出版社 : クオン
吉祥が出獄する直前、西姫は東学の流れを汲む運動の資金として新たな土地を提供した。智異山周辺での活動を再開した寛洙は官憲に居場所を知られる危険が生じ、釜山を離れる前に娘を連れてカンセの家に行く。緒方次郎、柳仁実、趙燦夏の三人は晋州の崔参判家に吉祥を訪ねた足で、統営郊外の学校に行き、教師となった明姫に会う。悲惨な結婚生活からは逃れたものの、明姫は心の平穏を得られずもがいていた。仁実と緒方は愛し合っていることを確信しながら、その関係に混乱するばかりだ。金持ちになったが親や本妻を粗末に扱う斗万に、父は意外な通告をする。日本で働いていたヤムはやつれきって平沙里に帰ってきた。
一九六〇年代以降、大学進学によって貧しさから脱け出し、軍事政権による開発経済の恩恵を受け、建築家として成功した初老の男性。そして急速な発展の結果として拡大した現在の格差の中で、多くをあきらめながら苦しい生活を送る劇作家の若き女性。持てる者が失わなければならなかったものは何か。持たざる者がなお手放さないものは何かー。韓国文学を代表する作家が、現代社会に生きる人間の魂の痛みを静かに描き出す。
トッポッキにまつわる思い出やいっしょにトッポッキを食べた友人たち、通いつづけた懐かしいお店のことをユーモアいっぱいにつづった。韓国の人気シンガーソングライター、作家、書店店主のヨジョによる日本初エッセイ集。
晋州で起きた同盟休校という形の抗日運動が弾圧され、西姫の次男・允国、漢福の長男・永鎬らが拘束された。永鎬が同盟休校を主導したことで、漢福一家と平沙里の人々の関係は一転する。そんな中、村で殺人事件が起き、満州行きの準備をしていた弘が巻き込まれた。一方で、恵まれた境遇に育ったことに嫌悪感を抱いていた允国は、釈放後に自分の行くべき道を探そうと、新たな一歩を踏み出した。それは西姫に苦痛を与える行動でもあった。ソウルでは任明姫が夫・趙容夏から逃れようともがき、身も心もずたずたにされながらも、ついに自分の殻を破る行動に出た。東京の緒方次郎は柳仁実への思いに苦しんでいた。
還国と共に西大門刑務所で吉祥に面会した西姫は、その帰途、釜山で盲腸炎になり手術を受けた。晋州から駆けつけた朴医師はなぜか取り乱している。その晋州ではソリムの縁談が周囲に波紋を広げ、彼女に思いを寄せていた還国と舜徹も心を乱す。独立運動に関わる錫と寛洙は執拗に警察に追われ、満州や沿海州の運動家たちも身動きが取れない。龍井を訪れた恵観は周甲と別れてあてどない旅に出る。平沙里では紀花が痛ましい最期を迎え、娘の良鉉は西姫の元で還国・允国の妹として暮らす。朝鮮を離れている良鉉の父相鉉は、明姫に意外な手紙を送る。龍が世を去り、息子の弘は龍井に移り住む決意を固める。