2023年4月発売
1984年初版の『オックスフォード世界児童文学百科』は、図書館員、教員、書籍収集家、学生をはじめ、親や子どもにいたるまで、児童文学にかかわるすべての人々にとって必要不可欠な事典である。この新版はダニエル・ハーンによって大幅に改訂され、新たに900を超える項目がくわわった。
ある年の大晦日の夜、アルジェリア駐在のフランス陸軍士官エクトール・セルヴァダックは、従卒のベン= ズーフとともに、尋常でない衝撃を受けて気を失う。意識を取り戻した彼らは、西と東が逆転し、一日の長さが半減し、重力が六分の一となり、誰もいない孤島にいた……。彗星の一撃によって地球もろとも宇宙空間に運び去られたセルヴァダック一行の、パラレルワールドで展開される太陽系ロビンソン漂流記。奇想天外、ジャンルSFの出発点と目され、〈驚異の旅〉の転換点を刻する問題作、初の完訳。
ラジオドラマ化、コミカライズも話題に!! 神話のふるさと・宮崎県美郷町をモチーフにした作品を全国から募集。企業版ふるさと納税を活用した、物語資源で地域の魅力を発信する文学賞(審査委員長・中村航)の第5回作品集。 【収録作品】 大賞&MRT宮崎放送賞 「かざのもりびと」潮路奈和 優秀賞(日本放送作家協会賞) 「ドンタロ様と河童の日」東紀まゆか 優秀賞(審査員特別賞) 「王の犬」黒井友 佳作 「金の飴」門武鸞 「靴が鳴る」中野七海 「雲、ひとひら」紫陽花 「その灯が消えないように」阿井千尋 「私の姉妹」羽鳥郁 「もう一つの、師走祭りのその中で」阿部凌大
“あの日”何があったの? 死んだあの子と“私”に…… 校舎裏で殺された女子生徒、容疑者は“親友”とされる一人の少女。 食い違う18の証言、やがて浮かび上がる戦慄の真実。 主人公は高校一年生の女の子、ジュヨン。ある日校舎の裏で親友のソウンが死体となって発見され、警察から容疑者として取り調べを受けることになる。昨日の放課後、ソウンと大げんかをしたのは確かだが、記憶は途中からすっぽりと抜け落ち、殺人の記憶はない。 裕福な家庭で何不自由なく育ち、誰からも羨まれるジュヨン。一方、貧しい家庭で育ち、学校ではあまり目立たなかったソウン。性格も周囲の評価も正反対だが、他の誰も間に入り込めないような親友だった。物語は、勾留されたジュヨンの心の声と、周囲の人たちの証言を交互に綴っていく。当初バラバラに見えた「真実」をめぐる証言は、ある方向に集約していくのだが……。 殺したい子 作者の言葉 訳者あとがき
かつてタレント歴史学者を夢見たロスコフは、落ち目だった。1995年に「冷戦下米国のソ連スパイ事件」を巡る書籍を出版したが、直後CIAが機密解除、本は一夜にして紙くずに。妻とは離婚し大学を退職、酒浸りだったロスコフは、同性愛者の娘のラディカルフェミニストの恋人に刺激され、研究を再開、サルトルやボリス・ヴィアンと親交があったアメリカの詩人・ウィローについての書籍を刊行する。客わずか5人の出版記念トークショーの席上、ロスコフはウィローが黒人であることを記述しなかった理由を問われる。翌朝掲載されたブログ記事が炎上し、ロスコフはレイシストだという非難にさらされる。さらに自分を擁護するツイートに返信したロスコフは、炎上を煽ってしまう。ツイートした知人は、極右政党に入党していたのだー。現代社会への痛烈な皮肉。超弩級の注目作!ゴンクール賞、フェミナ賞、ルノードー賞、アカデミー・フランセーズ賞、ジャン・ジオノ賞…フランスの名だたる文学賞レースで候補作入り!!フロール賞受賞作!
交際していた恋人・加奈子が既婚者と知った朝陽大輝。関係を清算しようとしたが、加奈子は朝陽の目の前で自死してしまう。葬儀後、加奈子の夫・清瀬隆が朝陽の家を訪れる。二人の関係を知っており、「貴方しか加奈子の話が出来る相手がいない」と言い張り、なぜか日々料理を提供する。清瀬に嫌悪感を抱き彼の作る食事も拒否する朝陽だったが、自分に執着する彼と接するうち、新たに複雑な感情が生まれていく。ある時、嗜虐心の赴くままに清瀬と接した朝陽は、彼が「不能」であること、その背景にある加奈子との凄絶な関係性を知りー。
零細出版社アルバイトの大学生・米田は、実話怪談記事の執筆もおこなう「怪談ライター」だ。ある日彼は取材の最中に、乃亜という不思議な、赤い服を着た女性と出会う。彼女はオカルトマニアで怪談の現場に多数足を運んでいた。そして特に「神隠し」に執着しており、ある事情から自らもいつか異界へと行くことを夢見ていた。初めは乃亜と関わり合いになりたくないと感じていた米田だったが、深夜のオカルトスポット巡りなどのデート(!?)を通じて、否応なく距離を縮めていく。そして夏休み、奇妙な祭りの風習があるという話を聞いて、後輩の実家がある山奥の土地に赴いたのだが…。ラストが深く沁みる、新時代の青春恋愛ホラー。
Twitterで生まれた新しい文学“140字小説”の旗手となる作家・方丈海による珠玉のショートショート170余の作品を再編集・再構成し、完全オリジナル短編作品も加えて新しい仕立てでお届けする。掲載された140字小説群を読み終わるとき、最後に始まるのは“瑞月”の過去と現在、そして未来を救う物語ー。Twitter文学の最前線を歩む方丈の“到達点”にして新展開となる物語の行く末を見届けるのはー“あなた”です。
法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体。 一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび上がる。 僕(宏哉)と杏梨は、週に3回クリニックで人工透析治療を受けなければならない。そうしないと生命を維持できないからだ。ベッドを並べて透析を受ける時間は暇で、ぼくらは学校の噂話をして時間を潰す。 僕らの通う鏡沢高校には校則がない。ただし、入学式のときに生徒手帳とともに分厚い六法を受け取る。校内のいたるところには監視カメラが設置されてもいる。 髪色も服装も自由だし、タピオカミルクティーを持ち込んだって誰にも何も言われない。すべてが個人の自由だけれども、“法律”だけは犯してはいけないのだ。 一見奇妙に見えるかもしれないが、僕らにとってはいたって普通のことだ。しかし、ある変死事件をきっかけに、鏡沢高校、そして僕らが住む街の秘密が暴かれていくーー。 『法廷遊戯』が映画化され注目を集める現役弁護士作家の特殊設定リーガルミステリー。
台風による豪雨で土砂災害が発生し、ひとつのニュータウンが消失した。復旧現場から発見された一家四人の惨殺遺体。防災ジャーナリスト名取陽一郎が現場に立ったとき、真実への扉が開かれるー異彩を放つ!真相解明の新たなロジック。
銃弾飛び交い、炎渦巻く大塩平八郎の乱の後、大坂から脱出し、江戸へと移った泡界坊。かの地で怪しげな瓦版を売って、公儀に反抗する日々。そんなとき泡界は、江戸の汲み取りを仕切る葛西の頭領から助けを求められる。土田新吉郎なる男が、将軍のおぼえめでたいのをかさにきて悪行三昧だというのだ。土田は葛西の頭領の娘をむりやり妾にしようとし、莫大な金を生む肥料の利権を掠め取ろうとしているという。しかもこの土田、泡界が憎からず思っていた“料理屋”の女を捨てて店に叩き売っていたのだ。将軍の御忍び接待を仕込む土田を破滅させるため、泡界の怒りの一撃が炸裂する!これぞ懲悪歴史時代小説。
はるか未来、容姿も社会体制も変貌しきった人類は、古い歴史をもつ異星種族セネクシと果てしない戦いを続けていた。原始星群をめぐる巡航艦“混淆”で、敵の抹殺だけを教えられて育った少女プルーフラックスはきたる初陣に思いを馳せていたが…。圧倒的なスケールと美しいヴィジョンで人類と異星人との戦いを描いたネビュラ賞受賞作「鏖戦」。近未来、200万の人口を擁する月コロニー。そこにある天然の洞穴を利用した科学施設“氷穴”では、絶対零度達成の実験が進行中だった。ここに、100年以上ものあいだ冷凍保存されていた人間の頭部410個を地球から持ち込み、一大データベース化しようとする新たなプロジェクトが動き出す。月世界での壮絶かつ衝撃的な実験を描いた星雲賞受賞作「凍月」。2022年11月に逝去したベアの真骨頂たる、ハードSFの代表中篇2篇を収録した一冊。
1926年12月3日、『アクロイド殺し』などで注目を集める気鋭の作家アガサ・クリスティーが失踪した。ときにアガサ、36歳。最愛の母親を亡くし、夫のアーチーは年若い下流階級の娘ナンと愛人関係にあって、ひどく落ち込んでいたという。そして失踪当日の朝、離婚を切り出した夫と大喧嘩をしたアガサは、夫と幼い娘テディの乳母に手紙を残して、煙のように姿を消した。捜索には延べ数千人の警官が動員されたが、アガサは一向に見つらず、夫による殺害と遺体遺棄まで疑われたー11日後、ホテル滞在中に発見されるまでは。一方、アガサからアーチーを略奪したナンは、ある秘密を抱えていた…不可解な失踪のあいだ、アガサとナンに何が起こったのか?世界で最も有名ナミステリ作家の実際の失踪事件をもとに描かれた衝撃のサスペンス。
ヴィオレットは、ブルゴーニュにある小さな町でたったひとりで墓地管理人をしている。彼女が住む管理人用の家の一階には、墓地に来る人の待合室ーのような空間がある。墓参者はここで悲しみに浸り、故人との思い出を語り、死にまつわる秘密を打ち明ける。そして二階には、ヴィオレットだけの部屋があり誰も踏み入ることはなかった。彼女の過去と同じようにー。そんなある時、一緒の墓に入ると決めた男女の存在が、彼女の人生を大きく揺るがし、あきらめていた感情に血が通い始める。フランスで130万部のベストセラー長篇。
ヴィオレットが管理する墓地は美しい。通路には樹齢百年になる菩提樹が並んでいて、多くの墓が花で飾られている。誰も訪れなくなった墓が淋しく見えないよう、ヴィオレットが花を手向けているから。墓地管理人の仕事は、そこに眠る者たちの世話をするということなのだ。ある日、ジュリアンという警視が母親の遺言をもって突然やってきた。母親が、家族には秘密で愛人と同じ墓に入ると約束していたのだという。50歳を間近にして、何度も絶望に襲われ、新しい人生をあきらめていたヴィオレットにとって、この男女の物語は大きな衝撃を与える。花が新鮮な水で生き返るように、彼女の人生もまだ終わってはいないのだ、とー。
生命工学と情報技術を独占して見幸市を統治する大企業・佐久間種苗を襲った細菌テロは、百名超の研究員を殺害する。市境警備隊から微細走査官に異動した来未由は、ABID(アブソルート・ブラック・インターフェイス・デバイス)によって遺体の心象空間を走査、事件直後の現場の様子を調査していく。また佐久間種苗の内情を探る元刑事の尾藤は、テロの背景に人工知能にまつわる機密の存在を知る。一方、高層民の少女コチが所属する電気連合組合から命じられたのは、テロで命を落とした組合員から或る記憶装置を回収することだった。『プラ・バロック』『躯体上の翼』の著者が、令和日本に放つサイバーパンク巨篇。