2022年7月27日発売
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。 語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。 従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。 休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだすーー。
昭和三年の岡山。名家の養子・大鹿保和に、失踪中の作家・金光晴三から手記が届く。そこには、自らの手で殺し、そして蘇らせた妻との日々がつづられていた。おぞましい物語を読み進めるにつれ、存在しない黒い蝶の影が精神を蝕んでいく。手記の内容は創作か、それとも真実なのか。保和は金光夫妻が逗留している新嘉坡の宿へ向かうが、そこで待ち受けていたのはー。
きらきらだったり、くすんでいたり。ときめきからもやもやからSFまで、まるで青春を万華鏡でのぞくような色とりどりの短編集。 【収録作】全6話 「ブラックコーヒーを好きになるまで」 人が好きなものは、嫌っておくのが楽なんだ。本とコーヒー、そして素直になれなかった僕の話。 「上映が始まる」 憧れだったはずの天文学。なのに怠けてばかりの僕。でもきっかけはやっぱり、星空の下から。 「主人公ではない」 世界には物語があふれている。今生きている物語の主人公が自分ではなかったとしたら……。 「ボーイ・ミーツ・ガール・アゲイン」 お人好しの僕が思いがけぬ一目惚れ。憧れのあの子へと続く道は、「僕らしさ」を探す旅路だった。 「燃」 何事にも夢中になれない僕は、喩えるなら「不燃物」。自分の心は、何に、どうやって動くのだろう。 「言わなかったこと」 僕が小説を書かなくなったのは、あなたの作品に打ちのめされたから。なのに、いきなりやめるなんて。
何者かに腹部を刺された五十嵐夏帆が大阪の三品病院に緊急搬送された。懸命な治療の甲斐もあり、損傷した脾臓を温存したまま夏帆は一命をとりとめたーかに思えたが、術後あり得ない速さで容態が急変、命を落としてしまう。死因は刺傷によるショック死、あるいは医療ミス、それともー?院長から死因の究明を命じられた内科医の家入陽太郎は、夏帆の事件を担当する大阪府警の刑事・成山有佳子の協力を得て調査を開始するが…。
東京で大学生活を謳歌していた茂果は、友人の由紀からあるアニメを布教される。柔らかな表情、手描き感のあるタッチ、自然な体重表現、甘い雰囲気の色使い、繊細な塗り。紹介された絵師のイラストは、弟の穂垂が描いたものだった。Twitterの裏アカウントでBL作品を創作し、普段から異性との恋愛話をしない穂垂を、茂果は同性愛者なのではないかと考え、やがて過干渉してしまう。境界の曖昧さ、線引きの難しさを、姉弟の視点から見つめ直す。小説現代長編新人賞受賞後第一作。
裁判所書記官として働く宇久井傑(うぐい・すぐる)。ある日、法廷で意識を失って目覚めると、そこは五年前ーー父親が有罪判決を受けた裁判のさなかだった。冤罪の可能性に気がついた傑は、タイムリープを繰り返しながら真相を探り始める。しかし、過去に影響を及ぼした分だけ、五年後の「今」が変容。親友を失い、さらに最悪の事態が傑を襲う。未来を懸けたタイムリープの果てに、傑が導く真実とは。リーガルミステリーの新星、圧巻の最高到達点!
隠しても隠せない。服がすべてを自白してしまう。真犯人も、知りたくなかった過去も。 こんな解決見たことない! 迷宮入り事件を次々に看破する仕立屋探偵が挑む、6つの事件。 捨て子の着衣のリメイク痕、中学生の制服の不自然なシワ、饒舌に語り出すヴィンテージ生地ーーこの男には、人に見えない真相が見える。 大好評『ヴィンテージガール』に続く、仕立屋探偵・桐ヶ谷京介の事件簿! 桐ヶ谷京介 名だたるハイブランドと職人、町工場とのマッチングを行う服飾ブローカー。服飾と美術解剖学の達人。共感度が高すぎて涙もろい。 水森小春 ヴィンテージショップ店長にして人気ゲーム実況配信者。骨董の知識で桐ヶ谷に協力する。外見と裏腹に毒舌かつド直球。 南雲隆史 桐ヶ谷の能力を借りて迷宮入り事件の再捜査を行う、杉並警察署のベテラン警部。 八木橋充 杉並警察署で未解決事件捜査に当たる巡査部長。ゲーム実況者小春の大ファン。 ゆりかごの行方 緑色の誘惑 ルーティンの痕跡 攻撃のSOS キラー・ファブリック(書き下ろし) 美しさの定義(書き下ろし)
感染爆発は、革命の聖地から始まった。舞台は香港、ワシントンD.C.、NY、東京、メルボルン…。“インテリジェンスの巨匠”が満を持して放つ、最高機密級の国際諜報小説。
かつての激戦地・硫黄島。そこに生きていた人々が、現代の私に語りかけル。祖父母の故郷・硫黄島を墓参で訪れたことがある妹に、見知らぬ男から電話がかかってきた頃、兄は不思議なメールに導かれ船に乗った。戦争による疎開で島を出た祖父母たちの人生と、激戦地となった島に残された人々の運命。もういない彼らの言葉が、今も隆起し続ける島から、波に乗ってやってくルルルーー時を超えた魂の交流を描く。
60万部超え大ヒット作『三千円の使いかた』の著者、最新刊は「お金のつくりかた」! 会社の同僚と平凡な結婚をし、ひとり息子にも恵まれ、専業主婦として穏やかに暮らす葉月みづほ。彼女はある夢を実現するために、生活費を切り詰め、人知れず毎月二万円を貯金していた。二年以上の努力が実り、夢を実現した喜びも束の間、夫に二百万円以上の借金があることが発覚してーー。様々な事情で「今より少し、お金がほしい」人達の、切実な想いと未来への希望を描く!
ひとりの女が愛を知り、悪に目覚めるとき。東京は、再び戦火に燃える。1945年、東京。大物極道である父の死により、突如、その「代行」役となることを余儀なくされた綾女。大物議員が巡らす陥穽。GHQの暗躍。覇権を目論む極道者たちの瘴気……。綾女が辿る、鮮血に彩られた謀略と闘争の遍歴は、やがて、戦後日本の闇をも呑み込む、漆黒の終局へと突き進む! 脳天撃ち抜く怒濤の犯罪巨編、堂々開幕。
灼熱のバカンス地で、病身の母とふたり。夏の幻の果てに、娘が出した答えとは? 原因不明の病で歩けない母の治療のために、イギリスから南スペインの町を訪れた夏。介護のために学者の道を諦めた25歳のソフィアは、母親を怪しげな医師ゴメスに診せつつ、地元の男子学生と謎の長身女性に惹かれてゆく。私の人生って何なんだろう? やがてソフィアは本当の痛みと向き合う。ブッカー賞最終候補作、映画化決定!
今なお話題のサリンジャーの煌めく才能。これが最後の「9つの物語(ナイン・ストーリーズ)」! 若い頃の留学先のウィーンを終戦後に再訪した男が行方を探す美少女、謎の女とともに行方不明になった天才詩人、少年が見てしまった悲劇の黒人ジャズ歌手。グラース家の物語の無垢、そして『ライ麦畑でつかまえて』の異議申し立て……サリンジャーが後年描いたエッセンスを湛えながら本国では出版されることのない幻の短篇集!
「眼帯のミニーマウス」カワイイ命女子VS.整形ポリス。「神田タ」YoutuberVS.粘着ファン。「嫌いなら呼ぶなよ」不倫男VS.妻の女友だち。「老は害で若も輩」綿矢VS.ライターVS.編集者。整形、不倫、SNS、老害…心に潜む“明るすぎる闇”に迫る!
幽霊になった窓子と高校生の彩姫。最凶コンビが悪しき男たちに天誅を下していくがー世にも奇妙で愛おしい、怒りの幽霊ヒーロー小説!「文藝」掲載時、快哉の声が溢れた中篇「窓子」に続編「私と窓子は覚えている」を書き下ろし収録!
4年後の廃校が決まっている旧東ドイツのギムナジウム。生物教師インゲ・ローマルクの授業に、自由は存在しない。例年のごとく、生態系、遺伝、進化論を講ずる彼女だが、一人の女子生徒の存在とともに、完璧な教室に亀裂が生じはじめる。ヘッケルのクラゲの細密画、アナグマの剥製、あちこち折れた骨格標本、臓器のプラスチック模型…美しい自然とさびれた村を舞台に綴られる驚異の物語。「もっとも美しいドイツの本」に選定。図版多数。
中三の息子が家出した。行き先は氷見。慌てて連れ戻しに向かった母親のみゆきと父親の範太郎だが、息子はまだ帰りたくないという。倦怠期真っ只中の夫婦が、図らずも富山に滞在することに。鉄軌道王国の富山にはしゃぐ鉄道オタクの夫に対し、不満が募る妻……。富山県内の観光名所や鉄道を舞台に描く、夫婦のドタバタロードノベル。