2021年8月26日発売
神々しい美貌の男が神生島に帰った日、血族の歴史は、再び時を刻み始めた。島に生きた、ある一族の150年の営み。明治維新から「あの日」の先までを、17の物語が鮮やかに映し出す。
大隈重信のもとに押し掛け、渋沢栄一を口説き、資金も経験もゼロから、誰もが不可能だと嗤った地下鉄計画をスタートアップした男がいた。東京に地下鉄を誕生させた早川徳次と技術者たちの熱き闘い!
播州高砂の漁師から身を起こし、大胆不敵な船乗りとして名を揚げた松右衛門。兵庫津を振り出しに瀬戸内を巡り、日本海に入って越後・出雲崎から果ては箱館まで、北前船を駆る海商にのし上がる。やがて千石船の弱点だった帆の改良に自ら取り組み、苦難の末に画期的な「松右衛門帆」を完成させて、江戸海運に一大革命をもたらすことに。あの高田屋嘉兵衛が憧れた伝説のシーマン、ここに甦るー。
ある日、タクシー運転手の呉士盛は放置された白タクの中で古いカセット式録音機を見つけた。何気なく再生ボタンを押すと雑音に紛れて男の声が聞こえてくる。「ミナコ…」同じ頃、呉士盛の妻で清掃員の郭湘瑩はひどい耳鳴りに悩まされていた。それがいつか女性の声であることに気づく。「ミナコ…逃げちゃった…」そして湘瑩の目の前に一人の少女が出現する。恐ろしい惨劇の幕開けだった!
次郎長一家に突然やって来た旅の博徒、皐月雨の晋八。森の石松を窮地から救ったのが縁で、一家に草鞋を脱ぐことになった。素性を問われても笑顔でかわすばかり。不気味だが、とにかく腕は立つ。折しも、次郎長一家は甲州の卯吉一家と抗争の真っただ中。晋八は即戦力として一家の客分となるがー。この男、なぜここまで無慈悲に人を斬れるのか?
資源探査会社に勤める郷田裕斗は、海底油田の探査のために北極の基地にいた。仲間は同僚や、アメリカ人の準石油メジャーのオブザーバー、海洋学者、そしてカナダ系イヌイットたち。ある日、北極海の水中で核実験が行われる。だが、郷田たちはまだそのことを知らず、いつの間にか孤立していたのだった。通信機器による外部との連絡は取れず、リード(氷の割れ目)は増え続け、燃料と食料も刻一刻と減る中、ついに精神に異常をきたす者まで現れて…。大国の思惑と駆け引きに巻き込まれた郷田たちは、氷の世界で生き残ることができるのか。
死刑制度の闇に挑んだ著者渾身の本格推理。堀田市で起きた幼女殺人事件「堀田事件」の犯人として死刑判決を受けた赤江修一。彼は無実を主張したが、控訴、上告とも棄却され、判決確定後、わずか二年で刑を執行された。それから六年後ー亡き赤江に代わり再審請求中の堀田事件弁護団宛に、真犯人を名乗る「山川夏夫」から手紙が届く。さらに一年後に届いた二通目の手紙の中には、犯人のものだという毛髪が入っていた。弁護団の須永英典弁護士は手紙の差出人を突き止めるべく、新聞記者の荒木らと調査を開始する。調査が進むにつれ、日本の刑事司法の根幹を揺るがす計略が浮かび上がる…。
ゴキブリまみれで毎朝起きる、貧しさの底をさまよう少女。文化大革命の凄惨な経験に縛られる不安定な親たち。一族の痛みの歴史の先端でツバを吐く子供たちの、酸っぱくひねくれた青春小説集。ロサンゼルス・タイムズ・ブック・アワード受賞。
世子のもとを去ったラオン。だが、府院君が放った魔の手がラオンに迫る…!理想の国づくりのために意志をつらぬく世子は、自らの身を挺した策に出る。やがて世子崩御のしらせに、国中が深い悲しみに染まるが…!「世子様が月になるのなら、わたくしは…わたくしは、世子様のおそばに漂う雲になります」誰もが自分らしく生き、子どもも老人も安心して暮らせる国を作るために世直しを図った世子とラオンがたどり着いた未来とは!?大長篇恋愛宮廷絵巻、これにて完結。
ヒト族オメガの大谷夕侑は、獣人アルファが通う学園唯一のオメガ奨学生。貞操帯を嵌め、発情期には『発情耐久訓練』の生き餌としてアルファ達の欲望を一身に向けられていた。そんな夕侑の前に、寮長である獅子族のエリート御曹司・御木本獅旺が現れる。彼は夕侑に“運命の番”の気配を感じていた。しかし獅子族にトラウマのある夕侑は到底受け入れられず…。境遇の違うふたりが『幸せ』を見いだす、極上オメガバースストーリー。『第一回fujossy小説大賞・春』大賞受賞作、大幅加筆&限定書き下ろしも収録!
コロナ禍をなんとか乗り切ったマリエに大手百貨店が理不尽な要求をつきつける(「マリエの覚醒」)。ヤッさんの一番弟子として何ができるのか…模索しはじめたタカオが「鮨まな」の危機に立ち上がる(「タカオの矜持」)。そして、二人の師であるヤッさんがある日、オモニとともに姿を消す。いったいヤッさんに何が起きたのか。タカオが捜しはじめるが…(「ヤスの本懐」)。シリーズ完結となる表題作を含む3編を収録。
どんな犯罪にも「起源」があります。「殺人」は人間にとって最大の禁忌ではないでしょうか。最初の事件は、20万年前の原始人によるものでした。動機は“怒り”です。信じていた仲間に失望し、大きな棍棒で仲間を殺しちゃったんです。太古の昔、いったいどんなドラマがあったのかー。(表題作「人類最初の殺人」)本篇ではこうした「人類最初の犯罪」の顛末の数々をお話します。
かつては黄金の治世と呼ばれながらも、今は侵略と動乱に揺れる大陸。「彗星王」として名を馳せていた義賊の王義英と相棒の黒猫・夜風は、裕福な者たちの屋敷に忍び込んでは財産を盗みだし、暮らしに苦しむ民たちに配っていた。しかし、ある日、企てに嵌まってしまい逃れるために船に乗りこむことになった。その船には赤髪・碧眼の女性アナスタシアも乗っていた。彼女が暴漢に襲われたところを救った義英。聞けば、アナスタシアは島国である天神島の領主になりにいくという。しかし島は、領主不在の間に権力者二人によって島内を二分する争いが起きかねない状態だった。島の無辜の民たちのため、アナスタシアの補佐を買って出る義英だったが、次々に島内で起こる事件の数々に巻き込まれていくー。義賊と領主、二人が織りなす、清朝中国を舞台にした、歴史ファンタジー!
パリ・オペラ座新作公演の主役に抜擢された天羽七音美。原作者レジーヌ・ブラパンがこだわる「黒髪のジャンヌ・ダルク」像にぴったりなのだという。演出家ジャック・ロランの依頼で七音美は宣伝のためカンヌへ渡る。その頃、パリでは娼婦が丸刈りにされ殺される事件が起こっていた。被害者はカンヌのホテルの部屋番号と「オルレアンの魔女」という謎の言葉が記されたメモを握っていた。捜査にあたる刑事エミールもカンヌへ飛び、そして舞台は忌わしき伝説の残る「監獄島」へ。果たして「オルレアンの魔女」とは…。映画の都、監獄島、そして魔女の街へと駆け巡る探偵行!