著者 : raemz
もしも安達がわたしの先生だったら。 もしも安達が小説家だったら。 もしもあの時、体育館の二階に行かなかったら。 空想は置いておき、安達からお誘いが。 「う、海……は、広いね」 「いいよ。来週くらいに行こうか」 「来週、ですか……」 垂れ下がった耳と尻尾が見えるけど、こっちも色々準備が必要だ。お小遣いとか、水着とか。彼女に可愛いとこ見せたい気持ちはわたしだってあるのだ。……きゃー。
安達と暮らし始めてしばらく。近々わたしの誕生日だ。 「あ、チャイナドレスは禁止ね」 「えっ」 「あれはクリスマス用だから」 「そうだったんだ」 「そうなんですよ」 二人だけの行事が増えていくのは、そう、悪くない。 二人の日常のさらに日常。書き下ろし多数の短編集、第二弾。
いつまでも色あせない、青に染まれ。 ついに藤志高祭が幕を開けた。 2か月の準備を経て、この3日間にありったけを注ぐ青春の祭典。 校外祭は優空の吹奏楽ステージ、体育祭は陽との二人三脚。応援団では、紅葉や明日姉たちと青色海賊団のパフォーマンスがひかえる。 そして最終日。俺、千歳朔こと優柔不断な王子さまは、白雪姫と暗雲姫のどちらかを選ばなければならないーー。 なにもかもは掴めず、誰もが鏡に向かって問いかけている。 それでも俺たちは、たったひとつの望みにかけて、願う。 どうか今だけは。 いつまでも色あせない、青に染まれますようにと。
「じっとしてて、花びらがついてる」 桜が満開を迎えた四月、東京の夜。 目が見えない大学生・冬月小春は今、好きな人と過ごしている。名前は空野かける。三年前に出会った彼は、少し高い声でいつもこうしてそっと気遣ってくれる。顔は見れないけど、とても素敵な人だってわかる。そして、私に未来をくれた大切な人。 けれど、奇跡がいつまでも続くとは限らない。でもきっと、うれしいこともつらいこともこれからの人生全部が、あの日見上げた花火みたいに極彩に色づいていくと思う。 ーーGA文庫史上、最も不自由な恋の続きを描いた感動の後日談。 「かけるくんと出会えて、よかった」
本州と九州を隔てる関門海峡。その九州側・福岡県門司港に住む高校生のアサはママと二人暮らし。アサには推しの人気歌手「Yoru」がいる。音痴な自分もいつか歌が上手くなりたいとスナックで働くママに歌を教わる日々。そんなある日、推しが突然活動を休止。さらに衝撃の事実が判明する。「ママは本当のお母さんじゃない」生まれた時に事故で取り違えられたらしい。そんなはずない、と動揺するアサは海峡の向こう側・下関に住む本当のお母さんに会いに行く。しかし、取り違えられていた相手が「Yoru」だと判明し…。これは、家族がもう一度家族になるための物語。
「ナオが決めて、いいんだよ。ナオとして生きていくか。それとも…私の中に戻ってくるか」素直に与えられた猶予は、一か月とすこし。オリジナルのために働く“レプリカ”である私の心は、もう決まっていて。そして、やって来たクリスマスの日。観覧車の中で、私はアキくんにお別れを告げた。なんにも後悔はない、そのはずだったんだけどー。冬はいつの間にか終わり、春がもういちど、私のもとに訪れる。レプリカと、オリジナル。二人がひとつの答えに辿り着く、第4巻。
オリジナルがやりたくないことを押しつける身代わり、“レプリカ”だった私だけど、その役割を失って。「素直が何を考えてるか分からなくて、怖い」そんな思いを抱えながら、季節は冬に向かっていく。素直が修学旅行に行っている間、私はアキくんと一緒に、リョウ先輩の故郷・富士宮へ行くことになった。それぞれ別々の場所で、はじめての旅を楽しみつつ、レプリカの仕組みの謎を紐解くピースを拾いー。そして私は、素直が秘めた思いと、知らなかった真実と、向き合うことになる。-ナオと素直。それぞれの視点から描かれる、転機の第3巻。
体育館の二階で出会って、美人だなーとは思っていた。同時にやつは、わたしの三倍ぐらい不良だなとも。 本人の柔らかい印象のせいだった気がする。最初に名前を聞いて、浮かんだ名前はひらがなだった。 卓球場から、マンションまで。女子高生からOLまで。サボり仲間から、恋人まで。長いようで短い二人の時間。そのこぼれ話を拾った書き下ろし多数の短編集。 同棲直前、安達母への挨拶の日を綴った中編『そして……』も収録。
「おかえり。仕事疲れたでしょ」 「うん。あ、でもしまむらの顔見たら疲れが吹っ飛んだ……みたいな……」 「ほーう。じゃ、元気なとこ見せて」 「え……。げ、げんきー」 こんな調子で、私たちはずっと続いていくんだろうなあ。たぶんおばあちゃんになっても。ひょっとすると三千七百年くらい経っても。 『安達としまむら』BD/DVD特典小説、イラスト付きで待望の文庫化!
第15回GA文庫大賞《大賞》受賞作 『このライトノベルがすごい!2024』(宝島社刊)総合新作部門第3位 「打上花火、してみたいんですよね」 花火にはまだ早い四月、東京の夜。 内気な大学生・空野かけるはひとりの女性に出会う。名前は冬月小春。周りから浮くほど美人で、よく笑い、自分と真逆で明るい人。話すと、そんな印象を持った。最初は。 ただ、彼女は目が見えなかった。 それでも毎日、大学へ通い、サークルにも興味を持ち、友達も作った。自分とは違い何も諦めていなかった。 ーー打上花火をする夢も。 目が見えないのに? そんな思い込みはもういらない。気付けば、いつも隣にいた君のため、走り出すーー ーーこれは、GA文庫大賞史上、最も不自由で、最も自由な恋の物語。
「ねぇ。しばらく私の代わりに学校行ってくれない?」不気味なくらいに優しい素直の言葉が、私を惑わせる。オリジナルがやりたくないことを押しつける身代わり、“レプリカ”には、手に入るはずもなかったもの。“ふつう”の学校生活を送る日々が訪れた。文芸部の廃部の危機を救うため、奔走して。アキくんとの距離も、縮まって。そしてー。「ナオちゃん。わたしを見つけてくれて、ありがとう」秋。私の好きな人と同じ名前をした季節に、忘れられない出会いをした。第29回電撃小説大賞“大賞”受賞作、切なく胸を打つ第2巻。
ーー鏡よ鏡。あの月にふさわしい女は、誰? 「昔むかし、あるところに、暗雲姫と呼ばれる美しいお姫さまがいましたーー」 穏やかな9月が終わり、10月。 藤志高祭の準備は佳境を迎えている。俺たちのクラスの出し物は、オリジナル演劇『白雪姫と暗雲姫と優柔不断な王子さま』。 白雪姫は夕湖で……あとはわかるな? なずなの意図を感じつつ、俺たちは映し鏡のような物語を演じていく。 はふう、と。真夜中みたいな吐息を漏らして、暗雲姫が口を開いた。 「鏡よ鏡。--この世でいちばん美しいのは、誰?」 朱々しい毒りんごを胸に潜ませて。七瀬悠月の舞台が、幕を開けるーー。
チラムネのキャラは、こうして生まれたーー 祝、「このライトノベルがすごい!」殿堂入り! チラムネ初、待望のイラスト集付き特装版! raemz描き下ろしカバーをつけた8巻に、初期キャラデザイン、未使用カバーラフなどの秘蔵イラストを余すことなく掲載したラフイラスト集を同梱。 さらに、人気イラストレーター陣のゲストイラストも!? 大ボリューム52Pでお届けする、あまりに美麗なラフイラスト集付き特装版! 【編集担当からのおすすめ情報】 raemz先生のラフがあまりに美しいので、これはぜひファンに届けたいと企画しました。ボツになったキャラデザや未使用ラフなど、イフ世界のチラムネを楽しめるのもオススメポイントです!
具合が悪い日、面倒な日直の仕事がある日、定期テストの日…。学校に行くのが億劫な日に呼び出される分身体、それが私。自由に出歩くこともできない、オリジナルの身代わりとして働くのが使命の人生。だったはずなのに、恋をしてしまったんだ。好きになった彼に私のことを見分けてもらうために、髪型をハーフアップにした。学校をサボって、内緒で二人きりの遠足をした。そして、明日も、明後日も、その先も会う約束をした。名前も、身体も、ぜんぶ借り物で、空っぽだったはずの私だけど、この恋心は、私だけのもの。第29回電撃小説大賞の頂点に輝いた、とっても純粋で、ちょっぴり不思議な青春ラブストーリー。
安達としまむら、二十二歳。私は今、真っ赤になった安達の右足を掴んで眺めていた。次はどこにキスするのがいいかな。なんでこんなことになってるんだっけ。夏の暑さで常識が脱水症状を起こしてるのかもしれない。…あ、旅行の計画を立てるはずだったんだ。「ところで、安達は旅行楽しみ?」「ほほふぇ?りょほー?」小学生、中学生、高校生。夏は毎年違う顔を見せる。こうして同じ人と、同じ時間を、二人で過ごしていたとしても。そんな、夏を巡る二人のお話。
「1年5組の望紅葉です。よろしくお願いします」夏休みが明けて、九月。藤志高祭に向けた準備が始まった。校外祭、体育祭、文化祭が連なる、高校生活でもとびきり華やかなイベントだ。俺たちは青組の応援団に立候補し、グループパフォーマンスを披露する。縦割りチームで3年代表として明日姉が、そして1年からは陸上部の紅葉が参加することになった。夏でも秋でもない、あわいの季節。俺たちは時間と追いかけっこしながら、おだやかな青に染まっていくー。
「ばいばいみんな、また二学期にな」それぞれの思いが花火のように夜空を染めた夏。少女たちは、再び手を伸ばす。心の奥に沈む、大切な月を掬えるようにと。熱く駆けぬけた季節を終わらせ、もう一度歩き出せるようにと。終わりはきっと、なにかの始まりだから。短夜を彩る珠玉の「長篇」集。-だから、ばいばい、人生で一度きりの夏。
私は明日、この家を出ていく。しまむらと一緒に暮らすために。私もしまむらも、大人になっていた。「あーだち」跳ね起きる。「おぉでっ」派手に後退した私を見て、しまむらが目を丸くした。両手をおどけるように上げる。下りて目にかかる髪を払いながら、左右を見回して、ああそうだと理解していく。マンションに移り住んだのだった。二人きりなのか、これからずっと。「よ、よろしくお願いします」「こっちもいっぱいお願いしちゃうので、覚悟しといてね」私の世界はしまむらですべてが出来上がっていて、これからの未来になにも不安などないのだ。
すべては変わってしまった。唐突に、劇的に。どうしようもないほど残酷に。けれど、ひとりで塞ぎ込む時間を、彼女は与えてくれなかった。「あの日のあなたがそうしてくれたように。今度は私が誰よりも朔くんの隣にいるの」-1年前。まだ優空が内田さんで、俺が千歳くんで。お互いの“心”に触れ合ったあの日。俺たちの関係がはじまったあの夜を思い出す。優空は言う。「大丈夫、だいじょうぶ」月の見えない夜に無くした何かを、また手繰りよせられるというように。…俺たちの夏は。まだ、終わらない。