2020年5月発売
ジェイムは二十歳そこそこでブレークと結婚した。年上で裕福、しかもセクシーで優しい夫は、彼女のすべてだった。だがまだ年若く世慣れていないジェイムに結婚は早すぎたのか、忙しい夫は不在が多く、ちらつく女性の影にも不安をあおられ、愛されている自信がなくなった彼女は、ついに家を飛び出してしまう。ほどなくして妊娠がわかり、ジェイムは夫に手紙で知らせた。きっと彼は私とこの子を迎えに来てくれるーそう期待したが、なんと夫からの返事はなく、ジェイムは絶望した。3年後。ジェイムの近隣の屋敷に、ふらりと夫が移り住んできた。いったい何が目的なの?娘を見たら、彼はなんて言うだろう…。
せっかくのパーティなのに、エドニーは少しも楽しめなかった。エスコート役を頼んだ知人にしつこく言い寄られ、あまり事を荒立てないよう拒絶するのに四苦八苦していた。とうとう強引にキスされそうになったとき、どこからともなく現れた男性がエドニーを救い出してくれた。長身で黒い髪、黒い目、洗練された雰囲気ー彼はエドニーを家へ送り届けると、慰めるような優しいキスをした。なんだか夢みたいだったわ…。翌週、転職先のオフィスで、エドニーは思いがけずあの男性の名前を知った。サヴィル・クレイソーンー彼こそ、エドニーの新しいボスだった。
美容クリニックに勤める医師の久乃は、ある日、故郷の同級生・八重子の娘が亡くなったことを知る。母の作るドーナツが大好物で、性格の明るい人気者だったという少女に何が起きたのかー。“美容整形”をテーマに、容姿をめぐる固定観念をあぶりだす心理ミステリ長編!
時の流れに負けない遺跡に「生」を見いだす かつての恋人を自殺に追いやってしまった罪の思いを一身に背負い、北海道の寒村で禁欲生活を続けていた矢口忍。だが、友人の誘いで赴いたシリアで、生と死が隣り合わせの砂漠の生活や、砂に埋もれそうになってもなお輝きを放つ遺跡を目の当たりにし、「生きる」ことの意味を捉え直そうとしていた。そんなとき、矢口はフランスの発掘隊に参加していた日本人女性、鬼塚しのぶと出会う。どことなくかつての恋人を彷彿とさせる彼女には、ある秘密があったーー。 1976〜77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」「生きるとは何か」を鋭く、深く問う傑作長編小説の下巻。
しがない画学生の小田孝吉、アメリカでフランス語の講師になることを夢見て貧しい生活に耐えている高松ユキ子、計理士の勉強をしている大学生・佐竹潔、ユキ子を陰で支えている富豪の鹿島与兵衛。なんの落ち度もない4人の日本人が、フランスで疑獄事件や左翼・右翼の権力闘争に巻き込まれ、命の危機にさらされるー。小田が深夜の地下鉄で、怪しい男たちが死体を運ぶところを見てしまったところから、物語は息をもつかせないスピードで疾走していく。実際にあった“スタヴィスキー事件”を題材に、鬼才・久生十蘭が繰り広げるアドベンチャーストーリー。
「ベトナム人?お母さんが?」娘、二十歳の夏。家族の秘密を伝える日がやってきたー『るり姉』『明日の食卓』家族小説の名手が70年代末に来日したボートピープル一家のその後を描く新境地。
空前の怪談会ブームのいま、よみがえる大いなる原点の書! アニメや舞台化でも話題を呼ぶ、不朽の文豪・泉鏡花 彼が関わった春陽堂系の三大「怪談会」を、初出時の紙面を復刻することで完全再現 巻頭には、鏡花や怪談会に造詣の深い京極夏彦氏のインタビューも掲載 令和のおばけずき読者、待望かつ必見の一冊! 〜怪談会とは〜 大の「おばけずき」でもあった泉鏡花は、柳田國男、喜多村緑郎、鏑木清方、芥川龍之介、長谷川時雨、水野葉舟、平山蘆江ら、同好の文人墨客名優らと相つどい、夜を徹した「百物語怪談会」に興じることを好んだ。 その怪談会は、春陽堂発刊の「新小説」誌上の特集企画に、あるいは社員のひとり熊田茂八が別社名で刊行した名著『怪談会』に結実している。 【口絵】鏡花『怪談会』序(直筆草稿)/『怪談会』初刊本書影 【インタビュー】京極夏彦、鏡花を語る 【影印】『怪談会』(熊田茂八編、柏舎書楼、明治四十二年十月刊行) 序 泉鏡花 二面の筝・雪の透く袖・狸問答 鈴木鼓村 白い蝶 岡田三郎助 赤剥の顔・椽の下の信女 岡田八千代 頭上の響・鬼無菊・闥の響・千ケ寺詣 北村四海 女の膝・因果・今戸狐 小山内薫 一寸怪 泉鏡花 藤守座の怪・船中の幻覚 田島金次郎 糸繰沼・人魂火 長谷川時雨 深夜の電鈴 神林周道 一つ蛍・幽霊の写生 鏑木清方 お山へ行く 鏑木清方夫人 巳之頭・沖の姿・北から北 市川團子 声がした・曇る鏡・天凹老爺 高崎春月 感応・大叫喚・死体室 岩村透 九畳敷・車上の幽魂・嗄れ声 鰭崎英朋 暗夜の白髪 沼田一雅 雲つく人・執着 沼田一雅夫人 テレパシー・月夜峠 水野葉舟 薄どろどろ 尾上梅幸 怪物屋敷・一つ枕・青銅鬼 柳川春葉 子供の霊・死神 岡崎雪聲 海異記・疫鬼 岩永花仙 おばけと鏡花と春陽堂 東雅夫 【影印】「怪談百物語」(「新小説」明治四十四年十二月号掲載) 己が命の早使 柳田國男 夜釣の怪 池田輝方 「ああしんど」 池田蕉園 □本居士 本田親二 流灌頂 磯萍水 弓町の家 すみや主人 火の玉と割符 宮崎一雨 怨念 関天園 浅黄鹿の子 柴田つる 不生女の乳 富士松 加賀太夫 怪談の話し方 きよし 大きな怪物 平井金三 私を悩ました妖怪 坂東薪左衛門 枯尾花 関根黙庵 取り交ぜて 水野葉舟 怪談六つ 安部村羊 死んだ女房に生写し 浅草 土井ぎん 見た話、聞た話 石橋臥波 白い光と上野の鐘 沼田一雅 不吉の音と学士会院の鐘 岩村透 菜の花物語 児玉花外 鰻 泉鏡花 “鏡花会?とその周辺 穴倉玉日 【影印】「怪談会」(「新小説」大正十三年四月号/五月号) 座談会 馬場孤蝶/久保田万太郎/小杉未醒/平山蘆江/畑耕一/澤田撫松/芥川龍之介/泉鏡花/白井喬二/長谷川伸/長田秀雄/斎藤龍太郎/菊池寛 【附録】吉原で怪談会 (「国民新聞」明治四十二年八月二十六日木曜日) 遠野の奇聞 泉鏡花(「新小説」明治四十三年九月/十一月号) 父の怪談 岡本綺堂(「新小説」大正十三年六月号) 編者あとがき 東雅夫
警視庁捜査一課の市橋大樹は、入院中の祖父・勝之介から、青春時代を過ごした呉と広島の写真を撮ってきてくれと頼まれ現地を訪れる。だが、宿泊した旅館で勝之介の名刺を持った男が殺害される。その後、勝之介も急な死を遂げる。大樹は十津川警部と亀井とともに呉と広島に向かう。そこで、勝之介の新たな一面が浮かび上がる。
平和な地方都市が孕む悪意と謎。レイクビューの"シャーロック・ホームズ"が全てを見透かす大いなる叡智で難事件を解き明かす! まえがき ハンティング日和 ミス・ミリントンの黒いあざ シャーロック伯父さん どこからともなく カーブボールの殺人 中の男 ヘクターの本気 レイクビューの怪物 我々が殺す番 訳者あとがき 解題 荻巣康紀
看護婦探偵ヒルダ・アダムス初登場! 謎の失踪事件を追い、マーチ家に潜入したヒルダが孤軍奮闘! 初めての事件を解決に導けるのか? バックルの付いたバッグ 鍵のかかったドア 訳者あとがき
次の春も、また次の春も、ずっとずっと君のために僕は泣こう。 転校をきっかけに、故郷に戻ってきた栞。 幼馴染みで初恋の相手との再会を楽しみにしていたが、彼ーー葉桜はまるで別人のように冷たくなっていた。 ところがある日、葉桜が泣いているところを見つけた栞は、彼の“涙の秘密”を知ってしまう。 その秘密のタイムリミットは『来年の春』。 葉桜を助けるために思い出作りに励むが、一方で栞もずっと言えなかった想いを抱えており……。 切なさが募る、号泣必至のラブストーリー!
傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だったーー。 2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか…… 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!
せつらvs.せつら!? 〈魔界都市“新宿"〉夢の対決! 天才人形師が生んだ哀切の造形とは? 超人気シリーズ最新刊書下ろし! 生きているようだ、という感嘆は彼女の作品のためのものと言われた、天才人形作家桜田国子。秋せつらは女子大生楓の捜索を依頼されるが、捜し当てた部屋の生活痕は、対象が人外のものであることを告げていた。「ここにいたのは、人間じゃない」楓は、亡くなった娘を偲んで国子が手がけた人形だったのだ。楓と思しき容疑者による殺人が発生し、美貌の人捜し屋になぜか強盗殺人の嫌疑が及んだとき、そこには四人のせつらが……(「〈新宿〉人形物語」より)。〈魔界都市〉の人捜しは哀しみが宿命。“絶望”を紡ぐシリーズ最新刊! 未帰還児童 〈新宿〉人形物語 客の後ろに誰がいる? 幽霊屋敷 帰って来た男
今がどれだけキツくてもーー“おいしい”が、きっとあなたの力になる。ほろ苦く、心に染み入る極上の食べものがたり 「遠くへ行きませんか」「行くー! 行きましょうぞ!」 スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」) 彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。 病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。 ーー“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。
鯨塚とも呼ばれるガケ下の町。僕は、その町で「流星新聞」を創刊したアルフレッドの手伝いをしながら暮らしている。 その町には、「オキナワ・ステーキ」というお店を営む同級生のゴー君、 『メアリー・ポピンズ』をこよなく愛するミユキさん、 ロシアン・コーヒーとカレーが名物の「バイカル」という喫茶店を営む椋本さん、 ガケ上で、「ひともしどき」という詩集屋を営むカナさん……など個性的で魅力的な仲間たちがいる。 そんなある日、アルフレッドが昔、取材で町の人々を撮影した8ミリが見つかり、編集して音楽つきで上映会をすることになった。 ラストには、あたたかな涙があふれる、春風のような物語。
織田信正ー通称帯刀。一部の史料にしか名を残さず、一般的にはその存在を認められていない織田信長の“幻の長男”である。弟の家臣として生きることを選び、村井重勝と名を変えた彼は、戦場で、内政で、獅子奮迅の活躍。織田家は再び、攻勢にでた。存在しないはずの“幻の長男”は、日本の運命を大きく変えていくー!!“本能寺の変”が起こる天正十年まで、あと十二年。