著者 : 谷崎泉
響たちは酒の新しい銘柄づくりに着手し始めた。その最中に失踪していた兄・環から連絡が。驚く蔵の皆。響はその思いも受け止め、三葉を連れてある行動を起こす。一方、江南酒造の状況は改善し、「蔵に幸運をもたらした」三葉は、ついに故郷から“役目”終了の連絡を受ける。それは蔵の皆との別れを示すもの。三葉はいっそう強い思いを込めてまかないを作る。春の天ぷら盛り合わせ、手まり寿司、菜花の和え物、唐揚げや玉子焼きで彩り豊かなお花見弁当…。そのお弁当を広げた宴席で、三葉は静かに席を立ちー?
響の酒蔵は三百年続く老舗。苦境が続いていたが、夏にはついに大手ホテルとの取引が実った。美味しい料理で背を押してくれた三葉や杜氏と喜びを分かち合うも、季節は酒の仕込みが始まる蔵の繁忙期に。三葉は、泊まり込みで働く杜氏や響のため、はりきって季節の食材も使って食事を準備する。昆布締めの刺身、七輪焼きのバター醤油椎茸、里芋コロッケ…。三葉のまかないに励まされ、旨い酒造りに勤しむ蔵の従業員たち。その多忙な最中、響に百貨店への出品や取材の打診が舞い込みー?
人に慕われる青年・響の酒蔵は、三百年続いた老舗。だが数々の難題が。目下、重要な収入源である梅酒の仕込みが人手不足だ。そこに現れたのが、世慣れない乙女・三葉だった。響の役に立とうと、一途に勤める彼女は周囲に認められ、まかないも担うことに。ふわふわ玉子焼き、採れたてトマトの胡麻酢和え、五目いなり。三葉の絶品料理と前向きな言葉の“おまじない”は、響や杜氏の背中を押す。信頼を培っていく二人だが、三葉には不可思議な点がー?そんな中、響と三葉が挑んだ花火大会での販売が転機になり…!?
無愛想な高遠の動物病院には、日和と雑種犬の安藤さんに加えて動物看護師である三芳が入り、運営は軌道に乗ろうとしていた。そんななか、以前高遠が退職に追い込まれた井関アニマルクリニックの院長が現れる。「聞いてるかどうか分からないんだが…気まずい別れ方をしたものだから」日和は高遠を思い、院長とのすれ違いが解消されるよう心を砕く。一方、日和の元恋人が病院に偶然現れたことで、高遠との距離が変化する。賢く可愛い安藤さん(犬)に見守られながら、不器用な二人が選ぶ未来は…?感動の最終巻!
保護犬の安藤さんと暮らす日和が、動物第一の獣医・高遠の動物病院に勤めて数ヶ月。有能ながら気遣いの出来ない高遠に戸惑いつつも、日和は不器用な彼や動物の役に立とうと工夫を重ねていた。しかし、日和は動物看護の素人。命の危険がある熱中症のフレンチブルドッグが運び込まれ、専門知識の足りなさを痛感する。そんななか、院内を掃除していた日和は、高遠が探していた写真ー前職の同僚女性が写った一枚を見つけてしまう。偶然に彼女と知り合った日和は、彼女が動物看護をしていたと知り…?
独立したてのWEBデザイナー、日和は、海外転勤する姉夫婦から頼まれ、2年間だけ雑種犬「安藤さん」と暮らすことになった。安藤さんの予防接種のため、初めて訪れた動物病院は、診察券すらなくスタッフは獣医の高遠のみ。彼は動物だけを愛し、人間のことは名前さえ覚えない男だった。病院の人手不足から、日和はお客さんにスタッフと間違われ奔走するはめに。そこを高遠の知人に見込まれ、正式に勤めることになった。しだいに日和は、高遠の採算度外視で治療をする不器用さや、前の病院を辞めた事情を知り…?
研究一筋の羽月あかりは母の急逝でお金に困っていた。そんな時、祖母の遺産があることを知る。これで大学院を辞めずに済むと喜んだのも束の間、遺産とは見知らぬ作家の冬臣がひきこもる家だった。ひきこもり冬臣は一歩も外に出ようとしない。あかりは家を売って生活費にしたい。せめて自分が住んで家賃を浮かせたい。困り果てたあかりだったが、お互いの共通点と冬臣の意外な一面に気付き…つい口走った「一緒に住むのはどうでしょう!?」利害の一致から始まる、不器用でバカマジメな二人の優しい共同生活ストーリー。
鎌倉山の片隅でひっそりと作家生活を送る湊柚琉は、今年も妹・和花と謎多き同居人の犀川さんの3人で母の墓参りに向かった。柚琉は人から人へと命を移す能力を持つ。29年前、生まれたばかりで死にかけた妹に母の命全てを移した。その結果、母は死んだ。あの時柚琉が和花に移した命は、あと何年残っているだろうか。不安を抱えていたある日、柚琉が帰宅すると和花が倒れていたー。静かな生活が変わろうとしている。誰よりも孤独で優しい死に神の選択。命をめぐる現代ファンタジー、ついに最終章!
鎌倉山の片隅に佇む「おやつ処みなと」に正月がやってきた。売れない小説家の柚琉は妹の和花やアイス作りの達人の犀川さん、腐れ縁たちに引っ張り出され、カルタに興じていた。そんな時ー。「湊柚琉さんですか?お願いがあるんです。どうしても、助けなきゃいけない人がいて」何かに導かれるように延命の依頼が舞い込む。しかもそのお客は、柚琉を指名してきた。命を“与える”死に神の存在と正体を、誰が教えたのか。さらに和花の幼い頃の秘密が明らかになり…。シリーズ待望の第2弾。
売れない小説家・柚琉が働く『おやつ処みなと』には「死に神」がいる。絶品アイスの作り手なのに極度の辛党の犀川さんだ。母が死んだ日に現れた犀川さんを死に神と呼んだのは、今は亡き祖父だった。あれ以来、死に神を訪ねて“お客”がやってくるようになった。自分の命と引き替えに母を助けたいとすがる女子高生。生き別れになった子どもと死ぬ前に一度でも会いたいと祈る父。人知れず代償を払い、彼ら“お客”の願いを叶える死に神。これは、鎌倉のおやつ処を舞台につないでいく、孤独な死に神の優しい物語。
東京谷中にある月影寺の奥に居を構え、居候・宇多蒼一郎と二匹の猫とともに暮らす白藤晴。小間物作りで細々と生計を立てる彼のもとに、大学時代の知人という美女が姿を現す。ワケありな過去を持つ彼女の登場に、晴の心は乱されていく…。そんな中、蒼一郎の姉の強引な「お願い」により、またしても骨董鑑定を引き受けることになる。だが、訪れた屋敷で、晴と蒼一郎はまたしても殺人事件に遭遇してしまう!しかも、屋敷に残されていた仏像は、晴の暗い過去に関係するいわくつきの品でー。
東京・谷中にある月影寺の奥に居を構え、居候・宇多蒼一郎と二匹の猫とともに暮らす白藤晴。骨董に才がありつつも、過去の経緯から今は小間物作りで細々と生計を立てる晴だったが、作品を扱ってくれる雑貨屋の女性店員・真澄から、避けていた骨董品鑑定にまつわる相談事を持ちかけられてしまう。彼の作品に惚れ込んでくれる真澄の頼みを断ることができず、晴は渋々引き受けることになる。だが、骨董鑑定に訪ねた真澄の実家で、彼は身元不明の死体を発見してしまい…!?
東京・谷中に佇む月影寺。その片隅に建つ古い日本家屋には二人の青年と二匹の猫が住んでいる。骨董鑑定の才があるものの、今は小間物を作って細々と生計を立てている家主の白藤晴と、居候の骨董オタク・宇多蒼一郎。そんな白藤家に、銀行員の梶という男が訪ねてきた。晴の亡くなった祖父に用事があるという梶は、どうやら骨董贋作にまつわるトラブルに巻き込まれている様子。過去の因縁から骨董を忌避する晴は、なんとか関わり合いにならぬようにしていたが、事態は殺人事件に発展し…!?