発売元 : 日本伝統文化振興財団
柴田南雄(1916〜1996)は前衛的技法を集大成し、後半生は過去の音楽を混合・総合して新たな方向を示した。民謡や古旋律が交錯し寸劇も入る「銀河街道」には、多様な素材の再構成という創作原理が凝縮されている。充実のブックレットで資料的価値も高い2枚組。
2000年9月東京、2001年2月大阪で行なわれたサントリー音楽賞記念公演のライヴ。それぞれの会場で、東響、大フィルという二つのオケが三善晃の交響四部作を演奏した記録だ。戦災の体験を原風景とする壮絶なイメージが痛切な音となって突き刺さってくる。
2008年7月21日に名護市の万国津梁館で行なわれた“海の日、サンゴの日”ライヴを収録。島唄の重鎮である登川誠仁からりんけんバンド、ガレッジセール、よなは徹、久場政行……らが参加。チャンプルーといった構成のステージで、これぞ沖縄と実感させる。
生田流筝曲演奏家、安藤政輝の宮城道雄作品集。通常は二人または三人で合奏する演目を、多重録音を駆使して安藤一人で演奏。合奏では味わえない、各パートの音のクリアさが聴きどころだ。
注目は[21]収録の「火焔太鼓」で、1952年4月、61歳と油の乗り切った時期の録音。志ん生十八番中の十八番のネタだが、この音源はSPからの復刻を別にすれば最も古いもので、元気いっぱい、瑞々しい語り口だ。それ以外は66年録音の[22]収録の「佃祭」と[23]収録の「お直し」を除き、倒れる直前の61年の音源で間の取り方=押し引きの妙がたまらない。陰惨な噺を見事に笑いに転化した[21]の「黄金餅」、奇想天外な発想をそれとは感じさせない「二階ぞめき」、独特のフラが究極まで活かされた[22]の「替り目」など、全盛期の志ん生が味わえる。
つぶやくような独特の語り口と人間の喜怒哀楽を描き、通好みの噺家として知られる可楽のアルバム。「味噌蔵」は、鳴り物入りで三階節を歌うなど陽気な仕上がり。「子別れ(上)」は、得意な酔っ払いの描写が冴えている。昭和31年、59歳という全盛期の録音。
物腰が柔らかく、丁寧で明るい口調で、時として金馬を思わせた柳枝(明治38〜昭和34年)の最晩年である昭和31〜34年の音源で、初商品化や初CD化の音源ばかり。いかにも柳枝と思わせる噺の甲府から出てきて豆腐屋の婿になる「甲府い」、空き巣に入って酒を馳走になる泥棒の「締め込み」と間抜けな泥棒が出てくる噺の「花色木綿」、爆笑が続く「野ざらし」では客席の陰でクルマのクラクションが鳴っていたりする。仕返しに女房連を坊主にする「大山詣り」などを聞かせる。今では珍しい噺も演じている。
“郷みん’S”"は澤瀉秋子(唄、津軽三味線、三味線、太鼓)と椿正範(津軽三味線、唄)、松浦奏貴(踊り、太鼓)の郷土の民謡を今に伝えたいという20歳代の民謡界の若手たち三人によるユニット。聴いているうちに松浦が「安来節」を踊る姿を観たくなる。
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日本伝統文化振興財団福原徹は篠笛から能管まで自在にこなすバリバリの邦楽の笛方である。彼は主に長唄や古典を中心に活躍するが、作曲もする。本盤には自作品とバッハの編曲も織り交ぜる。とりわけ囃方(はやしかた)の楽器によるアンサンブル曲は新境地を切り開く印象で面白い。
邦楽作曲家の重鎮、二世今藤政太郎の作品集第5弾は、能の「能楽囃子による組曲」と狂言の「船渡聟」の2曲。「能楽囃子による組曲」は囃子と箏・三味線・コーラスの組み合わせという画期的な作品。「船渡聟」は和泉流狂言を舞踊化した作品で、いかにも狂言らしい軽妙な味が楽しめる。
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日本伝統文化振興財団三味線ファンク・バンド“THE家元”などでの活動でも知られる三味線の杵屋裕光、近年力強さを増している唄方で弟の杵屋利光という“杵屋兄弟”による現代長唄のマニフェスト的作品。高度な技巧を求められる難曲で、演者の腕の見せどころを心得た会心作だ。★
「あすの別れ」は、1956年9月25日に発行された随筆集で、そのなかから“上”は13篇、“下”は11篇の朗読を収録。1949〜1956年に発表された作品で、音楽に対する考えや交遊エピソードなどが語られている。川口敦子と中野誠也の端正な語り口が好ましい。
親しみを込めて“ジョギ”と略称されることもある女流義太夫の第一人者で、人間国宝でもある竹本駒之助の全集である。男性には表現できない義太夫節がそこにある。男による人形浄瑠璃(文楽)や歌舞伎などの舞台に出られなかった歴史を持つ女流義太夫は、素浄瑠璃という演奏スタイルで展開されていく。物語を語る太夫と低音域の太棹三味線(鶴澤津賀寿)とで描写していくのである。その演目は男・女に違いはなく、この全集には浄瑠璃・義太夫節の代表的作品を収録している。『平家物語』や『源平盛衰記』を題材にした梶原源太をめぐる物語が展開される「ひらかな盛衰記」神崎揚屋の段(ディスク1)から源義経伝説をテーマにしつつも平維盛を主人公にした「義経千本桜」すし屋の段(ディスク10?11)までを各CDに一話ごと収録。歌舞伎や文楽ファンならば、知っている物語ばかりである。