著者 : ジェレマイア・F.ヒ-リ
スティーヴとサンドラ、ヘイルとヴィヴィアンの二組の夫婦は、かたい絆で結ばれた親友同士だった。数週間前、凄惨な殺人事件が突如四人の身に降りかかるまでは…。私立探偵ジョン・カディは、恋人の検事補ナンシーからメイン州で二組の夫婦の三人がクロスボウで射殺され、残された一人が容疑者として逮捕された事件の調査を依頼された。容疑者のスティーヴは一貫して犯行を否認しており、事件には不自然な点も多かった。調べを始めたカディは、四人が別荘地にやってきては地元民から顰蹙を買っていた事実を知る。さらにスティーヴが勤める会社の商売敵の陰謀説や、四人に利害関係を有する肉親の存在も浮かび上がってきた。残忍な手口の背後にはいったいどんな動機が。友情の裏に隠された歪んだ人間関係に迫るカディ。
エキゾチックな顔立ちに小麦色の肌-写真の娘はまるで生きているように美しく見えた。見開かれた紫色の瞳は、なにかを訴えかけるようにカディを見つめている…。保険会社の依頼で人気モデルが絞殺された事件の調査を始めた私立探偵のジョン・カディは、警察で彼女の写真を目にした。どうやら警察は強盗の仕業と考えているようだが、五十万ドルもの保険金が掛けられていたことから、計画殺人の疑いもあった。折しもカディはマフィアのボス、トミー・ダヌッチから接触を受ける。殺されたモデルは実は彼の孫娘で、カディに犯人を見つけだしてくれというのだ。関係者の証言からしだいに明らかになっていく娘の意外な素顔。執拗な調査を試みるカディが突き当たったものは、マフィア一族の隠された過去と錯綜した人間関係だった…。アメリカ私立探偵作家クラブ賞を受賞した筆者が放つ、話題のハードボイルド・シリーズ第七作。
私立探偵ジョン・カディは昔を思い出していた。最愛の妻が脳腫瘍にかかり、長いこと苦しみながら生死の境をさまよいつづけた日々。あのとき、安楽死という選択肢が頭に思い浮かばなかったといえば嘘になる。だが、ふたりでその件について話しあったことは一度もなかった…。今になってふたたび安楽死のことを考えるようになったのは、“死ぬ権利”を唱える法学教授メイジー・アンドラスの関係者から調査を依頼されたからだった。教授の死を予告する脅迫状が届いたので、差出人を突き止めてくれというのだ。教授は脳卒中で倒れた夫の自殺を幇助した過去があり、その体験をもとに始めた“死ぬ権利”を広める運動には、反対者が大勢いた。脅迫者はそのなかの一人なのか?それとも、内部事情に詳しいことからみて、教授の身辺の人間なのか?生と死のはざまで揺れ動く人間心理を繊細なタッチで描き、生きることの意味を問いかけた問題作。
私立探偵ジョン・カディの目に映った地方都市ナッシャーバーは、悪臭ただよう漁港と薄汚れた工場からなる死んだような街だった。この街でカディは、依頼人の死が本当に自殺だったのかを調べるつもりでいた。死亡した依頼人は、ナッシャーバー警察の腐敗を暴こうとする、若く野心的な女性新聞記者だった。彼女は地元の警官がポルノ業者から賄賂を受けとって違法な幼児ポルノを目こぼししていることを聞きつけ、記事にしようとしていた。だが、それを教えてくれた情報屋が何者かに殺されたことから、彼女はカディに、男を消したのが警察のしわざであると立証してもらおうと考えたのだった。はたして女性記者の疑惑は正しく、彼女自身も自殺に見せかけて警察に殺されたのか?ボストンの知性派探偵カディが単身さびれた地方都市にのりこみ、その暗部を暴きだす、シリーズ最新作。
この男は蛇に似ている-これが、はじめてロイ・マーシュと顔をあわせたときに私立探偵ジョン・カディのうけた印象だった。ロイと離婚訴訟中の妻ハンナが夫を恐れるのも無理はなかろう。カディはそのハンナから頼まれて、彼女のボディガード役として離婚協議の席にたちあったていたのだった。話し合いは、ハンナから家の所有権を求められたロイが激昂し、そのまま物別れに終わった。だが、ロイはおとなしくひきさがっているような男ではなかった。ハンナの家に忍びこむと、幼い娘のかわいがっていた子猫を虐殺したのである。娘を巻きこんだ卑劣なやり口に怒りをおぼえたカディは、ロイと対決すべく彼の家へのりこんでいったが…。夫の暴力の影に怯える母と娘をまもるべく、ボストンの知性派探偵がたちあがる。待望のシリーズ最新作。
優秀な成績をおさめ、奨学金までうけて大学に進んだ黒人青年ウイリアムは、はたから見ると、スラム街からの脱出に成功し、将来が約束されているようにみえた。それがなぜ、心理療法にかよい、ガールフレンドの白人学生ジェニファーを撃ち殺さなければならなかったのか?私立探偵ジョン・カディは、旧友のマーフィー警部補がウイリアムの母親の知合いだったことから、事件の裏づけ調査を依頼された。しかし、事件には疑問の余地などなかった。ウイリアムは催眠療法の席で殺人を告白し、凶器の拳銃をとりだしたのである。病んだ現代人の心の襞に隠された事件の真相に、ボストンの知性派探偵ジョン・カディが迫る問題作。
全身に煙草の火を押しつけられ、性器を切られた無惨な死体-警察はホモの猟奇殺人と考えていたが、死体の左手の小指が折れているのを見た私立探偵ジョン・カディは、戦友アルは拷問されて殺されたのだと確信した。ガディは友の仇を討つべく調査を始めた。アルの“敵”は何者なのか?彼がわざわざボストンまで来ていたのはなぜなのか?カディは手掛りを求め、アルの故郷ピッツバーグへ飛んだ。精力的に調査を続けるその行手にやがて差すベトナム戦争の影-カディは自らの過去をも振り返りながら、さらにペンタゴンまで探り始めた。だが、危険がすでに背後に忍び寄っていようとは、彼には知る由もなかった。やさしくもタフなボストンの探偵カディの、命をかけた復讐行を描く待望の第二弾。私立探偵小説大賞受賞。