著者 : ジェニファー・テイラー
あなたは我が子のために帰ってきた。 わたしを愛していたからではなく……。 ベスとカラムは平凡ながらも幸せな夫婦……のはずだった。 けれど彼女にはなかなか赤ん坊ができず、不妊治療も失敗が続いた。 そんな妻に愛想を尽かしたように、カラムは離婚を切り出し、 仕事と言って遠い異国へ旅立ってしまう。 ところがその後、ベスは自分が妊娠していることに気づいた。 やっと苦労が報われた。これでカラムとわたしは親になれる……。 だが喜びは続かず、ベスが書いた手紙に彼からの返事はなかった。 捨てられた失意の中、彼女は待ち望んだ赤ん坊を出産して育て始める。 だから1年後、突然カラムが戻ってきても、ベスの気持ちは複雑だった。 心は親子で拒絶された悲しみと、今もつのる彼への愛に引き裂かれていた。 2017年、惜しくもこの世を去った名作家J・テイラー。今作は彼女が闘病中に執筆した一作です。元夫婦のあいだに生まれた、未来の象徴である小さな女の子に、作家がどんな思いを託していたか……。愛と命を紡ぐ温かな涙流れる物語を、どうぞお読みのがしなく!
看護師のレイチェルは亡き姉の娘を引き取って育ててきた苦労人。その姪が成長してようやく手が離れたのを機に、世界で救護活動をおこなう仕事に応募して合格する。リーダーで名高い外科医のシャイローが放つ威圧感に圧倒される一方、彼がときおり見せる温かでセクシーな笑顔に、彼女は強く惹かれた。しかし、妻を亡くしたシャイローは二度と恋はしないと誓っていて、それを知ったレイチェルは彼のために身を引くつもりだった。なのに、理性とは裏腹に、二人は求め合って一夜をともにしてしまう。数カ月後、小さな命を身ごもったことに気づいたレイチェルが独りで産み育てる決意をすると、シャイローが彼女の家を訪ねてきてー。
赴任先のイタリアの病院で上司となる男性を見て、ケリーは絶句した。ルカ・フェレーロ!2年前、彼は恋人だった私のもとを突然去った。ただ一言、別の女性と結婚することになった、とだけ告げて。ケリーは深く傷つき、やっとその痛手から立ち直って、今まさに、新しい人生の一歩を踏み出そうとしたところだった。まさかこんな形で再会するなんて…。もう忘れたつもりでいたのに!いいえ、彼はただの上司。距離をおいて冷静にふるまわなくちゃ。どう転んでも、ルカはもう、別の女性の夫になったのだから。だが、ケリーはまだ知らなかったールカが今は独身であることも、彼の結婚には、彼女が想像もしなかった理由が隠されていたことも。
生後すぐに捨てられて施設で育った看護師のエマにとって、クリスマスは独りで自宅で過ごすのが常だった。ある日、町へ買い物に出かけた彼女は、容姿端麗な新任ドクターのダニエルに出くわした。親を亡くした幼い姪を引き取って育てている彼は、エマの身の上を知り、クリスマスを一緒に過ごそうと提案してきた。看護師たちがこぞって憧れる彼と特別な時間を過ごせるなんて!人生で初の幸せなクリスマス。そのまま自然と二人は結ばれた。ところが翌朝出勤すると、入院患者の指輪がないと大騒ぎになっていて、エマが犯人扱いされてしまうーそして、ダニエルからも疑われ…。
十代で妊娠したものの相手に逃げられ、独りで息子を育てたレイチェル。その息子が、レイチェルの同僚医師マシューの娘と婚約したが、結婚式当日に花嫁が逃げ出し、式は中止となってしまった。レイチェルとマシューはやるせない気持ちを分かち合ううち、いつしか互いを心の支えとして、そして異性として強く意識し始めた。黒髪に白いものがまざり、円熟味のある魅力を放つマシューはしかし、8年前に最愛の妻を病で失って以来、恋愛をする気になれずにいた。それでもある日、二人はとうとう一線を越え、一夜を共にする。やがてレイチェルはマシューの子を身ごもったことに気づくが、再婚を望んでいない彼に迷惑はかけられないと、町を去る決意をし…。
「あなたが産んだ子は、事実、僕の息子なんだ」圧倒的にハンサムで尊大な男性レオの言葉に、ミアの頭は真っ白になった。この人は突然、私の前に現れて、いったい何を言っているの?不妊治療のすえ人工授精で授かった息子ももう5歳になる。看護師をしながら女手一つで子育てするのは大変だけれど、楽しい毎日だ。なのに、互いの息子が受精卵のときに取り違えられたと彼は主張する。最愛の息子を奪われる恐怖から、ミアは逃げるようにその場を去った。翌日、仕事先の病院で新しい科に配属されたミアは、あまりの厳しさに仕事の鬼と恐れられる医師を見て驚愕する!まさか、信じられない…なぜこんなところに、レオが?
アナはダルヴァーストン総合病院で働く産婦人科医。さまざまな悩みや事情を抱える患者を親身に見守る彼女にも、スタッフにさえ打ち明けていない秘密があった。それは3年前に離婚したこと。夫サムを愛していなかったわけではない。むしろ愛していたから、彼に本当の理由を告げずにつらい別れを選んだ。けれど今、新しくやってきた救急医が彼と知り、アナは激しく動揺する。別々の人生を歩むなら、同僚としてうまく接しなくてはならない。アナは必死にサムへの愛を抑えこもうとするが、結婚当時は気づかなかった幸せな日々ばかりがよみがえってくる。欲しかった子供が持てないとわかった、あの日の記憶と共に…。
数カ月の休暇のあと、看護師のルーシーは仕事に復帰した。その初日、彼女は信じられない話を耳にする。コナーが小児科長として病院に戻ってきたというのだ。なによりも仕事を優先し、恋人だったルーシーを捨てていった彼。医師としてさらに出世するためアメリカへ渡ったはずなのに、なぜ今になって戻ってきたのかしら…?その答えは、ルーシーが恐れていたとおりだった。コナーは、別れたあとで彼女が密かに産んだ娘に会いに来たのだ!そして、娘の正式な父親になるためならなんでもすると言い放つ。ルーシーは不実な彼を信じられず、なんとしても娘を守ると心に誓った。
「あなたの子供をもう一人産ませて。私たちの娘を助けるために」イタリアにあるヴィンチェンツォの豪邸を訪れ、ローリは懇願した。忘れられていても、頭がおかしいと思われても当然だわ。ヴィンチェンツォにとって私は、5年も前のゆきずりの女なのだから。私にとってあの夢のような日々は、生涯忘れえぬ恋だけれど…。その後ひそかに独りで産み育ててきた娘が難病とわかり、適合するドナーが見つからない今、父親である彼にすがるしか道はない。震える声で人工授精の手順を説明しようとするローリの心を、ヴィンチェンツォの冷徹な声が切り裂いた。「僕の人生計画に子供は入っていない。今までも、これからも」
6年前、サマンサは王子にして外科医のハリドと恋に落ちた。突然、花嫁としてふさわしくないと、彼がサマンサを切り捨てるまでは。彼女はずっと異性関係の派手な母と、服役中の兄に苦しめられてきた。そんな育ちのわたしが、王子の配偶者としてふさわしいわけがない。しかしそのハリドから、自分の祖国で一緒に働いてくれないか、という依頼が飛びこんできて、サマンサの心は揺れた。恐れていたとおり、再会するなり彼女の目はハリドに釘づけになった。その堂々とした姿は相変わらずで、いかにも王族らしい。サマンサの胸は締めつけられた。だから、わたしは分不相応だったのだ。頭ではわかっている。でもなぜか、ときめく胸はわかってくれない…。
キャサリンは1年前、父を破産から救うために形だけの結婚に応じた。相手は有能な実業家ジョーダン。別居同然の夫は世界中を飛び回り、彼女はともにパーティに出席するときだけ妻としてふるまっていた。だが今度は兄が借金を作り、またもジョーダンが救いの手をさしのべる。ただし、彼が出した条件に、キャサリンは茫然とした。実際に夫婦として暮らし、子どもを作らなければならない、と。彼女の脳裏に、結婚式の夜ー忘れられない夜のことが浮かんだ。ジョーダンに抱きすくめられたあのとき、彼が手を離さなければ、身を任せていたかもしれない。キャサリンは奔放な母の血を怖れていた。いま夫の提案を受け入れた場合、私はどうなってしまうの…?
夜勤の看護師モリーは、2年前に恋愛も結婚もあきらめた。クリスマスを間近に控えたある夜、病院に出勤すると、思いがけない再会が待っていた。なんてこと…シェイン?彼こそ、2年前、理由も告げずにモリーを捨てた最愛の人だった。同じ病院に、非常勤として着任したのだという。以来、モリーはいつも彼の姿を目で追ってしまうし、別の男性からランチに誘われても、ちっとも楽しめない。しかも、シェインは同じレストランにわざわざやってきて、モリーには目もくれずに、近くの席についたのだ。せっかく傷が癒えかけていたのに、なぜ、私の心を乱すの…?
神様、お願いです。どうか人違いでありますように。看護師クレアの祈りもむなしく、近づいてきた新任の医師は忘れられない元恋人ショーンー愛する息子ベンの父親だった。8年前、クレアは彼の夢を邪魔したくない一心で彼のもとを去った。そして密かにベンを産み育ててきたー父親は死んだことにして。どんなに辛くても、この嘘を一生背負って生きる覚悟でいたのに…。千々に乱れる心を抱えながら、再びショーンに惹かれていくクレア。真実を告げられないまま、家族ぐるみのつきあいが始まったが、ベンの誕生日を知るやいなや、ショーンは激しい怒りを燃え上がらせた。「きみがぼくを振ったのは、ほかの男の子供を産むためだったとはな!」
「きみの息子は無事だ」夫のモーガンの声に、カトリーナは身を震わせた。いくら夫に会いたいとは思っても、病室での再会は望んでいなかった。モーガンから一方的に別れを切り出され、家を飛び出したのは4年前。カトリーナは南アメリカで看護師として支援活動中に、病死した少女の忘れ形見を引き取って独りで育ててきた。今回の帰国は、夫の手を借りて正式に養子縁組をするためだった。なのに、モーガンのもとへ向かう途中で事故に巻き込まれ、運び込まれて手術を受けた先が、なんと彼の働く病院だったのだ!病床から、あの子の父親になってほしいと懇願すると、夫は言った。「きみの厚かましさには驚くよ。ぼくを苦しめて楽しいのか?」
小児病院の看護師ルーシーは、5年前につらい別れを経験した。病気がもとで、ほぼ子を望めないと医師に言われた彼女は、温かい家庭を築くことを何より望む最愛の恋人トムに、泣く泣く別れを告げたのだー別に好きな人ができたと、うそをついて。そのトムが今、愛らしい息子を連れ、新しい医長として赴任してきた。1年前に妻を亡くしたというトムの目には悲しみが浮かび、3歳の息子と二人だけで生きていくつもりだと、彼は言い放った。それでも、あの日と変わらず魅力的なトムと一緒に働くうち、ルーシーは彼への気持ちが5年前と変わっていないことに気づき、どうしようもなく胸を締めつけられるのだった…。
子供のころに家族を失い、施設で孤独に育ったゾーイは、ある日元恋人の医師ベンと再会し、熱く切ない一夜を過ごした。だが愛を失う恐怖にとらわれて逃げだしたー2年前と同じように。そして今、目の前にまたベンがいる。今日こそ彼に伝えなければ。自分の生き方についての考え方が変わったことを。この最後のチャンスを、絶対に逃したくはないことを…。「妊娠しているのか、ゾーイ?」ベンの率直な問いを受け、ゾーイは数奇な運命を伝えるための勇気をかきあつめた。「ええ。あなたの子よ。それと、妊娠がわかってから癌が見つかったの。私が死んだときには、この子のことをお願いしてもいいかしら」
ある日、事故で頭を打って救急搬送されてきたイタリア人を見るなり、看護師のジーナは凍りついた。なぜ、マルコがロンドンに?3年前、出張先のフィレンツェで医師の彼に出会って強く惹かれ、めくるめく6週間を過ごしたのに、あっさり別れを告げられたのだ。その後、ジーナは娘をーマルコの子を産んだが、彼はそれを知らない。妊娠を伝えようとしたが、電話でも手紙でも連絡がつかなかった。そこまで嫌われているのなら…。そう思い、あきらめたのだった。今、病室で意識を取り戻すも、記憶喪失に陥ったマルコの言葉に、ジーナはうろたえる。「なぜか、君とは親しい仲だった気がするが?」娘のことは言わないわ!冷たい彼にもう傷つけられたくないから。
ベスは決心した。亡き妹の娘を引き取って1年近く、不運続きの人生にようやくかすかな光が見えてきた。白血病とわかった姪の命が、ひょっとしたら助かるかもしれない。独りで子育てをしていた妹の日記に、姪の父親とおぼしき、アダムという名の医師の連絡先をついに見つけたのだ。姪を邪魔者扱いしたフィアンセとも別れ、ベスは看護師として田舎町の診療所に転職し、その2階に姪と住める部屋も見つけた。あとはアダムが娘を認知して、骨髄ドナーになってくれれば…。妹との約束とはいえ、彼に娘がいると知らせなかった私の頼みを、はたして聞いてもらえるのだろうか。電話を取るベスの手が、震えたー。
ローズは17歳で、生まれたばかりのダニエルを養子に出した。初めて愛した相手には去られ、両親にも見捨てられて、彼女は独り、ロンドンに出て、息子のダニエルを産んだのだった。息子とのつらい涙の別れの後、ローズは看護師として自立した。それから18年、彼女に奇跡のような再会の機会が訪れた。ダニエルの養父であるオーウェンに呼び出されたのだ。会ってみると、オーウェンは荒削りだがハンサムな男性だった。養母を亡くして失意の息子が、生母に会いたがっているという。すぐにも会わせてほしいと懇願するローズに、オーウェンはしかし、息子に近づかせまいと、金を渡して引き下がらせようとして…。