2023年発売
町田康さん推し! 言葉に幅があり、しかもそれが的確に使用されている。辛辣な個性とその周囲を無情に描いていてよい。 (文藝賞選評より) 現役慶応大学院生であり、漫画『踊るリスポーン』の著者・三ヶ嶋犬太朗が鮮烈の文芸デビュー! 「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する……。表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「奇食のダボハゼ」をおさめた短編集。
三年前のバイク事故で右眼を失明した警察官の尾崎冴子は、訪れた事故現場でフラッシュバックのようにその一部始終を目撃する。以来、尾崎の右眼は三年前の光景を映すようになった。それを知った署長の深澤は、尾崎の信頼する弓削警部補と共に、未解決一家四人殺害事件の再捜査に乗り出すが…第9回新潮ミステリー大賞受賞作。
東京都久慈見町で幻の高級ワイン「クジミ」を飲んだ11人が死亡。居合わせたマヤの相棒・代官山も意識不明の重体に。ワインには新型の農薬が混入されていた。マヤは愛する(?)代官山を奪われた怨念を胸に、ドラマかぶれの熱血刑事・天神弥太郎と共に捜査に乗り出す。果たしてこれは無差別殺人か怨恨か。大人気ユーモアミステリー、待望の最新刊!
産廃の闇に消えた二つの命。遺族と向き合う刑事が執念の捜査で摑むのは真実? 冤罪?警察小説のヒットメーカーが満を持して放つ、傑作ヒューマンミステリー!少ない降水量にもかかわらず、雨により埼玉県の黒部山で土砂崩れが発生した。一人が行方不明になるなか、瓦礫からは不法投棄された産業廃棄物が大量に発見される。県警は事故ではなく事件と判断、捜査一課の奈良健市も捜査に加わる。捜査本部は崩落発生地の所有者特定に着手。すると、意外な人物の名があがった。それは迷宮入りさせてしまった十六年前の殺人事件で、奈良が犯人だと確信し、逮捕直前まで迫った因縁の相手なのだが……。
20代半ばにしてデビューをした作家・矢崎健介、70歳になった。 「世界一もてない男」を自称するユーチューバーが、矢崎をユーチューブに誘う。 承諾した矢崎が語り出したのは、自由である人間について。自由な人間は滅多にいないのだと言った。 自由であるということは、唯一の希望を生む。 矢崎は、これまで付き合った女性について話したいと言う。約半世紀の間に、登場しては、消えていった女性たち。思い出して、涙を見せながら、語られる女性たちとの思い出。 それは、今考えると、生命の源泉だった。 亡くなった女性も、行方不明の女性もいた。彼女たちとの付き合いが、作品を生みだし、矢崎健介という男を作っていたのだ。 待望の傑作連作小説
帝国騎士団に所属していたアッシュは順風満帆な人生を送ったが 婚約者である貴族のお嬢様から婚約解消を言い渡され、さらに騎士団も追放されてしまう。 全てが嫌になったアッシュはダンジョンの資源を利用して急成長を続けるローズベル王国の第二ダンジョン都市で 狩人(ハンター)として新たな人生をスタートすることに。 旧友との再会、便利な魔導具に囲まれた生活を送るアッシュは 灰色の人生をひっくり返すために圧倒的実力で名声を獲得していく。 一方、アッシュのいなくなった帝国騎士団では一人の後輩・ウルカが目の色を変えて彼を追いかけようとしているのだった。
結婚できないと告げた彼を、今も愛してるーー 涙の作家シャロン・サラが綴る再会物語! 嵐の夜、市内全域が大停電に見舞われ、オフィスにいたジェシカは 頭に大怪我をして気を失い、病院に担ぎ込まれた。 意識が戻った彼女の目に映ったのは、元恋人のストーン。 彼を愛したことは、これまでの人生で最高かつ最悪の体験だった。 その名のとおり、“石”のように頑なな心を持つ彼は、 どんな女性とも結婚できないと明言していた。 だからジェシカは何も告げずに去ったが、彼は追いかけてもこなかった。 あれから2年半。彼女はストーンの助けをきっぱりと拒絶するが、 彼は気にも留めず世話を焼き続ける。 やさしくしないで! もうあなたに心を許すわけにはいかないのだから。 押しも押されもせぬ大人気作家シャロン・サラが、36時間に及ぶ暴風雨で起きた大停電の夜をテーマに綴った名作です。ヒーロー、ヒロインともにとても魅力的!
“親愛なるイーストン”と書いて、ペイトンは日記に突っ伏した。5年前、彼女は見知らぬ洗練された実業家にひと目で心を奪われた。彼から部屋に誘われたときは夢を見ているのかと疑ったけれど、裕福なお金持ちと田舎娘の関係が長続きするとは思えなかった。でもまさか、自分が双子の男の子を身ごもるとは。愚かで無責任だった母のせいで、子どもたちは父を知らずに育っている。いつか会えるというはかない希望を胸に、ペイトンは双子のことや自分の気持ちを日記に綴りつづけていた。ところが、千載一遇のチャンスが訪れてイーストンに再会できたとき、彼から子どもとの時間を奪った罪悪感で、ペイトンは怖じ気づいて…。
新しいボスと、私の愛しい息子。 同じ色の髪、同じ色の目……まさか。 ハリエットはやむなき事情から人工授精で匿名者の子を身ごもり、 人里離れた浜辺を一人で歩いているときに産気づいてしまった。 たまたま通りかかった外科医の男性に救われるも、 母子ともに命の危険にさらされた状況で意識が混濁し、 彼女はそのときのことを覚えていなかったーー 命の恩人であるそのハンサムなドクターの顔さえも。 彼は駆けつけた救急隊に母子を託し、名乗りもせずに立ち去った。 2年後、ハリエットは看護師として復帰し、同僚に温かく迎えられるが、 ただ一人、新しい外科医長のパトリックだけはつらくあたるのだった。 いったいどうして、彼は私にこんなにも辛辣なの……? ハリエットのことを、我が子の父親もわからない身持ちの悪い女性だと思い込んでいるパトリック。ある日、彼は自分が思い違いをしていたことを知り、素直に謝罪します。さらに、彼女の息子に何か絆を感じるのは、自分が父親だからかもしれないと思い始め……。
親孝行なシンデレラは、 犠牲を強いられ、追いつめられて……。 ベッツィーは丘の上に立つオークの木の下で、人知れず泣いていた。 人生でたった一度の社交シーズンに失敗したあと、 野心家の母に命じられた、恥ずべき玉の輿作戦にも失敗した。 さる貴族にキスを迫ろうとしたところ、相手が既婚だとわかったのだ。 親孝行と思って、望まぬことも頑張ってきたけれど、もう限界……。 地べたに座りこんで涙を流す彼女に、声をかける者があった。 隣の伯爵領を代理で管理しに来たという、たくましくハンサムな執事だ。 そのジェームズに小作農の娘と間違えられ、ベッツィーはむっとするが、 なぜか彼とは気安く話せて、いつしか涙は乾いていた。 本当は、ジェームズは執事などではなく、由緒正しき子爵とも知らずーー HQヒストリカル・スペシャルの刊行300冊目となる記念号! 『伯爵と片恋の婚礼』(PHS-286)の関連作である本作は、前作ヒロイン、デイジーの長兄ジェームズが執事になりすました“お忍び子爵”として大活躍。先の読めない恋物語です!
亡き父に代わり、男装して城を守っているジュリアナは、身も心も男になりきるために純潔を守り、修道女のように暮らしてきた。美しい貴婦人のガウンに袖も通さず、ささやかなレディの嗜みといえば、母が遺してくれた香りのよい石鹸をそっと使うことだけ…。ある夜、彼女は、何者かに襲われて深手を負った騎士を森で発見する。顔面蒼白で意識を失ったその男性を城に連れ帰り、寝ずの看病をするうち、ジュリアナは今まで感じたことのない、感じてはいけない興奮を覚えた。私が女であると強く思わせる、彼のたくましい体、ハンサムな容貌。いいえ、そんなことを考えちゃだめよ!彼は敵かもしれないのに!だが、目を覚ました彼の青く美しい瞳に、ジュリアナは心を奪われたー。
「僕のベッドでいったい何を?」 その傲慢な声を、恍惚がかき消したーー 地味で実用的な服装ばかりのきまじめなジョディは、恋愛とはまるで無縁。 仕事熱心で小学校の校長に抜擢された彼女の目下の悩みは、 子どもたちの親の大半が勤める村の工場が買収され、 閉鎖の危機に追い込まれていることだ。 買収したのは、気鋭の有名実業家レオ・ジェファーソンーー 傲慢な乗っ取り屋が会社の利益のために村の心臓をもぎ取ろうだなんて! レオのような大企業トップにはそうそう会えないと聞き、 それならばと、彼の滞在先であるホテルの最高級スイートで待つことに。 ところがジュースと間違えてお酒を飲んで、夢うつつのうちに、 まったくいつもの彼女らしくなく、レオに純潔を捧げてしまい……。 翌朝、ジョディはレオに夜の仕事をしている女性と思い違いをされ、非難されて戸惑います。動転した彼女は身元を明かさないままその場をあとにしますが、後日、校長として出席した会食の席で、レオと気まずい再会を果たして……。P・ジョーダンの筆が冴える名作!
9カ月ぶりの再会の場が分娩室だなんて! 彼は私の赤ちゃんを愛してくれるの? 私は天国に行くのかしらーー27歳の若さで? ハーパーは腹部の痛みに耐えかね、救急外来に駆け込んだ。 そこで医師から告げられた診断に、驚愕する。 激しい痛みは陣痛で、まもなく母親になるという。 9カ月前、ハーパーは億万長者のジャックと熱い夜を過ごしたが、 住む世界が違うと悟り、翌朝、彼の前から姿を消したのだった。 ああ、気づかないうちに身ごもっていたなんて! 頼れる人もおらず、仕方なくジャックに連絡すると、 彼は出産に立ち会ったうえ、娘のための結婚を申し出て……。 娘には是が非でも父親を与えてやりたいけれど、愛のない結婚は絶対いや。思い悩むヒロインは、ホテル王ヒーローの言葉巧みな説得に押し切られ、彼の所有する高級ホテルのペントハウスでの同居生活を始めますが……。M・ミルバーンが贈る極上の再会ロマンス!
欲しいものはすべて手に入れる傲慢富豪が、 ただ1つ手に入れられないものはーー? 父を知らず、幼くして亡くした母の記憶もないジョゼフィーン。 母方の祖父母と大叔母たちの愛に育まれ成長したが、 祖父の死後、財政は悪化し、今や屋敷を失う寸前だった。 万策尽きて、隣家の富豪で初恋の男性ジャンニを頼ることにする。 その逞しい肉体と美貌で女性たちを虜にしても、 当の彼は女性を一時の快楽を満たす相手としか思っていない。 そんなプレイボーイに頼み事をするのはそら恐ろしかったが、 意外にも彼は援助を承諾した。交換条件は、5年間の契約結婚!? 女性はみな自分のベッドに身を投げ出すと自信満々のジャンニに、 彼女は言った。「あなたとはベッドをともにしないわ。絶対に」 幼い頃から憧れてきたゴージャスな若き億万長者。彼の花嫁になることを夢見ていたのに、持ちかけられたのは体裁を繕うためだけの愛なき結婚でした。窮乏する家族を救うにはそんな傲慢なプロポーズにイエスと答えるしかなく……。巨匠リン・グレアムが綴る、愛なき結婚の物語!
恋が実る日はこなくても、 あなたのそばにいられれば、それでいいの。 ギリシアの海運王、サキスの有能な秘書ブリアナ。 ロボットのように黙々とボスの命令に従いながら、 じつは彼への恋心を胸の奥に秘めている。 だがサキスに熱いまなざしを向けられるたび、彼女はおびえた。 いくら興味を持たれたからといって、恋に目がくらんではだめ。 愛なんてなくても生きていけるはずよ。 名前を変えるほどの事件が起きた過去を彼に知られたら、 私は生きていけない。ああ、もっと早く彼に出会えていたら。 だから今は秘書としてそばにいられればそれだけでいい……。 傲慢なヒーロー像とダイナミックな作風でHQロマンスの大人気作家となったマヤ・ブレイク。今作では、過去の出来事のせいで傷つき心を閉ざすヒロインの、せつない片想いを描きます。関連作『喪服の愛人』もあわせてお楽しみください。
祭壇の前から逃げ出した花嫁は、 誰にも言えない秘密をかかえていた。 突然、屋敷を訪ねてきた女性をひと目見て、 裕福な陸軍中佐ケイド・グラントは言葉を失った。 雨でびしょ濡れのウエディングドレスを着た女性リブは、 彼が出した“家政婦募集”の張り紙を見て、面接に来たという。 どこにも行くあてがなく震える彼女を、ケイドは雇うことにした。 いずれは自分の屋敷を、戦争で傷ついた兵士のための リハビリセンターにしたいと考えていたケイド。 看護師の資格を持つリブは、まさに願ってもない女性だ。 だが、彼女がその引き換えに求めた条件は“愛のレッスン”で……。 熱くセクシーな作風で定評のある作家スーザン・スティーヴンスの名作をお届けします。純真なヒロインと心に傷を負ったヒーローが繰り広げる、もどかしいロマンスをお楽しみください。二人が参加した晩餐会でダンスを踊る場面は、ため息が出るほどすてきです。
16歳のアンナは、今日もベッドから起きてこない母親のかわりに13歳の妹と5歳の弟の面倒をみている。父親は自身が経営する中華料理店にかかりきりで母親を顧みることはない。 本書は、ヤングケアラーであるアンナが、人種差別、いじめなど、様々な困難を乗り越え成長し続ける物語。 精神疾患と闘う家族重くなりがちなテーマだが、アンナの気持ちがていねいに描かれ、ローリーとの初恋がさわやかに織り交ぜられて、青春小説としても楽しめる。 ウェイ・チムは中国からの移民の人々と話した際に、精神疾患を不名誉・恥と捉える文化の相違を知って本作を思いついたという。患者本人だけでなく、家族も偏見に苦しめられる状況を変えたいと願いをこめた。オーストラリアを舞台に、精神疾患と闘う家族にスポットライトを当てた本作は、オーストラリア、イギリスをはじめ、世界で高い評価を受け、作者の代表作となっている。 アンナは、いつか蝶のように羽ばたく 謝辞 訳者あとがき