著者 : 伴野朗
純真で無垢な少年の姿は、大人の心を洗い清めてくれるーだが、誰しも少年だったころの昔日を思い返してみれば、他者への憎悪や妬み、邪悪で穢れた心の存在も否定できない。本書は美しくも危険な少年たちの光と闇をテーマにしたミステリーを集めたアンソロジー。かの江戸川乱歩が憧憬する村山槐多の画を巻頭に、推理文壇の名手たちの珠玉の傑作を厳選!
重病の床にあった孫権が逝くと、圧倒的な軍事力を誇る魏は即座に軍を動かした。しかし呉はこの進出を阻み、准南に二十万の大軍を送る。攻防三か月、呉軍は猛暑のため撤退を余儀なくさせられた。三国の戦いは限りなく続く。蜀は魏に滅ぼされ、魏が司馬炎の晋に敗れ去る。そして、最後に残った呉も…長江の水だけが悠久の流れを見せる。
魏の曹丕、蜀の劉備に続いて、呉の孫権も皇帝を称した。名実共に三国が鼎立したことになる。呉と蜀の盟約の辞に怒った魏帝は孫権暗殺を命じた。一方、蜀の丞相・孔明は数次の北伐を試みるが、魏への侵攻を果たせず、焦りを見せていた。そして第五次の北伐。最終決戦の臍を固めた孔明は、奇策に打って出る。「死せる孔明、生ける仲達を走らす」とは。
臣従を申し出た呉の孫権が蜀と同盟した。魏の曹丕の怒りはおさまらない。魏軍は南征するが、長江を前に愕然とする。対岸一帯に戦闘用の楼郭が聳え立っていた。疑城であるとは知らず、魏軍は撤退を余儀なくされる。さらに翌年も猛烈な寒波に襲われ、またも敗退せざるを得なかった。一方、蜀の孔明は魏への北伐を決意し、劉禅に「出師の表」を奉じる。連携して、呉の陸遜は淮南に兵を進めた。
魏の曹丕、蜀の劉備、呉の孫権。天下は三分された。孔明に諌められ一度は東征を断念した劉備だが、関羽の弔い合戦を果たそうと画策。ついに蜀軍は呉に向けて東進する。孫権は苦しい選択を迫られた。劉備の軍を迎え撃つ間に、北方から魏に攻め込まれたなら万事休す。双方を相手に戦う力など呉にはない。止むを得ず陸遜の言に従い、魏の曹丕に臣従を申し入れるが…。
呉の魯粛の訃は、関羽にとって何よりの朗報だった。これで荊州は蜀のものと信じ、北上して魏を攻める。しかし兵糧不足に陥り、呉蜀共同の備蓄米に手をつけた。呉にとっては蜀を攻める恰好の口実ができた。孫権は即、出陣を命じる。前線に魏軍、背後に呉の大軍を受け、関羽はついに呉軍に捕らえられ、非業の死を遂げた。呂蒙もまた、病に斃れる。さらに乱世の姦雄・曹操も逝く。
南三郡を実力で手に入れた呉の孫権は、無敵の水軍で江南を固めていった。胸中に渦巻くは合肥攻略だ。一方、最強の騎馬軍団と後漢の献帝を擁し、魏の曹操は再び天下統一の野望に燃えていた。「赤壁の戦い」で勝利を収めた劉備は荊州に足掛かりを得、益州を配下に置いて蜀を制した。三国鼎立の時代を迎え、戦いはますます熾烈なものとなった。焦点は荊州争奪にある。
呉の孫権は孔明の説諭に動かされ、蜀の劉備との連合軍を結成した。一方、荊州を席巻した魏の曹操は勢いを得て、南征を発令する。長江制覇に八十万もの大遠征軍を組織したのである。呉将は必ず投降する、と曹操は勝利の笑みを浮かべたが、その顔が凍り付いた。紅蓮の炎が自慢の水塞を襲おうとしている。世に名高い「赤壁の戦い」の帰趨は。
兄孫策が死んだ。孫権にとって青天の霹靂ともいうべき痛恨事であった。しかし張昭、周瑜の諌言を得て、孫権は奮起する。呉の威光を磐石にすべく反逆者李術を攻めて勝利を収め、実力を天下に示した。そらに諸葛瑾、魯粛、陸遜などの俊才を得た孫権は仇敵・黄祖を討ち、江東、江南を平定する。一方、北を征した曹操は荊州へと兵を進めた。
英雄となるべく運命を背負って生まれた孫堅。17歳の春の日、船旅に出て、海賊に襲われるが、賊20人をたった一人で退治する。豪胆ぶりはたちまち広がり、呉郡一円にその名をとどろかす。この武勇伝は、後の黄巾の乱、董卓の乱平定への序章だった。名著「三国志」を「呉」の視点から描く、著者会心の歴史ロマンが開幕する。
夢か現か?!最強と謳われた孫堅軍が瓦解してしまった。敗戦にうちのめされ、無念の思いで父の遺体を奉じた孫策だが、中国一の大河・長江を前に、その心は激しく燃えていた。隠忍の日々を経て、彼はついに長江西岸の平定に成功、さらに江東の魏の拠点を攻め落とす。魏の雄・曹操も、そうはさせじと孫策の前に立ちはだかる。風雲にわかに急を告げて…。
七雄が群雄割拠した戦国時代も秦が一頭地を抜き、その勢力支配図を塗り替えようとしていた。強国秦の脅威にさらされる趙の都・邯鄲にひとりの若者が現れた。その名は藺相如。秘宝「和氏の璧」を所望する秦王と渡り合い、無事璧を持ち帰ったことで、にわかに声望が高まった。面白くない宿将廉頗は彼を仇敵視するが、藺相如は廉頗との争いを避け国家の急を優先させる。彼の真意を知った廉頗は自らを恥じ謝罪、以後ふたりは「刎頚の交わり」を結ぶ。趙の国難を救ったふたりの知将を軸に権謀術数渦巻く乱世を描く。
三国志-英雄たちの戦いのドラマに、幕が降ろされた。曹操、曹丕が、劉備、諸葛亮が、そして孫堅、孫策、孫権、周瑜、魯粛、呂蒙、陸遜が、それぞれ舞台を降りて行く。三国志100年のロマンが終わる。ライフワーク完結。
「赤壁」の後、最強の騎馬軍団と後漢の献帝を擁し、再び天下統一を目指す魏の曹操。周瑜なき後、魯粛、呂蒙と無敵の水軍で江南を固める呉の孫権。荊州に足掛りを得、さらに入蜀を果たす劉備と孔明。天下は三国鼎立の時代へ-戦いの焦点は荊州争奪へと移る。勇将・関羽は北上、魏を攻めるが、非業の戦死を遂げる。そして、乱世の姦雄・魏王曹操を襲う突然の死。呉の社稷の臣・呂蒙も、また。次々と舞台を去ってゆく巨星たち。