著者 : 熊谷達也
小惑星の衝突であらゆる環境が破壊される。生存の危機に直面した人類は、他の星への移住を目指すものと世界各地のシェルターで生き残りをはかるものとにわかれた。分断と孤立の中、正体不明の遭難者が助けを求めてくる。そして、俺たちは何度でも生き返るー。永遠の命を得、160歳を超えて初恋の人を想う。宇宙のかなた、生命の起源にまで迫る、壮大な物語。
50代半ばの男性が、健康を理由にはじめたロードバイクにのめり込む。折しもコロナ禍、会社の業績不振という息苦しい状況が訪れるなか、会社では部下、自転車では師匠となる女性とともに新しい扉を開いてゆく。
『無刑録』とは、刑が無くても犯罪が発生しないような理想の世を求め、芦東山が著した。当時、刑罰は犯罪に対する報復であるとする応報刑論が主流だったが、人間尊重の立場から犯罪者を更生させるための手段だという教育刑論を唱えたもの。江戸時代中期、24年間もの幽閉生活にめげず、刑法思想の根本原理を論じ、己の考えを貫き通した生涯とはー。岩手県一関市が生んだ偉人を描く歴史長編小説。
幕末、仙台藩は鳥羽伏見の戦いにより朝敵となった会津藩への出兵を迫られていた。大義を取るか、それとも我が身を取るかー。苦渋の選択を強いられるなか、浅葱色の陣羽織をまといし一人の若侍が立ち上がる!実在した仙台藩士・若生文十郎景祐ら、奥羽越列藩同盟を導いた誇り高き東北人達の暗闇と、あなたの知らない、もうひとつの戊辰戦争を描破する、著者新境地の感動巨編!
東北に甚大なる被害をもたらした地震は、東京をも揺るがした。震災をきっかけに小説が書けなくなった桜城葵、被災地出身の作家で、いまは筆を折っている武山洋嗣。二人の担当編集者である山下亜依子は仙河海市を訪れた。葵の取材に同行するとともに、武山を探し出し、震災と向き合った作品を書かせるためにー。それぞれの思いが込められ、作品が紡ぎ出される。
サイクルロードレーサーの小林湊人が所属するエルソレイユ仙台に、梶山浩介が加入することになった。梶山は、16年前にヨーロッパに渡り、ツール・ド・フランスにも8回出場、世界のトップレベルで戦ってきたレジェンドだ。今季限りでの引退も囁かれていた梶山が、なぜ日本の、しかも新参チームに…。図抜けた実力を持つ梶山の加入でチームは、そして期待されながらもどこか抜けたところのある湊人は、どう変わっていくのか?
二万人の犠牲者を出した明治三陸地震。魚問屋の社長と女郎屋の女将の子、菅原甚兵衛は、正妻の子である兄とそりが合わず、鬱屈を粗暴な振る舞いで晴らしていた。事故で船を失ったことを機に、遥か北洋のラッコ・オットセイ猟に大勝負を賭けた!東北の明治男の覚悟と勇気。「仙河海サーガ」、最初の物語。
宮城県北、三陸海岸の入江にたたずむ町「仙河海」(せんがうみ)。のちに遠洋マグロ漁業で栄えるこの地で、大正十四年に生まれた菊田守一は、「名船頭」として名を馳せた祖父や父のようになることを夢みていた。いつか自分の船で太平洋の大海原に乗り出してカツオの群を追いかけたいー。米軍の艦上戦闘機グラマンとの戦い、敗戦からの復興…。著者ライフワーク「仙河海」サーガの最新作。三陸の海辺には、どんな日常があったのかー。
一攫千金を狙ってイチかバチかの勝負!明治29年、2万人を超える犠牲者を出す三陸大津波が発生した。沖買船の商売のため洋上にいて難を逃れた菅原甚兵衛は、港町・仙河海の富裕な魚問屋マルカネの社長と女郎屋の女将の子で、正妻の子である兄とはそりが合わず、鬱屈を粗暴な振る舞いに込めて暮らしていた。ある日、海上の事故で船を失った甚兵衛は、大きな借金を抱えつつ、北洋でのラッコ・オットセイ猟に賭けて出る。
2010年春、東北の港町・仙河海市の美術館で働く笑子は、教育者の両親を持ち、優等生を演じてきたため、心身に不調をきたすほどだった。副館長の菅原との情事の時だけが、生きている実感が持てた。しかし昔勤務していた中学校の教え子、祐樹との再会がそれを許さなかった。年の離れた2人の男性との激しい性愛に堕ちていく笑子。生命を燃やし、相手を求める笑子が、最後に決心したものとはー。肉体の純愛小説。
東京で東日本大震災に遭遇し、テレビに映る被災地の映像に激しい衝撃を受けた文芸編集者の山下亜依子は、編集長の小暮から、被災地である仙河海市出身の作家・武山洋嗣に原稿を依頼できないかと持ちかけられる。武山のことはデビュー時に担当していたものの、本を一冊出したきり、三年前から音信不通になっていた。その武山に、こんなタイミングで、執筆の依頼などしていいものか。一方、震災以後、書けなくなってしまっていた担当作家の桜城葵からは、新作の取材のために仙河海市に入りたいと持ちかけられて…。
2008年6月、栗駒山中腹の共英地区は凄まじい揺れに呑み込まれた。崩れる山、倒壊する家々。故郷の危機に胸引き裂かれる智志。そんな中、祖父・耕一が行方不明に。耕一は共英地区の開拓一世だった。結婚、仲間の死、起死回生のイチゴ栽培、はじめて電灯が灯った日…。祖父の物語は土と汗と涙と、笑いに満ちたものだった。この土地は、俺らが守る!智志は奮い立った。復興にかけた三世代の物語。
東北の港町に生きる人々の姿を通して描く、再生の物語全9編。3年前の秋、早坂希は勤めていた東京の会社を辞めて仙河海市に戻ってきた。病弱な母親の代わりに、スナック「リオ」を切り盛りしている。過去に陸上選手として活躍していた希は、走ることで日々の鬱憤や悩みを解消していたが、ある日大きな震災が起きて、いつも見る街並みが180度変わってしまう。(「リアスのランナー」「希望のランナー」)。高校生の翔平は、津波により両親と家を奪われ、妹の瑞希とともに仮設住宅で暮らしていた。震災の影響で心が荒む翔平だったが、瑞希の提案で「ラッツォク」を焚くことになり、あの日以降止まっていた“時”と向き合う。(「ラッツォクの灯」)。東北に生まれ東北に暮らす直木賞作家の、「あの日」を描かない連作短編集。
昭和9年春、函館の潜水夫・泊敬介は、時化る海と吹き荒れる風に妙な胸騒ぎを感じていた。予感は的中し猛火が街を襲う。妻子と母を探し歩く敬介だったが。さらに昭和20年の空襲、昭和29年の洞爺丸沈没。立ち直ろうともがく敬介に、運命は非情な仕打ちを繰り返す…。仙台在住の著者が震災から半年後、悩み迷いながら筆をとった、再生と希望の長編小説。
東北の港町・仙河海市の中学校で教師を勤める和也。担任するクラスに転校してきた早坂希は、問題を抱える少女だった。朝帰りの噂を聞いた和也が早朝、様子を見に行くと、希のジョギングする姿が。和也は、顧問を務める陸上部への入部を希に勧めるがー。多感な中学生と若き教師の心温まる物語。東日本大震災以降、仙河海市を舞台にした著書の先駆けとなった作品。
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことにー。
1945年、鹿児島県・知覧特攻基地。死地に赴く若き特攻隊員の戦闘機に、ひたむきに向き合う整備兵がいた。戦局が悪化する中、埃と油にまみれ不眠不休で働く毎日。ある朝、万全の整備を施したはずの特攻機が帰還してきた。搭乗員は機体の不調だと言い張るが…。己の誇りをかけた仕事が、仲間の死を導く現実に苦悩する、一本気な整備兵。刻々と迫る敗戦を前に、彼が下した決断とは?鮮烈な戦争青春小説!