2024年8月発売
『テス』に隠された双面神ヤヌスー。 19世紀のイギリス文学を代表する小説の一つトマス・ハーディ作「ダーバヴィル家のテス」。 ーヒロイン・テスの悲劇的な一生を描いた本作は、なぜか「門」や「出入口」などへの言及が多い。 テスの運命を翻弄する二人の男の名前、クレアとアレックは、よく見ると一字違いのアナグラム(字句の入れ替え)。 ーこれらは何を意味するのか? 筆者はそこにローマ神話の双面の門神ヤヌスの隠れた存在を見抜き、ヤヌスを鍵にして物語を読み解いていく。 ギリシア・ローマ神話や聖書や、シェイクスピアやミルトンなど、西欧文化史を彩る多様な成果を縦横に駆使しながら、入念に織り上げたテクスチュアから立ち現れてくる、秘められた花にも似たテスのドラマをご覧ください。 [目次] 『ダーバヴィル家のテス』梗概ーー未読の方々のために 序章 コードとしてのローマ建国伝説とヤヌスの神話 (1)『テス』と西欧文化史 (2)『縛られたプロメテウス』から『アエネイス』、『ルークリースの凌辱』へ (3)『金枝篇』とヤヌスの神話 第1章 名前の〈二重性〉とアイデンティティ (1)ヤヌスとしてのクレアとアレック (2)「自身(セルフ)」をめぐる関係性の劇とアイデンティティ 第2章 アレックによるアイデンティティの分裂とヤヌスの影 (1)冥界の地獄タルタロスへ (2)冥界からの帰還を願って 第3章 クレアによるアイデンティティの分裂とヤヌスの影 (1)冥界の楽園エリュシオンの野へ (2)ふたたびタルタロスへ 第4章 悲劇の構造としてのヤヌス (1)プルトの王国にて (2)〈青鷺〉の町アルデアにて 第5章 復讐の政治学と魂の救済 (1)〈命名〉によるアイデンティティの支配と復讐 (2)ヤヌスの神話と楽園喪失・回復神話による〈戯れ〉と〈救済〉 注 引用文献(参照文献を含む) あとがき 電子版に寄せて──ヤヌスは顕現する 著者紹介
「怪と幽」17号は、特集二本立て! 第一特集 怪を語る イベントや配信などで語られる怪談を楽しむ流れが大きな盛り上がりを見せている。もちろん先駆者は数十年前から「語り」を主軸に活動し、その存在は広く知られてきた。だがいま、さらに新たな語り手がどんどん生まれている。感染症流行時期には配信活動の隆盛があり、その後、リアルな場を共有するイベントも、様々な規模で開催されるようになった。世間では《怪談師》という呼称もすっかり定着。伝統芸能の語り芸とはまた異なる、語り・しゃべりの怪談文化が一大ジャンルとして築かれた。そのように怪談を語る人たちは、そしてそれを楽しむ人たちは、いま何を見つめているのか。現場では何が起こっているのか。現代の怪談語りシーンに迫る。 【インタビュー】稲川淳二 【対談】川奈まり子×吉田悠軌 【対談】はやせやすひろ×夜馬裕 【ルポ】百物語怪談会 【実録】百物語 川奈まり子、チビル松村、はやせやすひろ、深津さくら、松永瑞香、村上ロック、夜馬裕 第二特集 『真・女神転生V Vengeance』 神話や伝承に語られる超常の存在ーー「悪魔」が現代に出現したら、世界はどのように変貌するのか。そんな想像を具体化させたかのようなロールプレイングゲームが「真・女神転生」シリーズだ。 1992年発売の第一作『真・女神転生』以降、30年以上の長きにわたり「メガテン」の通称で親しまれる本シリーズの最新作『真・女神転生V Vengeance』は、今年6月に発売されると、わずか3日間で全世界売上が50万本を超える大ヒット作品となった。太古の神話から現代の都市伝説に至るまで、さまざまな出典の悪魔が織り成す独自の世界観の中、善悪だけでは語りえない重層的なストーリーと、美しくも恐ろしい個性的なキャラクター造形で、世界中のプレイヤーを熱狂させる『Vengeance』。そんな大人気ゲームの悪魔的魅力の根源に迫る。 【グラビア】『真・女神転生V Vengeance』とは? 【インタビュー】小森成雄(ディレクター) & 土居政之(キャラクターデザイナー) 【インタビュー】土居政之 【ガイド】『真・女神転生V Vengeance』 (勝手に)悪魔全書 by怪と幽 【対談】黒 史郎×藤川 Q 特集のほか、連載など多数! 京極夏彦小説新連載も開始!
魔術が終わる時代に、ふたりは戦場で出会った。 17世紀、イングランド。母と暮らした幼い頃から、オスカーの願いは〈世界のルールを解き明かす〉ことだった。数学の才を持つ彼は、ケンブリッジ大学でニュートンに師事する。けれど、王位継承を巡る反乱が勃発し、戦場へ。窮地に陥った彼の命を救ったのは、人知を超えた力を操る謎の男、アズ・テイルズだった。物理法則に従わない未知の存在を解き明かそうとするオスカーと、自分が解き明かされる日を待ち続けるアズ。ふたりの出会いが、人類の〈科学〉と〈戦争〉の歴史を動かす。 Prologue 1話 昇る落陽 2話 英雄の語り手 3話 共同研究者 4話 満月の夜 5話 ふたりの天才 6話 自然哲学の諸原理 7話 その確信の名前 Epilogue
「ママ、けいさつにつかまらないでね」罪を犯し愛を諦めた母娘の半生。里美は、娘の汐里と2人で暮らしている。若い頃の前科が原因で家族からは疎遠になり、やがて生活に困窮した里美は罪を犯してしまう……。愛を夢見て、妬んだ里美と、愛を求めて諦め、姿を消した汐里。一度は訣別したふたりだが、再び巡りあい、そして……。あらゆる母娘に、愛は存在するのか。
音楽への夢と情熱、別れと喪失ーー台湾の文学賞を総なめにした話題作! 天賦の才能を持ちながらピアニストの夢破れた調律師のわたしと、再婚した若い音楽家の妻に先立たれた初老の実業家。中古ピアノ販売の起業を目指してニューヨークを訪れたふたりが求めていたものとはーー。作中にシューベルト、リヒテル、グールド、ラフマニノフといった巨匠の孤独が語られ、「聴覚小説」とも評された台湾のベストセラー。
僕の前にあらわれた、夏の日の幻影を追って……。美大生の静流は、ある夏の日に小学校で人気者だった幼馴染・琴葉と再会する。背の高い美青年に成長した琴葉に誘われるままに「あるもの」を探しに出かけてゆくが……。ふたりの男子が織りなす夏の日のきらめく奇跡。そして急転直下の結末が示唆するものとは? 息をのむ伏線回収と美しい装幀も見せ所の注目作。
税金を1円も使わずファッションセンターを建設せよ! そんな無茶な……。繊維産業の衰退に頭を痛める東京・城東地区の工場街。新区長の票欲しさの選挙公約と、役人の点数稼ぎのための提案によって、実行不可能ともいえるファッションセンター建設計画が動き出した。スケープゴートとして担当課長にさせられた加藤聖治は調整に奔走するが、行く手には地方行政の魑魅魍魎どもが立ちふさがって……。
人間を操ってきたものとは何か? 明らかになる人類史のキーワード。「その言葉を知ったときが新しい人間の始まりなんだよ」と、公園で知り合ったヒロさんは言った。「あなたもその言葉を知ってしまいましたネ。縁ですね」と、渋谷で出会った異人は言った。表題作「新しい人間」と「彼には本名がない そればかりか人間でさえない」の2篇を収載。今ひもとかれる「新しい小説」
一途なスパダリ実業家×美貌の天才犯罪心理学者、魅惑のミステリーラブロマンス・第4弾! 人生の成功者である若き資産家・音喜多には、ただ一つ、思い通りにならないものがあった。それは、華奢で可憐な外見とは裏腹に、博士号を三つ持ち、元FBIのアドバイザーという経歴を持つ天才犯罪心理学者・久嶋という存在。彼に強く惹かれた音喜多は、側に居たい一心で甲斐甲斐しく世話を焼き、甘やかし、口説き続けるが、天才ゆえ人の心が分からないという久嶋は掴みどころがなく、身体だけの関係が続いている。しかし共に過ごすうち、久嶋にとっての音喜多も「特別存在」にはなってきたらしい。そんな中久嶋は、投資詐欺に遭わんとしている資産家と偶然居合わせたり、音喜多に長年懸想する警察キャリア官僚・汐月から「見合いを相手から断られるよう仕向けてほしい」と依頼されたり、新たな事件に続々巻き込まれ……?
韓国の100万部超の大ベストセラー、ついに刊行!! 世界を旅する愛の詩人イ・ビョンリュルは、140か国以上、多くの都市をめぐりました。 著者がカメラを抱えて旅したノルウェー、メキシコ、日本、イタリア、イギリス、フランス、インド、中国、ベトナム、カンボジア、ペルー、ブラジル…目に焼き付けた風景を文章と写真で綴ります。 これはあなたのものがたり。 ー100万人が共感した、愛と孤独と旅のあれこれ。 読んで、世界をぐるっと旅する不思議なエッセイ。 自由を謳歌、気ままに歩く一人旅。 心躍る出会いにワクワク。 おどろくようなハプニングの数々。 そして、同時に大きな孤独も感じるのです。 旅することは、孤独になること。 旅することは、愛する誰かを思うこと。 どんな人生も旅のようなもの。 人はいつでも、孤独や不安におそわれながら、愛する誰かを想い、そして歩いていく。 愛に迷ったとき、生きる意味を知りたいとき…… この本を開いてください。 きっとあなたの心に寄り添う、あなたのものがたりが見つかります。
貧しい農民の子レアンは、人買いの馬車の中で驚くほど美しい少年を見て、前世で読んだ小説の中に転生したことに気づく。少年は、類まれな美貌ゆえに二つの国の王子を翻弄し、悲劇を起こす傾国の美男・シエルだった。彼が辿る過酷な運命を見過ごすことができなかったレアンは、シエルを助けてしまう。それ以降、レアンを離さなくなったシエルに巻き込まれるように、二人の王子・カイエンとエドワードと出会ったレアンは、彼らの運命を大きく変えていき…?
七歳となり迎えた“祝福の儀”にて激しい頭痛に襲われ意識を失ったエディ。目が覚めたエディは自身が転生者であること、そして授かったスキルが【糸】であることを知るのだった。前代未聞のスキルのためパーティーから追放され、冒険者ギルドにも登録を断られたエディは、独り商人の道を目指し旅に出ることに。スキルを磨きながら進む旅の最中、エンシェントウルフとの出会いがエディの出自の謎を紐解いていき……。 前世の知識を活用して『糸』の解釈を広げることでスキルの可能性も無限大!? スキル【糸】を授かった少年が紡ぐ成長冒険譚、開幕!
突如として現れた宇宙人を打ち破り、人類の救世主となった黒騎士が姿を消してからはや3ヵ月。記憶喪失の青年・白川克樹は姉の伯阿とともにバイトに明け暮れる日々を送っていた。そんなある日、克樹の目の前に現れた一体の怪人。なにやら因縁の相手らしいが克樹には何のことやら。と、その時頭の中に響く「戦え」との声。声に従い、いつの間にか現れたベルトにバックルを装着するとーー白仮面の戦士姿に!? 次々と襲ってくる怪人を倒していたら、ジャスティスクルセイダーなる正義の戦隊ヒーローまで現れて……? 勘違い系ヒーローと、その熱狂的なファンによるドタバタコメディ、第2弾!
セシリオ王国の王女ラヴィアンは、孤高のアラン・リーヴェルト侯爵にゾッコン。アランの塩対応にもめげず、鬱陶しいほどに愛を伝え続ける日々を送っていた。しかし、ラヴィアンは敵国に嫁ぐことが決まっており……。
「--いやああああッ!? ウォルカ、し、死んじゃだめえええええッ!!」 日本から転生した冒険者ウォルカ。ダンジョン探索中に突如強大な魔物に襲われた彼は、仲間を庇って瀕死の傷を負ってしまう。その瞬間ようやく気づいたーーここが前世で読んだダークファンタジー漫画の世界で、自分が仲間もろとも全滅するモブキャラだったのだと。 バッドエンドを強く嫌うウォルカは、仲間のために死に物狂いで戦い奇跡的に魔物を撃破。片目片足を失いこそしたものの、パーティ全滅の運命を覆せたことに安堵していた。ところが、仲間の少女たちの様子がなんだかおかしくなってしまってーー 「今度こそ絶対に守るからっ!! だからお願い、見捨てないでぇ……!!」 「わたし、ずーっと傍にいますから。--いいですよね、せんぱい?」 「キミのために死のうって……そう決めたの」 ハッピーエンド至上主義な転生者と、彼に激重感情を抱く少女たちの【曇らせ】異世界譚! 【書籍版限定の書き下ろしエピソード2本収録】 ・書き下ろしエピソード『ウォルカが死の淵から目を覚ましたときの話』 ・書き下ろしエピソード『ウォルカが聖女全員から包囲網を敷かれる話』
ホロコーストから生還後、ソ連の文化事業局に勤めていたマーシャは、ユダヤ反ファシスト委員会議長の事故死に疑念を抱いたため「不健全な関心」として、突然解雇される。相次ぐユダヤ人のシベリア送り、学長職を追われる父。「私は生き残った。それなのになぜ黙っているのか」。書かずにはいられなかった貴重な記録。
わたしたちは、何をしたのか。 名探偵、五狐焚風。助手、わたし、鳴宮夕暮。 20年ぶりの再開を経て、かつての名探偵と助手は、 過去の推理を検証する旅に出るーー 桜庭一樹の新たな代表作、誕生! かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。 ……それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気キャンネルで突如、名探偵の弾劾が開始された。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だ。「名探偵に人生を奪われた。私は五狐焚風を絶対に許さない」と語る謎の告発者は誰なのか? かつて名探偵の助手だった鳴宮夕暮ーーわたしは、かつての名探偵ーー風とともに、過去の推理を検証する旅に出る。
ゴールデンドーンに侵攻してきた帝国軍との決戦に勝利したクラフトたち。首謀者であるベラも戦場で息絶えたと思いきや、突如、魔族へと変貌を遂げる。ベラの攻撃により、クラフトとカイルは致命傷を負うが。すかさず助けに入ったレイドックらによってベラは打ち倒されたものの、二人は横たわったまま動かない。懸命な治療の甲斐あって、クラフトは回復したが、カイルは一向に目を覚ますことはなくーー。「小説家になろう」発、伝説級の錬金術師による自重知らずの辺境開拓譚、新たな使命へ立ち向かう第八巻!
平安朝において漢詩文は、学問の中心として大きな位置を占めていた。 国家儀礼はもとより、官吏登用試験、公的な宴の場や歴史書編纂、さらには宗教の場などにおいても、 漢学の素養の有無がそこに関わる人物の評価に大きく関わるものであった。 平安朝の文人たちが残した漢文資料の一文字一文字と真摯に向き合い、内容を読解。 彼らの学問環境、史的位置づけと重ね合わせることで、 平安朝の漢詩文をめぐる歴史的状況を明らかにする。 長年に亙って平安朝の漢文学研究に携わってきた著者の最新論文集。 はじめに 一 文学史研究 1 平安朝における『孝経』の受容 2 平安朝人は『後漢書』をいかに読んだかー吉川忠夫訓注『後漢書』第一冊を読んで 3 中国へ伝えられた日本人の著作ー淡海三船の『大乗起信論注』 4 淡海三船「南山の智上人に贈る」詩について 5 「銅雀台」-勅撰三集の楽府と艶情 6 嵯峨朝における「新楽府」受容について 7 日唐間における経典の往還ー『千手儀軌』の伝流 8 仁明朝の宮廷文学と東アジア 9 桜の文学小史 10 菅原是善の願文と王勃の文章 11 延喜二十二年大宰府返牒考 12 『言泉集』所引の平安中期願文資料 13 尚歯会と書と絵 14 平安朝における白居易「劉白唱和集解」の受容 15 大江匡衡と『文選』 16 呉越と平安朝の漢学 17 『本朝文粋』の文人ー上位入集者とその作品 18 『本朝文粋』の一首の詩序と『明衡往来』の一通の書状 19 白居易「諭友詩」の本文ー我が国に残る古写本 二 文人伝研究 20 『経国集』の作者序論 21 空海の周辺ー勅撰詩集作者との交渉 22 勅撰三集の詩と歴史学 23 『扶桑集』の詩人 24 文人たちの交友ー藤原行成を軸として 25 源為憲と藤原有国の交渉について 26 創り出された平安朝詩人ー『本朝一人一首』の過誤 【付載】 27 史料所載平安朝詩詩題索引 あとがき 索 引
赤ん坊という永遠の絆で彼と結ばれる。 愛されぬまま、私だけが愛を捧げて。 天涯孤独のイジーは2年前に亡くなった夫の精子で人工授精を受け、 シングルマザーになる決意をした。 ところがスイスへ行き、クリニックで診察台に横たわっていたとき、 億万長者グレイソンがスタッフの制止を振りきって彼女の前に現れた。 “黄金の獅子”の二つ名で知られる元伝説のレーサーで、 今は会社のCEOを務める亡き夫の親友がなぜここに? 憧れた時期もあったけれど、私はずっと嫌われていたはず。 彼はとまどうイジーに、亡き夫は不妊で精子は自分のものだったこと、 どうしても子供が欲しいなら精子提供者になってもいいことを告げた。 「だが僕と体を重ねることを考えてほしい。よければすぐに始めよう」 今作はシンガポールというエキゾティックな国を舞台にした華やかで切ないロマンスです。愛されたいと望みつつも、世界を飛びまわって贅沢な生活を送るヒーローと、一箇所に落ち着いて子育てをしたい自分では住む世界が違う。ヒロインは現実を思い知って……。