2025年5月26日発売
自分にないものを思って憂うのではなく、 他のひとにはなくて、 私だけが持っているらしいもののことを考えようーー。 国境と言語を跨いで射し込む光に照らされた、日本と台湾、4つの物語。 ーーこれからあたしたちは、飛機に乗ってパパのところに行くのよ。 幼い頃、父と一緒に暮らすため、母と共に台湾から日本へ旅立った「私」。 四十年が経ち、祖母の葬儀に出席するため台湾に向かう「私」の心に蘇るのは、 かつて耳にした台湾語と懐かしい家の光景、亡き母の朗らかな歌声だった。(「二匹の虎」) 表題作「恋恋往時」や姉妹編「二匹の虎」をはじめ、 しなやかな生のありようを描いた4作を載録する作品集。 【著者略歴】 温又柔(おん・ゆうじゅう) 1980年、台北市生まれ。両親とも台湾人。幼少時に来日し、東京で成長する。2009年、「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作を受賞しデビュー。2016年、『台湾生まれ 日本語育ち』で第64回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。2020年、『魯肉飯のさえずり』で第37回織田作之助賞受賞。著書に『来福の家』『真ん中の子どもたち』『空港時光』『永遠年軽』『祝宴』、木村友祐との往復書簡『私とあなたのあいだーーいま、この国で生きるということ』、編著に『李良枝セレクション』など。
《宇宙がまだ今日ほど乱れていなかった頃、すべての星はきちんと並んでいたので、左から右に、または、上から下に容易に数えられたし、大きめで青い星々は別個にひとかたまりになり、小さめで黄ばんだ星々は二級天体として隅っこに追いやられ、宇宙空間にはいかなる埃も塵も星雲ごみも見当たらなかった、そんな古き良き時代、〈永久全能免許状〉を持つ建造師たちが時折旅に出ては、遠く離れた人々に親切な忠告や助けをもたらすのが通例であった》 かくて全能のロボット建造師トルルルとクラパウツィウスのふたり組は、中世の騎士のごとく広大無辺の宇宙を隅から隅まで旅し、行く先々で権力に貪欲な惑星の王たちや、暗黒に住まう未知の怪物からつきつけられるとんでもない難題の数々にぶち当たる羽目に。──そんなふたりの奇想天外、奇妙奇天烈、抱腹絶倒の冒険を、諧謔と風刺、機智とユーモア、パロディに言語遊戯、文体実験や文明論的批評などを交えて寓話風に描いた愉快な連作短篇集。 邦訳版『宇宙創世記ロボットの旅』には未収録だった作品を精選増補し、新訳および本邦初訳でお届けする決定版。 【目次】 いかにして世界は助かったか トルルルの機械 大いなる殴打 トルルルとクラパウツィウスの七つの旅 探検旅行その一、あるいはガルガンツィヤンの罠 探検旅行その一A、あるいはトルルルの電遊詩人 探検旅行その二、あるいはムジヒウス王のオファー 探検旅行その三、あるいは確率の竜 探検旅行その四、あるいは、トルルルがパンタークティク王子を愛の苦悩から救わんがため、いかにオンナトロンを使用したか、そしてその後いかに子供砲を使うようになったか 探検旅行その五、あるいはバレリヨン王のおふざけについて 探検旅行その五A、あるいはトルルルの助言 探検旅行その六、あるいは、トルルルとクラパウツィウス、第二種悪魔を作りて盗賊大面を打ち破りし事 探検旅行その七、あるいは、己の完璧さがいかにしてトルルルを悪へと導いたか ゲニアロン王の三つの物語る機械のおとぎ話 ツィフラーニョの教育 ロボットの旅、言葉の冒険ーー『電脳の歌』訳者あとがき(芝田文乃) 解説 トランスヒューマンが人間を逆照射するーー『電脳の歌』の詩学と記憶の考古学(沼野充義)
この物語はフィクションか、 それとも未来か。 待望の文庫改訂版。 惑星srijpから帰還すると、地球は「食習慣」の違いで分断されていたーー 人語を話す気まぐれ猫・パセリとともに、新しい社会での生活が始まる。 [未来の地球では、3地区に分かれた社会が独自のルールと文化で動いている] ◇肉食地区 肉類を中心とした食文化の中、高い犯罪率や健康問題が課題。 ◇菜食地区(ベジタリアン・グリーンランド) ベジタリアンやラクト・オボの住民が住み、健康志向と環境配慮が徹底された地区。 ◇中間地区 菜食と肉食のバランスを取る地区。多様な価値観を共存させるため、菜食地区の規制をやや緩めている。 なし
「越後の龍」と謳われた軍神・上杉謙信。その原点とは何だったのか。非業の死を遂げた猛将、祖父の長尾能景、二度の下剋上を果たし「戦の鬼」とも綽名された父、長尾為景。鎧武者達が居並ぶ父の葬列に、幼い虎千代が見たものとは。そして受け継がれる龍の血は長尾景虎へ。若き日の謙信、ついに春日山城に立つ。 悲報/発端/流砂/激震/兄弟/死地/反攻/埋火/亀裂/決戦/発病/黄昏/葬列/流転/胎動/栃尾/化身/慕情/惜春/別離/謀叛/老臣/再乱/蒼穹
【単行本累計10万部突破の純愛小説、待望の文庫化!】 【映画化! 2025年10月17日(金)全国公開】 「ねえ、佐藤君、ストロベリームーンって知ってる?」--高校の入学式、1年生の佐藤日向は学校一の美少女・桜井萌と衝撃的な出会いを果たす。入学式に遅刻した日向は、その日向になぜか積極的にアプローチしてくる萌と、なんと出会った初日につき合うことに。日向と萌はメッセージのやり取りやデートを重ね、好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれる神話がある赤い満月「ストロベリームーン」を見に行く。そんな幸せな時間を過ごしていたのもつかの間、日向は萌の余命が少ないことを知る。自暴自棄になった日向は、萌の母親から萌の日記を渡される。2人を待ち受ける運命は如何に?男子高校生の友情あり、日向と萌の純愛に涙が止まらない大号泣必至の1冊。
対独抵抗運動に挺身した「闘士」の作家ピエール・エルバールーー無人島で営まれる少年同士の同性愛的な友情を活写するBL小説『アルキュオネ』、スターリニズム下の若き反抗者たちの同性愛と政治参加を巧みに描いた、エルバールの私小説的作品『力線』の2篇を収録。本邦初訳。
文学が荒廃した戦時下も、太宰は太宰であった。 人間の、もっと根深いところから滲み出た資質。 戦前、戦中、戦後の18篇。 「僕は本能的に、或いは肉体的に兵隊がきらいであった。」 1 戦 前 温泉 大正12年(1923) 列車 昭和8年(1933) 葉 昭和9年(1934) 二十世紀旗手 昭和12年(1937) 黄金風景 昭和14年(1939) 新郎 昭和17年(1942) 2 戦 中 十二月八日 昭和17年(1942) 律子と貞子 昭和17年(1942) 待つ 昭和17年(1942) 佳日 昭和19年(1944) 散華 昭和19年(1944) 瘤取り -お伽草紙 昭和20年(1945) 舌切雀 -お伽草紙 昭和20年(1945) 3 戦 後 未帰還の友に 昭和21年(1946) 冬の花火 -三幕 昭和21年(1946) メリイクリスマス 昭和22年(1947) 桜桃 昭和23年(1948) 家庭の幸福 昭和23年(1948) 解説 太宰治の非戦的姿勢 村上玄一