2021年4月23日発売
忠死よりも全生を大切にした悲姫の物語。 時は江戸時代、元禄年間。 広島三次藩から播磨赤穂藩の浅野内匠頭に輿入れした阿久利は呆然としていた。 内匠頭が江戸城中松の廊下で、勅使饗応の指南役である高家筆頭・吉良上野介へ刃傷に及び、切腹となったのだ。 国を失った藩士たちは、生き残った吉良にはお咎めなしという将軍徳川綱吉の裁きに抗議すべく、籠城討ち死に、もしくは全員切腹と、真っ二つに割れていた。 さらに、主君の無念を晴らすべく、堀部安兵衛を筆頭に、仇討ちを志す者たちも現れる。 一方、夫の遺言もあって、仇討ちも籠城も、切腹も望んでいない阿久利(瑤泉院)は、忠死を覚悟する浪士たちを思い止まらせようと、綱吉の生母桂昌院へ御家再興の嘆願をはじめる。 国家老だった大石内蔵助も、赤穂遠林寺の僧祐海を通じて、周旋を図る。 だが、阿久利と内蔵助の努力も虚しく、御家再興はならず、吉良邸に討ち入る浪士たち。 吉良の首級を挙げた「義士」たちの助命を乞うべく、阿久利は再び力を尽くすが……。 広島県三次市出身の大人気時代小説作家が筆を揮う、新しい「忠臣蔵」! 【編集担当からのおすすめ情報】 話題沸騰のシリーズ「浪人若さま新見左近」「公家武者信平」「春風同心十手日記」で、盤石の人気を誇る時代小説作家が描く、広島三次藩の「忠臣蔵」です!
大阪で独りカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、絵葉書が届いた。そこに書かれた漢詩が、封じ込めていた記憶を呼び覚ます。愛した女、その娘。五十年前兄は彼女たちを惨殺したー老境を迎え全て忘れようとしていたが、もう止められない。半世紀、抑えていた殺意が紘二郎の背中を押す。兄のいる大分に向かう途中、ひょんなことから、金髪の若者・リュウを交代運転手として雇うことに。祖父と孫ほど年の違う二人の、不思議な旅が始まった。
緊急出版!「神様のカルテ」著者、最新作 「この戦、負けますね」 敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。 「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」--本文より 【編集担当からのおすすめ情報】 現役医師としてコロナ禍の最前線に立つ著者が 自らの経験をもとにして克明に綴ったドキュメント小説。 2009年に第十回小学館文庫小説賞を「神様のカルテ」で受賞し、シリーズ(既刊5冊で累計337万部)を書き継いでいる夏川草介氏は、現役の内科医でもあります。コロナ禍の最前線で多くの患者さんと向き合う日々が、一年以上続いています。本書は、著者が2020年末から21年2月にかけて経験したことを克明に綴った、現代版『ペスト』ともいえる記録小説です。
彼が焼いたのは、何か。 若き学僧は、破滅を夢見て金閣に火をつけたーー。実際に起きた事件に材を取り、三島が自身の戦中体験を重ねあわせて書き上げた『金閣寺』は、まぎれもなく日本近代文学の最高峰。なぜ金閣でなければならないのか。美を破壊する行為が意味するものとは。作家・平野啓一郎が、三島ならではの文学表現を味わいながら、大胆かつ精緻に作品の深層へと迫る。
探偵小説黄金時代に入り、さらに円熟味を増すソーンダイク博士探偵譚。第3巻収録の短篇集『パズル・ロック』『魔法の小箱』は毒殺、暗号、アリバイ、幽霊出現など多彩なテーマと独創的なトリックの宝庫! ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。 《パズル・ロック》 パズル・ロック 緑のチェックのジャケット ネブカドネツァル王の印章 フィリス・アネズリーの危難 疫病をまき散らす者 バーナビー事件 砂丘の謎 バーリング・コートの幽霊 謎の訪問者 《魔法の小箱》 魔法の小箱 箱の中身 巧妙な隠れみの 法廷の博物学者 ポンティング氏のアリバイ パンドラの箱 巨獣の手がかり 急を救う病理学者 瓦礫で集めた情報 付録 キングズ・ベンチ・ウォーク五A番地(パーシヴァル・メイスン・ストーン) 解説 渕上痩平
『宝島』『ジキル博士とハイド氏』で名高い、英国の文豪スティーヴンソンの知られざる傑作小説。 恐怖の爆弾テロリストたちの暗躍を物語の経糸にして、黄昏の世紀末ロンドン、合衆国の荒野、はたまたカリブ海の小島を舞台に繰り広げられる、怪奇で波瀾万丈な奇談の数々。ドイルやマッケンにも大きな影響を与えた連作小説、本邦初訳なる!!
日本がドルショック、オイルショックの荒波を乗り越え、本物の経済大国への道を驀進し始めた頃。吉野洋行は20代半ばにして、テレビCMディレクターとして一本立ちした。そして、もうワンランク上の、日本のトップメジャーで勝負したいと考える。だが、そこは限られたエリートが支配する世界だった。テレビCMが世の中を大きく動かしていた時代。アイデアと度胸と空気の読めなさ(?)を武器に、果たして洋行はどこまで駆け上がることができるのかー。テレビCM界のレジェンドが、夢多き冒険の時代を描いた大河小説。いよいよ第三部へ!
松本孝雄は消化器外科医である。松本家の愛犬ナサは悪性リンパ腫を患い、抗癌剤治療を行ったが亡くなった。松本は鼠径部のリンパ節腫脹に気付いた。精査の結果、ナサと同じ悪性リンパ腫と診断され、抗癌剤治療を開始した。松本の休職中、代行として桐生が赴任した。松本は生命の危機に見舞われ、桐生の思わぬ過去を知ることとなる。
望雲の竜、無辺の煙霧を切り裂いて、Kawasakiゼファーが疾走する。 映画化が決定するも、台本の検閲に遭い、未だにクランクインできない問題作! いま、中国で最も注目されるベストセラー作家、韓寒の第6作!! 急速な経済発展を遂げる中国、大都市上海の近郊にある町、亭林鎮にもその波が押し寄せるなか、負の影響たる環境汚染も広がりつつあった。ガールフレンドを愛車のバイクに同乗させて走り回っていた左小竜は、町が経済文化振興の一環で開催することになった文化芸術コンクールに、別の意中の人とともに合唱団を組み参加しようと企てる。
韓国最大の企業グループ「現代」を一代にして築き上げた鄭周永氏は、彼がいなかったならば韓国の戦後の経済発展は、数十年は遅れていただろう、とさえ言われる企業人である。絶えざる努力の中から、斬新なアイデアを次々と生み出し、絶体絶命の危機を必ず好機へと変えてきた人物であるが、それだけでなく、「牛1001頭」を率いての北朝鮮訪問、金剛山観光開発など、祖国、同胞への惜しみない愛をそそいだ偉人である。 激動の人生とその哲学を数々の写真と併せて綴った自叙伝。 韓国のベストセラー『この地に生まれて』の邦訳として2000年に出版された『危機こそ好機なり』の改訂版。