著者 : 西崎憲
ーーわたしはどこにも属していないし、属すためのやりかたを買うお金もない。 カリブ海生まれのジーン・リースは、ヨーロッパでは居場所を見出せない、疎外された人であった。しかも女性である。 自身の波乱に富んだ人生を下敷きにした、モデル、老女、放浪者などの主人公たちは、困窮、飲酒、刑務所暮らし、戦争と数々の困難を生きる。 だが彼女らはけっして下を向かない。 慣習と怠惰と固定観念をあざ笑うように、したたかに生きる。 《いま新たな光を浴びる、反逆者リースの本邦初、珠玉の作品集》 ■あの人たちが本を焼いた日……The Day They Burned the Books ■あいつらにはジャズって呼ばせておけ……Let Them Call It Jazz ■心霊信奉者……A Spiritualist ■マヌカン……Mannequin ■フランスの刑務所にて……From a French Prison ■母であることを学ぶ……Learning to Be a Mother ■シディ……The Sidi ■飢え……Hunger ■金色荘にて……At the Villa d'Or ■ロータス……The Lotus ■ではまた九月に、ペトロネラ……Till September Petronella ■よそ者を探る……I Spy a Stranger ■堅固な家……A Soild House ■機械の外側で……Outside the Machine ■「ジーン・リース」へのピクニック……西崎憲
〈 じつに、ウルフ的、もっとも、実験的。〉 イマジズムの詩のような「青と緑」、姪のために書かれたファンタジー「乳母ラグトンのカーテン」、園を行き交う人たちの意識の流れを描いた「キュー植物園」、レズビアニズムを感じさせる「外から見たある女子学寮」など。 短篇は一つ一つが小さな絵のよう。 言葉によって、時間や意識や目の前に現れる事象を点描していく。 21世紀になってますます評価が高まるウルフ短篇小説の珠玉のコレクション。 ーーウルフは自在に表現世界を遊んでいる。 ウルフの短篇小説が読者に伝えるものは緊密さや美や難解さだけではない。おそらくこれまでウルフになかったとされているものもここにはある。 たぶんユーモアが、そして浄福感が、そして生への力強い意志でさえもここにはあるかもしれない。(「解説 ヴァージニア・ウルフについて 」より) ___________________ 《ブックスならんですわる》 20世紀の初頭、繊細にしてオリジナルな小品をコツコツと書きためた作家たちがいます。前の時代に生まれた人たちですが、ふっと気づくと、私たちの隣に腰掛け、いっしょに前を見ています。 やさしくて気高い横顔を眺めていると、自分も先にいくことができる、そんな気がします。 いつも傍に置いて、1篇1篇を味わってみてください。 ■ラピンとラピノヴァ……Lappin and Lapinova ■青と緑……Blue & Green ■堅固な対象……Solid Objects ■乳母ラグトンのカーテン……Nurse Lugton's Curtain ■サーチライト……The Searchlight ■外から見たある女子学寮……A Woman's College from Outside ■同情……Sympathy ■ボンド通りのダロウェイ夫人……Mrs Dalloway in Bond Street ■幸福……Happiness ■憑かれた家……A Haunted House ■弦楽四重奏団……The String Quartet ■月曜日あるいは火曜日……Monday or Tuesday ■キュー植物園……Kew Gardens ■池の魅力……The Fascination of the Pool ■徴……The Symbol ■壁の染み……The Mark on the Wall ■水辺……The Watering Place ■ミス・Vの不思議な一件……The Mysterious Case of Miss V. ■書かれなかった長篇小説……An Unwritten Novel ■スケッチ ・電話……The Telephone ・ホルボーン陸橋……Holborn Viaduct ・イングランドの発育期……English Youth ■解説 ヴァージニア・ウルフについてーー西崎憲 ■年表
【概要】 世にも精緻な文の祝祭がここに──。 西崎憲プロデュースの短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第三弾。「夕暮れの草の冠」をテーマに、稀代の文章家17人が、小説でも詩でもない「短文」を書き上げました。作品同士が響き合い、さらに余白に配された超短文「エピグラム」によって一篇の物語のようにも読める、かつてない破格のアンソロジーです。 【著者】(五十音順) 青木淳悟/円城塔/大木芙沙子/小山田浩子/柿村将彦/岸本佐知子/木下古栗/斎藤真理子/滝口悠生/飛浩隆/西崎憲/蜂本みさ/早助よう子/日和聡子/藤野可織/松永美穂/皆川博子 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主催で、「BFC ブンゲイファイトクラブ」などを企画する西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の〈短文〉アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。第一作「特別ではない一日」(2019年)、第二作「移動図書館の子供たち」(2020年)、「夕暮れの草の冠」(2021年)。 【「切手小説」プレゼント企画】 本書の執筆者17人による「切手小説」が印刷された、オリジナル切手シートを各種1名様、合計17名様にプレゼントします。 ・本書挟み込みの応募用紙からハガキ部分を切り取って、住所・氏名・電話番号・メールアドレス・希望する小説の執筆者名・本書/シリーズのご感想を記入し、63円分の切手を貼り送ってください。 ・本景品は、日本郵政の「オリジナル切手サービス」を利用して作成する、84円郵便切手×20枚・シール式の切手シートです。実際に切手としてご利用いただけます。 ・発表は当選者への通知をもって代えさせていただきます。 ・締切は2021年8月31日(火)消印有効 小山田浩子「コンサートホール」 木下古栗「僕の人生の物語」 円城塔「ドルトンの印象法則」 斎藤真理子「編んでる線」 蜂本みさ「ペリカン」 藤野可織「セントラルパークの思い出」 松永美穂「たうぽ」 日和聡子「白いくつ」 青木淳悟「旅行(以前)記」 早助よう子「誤解の祝祭」 大木芙沙子「親を掘る」 西崎憲「病院島の黒犬。その後」 岸本佐知子「メロンパン」 柿村将彦「高なんとか君」 斎藤真理子「エディット・ピアフに会った日」 滝口悠生「薄荷」 飛浩隆「緋愁」 皆川博子「夕の光」
【概要】 どうぞどうぞ、短文の世界へ── 西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第二弾。現代最高の文章家16人が「移動図書館の子供たち」をテーマに、小説でもエッセイでも詩でもない「短文」を寄せました。作品同士が響き合う、まるで一篇の長編作品のようにも読める、絢爛の短文・書下ろしアンソロジー。(カバーイラスト:寺澤智恵子) 【著者】(五十音順) 我妻俊樹/円城塔/大前粟生/勝山海百合/木下古栗/古谷田奈月/斎藤真理子/西崎憲/乘金顕斗/伴名練/藤野可織/星野智幸/松永美穂/水原涼/宮内悠介/柳原孝敦 【kaze no tanbunとは】 「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主催で、「BFC ブンゲイファイトクラブ」などを企画する西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の「短文」アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。第一弾「特別ではない一日」は2019年に発売。第三弾は2021年初頭に刊行予定。 古谷田奈月「羽音」 宮内悠介「最後の役」 我妻俊樹「ダダダ」 斎藤真理子「あの本のどこかに、大事なことが書いてあったはず」 伴名練「墓師たち」 木下古栗「扶養」 大前粟生「呪い21選──特大荷物スペースつき座席」 水原涼「小罎」 星野智幸「おぼえ屋ふねす続々々々々」 柳原孝敦「高倉の書庫/砂の図書館」 勝山海百合「チョコラテ・ベルガ」 乘金顕斗「ケンちゃん」 斎藤真理子「はんかちをもたずにでんしゃにのる」 藤野可織「人から聞いた白の話3つ」 西崎憲「胡椒の舟」 松永美穂「亡命シミュレーション、もしくは国境を越える子どもたち 円城塔「固体状態」
大学受験に二度失敗し、浪人をしながらアルバイトを転々として暮らしている松永おんは、かつて双子の弟がいたことから、自分は半分だけの存在だという意識を持って生きている。半年前から働きはじめた弁当屋では何の楽しみもやりがいも見いだすことができない。そんな日々を過ごしていたある日、おんは高校時代の部活・写真部の集まりで友人に誘われたことがきっかけで、初めてフットサルをする。それはおんにとって「まったく新しい何か」だった。誰かにスイッチを押されたようにフットサルを始めたおんは、永田町にあるフットサルスクールに通うようになる。一方、地元北千住の同人誌が開催する読書会にも参加するなど、徐々に世界を広げていくおんだが……。
「行列」「開閉式」「東京の鈴木」などに書き下ろし「未知の鳥類がやってくるまで」を加えた全10作の短篇集。SF的、幻想的、審美的味わいと本をめぐる物語。
東の海、唐と倭国の間に浮かぶ麗しき小国〈蕃東〉--知識や儀礼を司る貴族の家に生まれ、気ままに日々を過ごす青年・宇内と彼の従者を務める17歳の藍佐。彼らが出会った驚異、あるいは目にすることのなかった神秘を、怪奇幻想の第一人者である翻訳者にしてアンソロジストが鮮やかに描く。繊細な細工物のような五編を収めた空想世界の御伽草子。
虎の皮を被ってライオンと戦うはめになった男が、見世物の檻の中で出会ったのは…。ユーモラスな展開の中に人生の深淵を垣間見る「銀色のサーカス」、母の乳房、脈打つ心臓、鼠取り、砕かれた手…。精緻で謎めいたイメージが交錯する「アラベスクー鼠」、電信柱と柳の木の奇妙な恋物語「若く美しい柳」など、日常の裏側にひそむ神秘と怪奇、啓示と奇蹟を詩情ゆたかに描くコッパードの珠玉の短篇集。
アメリカ中西部の町に住む老人ウィアは静かに回想する、自分の半生を、過去の不思議な出来事を、説明のつかない奇妙な事件を…時間と空間を錯綜して語られる、魅惑と謎に満ちた物語の数々。邯鄲の夢と幽霊の館、千夜一夜物語とアイルランド神話、死者を縛める書と聖ブレンダンと猫と鼠の王、腕のない女と石化する薬剤師ー巨匠の初期傑作長篇がついに登場!美しい謎につつまれた記憶と物語についての物語。
米国人の学者と出会った女性作家の独白。若返る病を患い、家出から帰ってきた母。本所深川に出没する謎の辻斬り。果てのない階段がある巨大な“駅”を彷徨う脱走兵。光という影と、影という光で造る、理想の庭。-繊細で美しい物語の断片が創る、庭園のごとき小説世界。翻訳家・アンソロジストとしても知られる才人の、第14回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
短篇小説はこんなに面白い。十八世紀半ば〜二十世紀半ばの英国短篇小説のなかから、とびきりの作品ばかりを選りすぐった一冊。ディケンズやグレアム・グリーンなど大作家の作品から、砂に埋もれた宝石のようにひっそりと輝くマイナー作家の小品までを収める。空想、幻想、恐怖、機知、皮肉、ユーモア、感傷など、英国らしさ満載の新たな世界が見えてくる。巻末に英国短篇小説論考を収録。
アンブローズ・ビアスの失踪という文学史上最大の謎を題材に不気味なファンタジーを創造し、アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した表題作をはじめ、異色作家の奇想とねじれたユーモアが充ち満ちた傑作集。
ある日食堂に入ってきた男は昔アフリカで殺したはずの男だった。「豹男に生き返らされたんだ」と語るその男は不吉な気配を漂わせていた…。トマス・バーク「がらんどうの男」をはじめ、隠退した医師を毎夜脅かすインド人の幽霊、コナン・ドイルの医学奇譚「茶色い手」、アルプス登山の姉弟を誘う死者からの手紙、邪悪な霊の侵入を描いて迫真のアン・ブリッジ「遭難」、アイルランドの民間伝承に材を採ったJ・S・レ・ファニュ「妖精にさらわれた子供」、H・R・ウエイクフィールドの精妙きわまる怪異譚「チャレルの谷」他、ハリファックス卿「ボルドー行の乗合馬車」、ニール・ミラー・ガン「時計」、レディ・ディルク「死神の霊廟」、J・H・リドル夫人「エニスモア氏の最期」、ニュージェント・バーカー「ウエッソー」、オリヴァー・オニオンズ「事故」、E・F・ベンスン「閉ざされた部屋」、いずれ劣らぬ恐怖の名匠たちの怪奇と幻想の物語全12篇。