ジャンル : 外国の小説
冷戦時代、ソ連の全住民を瞬時に天国の救済へと送る“音響麻酔兵器”がアメリカで開発され…。平和な最終兵器をめぐる応酬をコミカルに描く表題作ほか、モスクワ・コンセプチュアリズムのアーティストにして小説家による、性愛の快楽と宇宙の虚無を讃え、忙しない資本主義社会を忘れて心地よい赤子の眠りに還る、優しいロシア・ポストモダン短編小説七編。
日本人である私は、占領下の上海で快適な暮らしを楽しんできた。 そのことに矛盾を感じてこなかっただろうか。 戦争そのものに対する私の態度は、これまでずっと曖昧だった。 =============== 戦局の悪化にともない、窮乏していく上海での生活。 それでも、一人の日本人女性が家族を守り、 異国の人々と友情をはぐくみながら、 力強く生きる姿を活写した日記小説。 本書は、イギリス在中の歴史家でもある著者が、母親の4年余りの上海での生活をもとに作り上げた小説である。史実ではすくい取れない、知られざる歴史がつづられている。 第一部 一九四二年一月一五日〜一九四四年三月三一日 第二部 一九四四年四月三日〜一九四六年三月二八日 結び 一九四六年四月九日、夙川 訳者解説 麻生えりか
ソ連とは一体何だったのか? ロシアを代表する人気作家の大河小説、ついに完訳! いつも文学だけが拠りどころだったーー。スターリンが死んだ一九五〇年代初めに出会い、ソ連崩壊までの激動の時代を駆け抜けた三人の幼なじみを描く群像劇。近年ではノーベル文学賞候補にも目される女性作家が、名もなき人々の成長のドラマを描き、強大なシステムに飲み込まれることに抗する精神を謳いあげた新たな代表作。
《私たちの心には、“彼女”のかけらがあるから》 女性への暴力や不条理が激しかったころ、美術家として作家として、時代に先駆けて生きたシム・シソン。 ユーモアを忘れずにたくさんの仕事をし、二度結婚して四人の子供を育て、世の評判をものともしなかった人。 そんな〈家長〉にならい、自由に成長してきた子供と孫たちは、彼女の死後十年にあたり、ハワイでたった一度きりのちょっと風変わりな祭祀を行うことにするが…… 『フィフティ・ピープル『保健室のアン・ウニョン先生』のチョン・セランが贈る家族三代の物語。 韓国で16万部を突破した待望の最新長編小説。 ーー20世紀を生き抜いた女性たちに捧げる、21世紀を生きる女性たちからの温かな視線。
寝つきが悪くて困っている人、夜中に目が覚めてしまう人、または一日中なんとなく不安が消えないという人も、寝る前にこの本を読めば、心を休めて穏やかな眠りに就くことができるだろう。この本に収められた物語には、子どものころに読んでもらった「寝る前のお話」と同じ力がある。
人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出るーー。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハートウォーミングストーリー。 (本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。 サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。 といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。 石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。 火守 訳者あとがき プロフィール
笑いの大博覧会、復活!名翻訳家浅倉久志のライフワークである“ユーモア・スケッチ”ものを全4巻に集大成。第1弾は『ユーモア・スケッチ傑作展1』(全25篇)+単行本未収録作品20篇。
かつて大学で親しかった仲間が東海岸の大屋敷を共同で借り切って過ごす夏休み。アルコールとドラッグとセックスに溺れて、子供たちは放ったらかし。そこに超弩級の暴風雨が襲来し建物も電力もやられてしまう。 語り手イヴを含む12人の少年少女は無為無策の両親たちを見限り、幼い者たちを連れて迫り来る危機から脱出する。だが外に広がっていたのは黙示録のような混沌の世界だった。そして、壊滅的な状況で起こる出来事は、イヴの弟ジャックが持ち歩き「解読」している絵入り聖書物語をなぞり始める…… 気候変動、経済格差社会、世代間の断絶という今ここにある現実を、子供たちの冒険譚とした、予言的で痛切ながら溌剌とした「気候フィクション」の名作。全米図書賞最終候補となり、「ニューヨーク・タイムズ」年間ベストテンに選ばれた。
おとなは誰でもはじめは子どもだったーー。 《あなたの心の中に王子さまを取り戻そう。》 職場や学校、恋愛、人間関係の悩みの中で消えてしまった「子どもの頃の自分」をもう一度見つけて、本当の幸せを手に入れるためのヒントが「星の王子さま」にはあふれている! 星の王子さまのように…… ■子どもの頃のものの見方で世界を見るためには? ■自分のことを大切にするためには? ■「急ぎのしごと」と「重要なしごと」を区別するためには? ■他人から理解されないことを受け入れるには? ■人生の新しいページをめくるためには? ■愛することを学ぶためには? おとなになった今こそ読み直したい、サン゠テグジュペリの不朽の名作。 自分らしく生きるために大切な、目には見えない宝物が、そこにはきっと詰まっている。
世界的作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの盟友、アルゼンチンを代表する作家のひとりビオイ・カサーレスの妻、アルゼンチンでもっとも裕福な女性のひとり、そして20世紀スペイン語文学におけるもっともエキセントリックな小説家、シルビナ・オカンポ。 1937年のデビュー作『忘れられた旅』から1970年の『夜の日々』までに書かれた5つの短篇小説集をもとにして編んだ日本独自の短篇選集。 数も形も明らかにされていない無数の蛇口からしたたる滴たちの轟音、鳥たちは蛇口の旋律を奏で、犬たちは満月の夜に蛇口の歌を吠える……チベットの奥地にある秘境を旅した思い出を、幻想かつ詩情あふれる文体で描く表題作「蛇口」、ブチ切れるたびに自らの肉体を嚙みちぎる猟奇的な自傷行為をくりかえし、自ら命を落としてしまう女の悲劇をユーモラスに語る「マルバ」、迷信深い女と結婚した語り手の男性が、見知らぬ女へと変貌していく妻を前に困惑する「砂糖の家」、聾啞学校全生徒の一斉失踪の奇跡譚「これが彼らの顔であった」、ボルヘス風の幻想譚「見えない本の断章」など、36篇収録。
英国の小さな海辺の町で書店を営むジュリアンは、町はずれのシルバービュー荘に住むエドワードと親しくなるが、ある日、エドワードから見知らぬ女に手紙を渡すよう頼まれる。一方、英国諜報部長は重大な機密漏洩の犯人を追ってシルバービュー荘を訪ねるが……
未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント
ヴェトナム戦争後、南ヴェトナムの再興を目論見ながらも共産主義の同調者でもあった私は、親友のボンとともに再びインドシナ半島へと渡る。しかし虜囚の身となり、かつて義兄弟だったマンによる再教育を受け、拷問の末、自らの出自と信念を引き裂く告白をした。それから6年、私とボンは難民としてパリに渡る。東洋人への差別に晒されながらも、資本主義の極みともいえる麻薬取引に身を染めて生きていた。しかしある日、かつて私とボンを再教育キャンプで拷問したマンもまた、パリにいることを知りー。ピュリッツァー賞、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞『シンパサイザー』に続く、植民地主義とヴェトナム戦争に人生を翻弄され続けた元スパイとその義兄弟たちの絆と裏切りを描く、熱き物語。
舞台はロシア革命直後のモスクワ。苦難の時代を経てなお残された貴重な草稿。数限りないストーリーの可能性から1編の小説が生まれるプロセスに迫る。第2回東京大学而立賞受賞。
地球が回りつづけねばならぬのなら未来は貴方がたが決めるのよ。生きるためなら他人となるも厭わぬ、そんな人生の許された時代に大西洋を往還する者たちの運命。スーザン・ソンタグ絶賛のデビュー作『都会のヴードゥ』から16年、ブエノス・アイレスの映画作家が還暦からの新生を遂げた奇跡の短編集。
フィクションだからこそ、伝えられる真実がある。公立図書館に勤務しながら、児童文学書評ブログで1600本を超える評を書いてきた著者が10の物語から掬いとった真実が、大人である私たちの目を開かせる。ヒロシマの記憶、内戦と子ども、民族と戦争。顔の見えない戦争、普通の家庭にやってきた戦争。基地のある日常。戦争責任と子ども。そして、あの日の記憶を受け継ぐこと。戦争を知らない世代の作家も、日系人作家もいる。しかし、どの作品にも共通するのは、次の世代へ、国境を越え世界に向かって小さな記憶を運んでゆく大きな力ー10の評論。
シリーズ既刊『不思議の国のアリス』(2006)の続編。7歳半になったアリスは、暖炉の上の鏡をくぐり抜けて鏡の国へ迷い込む。『鏡の国のアリス』原作出版150周年記念出版! イギリス本国でも未発表の貴重なオリジナル挿絵を収録。 1 鏡の家 2 もの言う花たちの庭 3 鏡の国の虫たち 4 トゥイードルダムとトゥイードルディー 5 羊の毛皮と小川 6 ハンプティ・ダンプティ 7 ライオンとユニコーン 8 「発明したのは拙者だ」 9 クイーン・アリス 10 揺さぶって 11 目が覚めると 12 夢を見ていたのは誰? 訳者あとがき
家族も友達もいないアイダが身を守る唯一の方法ーそれは、“次々に情事を楽しんでは男を捨てる悪女”という仮面だった。元夫に駐車場の2階から突き落とされ、心身の後遺症に苦しむ彼女は、男性を近づかせないため、懸命に鉄壁を築いてきたのだ。先日の社交パーティでは、その真実を知らない大富豪ジェイクにあからさまに侮蔑的な態度をとられ、ひどくつらい思いをした。ところが、後遺症の影響で歩くのもままならなかったある日、車が故障して困っていたアイダに、意外にもジェイクが声をかけてきた。アイダを病院まで送り届けた彼は、おもむろに彼女の携帯を手にすると、何やら操作してから返して告げた。「僕の携帯の番号を入れておいた」
人生に疲れたベラは、かつて継兄だったセルジオを思い出した。オリーブ色の肌をした物静かなイタリア人の彼は、初恋の人だった。血はつながっていないし、今はもう家族でさえないけれど、10年以上も連絡をとらなかった私を、彼は助けてくれるかしら…?意外にも、電話の向こうのセルジオは昔と変わらずやさしかった。そして、コモ湖にある彼の壮麗な別荘へと招待されたベラは、そこでゆっくり静養して、人生を見つめ直すことにする。いざ現地に着き、ベラは円熟味を増したセルジオに思わず息をのんだ。だが彼女は知る由もなかった。彼が昔、継妹への欲望を隠していたこと、今や悪い男になって、彼女をもてあそぶつもりでいることを!