2022年発売
何を書くか、どうコラージュするのか、その細かな取捨選択に宿る煌めき。 読みながら、自分が出会ってきたあらゆる愛しい人を思い浮かべたけれど、読み終える頃にはこの小説が、愛しいあなたになっていた。 ーー金原ひとみ(小説家) エッセイ・リウは生来のストーリーテラーだ。独特の作風には絶えず比喩が混ざり込むーーきっぱりと鋭く、びっくりするほど。彼女の短編小説を読んでいると、ラインすれすれに打ち込む一流のテニス選手のように思えてくる。一回打っては打ち返し、正確にしかもリズミカルなラリーが続く。目の前ではずっと続くように思えていても、突然のスピンボールに相手が戸惑っている時、ポイントを奪ってしまう。読者は短編小説を読んでいくうちに物語に引き込まれ、劉梓潔の世界に完全に入り込んでしまう。 ーー侯文詠(作家・医師) 劉梓潔は二十一世紀台湾人女性の声を代弁する。物語を紡ぐ時、不要な説明は避け、場と場を繫ぐ説明も省かれる。彼女が描き出す言葉には強い自信が表れ、受け身で、解釈されることを待ち、意味づけされるのを受け入れるだけの女性は出てこない。物語をシーンごとに繫げていくと、それはまたカットごとに自ずと繫がっていくのである。女性の物語や男女の物語はここから語り出されるのだ。 ーー陳芳明(台湾文学研究者) 『父の初七日』監督・脚本のエッセイ・リウ。 映画の原作エッセイがベストセラーとなった作家の最初の短編小説集。 子供が欲しい。でもそれってホルモンのせい?でも、過ぎてしまえばそれでいいなんて私は思わない…「愛しいあなた」。母親には永遠にわからないだろう。それは四倍の愛なのだ。母と父の役目で二乗。会えなかった最初の息子の分でさらに二乗だって…「プレゼント」。私は年上の人しか好きになれないんです。父の秘密と私の恋…「失明」。台湾の現代女性の愛と痛みを衝動的に描いた短編小説集10編。
死んでいたはずの男が地下の墓所で目を醒ます。男は名前を含め記憶のほとんどを失っていた。埋葬者たちは男の復活を予期し、墓場に閉じ込めようと目論むも、墓荒らしの侵入で封印が解かれたようだ。暗闇の中、転がっていた墓荒らしの死体が動き出す。男は無意識に左手から銀色の光を放ち、墓荒らしを葬り去る。すると男の中で何かが呼び覚まされたーーそうだ、おれは魔術の達人だったはずだ! 目の前に広がるのは夜の砂漠。天の星は男の死後はるかな時間が経過していることを示す。男は外壁に刻まれた文字「フェーラノス」を自分の名前を決め、嵐の予感が漂う砂丘へ、壮大な旅路への一歩を踏み出したーー。
神君家康がいかにして「関ケ原」を勝ち抜いたのか、考えを聞かせてほしいー寛永八年、三代将軍家光に伺候した立花宗茂は、剣呑な諮問を受ける。その真意はどこにあるのか、新たな大名取り潰しの意図が潜んでいるのではないか、下命に強い不安を募らせる。答え如何によっては、家光の勘気に触れる恐れもあった。だがー先代秀忠の病いが篤くなり、親政に気持ちを昂らせる家光が待つ御座の間で、宗茂はある決意をもって語り始める。やがて解き明かされる天下を分けた決戦の不可解さ、家康の深謀と西軍敗走の真相。勝敗の鍵を握った大名が召し出され、決戦前夜の深い闇がいま明らかになろうとしていた…西国無双と呼ばれた男の老境の輝きを描き出し、関ケ原の新たな解釈に挑む渾身の歴史小説。
大学卒業後定職につかずバイト生活をしていた山中幸太は父から将来について問われると、勢いで料理人になりたいと応えてしまう。すると父から旧知の料理屋「天倉」を紹介され、バイトすることになる。やる気のない幸太だが、出入りの魚屋「海原鮮魚店」の娘、海原波美や天倉五助のもとで修行をしたかった料理人、川上洋子との交流のなかで料理人になるという思いが強くなっていく。
嫌われたくなくて、本心を口にできない性格の菜奈。高校生になって急にあか抜けた千世と、SNSで友だちが多い香乃は、中学からの友達だけど、最近はどこかぎすぎすしてうまくいかない。そんな中、菜奈は他人の“嘘”や“怒り”が見える「光感覚症」になってしまう。じつはみんな嘘ばかりだと気づいて苦しむ菜奈だけど、唯一、まったく“嘘”が見えない伊原くんの存在に救われる。でも彼と親しくなるにつれ、千世や香乃との関係もさらに悪化して…。私たち、もうあの頃みたいに笑えないのー?
不死者、《刺客》と交戦する。 王都でオーグリーと臨時パーティーを組んだレントとロレーヌは、村娘フェリシーの助けを得て順調に依頼を消化していく。 最後の依頼を終え、村へ戻ろうとした矢先、老人と遭遇。 不審に思ったレントが声をかけたその瞬間、突如として老人の襲撃を受け、吹き飛ばされてしまう。 それは、《ゴブリン》と《セイレーン》の次に派遣された第三の刺客だった。 応戦するロレーヌとオーグリーに《分化》して復活したレントも加わり、巨大化した腕をふるう老人を相手に奮戦を続ける。 だが、さらに老人は全身を巨大化する『巨人』の姿で襲いかかってきて……!? 巨体に打ち勝つべく、三人は一計を案じることに。 眼前に迫る『死』にレントが取る手はーー!? 強大な魔物と戦い、多くの謎を解き、そして強くなる。 死してもなお遙かなる神銀級を目指す、不死者レントの『冒険』、第11弾ーー!
隣国での呪いを解く鍵は、自身の前世『伝説の魔女(アーデルハイト)』!? 伝説の魔女だった前世の記憶を思い出し、王族にはびこる陰謀を退け、従僕ノアとの穏やかな生活に戻ったクラウディア。 二年が経ち、8歳となったクラウディアのもとに、西の国クリンゲイトの王太子・ルイスとのお見合いが持ちかけられる。 お見合いと聞いて複雑な感情のノアと赴くが、その国では美しい女性がいつまでも目覚めないという「眠れる美女」の事件が頻発していた。 これを呪いだとにらんだクラウディアは、ノアとともに調査で入った美しい庭で、もう一人の引きこもり王子・スチュアートと遭遇。 大人の姿で『アーデルハイト』と名乗ったクラウディアに、スチュアートは大きな反応を示し!? かつての弟子の名残があるこの国で、二人はどのように事件を解決に導くのか……!? 「一緒にいてね。ノア」 伝説の魔女と黒髪従僕が織りなす悠々自適な快適生活、第2幕!
公爵令嬢エリナと婚約し、ルベリア王国の王太子となったアルヴィス。結婚し夫婦となった二人は公務で訪れたリュングベルにて、穏やかな時間を過ごしていた。しかしそれも束の間。トーグによるエリナの誘拐事件が起き、アルヴィスも救出のため怪我を負ってしまう。負った傷は深く、臥せるアルヴィス。傍で支えるエリナは自分のせいだと責任を感じていた。そんなエリナの様子を見たアルヴィスは原因が自分にあると、トーグとの因縁に繋がる過去の出来事を話し始める。それはアルヴィスと一人の少女の話だったー。一方、王宮では水面下でアルヴィスの側妃について話が動いていた。国王をはじめとして、側妃を娶ることを望む貴族たち。彼らを前にアルヴィスの下す決断とは…?これはとある王国のお話。ふたりが恋を知り、愛を育んでいく物語。
藤原舞のためとは言え、陸上部の女子18人を監禁してしまった木島文雄。しかし調教の末、ついに舞の恥ずかしい写真を撮った犯人4人が判明する。4人はメイド見習いとしてフリージアに預けられ、少しでもミスをすると濃硫酸風呂という地獄の日々が始まった。また、黒沢美鈴との交合を粕谷純一の目の前で見せつけ、ついに復讐を完遂する。新たな寵姫を迎え、ハーレムもますます充実!監禁王、堂々の第4巻登場!
20世紀初頭のチェコを代表する革命詩人、イジー・ヴォルケル(1900-24)が短い生涯に遺した数多くの童話と詩から精選する、日本初の作品集。子どもや虐げられた者たちの低い視線に映し出された社会を描く物語5篇に、故郷モラヴィア地方や性愛をうたった詩24篇、さらに評論1篇を収録。この稀有な詩人の姿が、没後100年を前についにあきらかになる!
人の生の奥底を照らす光を求めて。障がいを抱える者たちが、身を寄せ合って「希望」を育むサークル、そこで起きた謎の事件を追って。手をつなぐこと願い、共感を手にしたことから生まれた殺傷事件、愛ゆえの暴力と生き抜くことの不条理……そのあまりに人間的なヒダを描く。生きづらさのむこうへ、二つの物語への招待、「蜂蜜と遠吠え」「ただしいクローバー」。 蜂蜜と遠吠え ただしいクローバー こころを演じる 熟れてない愛 裸足の捨て猫 自分のもの、ひとのもの 生き抜いた、いじめ 「しあわせな家族」へ 死にたい病 白い夢 遠くに見える愛 ちぎれていく四葉に 贖罪を歌って やわらかい声のうえ 笑いと障がい リアルのゆきつく先 生きづらさの同窓会 羽ばたく
Apple Books 2022 今年のベスト(デビュー部門) 芸術を通して死者と向き合うといった普遍的な取り組みに、 死者視点の二人称と、さらにはSF的な趣向を加えた技巧的な意欲作。--宮内悠介 記憶喪失、アップデートされる幻覚、さらに夢を用いながら大切だった人を思い出していくという、とても凝った造りの作品で強く惹きつけられた。--薬丸岳 完成間近の卒業制作を教授に酷評された木田蒼介は、自分の過去ーー交通事故で亡くした幼馴染・河井明音をテーマに作品を描き直すことを決める。しかし、蒼介は彼女にまつわる記憶を完全になくしていた。明音に関する情報を集めるうち、蒼介の思い描く明音像を投影した幻覚・アカネが現れる。蒼介は、徐々に失われた記憶を辿っていく。 第16回小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
人から人へ、モノはめぐる。とっておきの物語をたずさえて。 お題は「捨てない」、ただそれだけーー。 21名のベストセラー作家が、モノの歴史を紡ぎ、人の記憶をひもとく。 物語のプロフェッショナルが織りなす"技"と"筆致"を一気に堪能できる、超豪華アンソロジー! 総インプレッション数1.26億! メルカリ公式Twitterにて話題の連載、待望の書籍化。 【参加作家】※五十音順、敬称略 朝井リョウ、伊坂幸太郎、絲山秋子、岩井俊二、江國香織、太田光、尾崎世界観、恩田陸、角田光代、金原ひとみ、川上未映子、筒井康隆、西川美和、平野啓一郎、藤崎彩織、三浦しをん、水野良樹(清志まれ)、山田詠美、吉田修一、吉本ばなな、綿矢りさ
シングルファーザーとして4歳の娘を育てる36歳の恭平。亡き妻に任せっぱなしだった家事・育児に突如直面することになり、会社でもキャリアシフトを求められ、心身ともにギリギリの日々を送っている。そんななか再会するのが、高校の同級生・章吾。シッターというケア労働に従事しながら、章吾もまた、1人で1歳半の息子を育てていたのだった。互いの利害が一致したことから2人の父と2人の子という4人暮らしが始まるも、すぐにひずみが生まれて…。「ケア」と「キャリア」のはざまで引き裂かれるすべての人に贈る、新しい時代のための子育て小説!
先手弓組・幣原喬十郎はある夜、男女の死体を発見する。その傍らには血に塗れた匕首を手に涙を流す若い男が一人。問い質すも、隙をつかれて取り逃がしてしまう。やがてその男は大盗「大呪の代之助」一味の千吉と判明。殺害された男の周辺を洗う中、再び遭遇する。千吉は殺害を否定し、殺された女との関係を仄めかすと、喬十郎の拙さを嘲り姿を眩ませる。組の、そして己の面目にかけて悪事に立ち向かう喬十郎と、闇社会を巧みに立ち回る千吉ー。十年後、二人が三たび相見える日が訪れた。思いがけない形で。
アフガンの女性作家たちによる23の短篇集 書くことがこんなにも強靭な抵抗になるなんて。 この炎のような短篇集を読み、語り合うことで、彼女たちの命懸けの戦いにくわわろう。--柚木麻子 早急に、世界に届けられなければならない声がある。 そしてその声は、物語の力を借りて、何より強いものとなる。--西加奈子 どんなに過酷な現実が目の前にあっても私たちは描く。 ペンを持っている間だけ心は自由に空を飛べるから。--窪美澄 抑圧・蹂躙され口を塞がれた女性たちがペンを執り、鳥の翼のように自由に紡ぎ出した言葉の数々。女性嫌悪、家父長制、暴力、貧困、テロ、戦争、死。一日一日を生き抜くことに精一杯の彼女たちが、身の危険に晒されても表現したかった自分たちの居る残酷な世界と胸のなかで羽ばたく美しい世界。 アフガニスタンの女性作家18人が紡ぎ出す、心揺さぶる23の短篇集。 【編集担当からのおすすめ情報】 本書は、2022年2月に英国で刊行されたアフガニスタンの女性作家18名による23の短篇集の邦訳版です。紛争地域の作家育成プロジェクト〈UNTOLD〉による企画編集で、3年前からイギリスとアフガニスタンでやりとりをしながら、「小説を描きたい」という女性たちを広く募り、一冊へとまとめ上げました。アフガニスタンでは2021年夏にタリバンが政権を奪還し、女性への抑圧も急激に強くなりました。女生徒たちは教育の機会を奪われたまま、女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられ、単独での遠出を禁じられるという、21世紀とは思えない状況が続いています。そのような中で、本書の著者のうち数名は、身の安全のため国外への避難を余儀なくされています。 ここに集められた短篇は、死や暴力、激しい女性憎悪や差別と隣り合わせの重い日常を描いたものも少なくありません。また日本に暮らす私たちとは価値観も異なり、簡単には理解出来ないこともあります。 それでも、想像を絶する過酷な毎日を強いられる彼女たちが紡ぎ出す言葉には、誰もが激しく胸を揺さぶられるのではないでしょうか。時には本を閉じたくなることもあるかもしれません。それでも、自分たちの日常とかけ離れた世界が描かれているからこそ、一人でも多くに読んでほしい、知ってほしい一冊です。