著者 : 犬飼六岐
幕末、文久元年の大坂。弥吉は河内から、緒方洪庵の適塾を目指し市中に出る。尊王攘夷思想に染まった彼は村の仲間から洪庵の暗殺を任じられていた。しかし、潜入した適塾で、自らを顧みず患者のために尽くす洪庵に接するうち、弥吉の心に迷いが生じる。故郷の仲間の無謀な決起を知り、弥吉がとった行動は。動乱の世に懊悩しつつも自らの信じる道を歩まんとする若者を活写した、鮮烈なる時代小説。
時代は戦国。一匹の痩せ馬に乗り、斑鳩をゆく一人の男がいた。渡辺条四郎、メリケンでいえば賞金稼ぎ、本邦では勧賞目当ての素浪人のていである。諸国を旅しながら、高札にかかげられた勧文に記された手配書に従って、下手人を捕え金品を得ることで糊口をしのぐ。しかし本当は仇討の大望が…。
世は戦国。四国のとある小さな山村を、雑兵たちが襲った。秀太・鶴吉の兄弟と村の子供たちは、村長の家に匿われていた謎の子供二人とともに攫われてしまう。そして彼らは「決して立ち入ってはならない」と祖父母らに教えられた禁忌の世界、逢魔が山に迷い込む。深い闇の中、次々と襲い来る怪奇と心に巣くう恐怖に子供たちが立ち向かう。友情と勇気。出色の冒険小説。
十二歳の信太郎は心が苦しかった。長屋に正吉と父親の弁蔵が越してきた途端、大人達が父子を嫌悪する側と同情する側に分かれたのだ。誰よりものろまに見える弁蔵が、世間体を気にせず我が道を歩くのが大いに気に喰わないらしい。自分の母も二人を毛嫌いするが、信太郎は正吉に興味を抱く。一方、正吉は大人達の仕打ちを意に介さずー真の優しさを問いかける感動作。
時は文久元年。田舎の村を出た若者・弥吉は、決意を胸に大坂へ向かう。蘭学者の緒方洪庵が開いた適塾に潜入し、折を見て「暗殺」することが彼の使命だった。しかし実際に洪庵の人柄に触れるうち、考えが変わっていく。一方、郷里の村では、尊王攘夷の急進派「天誅組」に加わるため、村人たちが動き出す。弥吉は挙兵を止めようと奔走するがー。「正義」とは何か。壮大な成長物語。
かわら版売りの利吉が変死した。利吉の幼馴染で同業の才助は、「鬼を見た」と彼の死をおぞましく書き立てた物書きの青山孫四郎に腹を立て、かわら版を売らぬとねじ込んだ。だがその矢先、才助は何者かに襲われ、さらに孫四郎も怪しい影に付きまとわれているという。利吉の死や「鬼」と何かかかわりがあるのか。才助と孫四郎、そして巻き込まれた女絵師の市麻呂は協力して、利吉の死の真相に迫るが…。注目の著者による長篇時代小説。
こんどの客は、大垣藩の江戸留守居。四藩による対抗戦で、各藩が代表を一人ずつ出して戦うことになったのだ。仕合の場所は浦賀近くに浮かぶ猿島。さて当日、待たされたあげくに現れたのは鎖鎌の男。伊賀流らしい。あとの二人の流派はまだわからない。吉岡一門の流れを汲む、京流の技の冴えを見せつけるときがきた。
大坂夏の陣で豊臣家を滅ぼしたのに、家康は夜ごとの悪夢に悩まされていた。大坂の戦場で殺されかけた猿飛佐助に、夢の中で家康は何度となく首を掻き切られるのだ。佐助の死なくして家康の安眠なし。家康の命を受けた伊賀忍者と佐助ら真田残党との壮絶な死闘が始まった。手に汗握る新感覚の忍者小説。
戦国時代。四国山中の小さな村に雑兵が乱入、村長の家に匿われていた謎の子供二人と秀太、鶴吉兄弟はじめ村の子供を拉致。しかし、闇深き道に一行は方向感覚を失い、もののけが多く棲むという不吉な「逢魔が山」へと入り込んでいくー。本当の勇気とたくましさとは?
廻国修行の気まぐれに「泰平山末法院」の看板をあげ、向島小梅村の荒れ寺に住みついた破戒僧不覚。ものぐさ、出不精、食い意地張りでおんな好き。六尺を超える巨躯に岩の鎧のような筋肉をまとう、宝蔵院流十文字槍の手練れである。かわら版売りの佐一が持ち込むうまい話にのせられ、欲をかいては災厄に見舞われるがー人の世の情に仇なす悪を断つ痛快時代小説!
ぼろ袈裟に身を包み、気まぐれに「泰平山末法院」の看板をあげて、向島小梅村の荒れ寺に住みついた破戒僧不覚。寝言まがいの念仏や祈祷でひとさまの懐をうかがっている。ものぐさ、出不精、食い意地張りでおんな好き。しかし、情に仇なす悪は許さない。六尺を超える巨躯に岩の鎧のような筋肉をまとう、宝蔵院流十文字槍の手練れである。寺に出入れするかわら版売りの佐一が、己の欲のために次々と事件を持ち込んでくる。その口車にのせられて事件に首を突っ込むうちに災厄がふりかかり…。笑いあり、涙あり、チャンバラありの、本格痛快時代小説!
尾張藩の江戸下屋敷内に実在した「御町屋」と呼ばれる宿場町。この町では、赤の他人が見せかけの夫婦として割り振られた家に住まわされ、仮の商いを営み、藩主が遊覧する時だけ立ち退かねばならなかった。御町屋で連続殺人が発生し偽の住人たちは疑心暗鬼に陥る。人心の謎と闇を射貫く時代小説の決定版。
日本橋本町の薬種商の娘、おりつは“囲碁小町”と異名を持つ。彼女の腕前に惚れ込んだ元御典医のご隠居が総領孫との縁談を賭け、おりつに囲碁勝負を持ちかける。名うての棋客との熱き盤上でうつろうのは勝機か、それともあのひとへの秘めた想いなのか。おりつが到達した境地とは。青春・囲碁小説の決定版。
依頼人からの無理難題を解決するのは己の腕一本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段はひたすらに不機嫌。「二」という数字とお人好しは大嫌い、雇われるのはもちろん我慢ならない。豪快すぎる男の生き方を描いた7話を収録。期待の新鋭が放つ、痛快時代小説。