2022年12月13日発売
時事雑説を描くことが禁じられていた江戸期に比し、明治の実録は堂々と現実の重大事件を空想・虚構をまじえ叙述する。黒船来航から西南戦争に至る維新前後史話として広く読まれた染崎延房『近世紀聞(抄)』、西南戦争における在野の志士を描く篠田仙果『鹿児島戦争記』、社会問題ともなった相馬事件を伝える渡辺綱『掃魔の曙』を収録。
マスコミには、決して書けないことがあるー都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!
人の血を啜り、闇から闇へと生きる絶生の美女・紅鈴が、江戸の世で出会ったひとりの少年、欣治。吉原に母を奪われ、信じていた大人たちにも裏切られた。そんな絶望の中でなお、懸命に生きる欣治との出会いが、孤独な闇を生きてきた紅鈴の思いがけない感情を芽生えさせる。「こんな腐った世の中に、こんなにも清い魂があるものか。この汚れなき魂を、あたしは守りたい」欣治を“鬼”にするー。その、後戻りできない決断の先に待ち受ける運命とは!?美しく凶暴なまでに一途なダークヒロイン、ふたたび。
真実か?夢幻か?クリスマスイブに展開するヒューマニスティックストーリー。三十歳で生活に行き詰まって自殺を決意した周平は、神の子を自称する小さな青いウマのぬいぐるみに出会う。
両大戦間期のドイツ児童文学では、大都市に暮らす子どもを主人公に、近代市民家族モデルに代わる新たな家族像やジェンダー観が模索されるようになる。父なき家庭で子どもに寄り添ったのは、自由で風来坊なおじさんだった。ナチスが台頭しつつある時代に、おじさんが提示したオルタナティブな生き方とは。本書では、これまで紹介されてこなかった多数の作品・作家とともに検討する。