小説むすび | 2023年発売

2023年発売

【国書刊行会 創業50周年記念復刊】 〈ちがうね、諸君、もう一度言うが、それはちがう。君たちは若いし、頬っぺたにも熟れた林檎みたいな赤みがさしている。ジーンズだって擦りきれ、声も明るく甲高い。だがね、ステパン・イリイチ・モロゾフが恋人のワレンチーナを愛したような愛し方はどのみち絶対にできっこないんだ・・・・・・〉 愛の物語を一切省き突然の狂気へと読者をひきずりこむ、ゼロ形式の恋愛小説ともいうべき表題作「愛」。女教師と教え子のアブノーマルな〈授業〉を即物的に描いた「自習」。故人に関する驚愕の事実が友人によって明かされる「弔辞」。 そのほか「真夜中の客」「競争」など、日常の風景のさなかに悪意を投げ込んで練りあげた文学的オブジェの数々。あまりの過激さに植字工が活字を組むことを拒否したとされる、最もスキャンダラスな作家が放つ、グロテスクかつアンチ・モラルな短篇集。 ◎装幀=松本久木(松本工房) *本書は、1999年に小社より刊行した『愛』を、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。

山本周五郎 ユーモア小説集山本周五郎 ユーモア小説集

出版社

本の泉社

発売日

2023年2月21日 発売

周五郎のユーモア小説は単純ではない。 ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。おかしみはやさしい人間のもの。珠玉のユーモア七編を厳選。 好評の『山本周五郎 人情ものがたり』(武家篇)『山本周五郎 人情ものがたり』(市井篇)『山本周五郎 心ばえの物語集』に次ぐ第4弾。解説は新船海三郎「時代のなかのユーモア」を付載。 〜〜〜〜〜〜 周五郎のユーモア小説は単純ではない。ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。「ユーモアは、もしかすると人が生きる〈真実〉に一番近いのかもしれない。夏目漱石はユーモアを〈人格の根底から生ずる可笑味〉と評した」(新舩海三郎解説「時代のなかのユーモア」より)。 好評既刊『人情物語 武家篇』『人情物語 市井篇』『心ばえの物語集』に続く、山本周五郎の珠玉の短編集。 ※書影を最終画像に変更いたしました(3/6)。 評釈堪忍記 真説吝嗇記 おしゃべり物語 ゆうれい貸家 よじょう わたくしです物語 ひとごろし 【解説】 時代のなかのユーモア(新船海三郎)

慈悲の糸慈悲の糸

オランダの文豪が描き出す、日本の原風景 大正時代、五か月にわたって日本を旅したオランダを代表する世界的な作家が、各地で見聞・採集した民話・神話・伝承や絵画などから広げたイメージをもとに描いた物語、全30話。 著者没後100年記念出版!  浄福と慈悲の阿弥陀、高く伸びた茎の先に花を咲かせ、陽ざしを浴びてきらめく幾千もの蓮華の池を越えて、至福の涅槃(ねはん)に入ることをみずからは望まなかった阿弥陀、その阿弥陀が東の水平線の上に、あるいは高みから波打つように下方に向かう山々の広大な稜線の合間に姿を現わすとき、その両眼は、胸元は、指先は光り輝く。  そして、その光とともに首の周囲の〈慈悲の糸〉を摘(つま)みあげる。死後の世界に阿弥陀のそばへ寄るすべての者たち、たとえ、ちっぽけな、とるに足らぬ者であれ、今こうして、両眼に光輝をたたえたその姿を仰ぎ見るすべての者たちへ向けて。いかにちっぽけでとるに足らなくとも、苦難に満ちた現世の生を終えたすべての者たちがその糸をつかみ、胸にしかと抱くようにと、首に三重(みえ)に巻いた糸を持ち上げるのである。(本書「序奏」より) 序奏 第一話 女流歌人たち 第二話 岩塊 第三話 扇 第四話 蛍 第五話 草雲雀(くさひばり) 第六話 蟻 第七話 明かり障子 第八話 篠突く雨 第九話 野分のあとの百合 第十話 枯葉と松の葉 第十一話 鯉のいる池と滝 第十二話 着物 第十三話 花魁(おいらん)たち 第十四話 屏風 第十五話 ニシキとミカン 第十六話 歌麿の浮世絵 『青楼絵抄年中行事』下之巻より 第十七話 吉凶のおみくじ 第十八話 源平 第十九話 蚕 第二十話 狐たち 第二十一話 鏡 第二十二話 若き巡礼者 第二十三話 蛇乙女と梵鐘 第二十四話 波濤 第二十五話 審美眼の人 第二十六話 雲助 日本奇譚一 権八と小紫 激情の日本奇譚 日本奇譚二 雪の精 親孝行の日本奇譚 日本奇譚三 苦行者 智慧の日本奇譚 日本奇譚四 銀色にやわらかく昇りゆく月 憂愁の日本奇譚 訳者あとがき

あわのまにまにあわのまにまに

出版社

KADOKAWA

発売日

2023年2月22日 発売

どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろうーー 「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした? 2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。 2029年、韓国からきた兄の家出、おばあちゃんのお通夜で通常運転のママ。2019年、クルーズ船で一緒になった夫婦と年若の青年。2009年、クリスマスの夜のダイヤの指輪、1999年、ノストラダムス後も終わらない世界で「ママは、パパが死ぬのを待ってたんじゃないか」と言った幼なじみ。1989年、親友からその亭主の死を知らせる電話。1979年、おなかの中の三ヶ月になる命。 生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」が揺らぐ逆クロニクル・サスペンス。 〈世相をえぐり取る全6章〉 1 二〇二九年のごみ屋敷 2 二〇一九年のクルーズ船 3 二〇〇九年のロシアンルーレット 4 一九九九年の海の家 5 一九八九年のお葬式 6 一九七九年の子どもたち 〈ある家族たちの軌跡をたどる全6章〉 1 二〇二九年のごみ屋敷 ーー二十三歳上の兄は、十八歳のとき日本国籍を選んで韓国からやってきた。おばあちゃんのお通夜でも、ママは通常通り。うすうす気づいていた。うちの家族はふつうとはちがう。 2 二〇一九年のクルーズ船 ーークルーズ船で一緒になった、私たちの子どもと言っていいぐらいの年齢の夫婦。新婚旅行だというのに、さらにもうひとまわりもふたまわりも年若の青年が同行していた。 3 二〇〇九年のロシアンルーレット ーーうちのおねえちゃんは変わってる。クリスマスの夜遅くに帰ってきて、ダイヤモンドの指輪を餃子で包んで食べようとするぐらい。そして私もおねえちゃんも、ママの掌の上で踊らされている。 4 一九九九年の海の家 ーーノストラダムスなんてあるわけないって思ってはいたけど、ほんとに世界は終わらなかった。海の家でバイト中、幼なじみの彼女は「ママは、パパが死ぬのを待ってたんじゃないか」と言った。 5 一九八九年のお葬式 ーー「あの人、死んだって」。親友から、その亭主の死を知らせる電話があったのは日付の変わるころだった。職場で出会い、結婚も出産も同じ年の親友。姉妹のようになんでも分けあった。 6 一九七九年の子どもたち ーーシャネルが死んだ年に、私たちは出会った。彼女が結婚するなら私も結婚するし、彼女が子どもを産むなら私も子どもを産む。そう決まっているから、そうしなければならないことだった。

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