2024年7月12日発売
愛おしいのに、疎ましい。かけがえのない「他人」のあの子。死んだはずの親友が四年ぶりに現れて、もつれはじめる友情ー。大型新人、鮮烈なデビュー作!「わたしというものは、いなかったらばそっちのほうがよかったな」死んだはずの親友・朝日からかかってきた一本の電話。時子はずっと会いたかった彼女との再会を喜ぶが、「住所ない」と話す朝日を自宅に招くと、いつしか家に住み着いてー。第171回芥川賞候補作。
多忙で妻を顧みない夫ドメニコから逃げだして4カ月後、レイは彼の伯母の弔問のため、ヴェネチアの屋敷を訪れた。なんて愚かなの?出迎えた夫にうっかりときめくなんて…。翌日、ドメニコの親代わりだった故人の遺言が読みあげられ、レイは思わず耳を疑った。彼が屋敷を相続する条件として、2回目の結婚記念日を妻と共に迎えることが必須だという。「屋敷は絶対手放せない。半年間、夫婦円満のふりをしてくれ」ドメニコの懇願に屈し、レイは渋々“従順な富豪の妻”に戻るが、接触は頬へのキスまでというルールはすぐに破られて…。
「やめるんだ、今すぐに」礼拝堂に男性の声が響き渡り、エミーはおなかのふくらみがめだつ不格好な花嫁衣装で振り向いた。テオは数カ月前まで憧れのボスで、純潔を捧げたギリシア富豪だ。だが彼が自分などを愛するわけがないと思い、エミーは妊娠に気づくとなにも言わずに会社を辞めた。そして近所の詮索から家族を守り、子供を育てるために、父の友人との結婚を決意した。今日はその結婚式当日だった。テオはかつての秘書の結婚に異議を唱えただけではなかった。花婿を追い払い、自分が花婿としてエミーの唇を奪った!
嘘でしょう?エンリコが交通事故で意識不明だなんて…。矢も楯もたまらず、ジャンナはすぐに病院へ駆けつけた。15歳で出会ったときから、ずっと彼に恋い焦がれてきた。子ども扱いされ、相手にされないまま時が過ぎ、今や富豪となったエンリコは美女と婚約したと聞く。それでもジャンナは病床に付き添い、必死に祈り続けた。5日後。奇跡が起き、エンリコの意識が戻った。だが医者は冷たく宣告するー下半身に麻痺が残るというのだ。婚約者は早々に見切って去り、呆然とするエンリコを前に、ジャンナは誓った。たとえ愛されなくても彼を支え続けようと。
浪費三昧だった父が莫大な借金を残して亡くなり、お金の工面に奔走するアントニア。でもわずかな収入しかない彼女にとうてい返せる額ではなく、途方にくれていたとき、何度か見かけたことのある長身の男性、大物実業家レイフが借金返済の一部を肩代わりしていたと知る。困惑するアントニアに、彼は青い目を光らせて言った。「半年間、僕の愛人になれば、借金をすべて肩代わりしよう」なんですって?あまりの屈辱にアントニアは即座に拒んだ。だが父の横領疑惑が発覚し、どうしてもお金が必要になる。アントニアは悩んだすえ、レイフとの愛人契約に甘んじるがー。
ハーロウはある嵐の日、意識を失った男性を見つけ、その正体に驚く。それは4年前、故郷を捨てて億万長者になった初恋の人ナッシュだった!彼がフロリダへ発つ前夜、たった一度だけ結ばれたが、その後、彼は故郷に戻らず、いっさい連絡もなかった。やがてハーロウは新しい命を授かったことに気づいたものの、ナッシュの邪魔をしてはいけないと、彼の子とは誰にも言わなかった。それに、子供のこと以外にも、ナッシュに言えない秘密があった。あるとき彼の代理人が現れ、祖父に多額の借金を負わせた結果、母の形見の指輪まで売らざるをえなかったことを祖父に口止めされていた。ナッシュに人生を狂わされた。でも、瀕死の彼を放ってはおけない…。
アラーナは大富豪ガイのことを心ひそかに“谷の領主”と呼んでいる。彼は由緒ある家に生まれ、この地で最も成功した人物。ずっと昔から憧れのヒーローだけれど、年上だし、なにより貧しい家に生まれ育った私とは境遇が全然違う。アラーナは自戒した。彼に恋なんかしてはだめ!傷つくだけだもの。一方、ガイのほうも、22歳のアラーナをいまだに子ども扱い。ところがある夜、ガイの主催するパーティでダンスに興じている最中に、彼が唐突に囁いた。「きみがまぶしすぎて、ぼくにはほかの女性が見えない」彼の真意を量りかねながらも、アラーナの心は舞い上がったが…。
ロンドンで見習い看護師をしていたフィーベは、病気の叔母の面倒をみるためサフォーク州の村へやってきた。口うるさく偏狭な叔母の世話は苦労つづきだったが、主治医ジョージの温かな見守りと励ましのおかげもあり、なんとか最期まで看取ることができた。ところがその直後、フィーベに思わぬ災難が襲いかかる。叔母が財産をすべて寄付したため、住む家を失ってしまったのだ!看護の勉強をやめてまで来たのに、1ペニーも遺してくれないなんて…。呆然とするフィーベに、ジョージが突然、驚くべき言葉をかけた。「僕らが結婚するのがいちばんいいと思うんだ」
幼い頃に実の母に捨てられたブライアナは、父の名前さえ知らない。21歳になったある日、母が遺した一通の手紙が弁護士事務所から届く。要領を得ない内容が気になった彼女は、冷血弁護士として悪名高きネイサンのもとを訪れた。ブライアナの母のことを知る彼は若いのに尊大で、はぐらかしてばかりで何も教えてはくれない。でも、彼の笑った顔は驚くほど魅力的だわ!彼女はネイサンの協力を得ながら、実の父を捜し始めた。ますます彼に惹かれていくブライアナはしかし、まだ知らなかったーネイサンと自分に、血のつながりがあるかもしれないことを!
小さな天使の存在が、二人の関係を変えるーシークレットベビー・アンソロジー!『シークの隠された妻』「ぼくたちはまだ夫婦らしい。正式な離婚手続が必要だ」突然訪ねてきたジャウルの言葉に、クリシーは驚いた。2年前、マルワン国皇太子の彼は挙式の翌月に忽然と姿を消したー彼女のおなかに双子を残して。やがて代わりに父王が現れ、無情にも結婚は無効だと告げたのだった。なのに今ごろ現れて離婚したいですって?しかし双子の子供たちの存在を知るやジャウルの態度は豹変し、離婚は撤回すると言いだした。彼の子ならばマルワン国で育てることが法律で決まっているというのだ。私から子供まで奪おうというの?『愛してると言えなくて』引退する雇い主から、学校を引き継ぐには誠実な相手との結婚が条件と言われた教師ベイリー。友人の勧めでゲイブと出逢って彼を愛するようになり、結婚を決めたー動機が仕事のためだと思われないよう、例の条件のことは隠して。だが期せずしてゲイブの知るところとなり、責められた彼女は家を出た。10カ月後。今日はバレンタインデー。ベイリーは赤ん坊を胸に抱き、懐かしい家をめざしていた。“生きたバレンタイン・プレゼント”を、ゲイブはどう思うだろう?そして今度こそ、私は彼を心から愛してると言えるかしら?
ニューベリー賞オナー賞受賞作! イギリスからの独立とともに、ふたつに分かれてしまった祖国。ちがう宗教を信じる者たちが、互いを憎みあい、傷つけあっていく。少女とその家族は安全を求めて、長い旅に出た。自分の思いをことばにできない少女は亡き母にあてて、揺れる心を日記につづる。
昭和初期の信州の農村を舞台に、現代では失われてしまった、美しい風景、自然への畏怖、家族や近隣の人々のぬくもりなどを瑞々しい筆致で描く。 少年はまっさらの心で、いくつかの事件を通して成長し、自らの生涯を切り開いていく思考の礎ともいうべき精神性を養ってゆく。 ウサギ罠 春の雪 はじまりの谷 夏の終わり 残光 白い谷 入学の朝