2021年4月発売
民話ーー昔話、伝説、世間話といった語り伝えられる物語は、いまも私たちの暮らしの中に息づいている。 明治から昭和にかけて、柳田國男をはじめとする民俗学者たちによって聴き集められた「話」は、一九七〇年代に興った民話ブームで大きな広がりを見せた。 全国の民衆から採集された「話」は、当時の記憶を残す一級資料として、その地に生活する人々の営みを真空保存している。 誰もが知る昔話「桃太郎」にも、様々なヴァージョンの類話が各地域に存在しており、そこには確実に語り手の体温が遺されている。 そして、ネット社会の現代でも「話」は、つねに変化を遂げながら脈を打ち、産声をあげ続けているのだ。 お化け好きをとりこにし続ける、愛おしき化け物のふるさと・民話の魅力を再発見しよう! 強力な連載陣もお見逃しなく! シリーズ最終編「了巷説百物語」が、ついに始動!! ●特集 LOVE 民話 【対談】京極夏彦×黒史郎 【寄稿】飯倉義之、伊藤慎吾、徳田和夫、花部英雄、廣田龍平、間宮史子 【インタビュー】板倉俊之(インパルス) 【再録】ざんねんな民話の世界 ●小説 京極夏彦、有栖川有栖、山白朝子、恒川光太郎、澤村伊智 ●漫画 諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介、波津彬子 ●インタビュー/エッセイ 小松和彦、東雅夫、加門七海、村上健司&多田克己、荒俣宏 ●グラビア 嘉村ギミ、芳賀日出男、佐藤健寿、新作能「アマビエ」、怪食巡礼 ●怪談実話 我妻俊樹、中山市朗、春南灯 ●お化け友の会ひろば 大倉流小鼓方・上田敦史、志村真幸、弘前乃怪、北陸怪談研究会、妖怪朗読家ゆうか、化け通『モンスターハンターライズ』 etc……
プラハの大学で日本文学を専攻するヤナは、ゴスロリと忍者が闊歩する学部で謎の作家・川下清丸の小説にのめりこんでいる。そのとき渋谷では「分裂」した17歳のヤナが単語帳片手に幽霊となって街に閉じ込められていた。鍵を握る謎の作家の秘密とは?日本文学フリークたちの恋と冒険の行方とは。チェコ文学新人賞を総なめにした作家による、ふたつの街が重なりあう次世代ジャパネスク小説。マグネジア・リテラ賞、イジー・オルテン賞受賞。
ド田舎住まいの子爵令嬢に、王都の騎士団長との縁談が持ち上がった!? だがその騎士団は変人だらけの問題集団、団長も『引きこもり』らしく、相手にもしてくれない。めげずに彼の屋敷に日参し全力アピールする彼女に、こじらせ騎士団長の心も揺れ始め……。
日々、命の重みを実感する場所、NICU(新生児集中治療室)。 看護師、清掃員、臨床心理士、医師……。様々な立場の人が交差するこの場所で、小さな命から、そしてともに闘う両親から教えてもらうこと。 新生児仮死の状態で生まれてきた我が子。自分がもっとしっかり気を付けていれば防げたのではないか。初めての出産で不安な中、「普通に生まれてくる」というのがどれだけ難しいことかを知ってーー。 「騒がしい場所」 NICUにいる赤ちゃんの中には、両親が面会に来ない子もいる。看護師の佐藤朋子は、そんな光景を自分自身の親子関係と重ねてしまう。看護師として頼られる自分は、果たして我が子にとってどんな母親になれているのかーー。 「働く場所」 赤ちゃんが健康に育っていくことも、無事に生まれてくることも、すべてが奇跡。 与えられた人生は、1分1秒でも無駄にできない大切なもの。 当たり前すぎて誰もが忘れてしまいそうなことに、NICUという命の場所に身を置いたことで気付かされた7人の物語。
当たり前の風景、繰り返される日常の営み。それが世界をかすかに震わせる。豪雨災害に見舞われた農村にボランティアとして赴いた私がふと目にした、花の世話をする住人らしき女性。その周りだけ、違う時間が流れていてーー被災地、自宅、保育園といったさまざまな場所で出会う何気ない出来事をつぶさに描いた中短篇の他、広島カープをめぐる奇談連作も収録。海外でも注目を集める作家の最新作品集。
息子が部屋に引きこもって7年、このままでは我が子を手にかけ、自分も死ぬしかないーー。従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見える大澤正樹には秘密がある。有名中学に合格し、医師を目指していたはずの長男の翔太が、七年間も部屋に引きこもったままなのだ。夜中に家中を徘徊する黒い影。次は、窓ガラスでなく自分が壊されるーー。「引きこもり100万人時代」に必読の絶望と再生の物語。
森のはずれにあるキリギリスのお店、看板にはこう書かれていた。〈なんでもあります(太陽と月、星以外)〉。森のはずれの川のそばにあるキリギリスのお店には、どうぶつたちのほしがるものが〈なんでも〉ある。五本脚の椅子、なくならないケーキ、着替え用のうろこや羽毛、〈絶望〉や〈時間〉まで……。生きにくい時代にありのままであることを肯定し、そっと励ましてくれる『ハリネズミの願い』に続く大人のためのどうぶつ物語第三弾。
官尊民卑の世の中を変えるため、目指せ、攘夷の志士! ところがーー。 従兄の尾高惇忠や渋沢喜作らとともに、尊王攘夷に傾倒していく渋沢栄一。江戸に出入りして同志を集め、ある暴挙を企てるが、京の情勢に通じた惇忠の弟・長七郎の猛反対にあい、実行直前にして断念することに。一転、幕府から追われる立場となった栄一は、喜作とともに京へ逃げる。 そんな彼らに助け船を出したのが、徳川慶喜の側近・平岡円四郎だった。慶喜こそが幕府を変える人物であると望みを懸け、一橋家に仕えることを決意した栄一の運命が、再び大きく動き始めるーー。 話題の大河ドラマ「青天を衝け」第11回〜第21回の内容を収載した、完全小説版第2弾。
1972年、アメリカ。ベトナム戦争中に海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた兄と、数年ぶりに再会した弟。しかし、町で起こるある惨殺事件が、彼らを引き離すーー戦争が人々の心に残した傷跡、そして兄弟の絆を描くクライム・フィクション。解説/吉野仁
地元で有名な悪ガキから、成績はいいがいわゆる不良少年として成長した樹は、進学校にリーゼントとボンタンをキメて入学する。曲がったことが嫌いな樹は、親友と呼べる仲間たちと破天荒でまぶしい青春時代を送った。だが、就職後、双極性障害(躁鬱病)を発症。治療のために受けた電気ショックにより大切な青春の記憶を失ってしまうー。昭和の時代、熱く、せつない、仲間たちとの絆の物語。
政治塾に足しげく通う来栖は、ある日突然、若くして命を落とした百合の家族に呼び出される。それほど親しくもない彼女が残した“手記”にはなぜか来栖への熱い想いが書かれていたー。異性として意識したことのない、それも亡くなってしまった女性から届いた熱いメッセージー。愛に翻弄される中年男の繊細で複雑な心の内を豊かな筆致で描いた私小説。
婚約者に近づいた、とある女子生徒をいじめたことで婚約破棄を告げられた、高校二年生の相川立花。立花の婚約解消をきっかけに、実家の相川グループは没落、豪邸を追われ、おんぼろアパートでの生活を余儀なくされた。やつれていく両親の姿に、やり直しを願った翌朝、いじめていた女子生徒が転入してくる日に巻き戻っていることに気づく。それを機に自分の行いを反省し、心を入れ替えるを決意した立花だったが、ひょんなことから再びタイムリープしてしまいーーネットで大人気の現代タイムリープノベル、ついに書籍化!
イスラエルの砂漠にある秘密基地の独房。看守は将軍の命令で囚人Zを監視している。長年二人きりで、彼らは親交を結んでおり、囚人Zは毎日将軍に手紙を書いて看守に託している。この奇妙な関係が始まったのはなぜなのか。ユダヤ系アメリカ人の学生からイスラエルの諜報員になった囚人Zの、悲惨で数奇な人生とは。『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』でフランク・オコナー国際短編賞を受賞した著者、渾身の雄編!
美女(スケ)+金(マネー)=危険(トラブル)への招待状(パスポート)。舞台はベガス、事件(トラブル)も賭博(ギャンブル)も俺らに任せろ! カジノに乗り込んだジョニーの知力と幸運はカードゲームの熱き攻防を制する事ができるのか? 〈ジョニー&サム〉シリーズの長編第九作、74年ぶりの初邦訳。 正直者ディーラーの秘密 訳者あとがき
優雅で感傷的な自虐小説?繊細な含羞に裏打ちされた狂気? これも文学なのだ、ではなく、これこそが文学なのだ、と敢て言おう。 佐川恭一は、令和日本文学の、黒光りに輝く希望の星である。 ーーーー佐々木敦(ことばと編集長) 5編の妄想と諧謔によって綴られる佐川恭一ワールド全開の一冊。 妻と娘との三人家族のわたしは、職場でも家庭でも孤立していき、限られた小遣いの中でわずかな喜びを見出す日々。強靭な精神を持つ妻に太刀打ちできないわたしは家出することで抵抗するが ・・・「愛の様式」 苦手なドッジボールに誘われるまま参加したことをきっかけに、現実のぼくの心と体はどんどん乖離していく。十歳を目前にしたぼくはすべてを消し去ってしまおうと決意する ・・・「冷たい丘」 この世界はしらふで生きていられる場所じゃない。勝者しか存在を許されない会場で、ぼくたちは倒れるまで下手なダンスを踊り続けるしかない ・・・「舞踏会」など、「ことばと」掲載の表題作を含む5編を収録。 愛の様式 冷たい丘 舞踏会 ひだまりの森 友情(浜大津アーカスにて)
小学校最後の年を過ごした島で、葉は真以に出会った。からかいから救ってくれたことを機に真以に心を寄せる葉だったが、ある日真以は島に逃げ込んだ脱獄犯の男と一緒に島から逃げ出し、姿を消してしまう。裏切られたと感じた葉は母に連れられ東京へ戻るが、大人になって会社で日々受けるハラスメントに身も心も限界を迎える中、ある陶芸工房のHPで再び真以を見つける。たまらず会いに行った葉は、真以があの事件で深く傷ついていることを知りーー。女であることに縛られ傷つきながら、女になりゆく体を抱えた2人の少女。大人になった彼女たちが選んだ道とは。 【書店員の皆さんから熱い声続々!】 ●魂はつながる。 上辺だけの関係ではない、お互いをよりどころにし、求めているのが切実すぎる。 現代社会が生み出す歪みと実に激しい描写が混ぜ合い、その文学性に引き込まれていく。 二人の背負ったもの、葛藤、悲しみは現代にもつながっている。 ーージュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん ●今、ここで涙を流した自分が、 いつかその涙を忘れたとしても涙を流した過去はなくならない。 その過去が未来の自分をきっと抱きしめてくれる。 諦めること、逃げること、それができる強さは、いつか闘うための力になる。 諦めていい、逃げてもいい、いつかきっと闘える日が来るから。 ーー精文館書店中島新町店 久田かおりさん ●不満にあふれた現状を飛び越える。と口では簡単には言えるけど、 今いる場所で迷って諦めて踏みとどまっても、 それでも足掻いてでも前へ進んで行くかけがえのなさ。 ずっと一緒にいなくてもいい、 それでもどこかで誰かと繋がって心を共にしていれば、きっと良い方向へ光があたっていく。 ーー大盛堂書店 山本亮さん (※「もくじ」欄に続きます) (※こちらでも、書店員の皆さんから寄せられた感想をお届けします) ●闘ったり抗ったりする力がどうしても出ない時は、 自分のまま生きていけばいいとそっと背中に手を当ててくれる。 どうしようもなく弱ってしまった時には、優しく寄り添ってくれる友達のような本。 息がつまりそうなしんどさを抱えている人にぜひ読んでもらいたい。 ーー三洋堂書店新開橋店 山口智子さん ●真以と再会するまでのミステリーの行方に疾走感がとまらない。 自分にとっての美しいもの、自分が本当にやりたいこと、確かな強さを受け取った。 ーーうさぎや矢板店 山田恵理子さん (5月7日更新。コメントは、お寄せいただいたものを一部抜粋・編集しております)