著者 : 岸本佐知子
卓抜した想像力が放つ現実とシームレスな異界。“黒バドニッツ”がスパークする傑作短篇集。あなたの世界にしのびこみ、根底から揺さぶりをかける12篇の極彩色の夢。
五月のあの朝、わたしはどうしようもなく恋に落ちてしまったー。木に片思いをしたり、バービー人形と真剣交際したり。変な愛はこんなにも純粋で狂おしい。数多くの熱心な読者を持つ訳者が選び抜いた、奇想天外で切実な想いのつまった11篇。ありふれた恋愛小説とは一味も二味もちがう、「究極の愛」の姿。
こうしてぼくたちは休暇を過ごすために、だれもが常に巨大な金魚鉢を持ち歩かねばならない世界へテレポートするー不思議なバカンスの顛末(休暇旅行)、肌が宇宙服になって飛んでゆく奇病に引き裂かれる恋人たち(僕らが天王星に着くころ)、彼女の手編みセーターの中で迷子になる男(セーター)…不世出の天才作家による、とびきり奇妙だけれど優しく切ない33編の奇談集、待望の邦訳。2001年度フィリップ・K・ディック賞候補。
あまりに小さい内ホーナー国とそれを取り囲む大国・外ホーナー国。国境侵犯を巡って次第にエスカレートする迫害が、いつしか国家の転覆へと繋がって……抱腹絶倒のユーモアで壮大なテーマに挑む問題作!
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
真実は奇なり、愛は変なり。世にヘンアイの種はつきまじ。ギャルが漂着した孤島にはイケメン男子だけが住んでいた…「彼氏島」、体の中にブリザード吹き荒れる空虚を持つ少女の哀しみ…「スペシャリスト」、会ったこともない友人の妹への妄想愛を育む独身老人の物語…「妹」-など。新たに発掘された11編の“変愛高濃度・現代英米文学”。
「とても鋭い知性の持ち主だが、ほとんど記憶のない女がいた」わずか数行の超短篇から私小説・旅行記まで、「アメリカ小説界の静かな巨人」による知的で奇妙な51の傑作短篇集。
カナダで整形外科医として成功しているダルワラは、ボンベイ生まれのインド人。数年に一度故郷に戻り、サーカスの小人の血を集めている。彼のもうひとつの顔は、人気アクション映画『ダー警部』シリーズの覆面脚本家。演じるのは息子同然のジョン・Dだが、憎々しげな役柄と同一視されボンベイ中の憎悪を集めている。しかも、売春街では娼婦を殺して腹に象の絵を残すという、映画を真似た殺人事件まで起きる始末。ふたりは犯人探しに乗り出すのだが。
連続娼婦殺人犯は、とうとうダルワラとダーの間近にまで迫ってきた!犯人はいったい何者で、狙いは何なのか。事の真相は、二十年前のゴア海岸に遡る。ダルワラは、張形とともに旅していたヒッピー娘を助けるが、彼女こそ犯人のゼナナ-女装の売春夫を唯一目撃していたのだ。ダルワラやダー、そして担当刑事の記憶の糸を繋ぎあわせていくうちに、意外な人物が浮かび上がってくる。犯人逮捕は出来るのか…。そんな折り、ダーと生き別れとなった双子の片割れがアメリカからやってくる。神父見習いの生真面目な宣教師マーティンが、とんでもない騒動を次々に起こして。
中二階のオフィスにエスカレーターで戻る途中のサラリーマンがめぐらした超ミクロ的考察。靴紐が左右ほぼ同時期に切れるのはなぜか、牛乳の容器が瓶からカートンに変わったときの素敵な衝撃、ミシン目を発明した人間への熱狂的賛辞等々、『もしもし』の著者が贈る、あっと驚く面白小説。
ブロードウェイの売れない役者サンディ君、かつての恋人が自殺したと聞いて大ショック。これはぜひとも真相を突きとめねば。『ライ麦畑でつかまえて』を思わせる軽快な文体とユーモアで語られる、とびきりファニーで、ちょっぴり切ないラヴ・ストーリー。
全編これ二人の男女の電話の会話からなるおかしなおかしな「電話小説」。しかもこの電話は成人向けのいわゆる会員制セックス・テレフォン。二人は想像力の限りを尽くして自分たちが何に一番興奮するかを語り合う。昨年全米でベストセラーとなった本書のテーマはいわば、想像の世界の「究極のH」。