2023年発売
「なんで同じ顔…?」魔王の復活阻止から数か月、王都へ帰還途中のパーティーを襲ったのはー髪型と服装が違う賢者ちゃん!?昔、固有魔法で増やしたコピーが、オリジナルを乗っ取りにきたのだ。得意の魔法も封じられ瞬く間に攫われた彼女を救うべく、隠居勇者が動き出す。見つけ出したはいいが、いつも冷静で毒舌の彼女が、何故か悶え死にしそうなうえ、愛の告白(?)までしてくる異常事態に。助けるしかないのだが…コピーにもとんでもない事情が!手がかりは、“ダブル賢者”の過去「エルフの里」に秘められていて?「この世で最も厄介な敵は自分自身ですねぇ」リライフ・ファンタジー第2弾開幕!
1973年、ブラジル西部のマット・グロッソ州。無慈悲な人体実験に関与したナチスの生物学者ヨシアス・マウラーを追跡するべく、当地へと赴いたユダヤ人の文化人類学者アラン・スナプスタインと医師のベン・バーネイズは、先の大戦での祖国敗北を否認する日本人移民・通称“カチグミ”の残党を追う日系人青年ヒデキ・ジョアン・タテイシと行動を共にすることになった。旅の果ての月夜、アランとタテイシは奇怪な刺青の少女を目撃するが、それは生命と精霊が二重写しとなる、濃密にして猥雑な世界との遭遇だったーアマゾンに奇怪な陰謀劇を構築する、バイオテクノロジーSF×幻想文学。第10回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。
フィリクスは何かを隠しているようだ。“わたし”は浮気を疑い、彼の携帯電話を覗き見てしまう。そこには、SNSで悪名高い陰謀論者がいた。荒唐無稽で差別的な言葉をばらまく男…これが愛した人の本当の姿なのか?“わたし”が本心を確かめようとした直前、彼が事故死したという報せが届く。謎を抱え、“わたし”は出会いの地を訪れる。さらなる衝撃の事実が待っているとは知らずにー。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストはじめ、米国の有力メディアが激賞するスリルに満ちた文芸作品。
1935年、エチオピア。孤児の少女ヒルトは、貴族のキダネとアステル夫妻の家で使用人になる。ムッソリーニ率いるイタリア軍のエチオピア侵攻の足音が近づくなか、キダネは皇帝ハイレ・セラシエの軍隊を指揮するが、皇帝は早々と亡命してしまう。希望を失ったエチオピアの兵士たちを鼓舞するため、皇帝にそっくりな男が皇帝のふりをする。彼の護衛についたヒルトは、自らも武器を手にして祖国エチオピアのために闘うことを選ぶがー。サルマン・ラシュディが「歴史を神話のレベルにまで抒情的に引き上げた素晴らしい小説」と評し、歴史のスポットライトがあたらなかった女たちの戦争を語ったとして絶賛されたエチオピア出身の作家マアザ・メンギステによる2020年ブッカー賞最終候補作。
オランダの小さな村の酪農家で育ったヤスが、赤いジャケットを脱がなくなったのは10歳の時だった。大切なウサギの代わりに兄が死にますようにと神に祈り、それがほんとうになったから。これ以上悪いことが起こらないよう外の世界から自分を守るためのジャケットだ。でも、どんどん家族は壊れていき、ヤスはますます自分の内に閉じこもるー史上最年少でブッカー国際賞受賞。詩人としても活躍するオランダ文学界の新星が、類いまれな表現力で“喪失”を描いた長篇小説デビュー作。
ネットへの視覚的なアクセスを遮断する規制が敷かれた香川県からやってきた女子高生の大阪観光サイバーパンクの表題作、百合SFアンソロジーや『異常論文』へ書き下ろしとして発表された短篇群など、『元年春之祭』著者による知性と感情を揺さぶる小説全8篇
清二郎は写本仕事で糧を得ているが、御政道による禁書や回収の締めつけで、何やら危い御時世になりそうだ。そんなとき、清二郎は大塩平八郎に出会い、世直しの想いを強めていく。さらに、同じころに出会った破戒僧・第三代法界から見込まれる。第四代として名を継ぐことを宿命づけられた清二郎は頭を剃り、泡界と名を変えた。違法刷り物にのめり込んで公儀を挑発し、願人坊主の身なのに女を抱く。そんな彼に大塩から密命が!不正役人を銃で仕留めろというのだ。一八三七年ついに大塩決起のとき、泡界は世のため人のため、牙をむく。ろくでもない体制に一撃を!熱く強く激しい坊主が天地をひっくり返す、型破りの歴史時代小説。
囚われの令嬢ルシンダ・ヴァン・ヘルシングを助け出すため、ウィーンヘとわたったメアリ・ジキルら"モンスター娘"たち。だがまたも彼女たちの前に"錬金術師教会"に属するマッド・サイエンティストたちが立ちはだかり……!? 三部作の第二部、堂々の完結篇
長崎の中学校で仲良くなった同級生のすぐりと気持ちがすれ違ったまま、親の仕事の関係でニューヨークに移住し、高校生となった一葦。激動する社会で悩み、恐れ、ふさぎ込みそうになる。救ってくれたのは、NYの高校でオタク友達と始めた“アカペラコーラス”だった。そして歌声は海を越えて、遠い長崎のみならず世界とも繋がっていくー。ニューヨーク在住の著者が、彼ら、彼女らの青春を色鮮やかに描くエバーグリーン小説。
愛の物語を一切省き突然の狂気へと読者をひきずりこむ、ゼロ形式の恋愛小説ともいうべき表題作「愛」。女教師と教え子のアブノーマルな“授業”を即物的に描いた「自習」。故人に関する驚愕の事実が友人によって明かされる「弔辞」。そのほか「真夜中の客」「競争」など、日常の風景のさなかに悪意を投げ込んで練りあげた文学的オブジェの数々。あまりの過激さに植字工が活字を組むことを拒否したとされる、最もスキャンダラスな作家が放つ、グロテスクかつアンチ・モラルな短篇集。
荘園制の残り香がかおるスペイン南西エストレマドゥーラの大農園。還暦を過ぎ認知症を患ったアサリアスは暇を出され、義弟の家へやっかいになる。義弟はすぐれた嗅覚をもち、主人の狩りのお供にと重宝されていたが、ある日事故で足を骨折してしまう。義弟のかわりにアサリアスがお供をするも、いつもどおりとはいかない。狩りの調子は振るわず、苛立った主人が怒りをぶつけた先は…。広がる果てない原野と鬱蒼とした森、そして無垢なる労働者たち。生命の息づかいは漂い流れるーエストレマドゥーラの乾いた風に乗って…。戦後スペイン文学の巨匠ミゲル・デリーベスによる名著。農園主とその労働者たちの生きる姿を圧倒的な筆致で描き出す。
周五郎のユーモア小説は単純ではない。 ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。おかしみはやさしい人間のもの。珠玉のユーモア七編を厳選。 好評の『山本周五郎 人情ものがたり』(武家篇)『山本周五郎 人情ものがたり』(市井篇)『山本周五郎 心ばえの物語集』に次ぐ第4弾。解説は新船海三郎「時代のなかのユーモア」を付載。 〜〜〜〜〜〜 周五郎のユーモア小説は単純ではない。ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。「ユーモアは、もしかすると人が生きる〈真実〉に一番近いのかもしれない。夏目漱石はユーモアを〈人格の根底から生ずる可笑味〉と評した」(新舩海三郎解説「時代のなかのユーモア」より)。 好評既刊『人情物語 武家篇』『人情物語 市井篇』『心ばえの物語集』に続く、山本周五郎の珠玉の短編集。 ※書影を最終画像に変更いたしました(3/6)。 評釈堪忍記 真説吝嗇記 おしゃべり物語 ゆうれい貸家 よじょう わたくしです物語 ひとごろし 【解説】 時代のなかのユーモア(新船海三郎)
小学校高学年になった悠太の淡い恋、世界一周に出かける父・悠治、ヴァイオリンの才能に目覚める妹の央子…小さな波風を立てながらも平穏な暮らしを続ける木暮家。妻・菊江の死を乗り越えて大きく発展していく利平率いる、時田病院。不幸な結婚から新たな恋を獲得する時田家の次女・夏江…そんな両家の日常を一気に押しつぶす太平洋戦争の開戦と、相次ぐ東京への空襲。戦時体制下に暮らす人びとの運命を稠密に描く大河小説。芸術選奨文部大臣賞。
オランダの文豪が描き出す、日本の原風景。大正時代、五か月にわたって日本を旅したオランダを代表する世界的な作家が、各地で見聞・採集した民話・神話・伝承や絵画などから広げたイメージをもとに描いた物語、全30話。
どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろうーー 「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした? 2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。 2029年、韓国からきた兄の家出、おばあちゃんのお通夜で通常運転のママ。2019年、クルーズ船で一緒になった夫婦と年若の青年。2009年、クリスマスの夜のダイヤの指輪、1999年、ノストラダムス後も終わらない世界で「ママは、パパが死ぬのを待ってたんじゃないか」と言った幼なじみ。1989年、親友からその亭主の死を知らせる電話。1979年、おなかの中の三ヶ月になる命。 生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」が揺らぐ逆クロニクル・サスペンス。 〈世相をえぐり取る全6章〉 1 二〇二九年のごみ屋敷 2 二〇一九年のクルーズ船 3 二〇〇九年のロシアンルーレット 4 一九九九年の海の家 5 一九八九年のお葬式 6 一九七九年の子どもたち 〈ある家族たちの軌跡をたどる全6章〉 1 二〇二九年のごみ屋敷 ーー二十三歳上の兄は、十八歳のとき日本国籍を選んで韓国からやってきた。おばあちゃんのお通夜でも、ママは通常通り。うすうす気づいていた。うちの家族はふつうとはちがう。 2 二〇一九年のクルーズ船 ーークルーズ船で一緒になった、私たちの子どもと言っていいぐらいの年齢の夫婦。新婚旅行だというのに、さらにもうひとまわりもふたまわりも年若の青年が同行していた。 3 二〇〇九年のロシアンルーレット ーーうちのおねえちゃんは変わってる。クリスマスの夜遅くに帰ってきて、ダイヤモンドの指輪を餃子で包んで食べようとするぐらい。そして私もおねえちゃんも、ママの掌の上で踊らされている。 4 一九九九年の海の家 ーーノストラダムスなんてあるわけないって思ってはいたけど、ほんとに世界は終わらなかった。海の家でバイト中、幼なじみの彼女は「ママは、パパが死ぬのを待ってたんじゃないか」と言った。 5 一九八九年のお葬式 ーー「あの人、死んだって」。親友から、その亭主の死を知らせる電話があったのは日付の変わるころだった。職場で出会い、結婚も出産も同じ年の親友。姉妹のようになんでも分けあった。 6 一九七九年の子どもたち ーーシャネルが死んだ年に、私たちは出会った。彼女が結婚するなら私も結婚するし、彼女が子どもを産むなら私も子どもを産む。そう決まっているから、そうしなければならないことだった。
完全民間宇宙旅行のモニターツアーで、念願の宇宙ホテル『星くず』に着いた途端見つかった死体。それも無重力空間で首吊り状態だった。添乗員の土師穂稀は、会社の指示に従いツアーの続行を決めるがー。一癖も二癖もあるツアー客、失われる通信設備、逃げ出すホテルスタッフ。さらには第二の殺人まで起きてしまう。帰還を試みようとすると、地上からあるメッセージが届き、それすら困難に。『星くず』は、宇宙に漂う巨大密室と化したのだった。
元は名うての博奕打ち、今は江戸は本所でさびれた蕎麦屋を営む銀平を、不治の病が襲った。死を前に、残された時間をいかに生きるべきか問い続ける銀平のもとへ、かつての自分を彷彿とさせる青年・清太が転がり込んだ。銀平は、清太や店を訪れる客らとの交流に、次第に残り僅かな人生を前向きにとらえるようになっていく。だが、再会を果たした元妻を襲った悲劇、さらに信頼していた清太の裏切りが、銀平の生きる気力を奪ってしまう。そして、逃れられない過去の因業が忍び寄り…。貧しさと業に苦しみながらも、希望と義理人情に賭けた人々の心揺さぶる人生賛歌。
注目作家が“ままならない恋愛”を描く、三つの物語。「ごっこ」…六つ年下の恋人の浮世離れした逃避行に付き合って、あてのないドライブを続けるわたし。逃亡資金がそろそろ底をついてきた。「見知らぬ人」…友人の結婚式に集う客たちの中に、夫の不倫相手が混じっているのではないか。あの女を探す那月が出会ったのはー。「はこのなか」…田舎町の中学で出会った奔放な女友達タクボに思いを寄せる戸川。今の願いは、結婚したタクボの隣室に住むこと。
たった一つのどら焼きが、海を越え、時代も越える。少女の切実な願いが胸を打つ感動巨編!製菓学校を卒業した樋口和子は、浅草にある奥山堂の門を叩く。祖父が亡くなる前に作ってくれた特別などら焼きを再現すべく、和菓子職人への第一歩を踏み出すために。だが、待っていたのは男ばかりの職人世界の逆風、なかなか工房に立たせてもらえない年功序列の社会。荒波の中でもひたむきに努力を続ける和子は、やがて一人前の職人になっていく。一方、調べていくうちに、祖父が太平洋戦争に出征していたころ、ある船に乗っていたことを知る。「お菓子の船」と呼ばれていたその船にこそ、どら焼きの秘密があるかもしれない。当時の乗員に会って話を聞いていくうちに、和子は祖父の知らなかった一面を見つけていく。