著者 : 小川洋子
特集一 この世界にはムーミンがいる だれもが知っている、フィンランド生まれの愛すべきキャラクター。2025年は小説の第1作刊行から80年。でも、ムーミンっていったい何者? 妖怪でも妖精でもない、不思議な「ムーミントロールという生きもの」。ムーミンと仲間たちのいる世界には、不思議な〈おばけ〉たちも暮らしている。ムーミンたちは自由で、多様で、不思議で、ときどき怖い目にも遭って、日々を生きている。そんな世界の魅力を記念すべき年の締めくくりにお届け。 寄稿:萩原まみ「ムーミントロールとは何者なのか」 シリーズ書籍ガイド 寄稿:横川浩子 キャラクターガイド エッセイ:「私が語りたい このムーミンキャラクター」 あさのあつこ、藤野恵美、堀江敏幸、森絵都、森下圭子 寄稿:中丸禎子「千年前は毛むくじゃら!? 二十世紀フィンランドで生まれた新しいトロルのこと」 寄稿:杉江松恋「ムーミントロールの還る場所はどこか」 トーベとムーミン年譜 ルポ:ムーミンバレーパーク med はおまりこ ブックガイド:杉江松恋 グラビア:トーベのムーミンアート 特集二 澤村伊智十周年 『ぼぎわんが、来る』の鮮烈なデビューから十年、今も〈恐怖の最前線〉を走り続けている澤村伊智。様々なメディアミックスで話題を呼び、多くの読者に愛される「比嘉姉妹」シリーズを中心に、どの作品も怪異の奥からにじみ出る「人間」を炙り出し、読む者の心をえぐり、深い余韻を残す。常に挑戦し続ける彼は、この先、どこに向かうのか。その実像に迫る。今号では「比嘉姉妹」シリーズの最新作『ざんどぅまの影』の第一章も特別掲載、ご注目を! 対談:京極夏彦×澤村伊智 ガイド:朝宮運河 澤村伊智全作品ブックガイド 著者コメント付き 寄稿:「十周年へのエール」 宮部みゆき、辻村深月、東雅夫 ロングインタビュー:澤村伊智 with 担当編集者 ガイド:澤村伊智を作った十作 ◆特集のほか連載など多数 特別寄稿:荒俣宏「紀田順一郎氏を偲ぶーー昭和の“黒船”と「幻想怪奇」開化」 小説:小川洋子(新連載)、小野不由美、山白朝子、澤村伊智 漫画:諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介 論考・エッセイ:東 雅夫(新連載)、村上健司×多田克己 怪談実話:加門七海、松村進吉、岩城裕明、満茶乃 グラビア:孳々、芳賀日出男+芳賀日向、佐藤健寿、怪食巡礼 情報コーナー:小松和彦(文化勲章受章)、恒川光太郎×綿原 芹(『幽民奇聞』『うたかたの娘』)、近藤ようこ(『家守綺譚』)、有栖川有栖(『濱地健三郎の奇かる事件簿』)、花房観音(『怪談ルポ 死の名所を歩く』)、岡崎隼人(『書店怪談』)、丸田祥三(『廃線だけ 昭和の棄景』『廃線だけ 平成・令和の棄景』)、樫永真佐夫(『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』)、藤川 Q(化け通 『SILENT HILL f』) etc.…
著者6年ぶり、世界が待ち望んだ長篇小説400枚。 内気な人々が集まって暮らすその土地は、“アカシアの野辺”と名付けられていた。野辺の人々は沈黙を愛し、十本の指を駆使した指言葉でつつましく会話した。リリカもまた、言葉を話す前に指言葉を覚えた。たった一つの舌よりも、二つの目と十本の指の方がずっと多くのことを語れるのだ。 やがてリリカは歌うことを覚える。彼女の歌は、どこまでも素直で、これみよがしでなく、いつ始まったかもわからないくらいにもかかわらず、なぜか、鼓膜に深く染み込む生気をたたえていた。この不思議な歌声が、リリカの人生を動かし始める。歌声の力が、さまざまな人と引き合わせ、野辺の外へ連れ出し、そして恋にも巡り合わせる。果たして、リリカの歌はどこへと向かっていくのか? 名手の卓越した筆は、沈黙と歌声を互いに抱き留め合わせる。叙情あふるる静かな傑作。 n-bunaさん(ヨルシカ)絶賛! <おもちゃから流れる歌声、アシカショーのアシカの歌声、シンガーの為の仮歌、そして夕方に流れる家路。何者でもない、何処にもクレジットされることのない彼女の歌声は、決して聞く人を選ばない。それは誰もが何者かに成ろうとする今の社会において、本当は必要だった優しさなのかもしれない。>
耳の中に棲む私の最初の友だちは 涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。 補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。 あたたかく、ときに禍々しく、 静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。 オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品 世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」 「骨壺のカルテット」 補聴器のセールスマンだった父は、いつも古びたクッキー缶を持ち歩いていた。亡くなった父と親しかった耳鼻科の院長先生は、骨壺から4つの骨のかけらを取り出してこう言った。「お父さまの耳の中にあったものたちです。正確には、耳の中に棲んでいたものたち、と言えばよろしいでしょうか……」。 「耳たぶに触れる」 収穫祭の“早泣き競争”に出場した男は、思わず写真に撮りたくなる特別な耳をもっていた。補聴器が納まったトランクに、男は掘り出したダンゴムシの死骸を収める。 「今日は小鳥の日」 小鳥ブローチのサイズは、実物の三分の一でなければなりません。嘴と爪は本物を用います。 残念ながら、もう一つも残っておりませんが。 「踊りましょうよ」 補聴器のメンテナンスと顧客とのお喋りを終えると、セールスマンさんはこっそり人工池に向かう。そこには“世界で最も釣り合いのとれた耳”をもつ彼女がいた。 「選鉱場とラッパ」 少年は、輪投げの景品のラッパが欲しかった。「どうか僕のラッパを誰かが持って帰ったりしませんように……」。お祭りの最終日、問題が発生する。
第二次世界大戦下の一九四二年、アンネ・フランクは、十三歳の誕生日に父親から贈られた日記帳に、思春期の揺れる心情と「隠れ家」での困窮生活の実情を彩り豊かに綴った。そこに記された「文学」と呼ぶにふさわしい表現と言葉は、いまを生きる私たちに静かな勇気と確かな希望を与えてくれる。
「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」 金属加工工場の片隅、工具箱の上でペンチやスパナたちが演じるバレエ「ラ・シルフィード」。 交通事故の保険金で帝国劇場の「レ・ミゼラブル」全公演に通い始めた私が出会った、劇場に暮らす「失敗係」の彼女。 お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活することになった私。 演じること、観ること、観られること。ステージの彼方と此方で生まれる特別な関係性を描き出す、極上の短編集。 ■著者略歴 小川洋子(おがわ・ようこ) 1962年岡山市生れ。早稲田大学第一文学部卒。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞と本屋大賞、同年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞を受賞。06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。07年フランス芸術文化勲章シュバリエ受章。13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。20年『小箱』で野間文芸賞を受賞。21年紫綬褒章受章。『小箱』『約束された移動』『遠慮深いうたた寝』ほか著書多数。
こうして書棚の秘密は私とB、二人だけのものになったーハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係…。“移動する”六篇の物語。
小箱の番人、歌でしか会話ができないバリトンさん、息子を失った従姉、遺髪で竪琴の弦をつくる元美容師…「おくりびと」たちは、孤独のさらに奥深くで冥福を祈っている。『ことり』以来7年ぶりの書下ろし長編小説。
全世界で聴かれているNHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、世界17言語に翻訳して放送された、人気作家8名の短編を収録。几帳面な上司の秘められた過去。独り暮らしする娘に母親が贈ったもの。夫を亡くした妻が綴る日記……。海の向こうに暮らす人々に、私たち日本人の愛すべき姿を細やかに伝えた好編が、オリジナル文庫として登場!
きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたのーー かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。 二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事とは。 消えた産着、優しいじゃんけん、湖上の会話…… 十四通の手紙に編み込まれた哀しい秘密に どこであなたは気づくでしょうか。 小川洋子と堀江敏幸が仕掛ける、胸を震わす物語。
盲目の祖父の足音と歩数のつぶやきがひとつに溶け合い、音楽のようになって僕の耳に届くー稀代のピアニスト、グレン・グールドにインスパイアされた短篇「測量」。ほか、女優のエリザベス・テイラー、作家のローベルト・ヴァルザー等、世界のどこかで秘かに異彩を放つ人々をモチーフに、その記憶、手触り、痕跡をひとつらなりの物語世界に結晶化。静かな人生に突然訪れる破調の予感をとらえた美しく不穏な10の流星群。
魔犬の呪いから逃れるため、パパが遺した別荘で暮らし始めたオパール、琥珀、瑪瑙の三きょうだい。沢山の図鑑やお話、音楽に彩られた日々は、琥珀の瞳の奥に現れる死んだ末妹も交え、幸福に過ぎていく。ところが、ママの禁止事項がこっそり破られるたび、家族だけの隔絶された暮らしは綻びをみせはじめる。 壁に閉ざされた別荘、 家族の奇妙な幸福は永遠に続くはずだった。 私の内側の奇跡の記憶を揺さぶる、特別な魔法の物語。 ーー村田沙耶香 最後の数ページの美しさには、息をのむほかない。 ーー宮下奈都 魔犬の呪いから逃れるため、パパが遺 した別荘で暮らし始めたオパール、琥 珀、瑪瑙の三きょうだい。沢山の図鑑や お話、音楽に彩られた日々は、琥珀の瞳 の奥に現れる死んだ末妹も交え、幸福に 過ぎていく。ところが、ママの禁止事項 がこっそり破られるたび、家族だけの隔 絶された暮らしは綻びをみせはじめる。
短篇と短篇が出会うことでそこに光が瞬き、どこからともなく思いがけない世界が浮かび上がって見えてくるー川上弘美「河童玉」、泉鏡花「外科室」など魅惑の短篇十六篇と小川洋子の解説エッセイが奏でる極上のアンソロジー。
【文学/日本文学小説】人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。やさしく切ない、著者の会心作。解説・小野正嗣。
たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。-動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。
妹を亡くした三きょうだいは、ママと一緒にパパが残した古い別荘に移り住む。そこで彼らはオパール・琥珀・瑪瑙という新しい名前を手に入れた。閉ざされた家のなか、三人だけで独自に編み出した遊びに興じるうち、琥珀の左目にある異変が生じる。それはやがて、亡き妹と家族を不思議なかたちで結びつけるのだが…。