制作・出演 : オーケストラ・アンサンブル金沢
編成の小ささゆえに声部の見通しがよく、対向配置も一層の効果をあげている。その上、音が痩せてしまうことがほとんどないのは秀逸。ただし、終楽章に向かって調子を上げてゆくものの、特に前半二つの楽章で指揮とオケが煮え切らず噛み合わない瞬間が少なくないのは残念だ。
小編成オケ、古楽奏法によるブラームス。響きの量感が作る時間のたゆたいや情感の広がりの替わりに、リズムや音の動きの形の変化、厚みに埋もれていた響きの表情や楽器間の関係が明快に浮かび上がる。この曲にこんなにも“音”が! 斬新なアプローチである。
初めての宗教曲集。相変わらずのこの世への祈りを込めてのアルバムだそうだ。そういう真摯な気持ちがストレートに出ている。非常に丁寧にうたっている。ヴィブラートも控えめで、装飾音も華美にならず、端正で清楚。単なる癒し以上のアルバムで、感動を誘う。
石川県立音楽堂におけるライヴ。プリアトナはインドネシア音楽界を牽引する俊英指揮者で、合唱の育成では世評が高い。このCDでも興味の的は「魔弾の射手ミサ」。僅か二十数名と思えない充実した響きでウェーバーの音楽に魂を吹き込む。称賛の拍手を送りたい。
ダウスのヴァイオリンは安定した技巧による正攻法の演奏で、細部もクリア。狂気よりも愉悦の演奏を聴かせる。OEKは鈍重さに陥ることなく敏捷さと豊かな響きを同居させており見事だ。「オブリビオン」での気怠げなムードもよく演出されている。ヴィヴァルディも秀演。
聴きものはサーラの歌う中間の3曲、この色のある歌声はなかなかのもの。続いてはモーツァルトの2曲のアリアも悪くないと思う。最初の「エジプト王タモス」は珍しいが、オーケストラにもっと練り込んだ音が欲しい。「三角帽子」も良いが、やや残響過多かも。
2007年1月からオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督を務める井上道義の就任記念アルバム。交響曲第39番第1楽章の序奏の猛烈なスピードに驚かされる。速めのテンポやノン・ヴィブラートなどの古楽的なアプローチを積極的に取り入れた新鮮な演奏だ。
3曲ともOEKの委嘱作品。2007年尾高賞受賞作である新実作品は緻密に書き込まれた秀作。最後に鎮魂の意味でバッハが引用される。映画やドラマの音楽で知られる渡辺の作品はドラムを中心とした楽しい曲。フランスのブトリーの“浦島”も面白い。
ショスタコはお約束のマッシヴな賑々しさ。いわば納得の音の姿だが、チャイコフスキーは一転驚くほど落ち着いた佇まい。響きにも語り口にもほとんど扇情的なものを感じさせない。「ロココ風」など独奏が団員のゆえか室内楽的とも言える趣。意外な面白さだ。
公式応援歌である「栄光の道」をなんと松井の地元、石川県のオーケストラ・アンサンブル金沢が好演。バリトン歌手の勇壮な歌声とオーケストラにより、スケールの大きな作品に仕上がっている。カップリングはメジャーリーグ観戦での定番「私を野球に連れてって」。
モーツァルトの協奏曲とソナタをカップリングさせる企画の第2弾。デビュー盤ともなった第1弾は大好評だったが、こちらも上々の仕上がり。ストレートでピュアなアプローチと透明な音色の中に、モーツァルトのさまざまな表情が浮かび上がってくる。シリーズ化を望む。
OEKによる充実の最新録音が1,050〜1,500円で買える画期的なシリーズ。渋めの選曲が憎い。今回も録音の少ないメンデルスゾーンの協奏曲が音楽ファンの心をくすぐる。演奏機会の少ないのが不思議なチャーミングな作品が美しく蘇った。溌溂とした「プラハ」も楽しい。
これまでパンチの利いたベートーヴェン演奏を聴かせてきた、金聖響とオーケストラ・アンサンブル金沢。今回の演奏は、「田園」という作品の持ち味のためか、果敢な攻撃性よりも、きめ細かなニュアンス付けと自然な音楽の流れが特徴だ。オケも好演。
2005年7月、ドイツの音楽祭に招待された際のライヴ録音。何かを際立たせるのではなく、全体の響きをウェルバランスに整えた上で音楽そのものに語らせるスタンス。ちょっとセピアにくすんでまろやかなオケの音色が、情の機微を等身大に捕まえる。渋めの逸品。
明快な旋律の中にフッと陰りを感じさせる繊細さは、R.シュトラウス最晩年の作品に共通する味わい。二人の管楽器がすばらしい。性格の異なる音色が巧みに絡み合って淡い色合いの変化を描き出す。「スコットランド」の透明感あふれる室内楽的な演奏も美しい。