2024年9月26日発売
主人公ウィンストンは、ビッグ・ブラザーと党が支配する、どこが相手かもはっきりしない戦時下の超管理社会イングソックの真実省で、公式の歴史改変を担当している。だがふとしたきっかけで禁断の日記を書き始め、そして若いジュリアとの禁断の逢瀬にふける中で、次第に自分の暮らす社会に対する疑問と反発を強める。しかし反政府組織に参加したと思った瞬間、彼は国家に捕らえられー現在のハイテク監視社会、情報操作とフェイクニュースによる大衆支配、戦争やテロを口実にした社会的自由の制約、密告と労働改造所や矯正収容所の思考操作、社会階級の固定化と格差社会、その他現代管理社会のありとあらゆる側面が恐ろしいほどの密度で詰め込まれた、不世出の傑作。
アイドル事務所「ユニバース」に所属するデビュー前の青年、通称「リトル」。ある日、リトルたちが出演するイベント「サマーマジック」で最も活躍した一人を、デビュー間近のグループに加えるという噂が流れだす。この噂をきっかけに皆が熱を帯びていく中、加地透は疑問を抱いていた。恋心も、学校生活も、自分の体も、全てを捧げなければデビューは叶わないのかー?限りある青春を送る若者への祈りに満ちた、著者渾身の傑作。
北海道が全停電した日、わたしは剥製のウミガメを放つため、真夜中の公園を彷徨う。時空を超える“北の地の想像力”の新星が鮮烈なデビュー!第37回三島由紀夫賞候補作、新潮新人賞受賞作(「彫刻の感想」)。
世界がパンデミックに覆われた2020年、アメリカ人のケヴィンは、軽井沢・追分の小さな山荘から、人けのない隣家を見やっていた。京都の宮大工の手になるその日本家屋は、南米から帰国した元外交官夫妻の住まいだったが、親しい隣人であった夫妻は、前年ふいに旅立ったあと、消息を絶ってしまっていた。能を舞い、たおやかに着物を着こなす古風で典雅な夫人・貴子。ケヴィンは彼女の数奇な半生を、「日本語」で書き残そうと決意するー。
いまや世界から忘れられつつある島国の片隅で、二つの孤独な魂が、月の光に照らされていたー。故国を離れ、日本語を自在に操るアメリカ人を語り手に、日米の二つの家族にまつわる秘められた記憶と、戦前からおよそ100年にわたる日本と日本人の変容を描きだす。
愛はいつでも儚い一方通行。独身で背の高いアミーリアは、どういうわけか町に突然現れた小男に惚れこんで、同居してカフェを始めた。そこに元夫が刑務所から帰還。奇妙な三角関係の行方はー。村上春樹がいつか訳したいと願っていた名作を彩る山本容子の銅版画。豪華コラボレーション新訳版。
南北戦争前後のアメリカ南部を舞台に、大農園主の長女スカーレット・オハラの激動の半生を描く『風と共に去りぬ』は、長いあいだ「大恋愛小説」として読み継がれてきた。しかし、精緻に読み込むと、それが「誤解」であることに気づく。40か国で翻訳され、世界中の誰もが知る大長編小説の多様な読み解き方を案内する。
5年間勤めた会社を辞め、街の小さな喫茶店「ブルー」でアルバイトをする鳴海優輝。「ブルー」には、秘密を抱えた人々が集まってくる。打ち明けられる秘密に向き合う鳴海にも、周りに言えない想いがあった。セクシュアリティの多様性を繊細に描く、畑野智美の新たな代表作。
ー海は、この星の涙の、行き着く先かもしれない。逃げるように移り住んだ土地で十二年ぶりに再会してしまった元恋人、クラスメイトのタイムカプセルを掘り起こしに行く小学生、職場からの逃亡を企てる学校教諭と保育士、絶縁していたはずが新たな子を連れて現れた父親、潰れた八百屋に隠されていた七年間の秘密、若き青年との疑似恋愛に溺れる編集者、癌になった友人と、海岸に打ち上げられた鯨。すべて、この海の街で波のように生まれては消えた、ちいさな物語。
元自衛隊員の遺体がまた見つかった。共通するのは、政情不安下の南スーダンにPKO部隊として派遣された“特戦群”メンバーだったこと。俺たちは狙われているー同隊所属の風戸亮司の疑惑は深まり、危機からの突破口を探り始める。時を同じくして一人の女性医師が南スーダンから帰国し愛娘と再会した。だがその直後、凄惨な悲劇に遭遇し…。彼の地に関わった者たちに迫る不穏な影の正体は?そして、その目的とは?自衛隊日報問題を起点に繰り広げられる緊迫の軍事サスペンス!
二〇一一年の東日本大震災で津波による被害を受け、二百年以上続く酒蔵を流された矢吹酒造所。地震後の原発事故によって、町に住むことさえできなくなった八代目の光は、酒蔵の再建を断念していた。津波に襲われ、一人の少女を救えなかったことを今でも悔やんでいる光だが、テレビ番組の取材を受けたことで、再建の意志を固める。家族や関係者のみならず、金融機関や役所も味方につけ酒蔵の再興に挑む姿を活写する、“人生の応援歌”!
新潟県沖で、中国の密漁船が突然自爆して海に沈んだ。さらに大量破壊兵器の調達に関わる男がクルーザーから謎の失踪を遂げ、百名を超える乗客を乗せたカーフェリーへの爆破予告が届く。この未曽有の危機に立ち向かう海上保安庁の特殊部隊「SST」を待ち受けていたのは、想像を絶する国際的陰謀だったー。今まで詳細がひた隠しにされてきた“実在”の隠密部隊の活躍を描く、かつてない海洋エンターテインメント小説!
観劇で訪れた劇団のマネージャー・佐知子から相談を持ちかけられた女子大生探偵・亜由美。本物の拳銃が劇中で使われたが、大事にならないように内密に処理してほしいと言うのだ。幸い弾丸は外れたが、一歩間違えれば被害者が出ていたところだ。真相を探るうち、命を狙われている女性を助けるために港町で公演してほしいと劇団にSOSが。事件は混迷を極めて行きー。表題作の他、「逢うときはいつも花嫁」収録。ユーモアミステリー・シリーズ第37弾。
「高砂澄香が自殺しました」澄香ーそれは彼の青春を彩る少女の名で、彼の心を欺いた少女の名で、彼の故郷を桜の町に変えてしまった少女の名だ。澄香の死を確かめるべく桜の町に舞い戻った彼は、かつての澄香と瓜二つの分身と出会う。あの頃と同じことが繰り返されようとしている、と彼は思う。ただしあの頃と異なるのは、彼が欺く側で、彼女が欺かれる側だということだ。偽りの人間関係ー「サクラ」本音と建て前。人の「本当」が見えなくなった現代の、痛く悲しい罪を描く圧巻の青春ミステリー!
異世界に召喚され雑用係として勇者パーティーに参加していたノヴァ。彼が持つスキル“風が吹けば桶谷が儲かる”は「一見なんの意味もなさそうなクエストをクリアすると、予想外の成果が得られる」という非戦闘系の特殊スキル。国王からは「役立たず」と見なされ、追放を言い渡されてしまう。しかたなくノヴァは堅苦しい王都での暮らしを捨て、念願だった田舎でのスローライフを目指すことに。しかし実は、ノヴァこそが影の英雄だった!勇者パーティーの数々の功績はノヴァのおかげだったと判明し、国王は必死に彼の行方を捜し始める。一方ノヴァはたどり着いた小さな村で充実した田舎生活を満喫。レアな素材をざくざく採取したり、伝説のドラゴンを孵化させて懐かれたり、まさかの古代兵器を復活させたり…。ここでも異次元の活躍を見せるノヴァは、村を急速に大発展させていてー!?予測不能=可能性は無限大!?とんでもスキルで規格外&予想外なスローライフを楽しみます!第4回グラスト大賞大賞受賞作。