2020年9月発売
象にも牛にも似たそれは、人をからかうのが大好きでーー人生の岸辺を描く小説集。自分を弄んだ男性教師を追ってたどり着いたインド・ガンジス河岸の聖地。傷心の女子大生は、ここでも「象牛」なる謎の存在に翻弄される。果たして彼女はこの懊悩から解脱できるのかーー表題作の他、大阪「比攞カ駄」を流れる淀川河岸を舞台に、恋に似た短く激しい熱情を描く「星曝し」を収める、芥川賞受賞後初の作品集。
ネットいじめを苦に女子中学生が自殺。姉のアイはハイテク専門の探偵アニエの力を借りて、妹の死の真相に迫るー。『13・67』の著者がいま現在の香港を描き切った傑作ミステリー。著しい貧困の格差、痴漢冤罪、ダークウェブ、そして復讐と贖罪。高度情報化社会を生きる現代人の善と悪を問う。
古代中国の中原制覇を目指して魏・蜀・呉が激しく争う三国時代、魏による統一の野望が果たされるとき、その影は否応なく帯方東南海中の島国、邪馬台国にも大きな激動をもたらした。死を覚悟した女王・卑弥呼が魔人・イワレビコ(神武)に託す倭国の未来への祈りは果たして届くのか。『三国志』の著者、西晋の著作郎・陳寿の知りえなかった隠された真実とは。
PEN/フォークナー賞受賞の傑作長篇 「文学以外の何ものをも愛してはならない」。父から教え込まれた家訓を胸に、若き文学至上主義者ゼブラが、文学に時に救われ、時に囚われながら、度重なる亡命で分裂した自己を取り戻し、新たな愛に目覚めていくピカレスク小説。主要メディアが絶賛、イラン系アメリカ人作家による現代版『ドン・キホーテ』。 独学・反権力・無神論の3つの柱を掲げ、冒頭の教えを家訓とするホッセイニ一族。その末裔として生まれたゼブラは、5歳のとき、サダム・フセインが仕掛けた戦争で混乱したイランを脱出する。トルコ、スペインと亡命を重ね、最後に渡った“新世界”アメリカでも父娘に居場所はない。22歳になったゼブラは、父の死で天涯孤独となり、一大決心をするー亡命生活で分裂した自己を取り戻すため、亡命の旅路を逆からたどり直そう、と。アメリカでの唯一の師の力添えで、ゼブラは“亡命の大旅行”をスタートする。バルセロナで彼女を出迎えたのは、イタリアから亡命してきた若き文献学者のルード・ベンボ。二人はすぐに惹かれ合うが、愛に臆病なゼブラは文学の鎧ー過去の偉大な作家たちの言葉ーで身を固め、ドン・キホーテのごとく不条理な奮闘を続ける……。
「世界で最も愛されているおとぎ話」がオリジナルのイラストとともに新訳で読みやすく。著者ボームの生涯から「オズ」の深読みまで、詳細な注釈によって大人から子どもまで楽しめる永久保存版の登場!
「世界で最も愛されているおとぎ話」がオリジナルのイラストとともに新訳で読みやすく。著者ボームの生涯から「オズ」の深読みまで、詳細な注釈によって大人から子どもまで楽しめる永久保存版の登場!
古典落語の大名跡・三遊亭圓朝が創作した代表的作品のひとつ『真景累ヶ淵』を、時代小説の名手奥山景布子が小説化。人間の業の深さ、血縁と因縁が複雑に絡み合った愛憎劇を、時代小説として再編。人物関係図、解題を付す。本作には古今亭菊之丞が監修を行う。 ・奥山景布子 名古屋大学大学院博士後期課程修了。高校教諭、大学講師を経て、『平家蟹異聞』でオール讀物新人賞を受賞し、デビュー。以降、時代小説を中心に精力的に執筆を行う。ほか、松本清張賞候補、中山義秀文学賞候補。愛知県芸術文化選奨文化新人賞、新田次郎文学賞を受賞。学生落語コンクールの「広瀬杯」「てんしき杯」の審査委員をつとめる。 なお、本作は「小説 古典落語」の第1冊目として刊行され、以下のラインナップで21年1月まで毎月1冊刊行予定。 9月 第1冊『小説 真景累ヶ淵』(奥山景布子/監修 古今亭菊之丞) 10月 第2冊『小説 牡丹灯籠』(大橋崇行/監修 柳家喬太郎) 11月 第3冊『小説 らくだ』(並木飛暁/監修 桂文治) 12月 第4冊『小説 西海屋騒動』(谷津矢車/監修 未定) 1月 第5冊『小説 品川心中』(坂井希久子/監修 柳家喬太郎)
記憶と結びついたマドレーヌ菓子、芸術創造のごときブッフ・モード、舌平目の変身譚、アスパラガスの官能性…さまざまな材料を時をかけて風味豊かにまとめあげられた『失われた時を求めて』において、「文学」と「料理」はいかなる位置をとりうるのか?食をめぐる文化史を踏まえ、世紀末に溢れた美食言説に逆らす作家の小説美学が託されたテクストを味読していく、プルーストをめぐる美味しい文学論。
メキシコで、銃以外の手段で大統領になることはできません。 オクタビオ・パス、カルロス・フエンテス、ホセ・エミリオ・パチェーコらラテンアメリカ文学の巨匠に激賞された政治家・作家マルティン・ルイス・グスマンーー 作家みずから体験した1923年の政争、1927年セラーノ暗殺事件を題材に、首都メキシコシティで繰り広げられる、血なまぐさい政権抗争と人間の悲哀を描く〈メキシコ革命小説〉の白眉。本邦初訳。 ローマの歴史家を思わせるほど鮮やかなマルティン・ルイス・グスマンの散文は、一種の古典的透明性を備えている。扱うテーマは残酷だが、彼はそれを落ち着いた揺るぎない筆致で描き出す。──オクタビオ・パス グスマンは古典的な仕方で内容と形式を融合させようとする。一種の言語的永遠を目指して書いているのだ。──カルロス・フエンテス
幼馴染みのハロルドとの婚約を破棄された伯爵令嬢のセレイア。我が儘王女様が美貌の騎士である彼に一目惚れして略奪し、邪魔者扱いされたのだ。辺境伯に嫁ぐよう命じられるが、お飾りの妻宣言をされ冷遇される。一方ハロルドはセレイアを諦めきれないまま紛争地へ出征する。初恋を一途に貫く堅物騎士と、運命を粛々と受け入れる不遇の令嬢。恋に純粋であるが故に不憫な辺境伯。三人の思いが行き着く先は!?
日記をつけることで〈幸福〉を楔で心に打ち付ける女。17年間、帽子とマスクで顔を覆い商店街の中だけで暮らす女。夫の浮気相手である図書館司書を日々監視する女。理想の家庭を夢見ながら妻に家を出て行かれた男……。静かで穏やかな街に暮らす人々の〈不安〉はやがて「ある人々の存在」に向けられてゆく。彼ら/彼女らはいったい何者なのかーー。 北大路公子が描かずにはおれなかった〈もう一つの日常〉。心揺さぶる濃密な連作短編8編、待望の書籍化。 第一話 均された世界 第二話 穏やかな人々 第三話 絵の中の女 第四話 理想の街 第五話 本当の家族 第六話 回収日 第七話 墓 第八話 灰色の雪
意味なんて、言葉がごちゃごちゃ折り重なった中から、何万トンの言葉の堆積から、じわじわとにじみ出て来るものなんじゃないのか…腐ったゴミの山から黒い汁がしたたるみたいに(『大洪水以後』より)。第一小説集。
複数の新鋭小説家の短編小説を一挙に紹介し、最短で最先端の小説家デビューを、実現可能とした合作本。制作監修は林田企画が行う。シリーズ化が決定しており、年1回は刊行予定の、記念すべき第1弾。文学を庶民的に広めようと試みられている。 未 練 村瀬 淳 十二月九日 夏目 優 幸せの色 セ ル 最愛のデッサン 林田 純 時の回廊 暁月達哉
茅田砂胡CDブック第6弾! 連邦宇宙軍の『魔法使い(ウィズ)』と『海賊』とのファースト・コンタクト! 茅田砂胡書きおろし小説をオーディオドラマ化! ブックレットには原作小説を全文掲載! 表紙カバー、本文イラストは鈴木理華による描きおろし。 ブックレット+CD1枚組、スリーブケース仕様刊 収録時間: 38分16秒 CAST ケリー:櫻井孝宏 ダイアナ:萩原えみこ クーア中尉:日笠陽子 スコット中尉:村上幸平 他 これは、ジャスミンとケリーが、まだお互いの存在を知らなかった頃ーー ダイアナのメンテナンス中にカジノで遊んでいたケリーは、ひょんなことから連邦宇宙軍の戦闘機に追い回されるはめに。 代用機で小惑星帯に逃げ込み、なれない船体を操り攻撃を回避し続けるが相手は執拗だった。 あろうことか、戦闘機で宇宙船に体当たりをかけてきたのである! 茅田砂胡がCDドラマ用にオリジナル短編「幻の邂逅」を書きおろし! 付属のブックレットにはそのオリジナル短編と台本を全文掲載。 ドラマと小説の違いをお楽しみいただけます。
始まってしまった。 そんなはずは、なかった……のに、どうして。 今年の〈もう一人〉は、誰ーー? 多くの犠牲者が出た1998年度の〈災厄〉から3年。 春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。 〈死者〉がクラスにまぎれこむ〈現象〉に備えて、今年は特別な〈対策〉を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く! 相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。 〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉に、想と鳴はどう立ち向かうのかーー!? 綾辻行人が満を持して放つ、渾身の1200枚!
織田信長の家臣・木村忠範は本能寺の変後の戦いで、自らが造った安土城を枕に壮絶な討ち死にを遂げた。遺された嫡男の藤九郎は家族を養うため、肥後半国の領主となった加藤清正のもとに仕官を願い出る。父が残した城取りの秘伝書と己の才知を駆使し、清正の無理な命令に応え続ける藤九郎ー。戦乱の世に翻弄されながらも、次から次に持ち上がる難題に立ち向かう藤九郎は、日本一の城を築くことができるのか。実力派歴史作家が描く、日本一の城を造った男の物語。
関東最大の暴力団・東鞘会で熾烈な跡目抗争が起きていた。死期の近い現会長・氏家必勝の実子・勝一と、台頭著しい会長代理の神津太一。勝一の子分である織内鉄は、神津の暗殺に動き出す。一方、ヤクザを心底憎む警視庁組対四課の我妻は、東鞘会を壊滅すべく非合法も厭わない捜査で東鞘会に迫るが……。 『地獄の犬たち』に連なるクライム・サーガ第2幕
負けたくない敵がいる。誰よりも理解してくれる敵がいる。 だから、二人は強くなれる。 将棋界初の女性プロ棋士を目指す二人の天才を描く、今年最泣の青春純愛小説! 【内容紹介】 将棋のプロ棋士を目指す者たちにとっての最後の難関、奨励会三段リーグ。観戦記者の佐竹亜弓は、そこですべてを賭けて戦う二人の女性と出会う。永世飛王を祖父に持つ天才少女・諏訪飛鳥と、病弱ながら年齢制限間際で挑戦する千桜夕妃。歴史に残る激戦の末、リーグを勝ち抜き史上初の女性棋士となったのはどちらか? そして二人に導かれる、哀しき運命とは?