2022年発売
鹿康平が怪物を撃ったのは一九六二年のことだった。わたしが書いた小説の冒頭だ。広東省上空で撃墜された台湾空軍B-17偵察機に乗っていた叔父が主人公のモデル。彼は敵国から奇跡の生還を果たしたのだー。台北出身の作家・柏山康平が執筆した長編『怪物』は高い評価を受ける。故郷に凱旋した柏山はその夜、同行した出版社社員椎葉リサと関係を持ってしまう。運命の女。乱舞する青い鳥。中世の王のごとく君臨する“怪物”との対決。恋そして冒険。唯一無二の圧倒的エンターテインメント!
英国グラスゴーの病院で終末期医療を受ける少女レニーは17歳。好奇心旺盛で老人向けのアートセラピーに潜り込み、83歳のマーゴと知り合う。ふたりは自分たちが生きた証として、合わせて100年の人生を100枚の絵にして残すという計画を立て、1枚の絵を描くごとに、絵にまつわる人生の1コマを相手に語ってゆくー。生と死と愛という、人間にとって根源的な重いテーマを正面から取り上げながら、明るく風変わりなふたりの愛すべきヒロインと、個性ゆたかな登場人物が織りなすデビュー作。
家族のトラブルで水泳部を退部した奥貫広夢。卓球全日本選手権で突然、体の異変に見舞われた三上瑠衣。高校二年生の二人はそれぞれに悩みを抱えていた。前向きになるきっかけを作ってくれたのは階段との出会いだ。「決意の階段」「勝負の階段」「あきらめない階段」-。社会科教師、高桑がブログで紹介する記事を読むうちに、二人は階段に魅了されていく。ある日、高桑から「京都駅大階段駈け上り大会」の存在を教えられる。171段をチームでダッシュするタイムアタック戦だ!大年寺、江島神社、伏見稲荷大社、東京タワー等、実在する階段多数登場!挑んだ階段総数3500段超え。ゴールは京都駅大階段!
1988年8月18日午後2時35分に、村を見下ろす丘にあるいちばん背の高いスモモの木の上で母さんは啓示を受けた。まさにそれと同じ瞬間、兄さんのソフラーブは絞首刑になった。それを遡ること9年、イスラーム革命の最中に、テヘランで幸せに暮らしていた私たち一家は熱狂した革命支持者たちによって家に火を放たれ、かけがえのないものを失った。私たちは道なき道を分け入り、ようやく外界から隔絶された村ラーザーンにたどり着く。そこは奇しくも1400年前、アラブ人の来襲から逃れたゾロアスター教徒が隠れ住んだ土地だった。静かな暮らしを取り戻したと思ったのもつかの間、ラーザーンにも革命の波が押し寄せる。ある日ソフラーブが連行されると、母さんのロザー、父さんのフーシャング、姉さんのビーターの身にも次々に試練が降りかかる…。13歳の末娘バハールの目を通して、イスラーム革命に翻弄される一家の姿が、時に生々しく、時に幻想的に描かれる。『千一夜物語』的な挿話、死者や幽鬼との交わり、SNSなどの現代世界が融合した魔術的リアリズムの傑作長篇。国際ブッカー賞、全米図書賞最終候補作品。
★★韓国で13万部突破! ヤン・ヨソプ(HIGHLIGHT)、キム・ヨンギョン(元女子バレーボール韓国代表・主将)など韓国著名人が絶賛★★ 少女時代のソヒョンもヘアメイクさんに韓国版の本書をプレゼントしたことで話題に! 苦労して手を取り合ったとしても、どちらかが手を離してしまえば簡単に終わるのが人と人の関係だ。 難しい分だけ軽く、大切なぶんだけまるで無価値なものになったりもする。 だから、誰かをそばに置いておこうとすがりつくのではなく、自分にとっていい人にだけいい人でいればいい。 キム・ジェシク 翻訳は『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』の藤田麗子が担当。イラストは、高田真弓による描き下ろし。 恋愛、仕事、人間関係に疲れたあなたに寄り添う163のメッセージ。 《目次》 第1章 すべての人に いい人でいることはできないいい人でいることはできない 第2章 私の愛する自分へ 第3章 愛とは相手について学ぶこと 第4章 今は自分をいたわる時間
原色の、台湾文学。 「ほんとうの悲劇にはいつも滑稽な要素があるのよね」 大学生の主人公は、乗っていた車に自分からぶつかり飛ばされた謎の少女・品琴に興味をひかれ、調べていくうちに、バナナ畑のなかで暮らす彼女の家族とある宗教団体の関係を突き止める……。新世代作家の期待の星による、家族の秘密をめぐる怪奇的で幻想的な表題作のほか、中篇全三篇を収録する小説集。 邱常婷「バナナの木殺し」 王定国「戴美楽嬢の婚礼」 周芬伶「ろくでなしの駭雲」
“忘れられた”世界的作家の珠玉文学選 張赫宙は、かつては、魯迅と相並ぶ、アジアを代表する作家と称された。しかし、植民地期朝鮮の作家として日本語で活躍したため、張の文学は戦後社会に帰属先を失い、長い間、漂流してきた。現在、多文化、多言語における「近代」の急速な見直しが進められるなか、「世界文学」としてその作品は再び注目されはじめている。本書は、代表作「仁王洞時代」をはじめ、文学的な価値が高いものを中心に珠玉の短編を編む。 本書の特徴 1:張赫宙の主要作や代表作のうち、前著の『張赫宙日本語作品選』(勉誠出版)に漏れ、戦後において再刊・再録されることがなかった作品を取り上げ、張赫宙文学をより幅広く紹介することを意図した。 2:商業的目的や政治的意図からの選別ではなく、文学的に完成度の高い作品を取り上げ、全体が俯瞰できるように意図した。 3:張赫宙文学には植民地期の実態や実生活を知る資料的な性質の作品が多い。この点も編集の上で考慮した。 4:本書で紹介する作品は1934年から1941年の夏に至るまでのものである。張赫宙が朝鮮大邱で旺盛な作家活動をし、日本に移住して懊悩し、太平洋戦争の渦に巻き込まれる直前までの作品である。
異世界に転移した三十路のサラリーマンのタカユキを待っていたのはいきなりの奴隷生活!?不幸な境遇の奴隷少年・シルトと心を通わせて二人で自由になる約束をしたタカユキだったが、大火災の夜にシルトを守って命を落としてしまう。しかし数十年後に、今度はタカという孤児に転生!王城へ仕えることになったタカユキは、その珍しい黒髪を理由に「血王」と恐れられる王の夜伽役に任命されるが、その正体は美しく成長したシルトで!?オッサン→少年へ。輪廻の先の真実の愛!!最愛を失った無敵の王×最愛の魂を持つ奴隷少年。
織田信雄の侍大将・勘兵衛雄久。銃装備の騎馬軍団を率い、長久手で秀吉を追い詰めるが…。土方家系の流祖・信治とその嫡男・雄久の生き様を鮮やかに描く!土方家子孫にあたる著者が二十年以上の月日をかけ、さまざまな資料を渉猟。微かに残された記録・事績を基に著した長編歴史小説。
昭和二十年の夏、敗戦によっていきなり奈落の底へ突き落とされた陸軍幼年学校の少年兵たちーその懊悩と混乱の中で引き起こされる精神のドラマを鮮烈に描いた問題作!
度重なる不祥事から警察の大改革が行われた日本。 変革後の警察にブラックIT企業から転職した新米刑事の藪内唯歩は茨城県つくば警察署の刑事課で警部補の仲城流次をパートナーとし殺人事件の捜査にあたる。 刑事課の同僚たちの隠しごとが唯歩の心を曇らせ、7年前の事件が現在の捜査に影を落とす。 ノルマに追われながらも、持ち前の粘り強さで事件を解決した先に、唯歩を待ち受ける運命はーー。 リアル警察小説と本格ミステリの2重螺旋! 白黒が全反転する奇跡の終盤に瞠目せよ!!
平凡な会社員だった高倉頼蔵(たかくら らいぞう)は、ある日、心筋梗塞によりその生涯を閉じた。 しかし、彼は異世界で第二の生を得る。 強力なスキルを与えられた転生者ーーではなく、周囲を大国に囲まれた小国・ハイセルク帝国の一兵卒として。 ウォルムという新しい名で戦争の最前線に投入された彼は、 拭え切れぬ血と死臭に塗れながらも、戦友たちと死線を掻い潜っていく。 強力な魔法を操る冒険者パーティ、圧倒的な力ですべてを焼き尽くす「勇者」と持て囃される転移者たち。 彼らとの死闘の中、ウォルムは平時では目覚めることの無かった戦士としての才能を徐々に開花させていく。 その瞳を暗く濁らせながらーー。 「小説家になろう」が誇る異色の戦記譚、堂々開幕。 【「書き下ろし短編 初陣」収録】
復活し、Sランクに昇格した伝説級のパーティー“終わりなき日々を”。そのメンバーである元宮廷魔法師のアレクに、別のSランクパーティー“ネームレス”から、闇ギルドと呼ばれる犯罪者集団に侵入されたダンジョンの、合同攻略の誘いの声がかかる。最下層に眠るダンジョンコアを闇ギルドに奪われないための、Sランクパーティーによる共同戦線だ。だが、闇ギルド側に、ひとつの影が蠢く。それは“剣聖”-メレア・ディアル。ただ一人でSランクパーティーに認定されるほどの実力をもつ彼に、“終わりなき日々を”の四人はどう立ち向かうのか…!?飼い殺し状態だった元宮廷魔法師の冒険譚、待望の第二弾!コミカライズも大好評連載中!
北海道の片田舎にある空知総合病院に四人の研修医が赴任してきた。風見司は工学部の大学院を修了後、医学部に編入した経歴の持ち主であり、病院という環境に慣れずにいた。さらに初日から心肺停止の患者に出くわし、医療現場の厳しさに打ちのめされる。沢井詩織は東京の私立大学医学部を卒業後、実家の医院があるこの地方に戻ってきたが、医師になってから見える景色は違っていた。さらに沢井が幼い頃から父の医院に通っていた患者を担当することになった。朝倉雄介は貧しい母子家庭に生まれ、生活苦の中で医師を目指したが、思い描いていた生活とのギャップにうんざりしていた。清水涼子はかつて祖父母の主治医であったベテラン医師と出会うが、患者の家族として見えた姿と、同じ病院で働く医師として見る今の姿は違っていた。医療現場の過酷な労働環境や医療でできることの限界を目の当たりにするにつれて、彼女は自分の目指す医師像について悩み始める。新米研修医の同期四人は失敗と成長、喜びを分かち合いながら院内を奔走する。二年後に医師として独り立ちすることを夢見て、空知の青空に希望を乗せて。
1921年12月、英領カルカッタ。インド帝国警察の英国人警部ウィンダムが阿片窟でキセルの夢に溺れていると、警察のガサ入れが。慌てて逃げだす途中、両眼をえぐられ腹を刺された男が現れ眼前で息を引き取る。だが翌日、死体の目撃情報はなく、阿片の見せた幻にも思えたが、別の場所で同様の死体が発見される。折しも英国皇太子とガンジーの側近のカルカッタ訪問で独立運動が激化するなか、ウィンダムと相棒のインド人部長刑事バネルジーはこの奇妙な連続殺人の謎を解けるのか?傑作歴史ミステリのシリーズ第3弾。
もし別の道を選んでいたら…良心の呵責に悩みながら、きな臭い製薬会社の顧問弁護士をつとめるアフリカ系アメリカ人のジョアンナ。穏やかな家庭人にして、無数の偽国籍をもつ殺し屋ブレイク。鳴かず飛ばずの15年を経て、突如、私生活まで注目される時の人になったフランスの作家ミゼル…。彼らが乗り合わせたのは、偶然か、誰かの選択か。エールフランス006便がニューヨークに向けて降下をはじめたとき、異常な乱気流に巻きこまれる。約3カ月後、ニューヨーク行きのエールフランス006便。そこには彼らがいた。誰一人欠けることなく、自らの行き先を知ることなく。圧倒的なストーリーテリングと、人生をめぐる深い洞察が国際的な称賛をうける長篇小説。ゴンクール賞受賞、フランスで110万部突破ベスト・スリラー2021(ニューヨーク・タイムズ、パブリッシャーズ・ウィークリー)。
大学院生で文学志望の私は、夏休みには小説の執筆等で白馬村の宿に滞在していた。宿で美しい人妻と出会って、年に一度この宿で再会する約束を交わす。恋情の募った3年目の夏、私が訪れる直前にあの人は何故か宿から消えて…。「学生村」が盛んだった昭和40年代、清流の流れる風光明媚な村を舞台に、互いに己を律しながら展開する香り高い愛の物語。
地球では美しいとされていた容姿が醜悪と蔑まれる、美醜逆転世界へ転生したトーワ。女神様からもらった転生特典ー治癒能力を活用して冒険者を志すも挫折し、治療院を開くことにした。ある日、ダンジョン帰りの美女エルフが股間をおさえて、口の端からよだれを垂らし頬を赤らめながらやってくると、トーワを押し倒して喘ぎ始める!しかし、一向にトーワのモノに触れてこない彼女を診たら、ヘソの辺りに黒い紋様が!正気を取り戻した彼女、A級冒険者シルヴィは治療院を飛び出し、仲間を連れて戻ってきて…!?どんな人にも優しいトーワは、不遇な扱いを受けてきた美女たちの身体も心も癒していく。