制作・出演 : ヨーロッパ室内管弦楽団
不世出のスーパー・フルート奏者ゴールウェイの、いわばバロック・ベスト。バロック音楽の“正しい”演奏と言えるかどうか、なんていう疑問は、この伸びやかで輝かしい音としなやかで明るい音楽性の前では、何の意味も持たない。上質なエンタテインメントとも言える。
いまが旬のオーボエ奏者といえば、迷わずフランソワ・ルルーの名をあげよう。自在にビブラートを変化させ、音色に彩りを加えていく。その表現力の多様さがルルーの魅力。バッハの音楽におけるオーボエの重要さを再認識させられる。とにかく鮮やかで巧い。
協奏曲は、ピリス2度目の録音。円熟の度合いを増したピリスが、細部にまで細かな情感を込めて知的にコントロールした名演だ。幻想曲や子守歌も、濃やかな表情が息づいた瑞々しいショパンを聴かせている。
抜群に美しい第2楽章を持つ第21番と、独奏のピアノが華麗な第26番の組み合わせ。モーツァルトのスペシャリストでもあるピリスによる演奏は、モーツァルトの美しさが際立っている。アバドのサポートも見事。
ホープは英国の気鋭のヴァイオリニストで、バロックから現代まで広範な守備範囲を持つ。今回はバッハ。しっとりとした叙情性を漲らせた濃厚な演奏である。古楽器による昨今のスリムな演奏とは対極にある豊艶な表現。現代に渇望される演奏ではなかろうか。
変ロ長調のみの協奏曲集。鍵盤上をするすると動き回るなめらかさが、なんとも爽快。弾き振りのせいか、やや慎重さが感じられることはあるが、オーケストラの響き自体はとてもきれい。第27番の第3楽章は遅めのテンポが決まり、宙に浮いたような感じ。
アーノンクールらしい学究性に裏打ちされたバルトークは不思議なくらいに爽やかであり、クールなオーセンティシティは作品に生まれたてのような生命を吹き込む。指揮者の自信は揺るぎのないサウンドに結実して響き渡り、鮮烈な躍動が聴き手を圧倒する。★