小説むすび | 2023年8月発売

2023年8月発売

坂を下りてくる人坂を下りてくる人

出版社

駒草出版

発売日

2023年8月21日 発売

ここにいないものを ここで想うということ── 『水の出会う場所』や『菜飯屋春秋』で知られ、2021年に急逝した作家、 魚住陽子が遺した個人誌『花眼』(ホゥエン)からの短編集。 2006年から2011年にかけ、計10号刊行された作家、魚住陽子の個人誌『花眼』。自身や他の作家の短編はもちろん、自身の心情や近況を綴ったエッセイのような趣があるていねいなあとがきを収録したこの冊子は、装画のチョイスなどにも一貫した美意識を感じさせる。魚住陽子の長年のファンはもちろん、最近その作品に触れた方には特に魅力的なものに違いない。 2021年の急逝後、一周忌を前に発表した『夢の家』に続き、その『花眼』からの10編の短編と著者による全10号分のあとがき、そして『花眼』各号の表紙・裏表紙やその制作背景についてのテキスト(装画を手掛け、寄稿もしている魚住氏の伴侶、加藤閑氏による)をまとめた1冊。 かつて「花眼・ホゥエン」という美しい言葉の、美しい意味を教えてもらったことがある。近くのものは朧ろにかすみ、遠くのものだけが晴朗に見渡すことが できる目。平たく言えば老眼のことだけれど、広義には「春の満開の花の中に秋の衰弱と凋落を見、命の輝きのさなかに死を予見する。反対に秋の別離と荒廃の最中に、萌え出る生命と、満開の花を透視することができる」という意味もあるのだという。 ーー『花眼』No.1「あとがき」より 【目次】 中庭の神 朝餉 坂を下りてくる人 骨の囁き 白い花 芙蓉の種を運んだのは誰 野末 山繭 夕立ち シオノ 附録 個人誌『花眼』について

蒼天の鳥蒼天の鳥

出版社

講談社

発売日

2023年8月23日 発売

第69回江戸川乱歩賞受賞作。 『名探偵コナン』『電脳コイル』『特命係長 只野仁』『特捜9』など数多くのテレビドラマ、アニメを手がけてきた、大ベテラン脚本家が、江戸川乱歩賞を受賞! 歴史に埋もれた鳥たちが、いま羽ばたく。  大正十三(1924)年七月、鳥取県鳥取市──。  主人公の田中古代子は、女性の地位向上を目指し「新しい女」の潮流を訴える女流作家である。本格的に作家として活動するため、娘の千鳥と内縁の夫・涌島義博の三人で、鳥取から東京に引っ越しをする予定を立てていた。移住直前のある日、古代子は千鳥と共に、活動写真「兇賊ジゴマ」を観るために鳥取市内の劇場「鳥取座」に向かう。ところが観劇中、場内で火事が発生。取り残された古代子と千鳥が目にしたのは、煙につつまれる舞台上に立つ「本物」の「兇賊ジゴマ」であった。逃げようとする二人の目の前で、ジゴマはひとりの男を刺殺し、逃亡する。命からがら鳥取県気高郡浜村の自宅に逃げ帰った古代子と千鳥であったが、一息つく暇もなく、再び謎の人物に襲われるのだった。  果たしてこの世の中に、本物のジゴマなどいるものだろうか……? 謎は思いがけない事態へと発展していく。  鳥取出身の実在の作家・田中古代子をモデルに、友人の女流作家・尾崎翠や鳥取に流れてきた過激アナキスト集団「露亜党」、関東大震災など、大正期を鮮やかに描く歴史活劇ミステリー!

アリとダンテ、宇宙の秘密を発見するアリとダンテ、宇宙の秘密を発見する

米国発、LGBTQ+青春小説の金字塔! 1987年の夏、メキシコとの国境に近い町エルパソ。両親と暮らすメキシコ系の15歳の少年アリことアリストートルは、自分にも家族にもまわりの世界に対しても、正体のわからない違和感と苛立ちを覚えていた。そんなある日、苦手な水泳の練習のために訪れたプールで、同い年のメキシコ系の少年ダンテと出会い、泳ぎを教えてもらうことに。独特の感性も臆さず、屈託なく自分をストレートにぶつけてくるダンテと、お互いの愛情を素直に表現し合う彼の家族に驚きつつも、アリは彼らに惹かれ、友情を育んでいく。そしてさまざまな「事件」や「別れ」を通して、アリはダンテとともに「宇宙の秘密」--この世の真実に気づいていく…。 ラムダ賞、ストーンウォール賞他数々の文学賞を受賞、タイム誌の選ぶオールタイムベスト100冊(YA部門)選出、2023年9月には全米映画公開。十代から親世代まで、すべての人に今だからこそ読んでほしい、限りなく美しく瑞々しいLGBTQ+青春小説の金字塔! 【編集担当からのおすすめ情報】 本作がアメリカで最初に刊行されたのは2012年。YA小説と位置づけられますが、主人公アリとダンテだけでなく、彼らの両親の成長も丁寧に描き、世代を超えて広く読まれてきました。90万部を超えるベストセラー(2023年春現在)となり、YA小説、LGBTQ+小説の定番として現在も読み続けられている名作です。2021年に刊行された続編もNYタイムズベストセラーリスト1位となり、今年9月に映画版が全米で公開されるなど、今もなお大きな話題を振りまいています。 本国での出版から10年以上経った今、邦訳出版が叶いました。日本では今も法的に同性婚が認められていません。制度が十分とも、差別が無くなったとも言えません。それでも年々LGBTQ+に対する意識、特に若い世代の意識は変わってきています。そんな中で、本書が読まれた方の中に小さくても何らかの変化をもたらしてくれることを願ってやみません。

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