2020年9月発売
ネットいじめを苦に女子中学生が自殺。姉のアイはハイテク専門の探偵アニエの力を借りて、妹の死の真相に迫るー。『13・67』の著者がいま現在の香港を描き切った傑作ミステリー。著しい貧困の格差、痴漢冤罪、ダークウェブ、そして復讐と贖罪。高度情報化社会を生きる現代人の善と悪を問う。
古代中国の中原制覇を目指して魏・蜀・呉が激しく争う三国時代、魏による統一の野望が果たされるとき、その影は否応なく帯方東南海中の島国、邪馬台国にも大きな激動をもたらした。死を覚悟した女王・卑弥呼が魔人・イワレビコ(神武)に託す倭国の未来への祈りは果たして届くのか。『三国志』の著者、西晋の著作郎・陳寿の知りえなかった隠された真実とは。
独学・反権力・無神論の三つの柱を掲げ、「文学以外の何ものをも愛してはならない」を家訓とするホッセイニ一族。その末裔として生まれたゼブラは、5歳のとき、サダム・フセインが仕掛けた戦争で混乱したイランを脱出する。途中、母が不慮の死を遂げると、彼女は心に空洞を抱え、父はますます文学に沈潜し娘を文学で武装させようとする。トルコ、スペインと亡命を重ね、最後に渡った“新世界”アメリカでも父娘に居場所はない。22歳になったゼブラは父の死で天涯孤独となり、一大決心をするー亡命生活で分裂した自己を取り戻すため、亡命の旅路を逆からたどり直そう、と。アメリカでの唯一の師の力添えで、ゼブラは“亡命の大旅行”をスタートする。バルセロナで彼女を出迎えたのは、イタリアから亡命してきた若き文献学者のルード・ベンボ。二人はすぐに惹かれ合うが、愛に臆病なゼブラは文学の鎧ー過去の偉大な作家たちの言葉ーで身を固め、ドン・キホーテのごとく不条理な奮闘を続ける…。
記憶と結びついたマドレーヌ菓子、芸術創造のごときブッフ・モード、舌平目の変身譚、アスパラガスの官能性…さまざまな材料を時をかけて風味豊かにまとめあげられた『失われた時を求めて』において、「文学」と「料理」はいかなる位置をとりうるのか?食をめぐる文化史を踏まえ、世紀末に溢れた美食言説に逆らす作家の小説美学が託されたテクストを味読していく、プルーストをめぐる美味しい文学論。
パス、フエンテス、パチェーコらラテンアメリカ文学の巨匠に激賞された政治家・作家グスマンー作家みずから体験した政争、暗殺事件を題材に、首都メキシコシティで繰り広げられる、血なまぐさい政権抗争と人間の悲哀を描く“メキシコ革命小説”の白眉。本邦初訳。
幼馴染みのハロルドとの婚約を解消されたセレイア。わがまま王女が美貌の騎士である彼に一目惚れして略奪したのだ。邪魔者扱いされたセレイアは辺境伯に嫁ぐよう命じられるが、虐げられお飾りの妻宣言をされてしまう。一方ハロルドはセレイアを諦めきれないでいた。思いを募らせたまま危険な紛争地へ出征するが…。初恋を一途に貫く堅物騎士と、運命を粛々と受け入れる不遇の令嬢。そして恋に純粋であるが故に不憫な辺境伯。三人が行き着く先は!?
日記をつけることで“幸福”を楔で心に打ち付ける女。17年間、帽子とマスクで顔を覆い商店街の中だけで暮らす女。夫の浮気相手である図書館司書を日々監視する女。理想の家庭を夢見ながら妻に家出されてしまった心優しい男…。穏やかで静かな町に暮らす人々の“不安”はやがて、「ある人々の存在」に向けられてゆく。彼ら/彼女らはいったい何者なのかー心揺さぶる濃密な連作短編、待望の書籍化。
意味なんて、言葉がごちゃごちゃ折り重なった中から、何万トンの言葉の堆積から、じわじわとにじみ出て来るものなんじゃないのか…腐ったゴミの山から黒い汁がしたたるみたいに(『大洪水以後』より)。第一小説集。
これは、ジャスミンとケリーが、まだお互いの存在を知らなかった頃ーダイアナのメンテナンス中にカジノで遊んでいたケリーは、ひょんなことから連邦宇宙軍の戦闘機に追い回されるはめに。代用機で小惑星帯に逃げ込み、なれない船体を操り攻撃を回避し続けるが相手は執拗だった。あろうことか、戦闘機で宇宙船に体当たりをかけてきたのである!茅田砂胡がCDドラマ用にオリジナル短編「幻の邂逅」を書きおろし!付属のブックレットにはそのオリジナル短編を全文掲載。ドラマと小説の違いをお楽しみいただけます。
多くの犠牲者が出た1998年度の“災厄”から3年。春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。“死者”がクラスにまぎれこむ“現象”に備えて、今年は特別な“対策”を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く!相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。“夜見山現象”史上最凶の“災厄”に、想と鳴はどう立ち向かうのかー!?
織田信長の家臣・木村忠範は本能寺の変後の戦いで、自らが造った安土城を枕に壮絶な討ち死にを遂げた。遺された嫡男の藤九郎は家族を養うため、肥後半国の領主となった加藤清正のもとに仕官を願い出る。父が残した城取りの秘伝書と己の才知を駆使し、清正の無理な命令に応え続ける藤九郎ー。戦乱の世に翻弄されながらも、次から次に持ち上がる難題に立ち向かう藤九郎は、日本一の城を築くことができるのか。実力派歴史作家が描く、日本一の城を造った男の物語。
関東最大の暴力団・東鞘会で熾烈な跡目抗争が起きていた。死期の近い現会長・氏家必勝の実子・勝一と、台頭著しい会長代理の神津太一。勝一の子分である織内鉄は、神津の暗殺に動き出す。一方、ヤクザを心底憎む警視庁組対四課の我妻は、東鞘会を壊滅すべく非合法も厭わない捜査で東鞘会に迫るが…。地獄の犬たちに連なるクライム・サーガ第2幕。
負けたくない敵がいる。誰よりも理解してくれる敵がいる。だから、二人は強くなれる。将棋のプロ棋士を目指す者たちにとっての最後の難関、奨励会三段リーグ。観戦記者の佐竹亜弓は、そこですべてを賭けて戦う二人の女性と出会う。永世飛王を祖父に持つ天才少女・諏訪飛鳥と、病弱ながら年齢制限間際で挑戦する千桜夕妃。歴史に残る激戦の末、リーグを勝ち抜き史上初の女性棋士となったのはどちらか?そして二人に導かれる、哀しき運命とは?今年最泣の青春純愛小説!