制作・出演 : エフゲニー・キーシン
キーシン19歳の時の録音で、同時に撮った映像もある。シューベルトのヴィルトゥオーゾ的大作「さすらい人幻想曲」やブラームス晩年の渋い名品、リストの華やかな曲と、キーシンの技巧と抒情性が発揮された一枚。
キーシン初の弾き振り。室内楽的なアンサンブルで、アーティキュレイションなど細部を丁寧に描く。キーシンのピアノはいつもながらタッチや音質に隙がなく、特に緩徐楽章はじっくりと弾いて、美しく磨き上げている。その分、K.466のデモーニッシュさは些か薄らいでいると感じる向きもあるかも。
キーシンのシューマンは実に味わい深い。90年から2001年の間に世に出たアルバムから選定した珠玉の演奏ばかりだ。ピアノ独奏曲はいうまでもないが、ジュリーニ&ウィーン・フィルと共演したシューマンの協奏曲は絶品(92年ライヴ)。現代的ロマンティシズムの極致とも言うべき熱演に引き込まれる。
93年カーネギーでのリサイタルから2004年のヴェルビエ音楽祭でのライヴまで、10年強にわたるキーシン×RCAのショパン録音を集成した5枚組。聴き手の呼吸を止めてしまうがごとき集中力あふれる音楽の凄みは、特にライヴで顕著。こんな“ショパン・イヤー”の切り取り方もいい。
キーシンが30代半ばに満を持して録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集。細部の彫琢、細やかな表情、それに堅固な構築力を見せつけて、すでに大家の風格を備えている。C.デイヴィスとLSOによるバックも万全。
かつて神童と騒がれた天才ピアニストも30歳を超え、ピアニストとしてさらなる成長を遂げ、芸術的な深みも格段に増してきました。そのキーシンが1997年にレヴァイン指揮するフィルハーモニア管弦楽団とともに満を持してベートーヴェンの「皇帝」協奏曲をレコーディング、世界中の注目を集めました。カップリングには若き日のキーシンが巨匠ジュリーニ指揮するウィーン・フィルというこの上ない組み合わせをバックに創り上げたシューマンのピアノ協奏曲。1992年5月に行なわれたウィーン・フィル定期演奏会でのライヴ録音。まさに卓越した音楽家同士の演奏がお互いを高め合う、至福の一時ともいえる白熱した演奏会になりました。フィルアップにはシューベルトの歌曲をリストが編曲した2曲の小品を収録しています。
これは待望のアルバムである。キーシンの協奏曲ものはエキサイティングになるのは必定。結論から言えばそれ以上の出来。というかキーシンの芸域はさらに深みを増した印象がある。演奏における風格と興奮は必ずしも共存しないものだが、このベートーヴェンにはそれがある。いわば巨匠的な絶対的価値観や品格に、聴き手の誰をも引き込ませずにはおかない鮮烈な表現が加味されている。もはや現代では鬼に金棒。とりわけ第1番、そして第3番と第4番が素晴らしい。しばらくはこれを凌ぐ全集など考えられなくなる。
12歳でのデビュー盤には、びっくりしたなー。ここには、ラフマニノフが16歳だが、あとは20歳過ぎてからのピアノ・ソロを集めている。テクニック、構築力、豊かな表現力と、このかつての天才少年は、見事に王道を歩んでいる。それだけでも凄いことじゃないだろうか。
伝統を誇るレーベルが擁する歴史的名演から最新の話題盤まで、名曲名演を厳選した“RCAレッド・シール★ザ・ベスト”の1枚。力強いタッチと集中力が、聴き手の心情をゆさぶる。
キーシンの25歳の時の「クライスレリアーナ」と、23歳の時の「幻想曲」でまとめたアルバム。キーシンの特に弱音が美しく、シューマンのロマンティシズムが息づいている。
たっぷりのロマンティシズムが、現代的に隅々まで整理された音響の中から沸きあがってくる演奏で、その意味ではモーツァルトもシューマンも高次に同化された音世界が現れる。(元)RCA演奏者&制作+(元)デッカ録音=EMIと、今のご時世も聴こえる!
2004年、スイスのヴェルビエ音楽祭で絶賛を浴びたライヴ。キーシン自身もCD化を強く望んだといわれるポロネーズと即興曲。スケールの大きな演奏はさすが。タップリとしたフレージングだが、それを冗長と感じさせない自在なタッチの変化がみごとだ。
大家としてのスケールをみせているキーシンと、ピアノの名手としても有名な指揮者のレヴァインの、カーネギーでのライヴ。ヴィルトゥオジティぶりと、詩的な感興とが織り成す、楽しくも華麗なアルバム。
スクリャービンは繊細さとキラキラと輝くような音色を実にうまく対比させている。メトネルは柔らかくしっとりとした音色が忘れがたいし、ストラヴィンスキーでは凛々しく引き締まった表情と精悍さが印象的。円熟した、本当に立派なピアノであると思う。
うまーい。ソナタでの1フレーズずつというか、1音ずつと言ってもいいくらい表情に変化を付けたきめ細かな演奏には驚いた。半端じゃない美しさを作り上げている。しかしこのこってり味は、ライヴ向きではある。感動的過ぎるもんね。リストの方は、もう文句なし。★