2021年10月29日発売
二〇世紀初頭、コンゴとアマゾンの先住民に対する虐待、植民地主義の罪を告発したアイルランド人がいた。その名はロジャー・ケイスメント、大英帝国の外交官である。しかし彼は祖国アイルランドの独立を成し遂げるため、第一次大戦中はドイツに接近、反逆罪で絞首刑となる。同性愛者であったが故に翻弄されていく運命。英雄であり、反逆者でもあった百年前の外交官を描きながら、歴史書よりも深く善悪の境界を問い、評伝よりも大きなスケールで人間の不思議さに迫る。ノーベル賞作家がよりよき世界を希求するすべての人に贈る未来のための賛歌。
謎の岬、「消えた」人々…。戦時中まで遡る、この国の現実と暗部。真実を知って、あなたはどう「生きますか」?美都子の友人・清花の暮らしぶりに不思議な清貧感が漂うようになり、やがて連絡がつかなくなった。北海道に転居後「岬に行く」と言い残し失踪したらしい。時は流れ約20年後の2029年、ノーベル文学賞を受賞した日本人作家・一ノ瀬が「もう一つの世界に入る」とメッセージを残し授賞式の前日に失踪した。担当編集者の相沢は彼の足取りを追い、北海道のある岬に辿りつく。そこでは特別な薬草が栽培され、ある薬が精製されていた。
「うちのクラスの転校生は何かがおかしいー」クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり…。ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるがー。身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!
友人との付き合いで話題のVRMMO『Frontier World Online』を始めたダイキ。“プレイヤーの相棒であり家族になる”という言葉に惹かれ、数ある職業の中選んだのは不人気職ー召喚士。そんなダイキの元へ現れたのは魔族の幼女!?ダリアと名付けられた彼女は常に腹ペコ・大食い・偏食だけど格上ボスを次々を倒す高ステータスっぷり!彼女のため料理スキルを身につけたりと大忙しなダイキだが、わんぱくなダリアと旅する中で失われていた“大事な何か”を取り戻してゆくー。WEB人気作の『Frontier World』が完全リライトで登場!
第14部 明日への航路ー戦争孤児の勝利。戦地で大怪我を負った信介。島の復興に奮闘する信介に連れられ、勝利は初めて東京の土を踏む。第15部 野球小僧の詩ー長嶋に憧れる静雄が入った中学の野球部は、崩壊の危機にあった。急ごしらえのチームで、静雄は都大会に挑むが。第16部 一ノ屋の終わりー一ノ屋の跡取り、松人は、一族の血を残せとの厳命を帯びていた。仲のいい理香は、歌手を目指して島を後にする。「邯鄲の島遙かなり 下」には、第14部から第17部まで収録。
医療事故の責任を若い医師がとらされる現実、看護師たちの密かな怒り、病院に蔓延る権力闘争、法案成立にしがみつく厚労技官、そして病院経営に隠された闇…。毒だらけの日本の医療界に、孤高の外科医がメスを入れる。
事業が行きづまり、コーンウォールの邸宅に一人暮らす老いた女性。近頃は見知らぬ子供の頭が視界に現われ落ち着かない。いっしょにクリスマスを過ごそうと、息子とその恋人がロンドンから訪ねてくるものの、母はすっかり塞ぎこんでいる。じつは息子のほうも本物の恋人と喧嘩別れをしたばかりで、同行した「恋人」は、金を払って雇った移民の女性なのだった。この恋人の提案で、母とは30年間音信不通の破天荒な伯母も、人里離れた屋敷にやってくる。犬猿の仲だった姉妹の再会が埋もれていた家族の歴史を呼び覚まし、偽の恋人のあたたかく率直なふるまいが、ひびの入った一家を甦らせてゆくー。EU離脱が決定した2016年、人びとの落胆と社会の分断を背景に描かれる、「四季四部作」の冬物語。
平成4年、里奈は家族から多くの祝福を受けて誕生した。厳格な父は時折家族に暴力を振るった。ある日「離婚することになったから」と告げられる。「パパにはほかに女の人がおったとよ」-。様々な出会いと別れの中で、傷つきながら、もがきながら、家族の呪縛から自立していく女性を描く。
小学生の頃からの筋金入りのクラスのサンドバッグ、ビンテージいじめられっ子だったという精児は、自分を変えるためにバイクの免許をとることを決意する。バイクに乗り始めた精児の周囲は、少しずつ変化していく。だが、事故をきっかけに学校に諸々がバレ、窮地に立たされてー。掲示板の観客を巻き込んで綴られる“新感覚青春グラフティ”。
念願の救急隊入りを果たした赤倉舞子は、数少ない女性隊員として奮闘する日々を送っていたー。119番通報アリ。傷病者を救命せよ!市民の命を守るため、24時間どこにでも駆けつける“英雄”たちの物語。救急隊員の仕事が学べる「現場解説」付き。
人はいつからでも生き直せる。引きこもりの日々から突然、たった一人の家族である母を亡くした坂本曜。社会生活に無知な彼がとったその後の行動、そして流転の日々-。人々のつながりと家族の再生を描いた連作短篇集。
わたしは中国の女スパイーノンキャリア公務員の並木は、恋人から告白される。狙われた理由は、上司から預かった中国語の原稿。両国組織を欺くために、ふたりは同棲を始めるが…。警視庁公安部から地下鉄で追尾され、中国の国家安全部からは拉致される。何が真実で、誰を信じればいいのか?実力派作家が放つ、大人のサスペンス。極上のビターがここにある。
夏の暑い盛りのある日、私立探偵・野上英太郎の事務所を佐方康之と名乗る依頼人が訪れた。彼は二七年前に姿を消した母親と妹を、父に内密で捜しているという。手掛かりは写真一枚のみだが、野上は調査を引き受ける。しかし翌日、康之は死体となって発見された。彼の出身地・鳶笊村へ向かった野上と助手である中学二年生の少年・狩野俊介は、余命幾許もない康之の父が住まう、洞窟内に建てられた奇怪な屋敷を訪れた。そこで俊介は己と同じく推理の才を発揮する不思議な男と出会うー江戸時代から伝わる謎の神楽、佐方家の財産をめぐる確執、神楽のさなかに発生する殺人。少年探偵の成長を縦糸に本格の興趣を凝らす著者の代表作“狩野俊介”シリーズ誕生三十周年を記念する待望の最新長編!