2020年5月発売
僕たちはやり直せるのか。騙され苛まれて立ち尽す無気力の荒野に、陽はまた昇るのか。津波で失われたはずのノート。行方不明のまま永い時を経た少年の伝言。数千キロ先の故国を目指す男が遺した言葉。そこからは強いメッセージが発信されていた。騙されるということ自体が一つの悪なのだ。やられっ放しで判断力を失う前にやるべきことがある。僕たちは迷子のままではいられないーー。心に沁みる再生の歌二編。
「永神のオジキは、映画館の話でいらしたんですか?」興味津々の若い衆に、阿岐本組代貸の日村は心の中で溜め息をつく。困った人をほっとけず、さらには文化事業が大好きなヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々と舞い込んでくる。 今度の舞台、潰れかけの映画館にも、もちろん山積みの問題が。TVやネットに押されて客足が遠のく厳しい業界事情もさることながら、存続を願う「ファンの会」へ嫌がらせをしている輩の存在が浮上し……。 ヤクザも生きにくい世の中で、街の小さな映画館をどう守る!?
この国から「おじさん」が消えるーー 会社に追いつめられ、無職になった30代の敬子。 男社会の闇を味わうも、心は裏腹に男が演出する女性アイドルにはまっていく。 新米ママ、同性愛者、会社員、多くの人が魂をすり減らす中、敬子は思いがけずこの国の“地獄”を変える“賭け”に挑むことにーー 女性アイドルに恋する三十女の熱情が、日本の絶望を粉砕! 著者初長篇にして最強レジスタンス小説。 和田彩花(アイドル)感激 小さな叫びでこの世界のバランスは整えられる! 私は勇気をもらった。 幾原邦彦(アニメーション監督)仰天 その革命が見える者は勇気を得られ、 見えぬふりを生きる者は吐き気を催すだろう。 あなたはどっちだ?
『養生訓』の著者として知られる貝原益軒(1630〜1714)は、福岡藩に儒者・藩医として仕えた。博識多才で知られ、晩年に著した『朝野雑載』には戦国時代のエピソードが満載されている。本書は、そこに記された戦国武将に関する興味深い逸話を素材として、益軒が第3代藩主・黒田光之に千夜一夜物語風に語り聞かせるスタイルに仕立てた「戦国コント(小話)集」である。全42夜、登場する戦国武将は以下の通り。 織田信長/豊臣秀吉/徳川家康/徳川光圀/毛利元就/武田信玄/小早川隆景/森蘭丸/加藤清正/蒲生氏郷/明智光秀/今川義元/上杉謙信/藤堂高虎/石田三成/浅井長政/朝倉義景/竹中半兵衛/尼子勝久/大内義隆/黒田官兵衛/松永久秀/細川幽斎/伊達政宗/前田利家/福島正則/真田幸村/柴田勝家/龍造寺隆信/井伊直政/直江兼続/足利義輝/長宗我部元親/荒木村重/大友宗麟/豊臣秀頼/徳川秀忠/本多忠勝/黒田長政
一九八六年、中曽根内閣は懸案の自主憲法制定を成し遂げた。自衛隊は改称され国軍へ昇格。また日銀は絶妙の金融政策でバブル経済を軟着陸させ、日本は好景気のまま発展した。だが今、その社会は危機に瀕している。「シンク」という謎の穴がすべてを飲み込み、同時に感染症も流行。政府が隠蔽する世界の崩壊を阻止する鍵を握るのは、一人の日本人学者だった。彼を探し保護せよとの命を受けた土門康平陸軍中将は、この任務を遂行し、日本を、この世界を救うことはできるのかー?大石英司が描く世界滅亡の書。
南北戦争で両親を亡くした少女は兄の手で自分を虐待するおじ一家から助け出されたが、さらに残酷な外の世界を知る(「よくある西部の物語」)。ある少年は、服役中の父親と暴力をふるう義父の間でもがいている(「ジェイムズ三世」)。19歳の女は難民キャンプで襲撃を受け、誘拐されて消えた(「外交官の娘」)。暴力に満ちたさまざまな時代と場所で、血まみれで生きる人々の一瞬の美しさを切り取る。O・ヘンリー賞受賞作ほか10編収録の珠玉の短編集!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界に来て半年。クロの「究極のベビーカステラ」作りに協力したりと、賑やかな毎日が続いていたある晩。夜の散歩をしようと屋敷の庭に出た快人は、仕事が一段落したというリリアに遭遇する。いつも通り、和やかに会話をするふたりだったが、部屋に戻る直前、意外なサプライズが起きて、快人を驚かせる。リリアの気持ちに気付いた快人が取った行動は…!?「モーニングスター大賞」大賞受賞作、絆が深まる第9巻!
五山文学を代表する文人僧・横川景三の応仁の乱前後の動静を中心に、戦乱のさなかにも活動していた聯衆の活動を描出すると同時に、庇護者・小倉実澄との交流、京都における禅林復興という「動」を志した横川景三と地方における文芸・活動という「静」を志しながらも都に召喚されて斃死に近い最期を遂げた同輩・桃源瑞仙の対比等、「生きざま」の提示にも余韻を残す。 はしがき 第一部 応仁の大乱と禅林の文芸(禅林聯句の一側面) 第一章 戦乱時における文芸としての禅林聯句 -「小補東遊集」と「江東避乱聯句」(仮称)- 第二章 自筆稿本系統『小補東遊集』の出現 -天理図書館所蔵『小補東遊集』をめぐってー 第三章 「江東避乱聯句」(仮称)の第唱句と入韻句について 第四章 京都大学附属図書館所蔵『東遊集聯句』 -解題と本文復原の試み(翻刻)- 第五章 『〔湯山聯句〕』『成吠詩集(坤)』『〔梅花無尽蔵〕』『〔聯句集〕』について 第六章 「禅林聯句の総集」について 第二部 応仁の大乱をめぐる一禅僧(横川景三)の軌跡 緒言 -横川景三…江東避乱から禅林復興への歩みー 第一章 第一回上洛と帰山 第二章 第二回上洛とその前後 第三章 識廬庵への隠棲 第四章 第三回上洛 -文明四年〜五年(一四七二〜三)の動向ー 第五章 五山禅僧としての覚悟 -文明七年(一四七五)の動向ー 第六章 大乱の終結と禅林の再興 あとがき/索 引
マグル(人間)界では、不可解な事件が続発する。魔法大臣も、闇の帝王の復活が原因であることを、ついに認めざるを得ない。ハリーは6年目を迎えたホグワーツで、ダンブルドアの個人授業を受けることになった。一方、宿敵ドラコは何らかの使命を受け、校内で怪しい行動をとっている。「魔法薬学」の授業では、急に優等生になったハリー。その秘密は、『半純血のプリンス』と署名された古い教科書だった。
ダンブルドアの特別授業は、若き日の闇の帝王、トム・リドルに迫る旅だった。それは、ハリーが生き残るための重要な鍵になるという。やがてハリーは、過去に作られた、ヴォルデモートの不死を支える「分霊箱」の存在を知る。そして、ダンブルドアに伴われ、分霊箱の捜索に向かうが……。ドラコに科された使命とは? 『半純血のプリンス』の正体とは? 次々明かされていく真相は、さらなる謎を呼ぶ。
「今日のことは、ゆうたらあかんで」と良江さんは念を押した。 昭和39年夏、東京五輪を間近に控えた大阪の下町で、浪人生の隆が出会った魅惑的な女性、昼からコップ酒をあおる肉体労働者、無口で陰のある大学院生ーー。 表題作「オリンピックの夏 新世界」ほか、「さよならの夏」「イダテン狂い」「土の記憶」「赤光の庭」「祭典の向こう」「虚空」全7篇を収録する珠玉の純文学短篇集。 さよならの夏 イダテン狂い オリンピックの夏 新世界 土の記憶 赤光の庭 祭典の向こう 虚空
おっぱい先生。それは、母親たちを助ける、知られざる「母乳外来」の専門家。念願の第一子を授かり、幸せいっぱいのはずの和美は途方に暮れていた。「息子が、おっぱいを飲んでくれない」。完全母乳育児を目指していた和美はパニックに陥るが、先輩ママから「おっぱい先生」の噂を聞き、藁にも縋る思いで「みどり助産院」に出向く。和美はそこで、「おっぱい先生」こと律子から思いがけないアドバイスを受け、乳房に触れられることで「母親失格」と思い込んでいた身体と心が、ゆるりとほぐれていくー。母乳外来。それはおっぱいに悩みを抱える女性たちが駆け込む助産院。性格も家庭環境も異なる4人の母親たちが、おっぱい先生と出会い救済を得ていく、希望に満ちた感動作。
不浄な首斬人と蔑まれる生業を祖父、父から継いだ別所龍玄は、まだ若侍ながら恐ろしい剣の使い手。親子三代のなかで一番の腕利きとなった彼は、武士が切腹するときの介添役を依頼されるようになる。御家人や旗本相手の金貸業で別所家を守ってきた母・静江、五つ年上で幼い頃から龍玄の憧れだった妻・百合と幼子の娘・杏子。厳かに命と向き合い、慈愛に満ちた日々を家族と過ごす、若き介錯人の矜持。傑作と絶賛された前作『介錯人』の世界が、さらに静かに熱く迫る!!
40歳以上限定の結婚情報サービス会社「ブルーパール」で働く桐生恭子は、婚活界のレジェンドと崇められている。担当する会員のカップリング率一位のカリスマ相談員なのだ。恭子の発案で、大邸宅「M屋敷」に交際中の会員を泊まらせ、一緒に暮らしてみるという「プレ夫婦生活」プランがスタートした。中高年の彼らは、深刻な過去、家族の存在、健康不安と、様々な問題を抱えているが…。人生のパートナーを求める50代男女の滋味あふれる婚活物語。
航空自衛隊飛行教導群(通称:アグレッサー部隊)に所属するF-15パイロットの森近は、訓練中に不明機の急襲を受ける。何とか空域を脱出した森近だが、同僚の深浦と安田の機体は撃墜され、行方不明となる。二人は目を覚ますと、独立国家樹立を目指す“ラースランド”が保有する最新兵器“クラーケン”の中に拘束されていた…。一方、森近は“クラーケン”捜索艦隊に派遣される。さらにリムパックによる作戦“ディープ・ライジング”によって、“クラーケン”を追い詰めていくのだが…。
夏休み。琴美の家に、子供たちの謎を解決してくれる青年がやってきた。祥子は想い人から、思いもよらぬ相談を持ちかけられる。沙也香は、それとは知らず、大人たちの「不都合な真実」を掘り起こす。それぞれの謎を追いかけた、それぞれの夏休み。悪意が自分に向けられるとは、想像もしていなかった。意外なつながり、意外な真相。鮮やかに紡がれた長編ミステリ!
笑いと衝撃、そして涙の傑作ミステリー! 初恋の元カノに運命の再会。彼女は人妻だったけど、かつての恋心がよみがえる……と思いきや、「主人のこと、殺してくれない?」と驚きの依頼がーー。このどんでん返しは絶対に誰にも予想できない!
椎名きさらは小学五年生。母子家庭で窮乏している上に親から〈水責めの刑〉で厳しく躾けられていた。ある時、保健室の遊馬先生や転校生の翔太らに指摘され、自分が虐待されているのではないかと気づき始める……。 一方、JR川崎駅近くの路上で、大手風俗店のオーナー・遠山が刺し殺された。県警本部捜査一課の真壁は所轄の捜査員・宝生と組んで聞き込みに当たり、かつて遠山の店で働いていた椎名綺羅に疑念を抱く。だが事件当夜、彼女は娘のきさらと一緒に自宅にいたというアリバイがあった。真壁は生活安全課に所属しながら数々の事件を解決に導いた女性捜査員・仲田蛍の力を借りて、椎名母娘の実像に迫る。 前作『希望が死んだ夜に』の「こどもの貧困」に続き、「こどもの虐待」をテーマに〈仲田・真壁コンビ〉の活躍を描く社会派と本格が融合した傑作ミステリー。