

文源庫

発売日

2020年12月2日 発売

現生人類の文明破局が予感されながらも、科学文明に依存しなければ人類は存続し得ないこの時代。ポスト対テロ戦争後に始まった文明を消す武力紛争が2013年極東地域の日本で開幕する。1813年から始まった「グレート・ゲーム(中央アジアの覇権争い)」は、世紀と国を超え全人類を巻き込む世界大戦に発展する局面を迎える。その発端となる武力闘争が突如日本で開幕した。この物語は、この武力闘争で国家存続に身命を賭する兵士たちの葛藤を綴った黙示録。 主人公「東松征士郎」は選ばれた戦士としての「血脈と才能」を持ち、近年の世界戦争で戦場ヒエラルキーの頂点として君臨していた。ある夜、パキスタンにおける友軍機の誤爆により重傷を負った東松はパールシー(インドに住むゾロアスター教の信者)の美女「アネーシャ」に救済される。幸福も束の間、東松の子を身篭ったアネーシャは生まれたばかりの子供を残し先立つ。 一人娘「ゆり愛」を連れ、パキスタンとインドの国境を抜け帰国した東松は不治の病を発症してしまう。自分の残された命がわずかしかないことを悟った東松は、最愛の娘を施設に預け、ただ一人、都会の片隅で人生最後のときを待っていた。 ある日、東松は謎の組織「POC」に誘拐され「死なない戦士」になるための遺伝子改変手術を受け、日本で勃発した武力紛争に再び参戦する。遺伝子変換手術により過去の記憶を全て失くした東松征士郎の拠り所はその細胞が持つ「記憶」でしかなかった。東松はかつて最強の兵士として名を馳せた時代の記憶を取り戻し「大切なもの」を取り戻すことはできるのか。

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