出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
牧師の娘マリッサは初恋の人、ヘラクレス王子と偶然でくわし、動揺した。神々しい王子の傍らには美女が寄り添っていた。5年前、18歳のマリッサは彼に純潔を捧げて妊娠したものの、叶わぬ恋と諦め、泣く泣く身を引くしかなかったのだ。逃げだしたマリッサを追ったヘラクレスは、彼女の連れている幼い娘を見て驚いた。「その子は誰なんだ?説明してくれ」ごらんのとおり、娘はあなたと瓜二つ。説明はいらないわ。一人で産み育ててきた大切な我が子をどうか奪わないで…。「跡継ぎが必要だ」彼の愛なき求婚にマリッサは言葉を失った。
ヘレナが生まれて初めて恋に落ちた相手は、テオだった。誰よりもハンサムで、快活で、大胆不敵なギリシアの大富豪。彼は結婚するまでヘレナの純潔を守ることを堅く誓い、二人はともにその夜を待ち焦がれたー。だが挙式前日、ヘレナは婚約指輪を外し、テオに永遠の別れを告げた。テオが実は、彼女を虐げた父親と同類の男だと知ったからだ。3年後、常に華やかな女性とゴシップ欄を賑わせているテオが、なんと仕事のクライアントとして、再びヘレナの前に現れる。呆然とするヘレナに彼が囁く。君は僕に初夜の借りがある、と。
大学院生のダーシィは、急に実家に呼び戻された。なんと、失踪した妹になりすましてほしいという。イタリア人伯爵ロレンツォとの縁談が決まっていた妹は、婚約披露パーティを目前に、行方がわからなくなった。もし破談になれば、父は借金を返すあてがなくなるから、と。そんな猿芝居が通用する相手ではないと反論したが、意外やロレンツォは特に疑うふうもなく婚約披露を済ませ、結婚式の“予行演習”まで強行すると、にやりと笑った。「実は今の誓いは有効だ。僕らは夫婦になったんだ、ダーシィ」
私は、お父さんの子じゃなかった…。ジアは色を失った。亡き母の日記とDNA鑑定で、自分は母の情事がもとで生まれたとわかり、ジアは矢も盾もたまらず、日記に書かれていた住所を目指した。たどり着いた大きな屋敷で、リカルドと名乗るハンサムな男性と出逢う。たくましい体がいやおうなく目に飛び込んできて、ジアは頬を赤らめた。屋敷の現在の主らしい彼と、たまたま敷地内に迷い込んだ犬を助けるうち、ジアはいつしか心を許し、父親を捜しに来たことを打ち明けていた。実の父がこの屋敷の前の持ち主かもしれないと思って尋ねてみると、リカルドの顔に緊張が走った。「僕のおじが住んでいた」つまり、リカルドと私は、いとこ同士なの?
「2年間の兵役に就くけど、待っていてくれ。毎日手紙を書くよ」17歳のアレクサはギリシア海運王の御曹司ニコを信じて待ちわびた。けれども手紙は1通も届かず、悲嘆にくれるなか、彼女は親代わりだった祖父の転任先であるカナダへと発った。わたしは初めて愛を捧げた人に、だまされたということね…。ほどなく妊娠が判明し、アレクサはニコに知らせずに出産したのだった。月日は流れ、ある夜、18歳になった娘の恋人の家に招かれた彼女は、夕食の席に現れたギリシア神さながらの男性を見て、失神しかけた。ニコ!どうして、あなたがここに?我が子と知らずに娘と話す彼の姿に、アレクサは残酷な運命を呪った。
エリーをただ働きの家政婦扱いしかしなかった冷淡な継兄が、紳士クラブで起きた諍いの流れ弾を受けて死亡した。その訃報を伝えに来たのは、ヘインフォード伯爵ブレイクー社交界随一の富と美しい容貌を持つ、エリーが密かに憧れる男性だ。銃弾が、本来彼を狙ったものだったことに責任を感じ、急いで駆けつけたのだろう。髪は乱れ、シャツも破れたままだった。天涯孤独の身となったが、彼からの憐れみだけは受けたくない…。私のことを“不美人で脚の悪い女”と呼んでいたから。だが、継兄がエリーの財産を使い果たしていたことを知るや、ブレイクは支援を拒む彼女を突っぱね、こう言った。「僕と結婚しろ」
「伯爵様が貧しい牧師の娘のあなたと結婚するはずがないでしょう」姉の厳しい言葉に、17歳のシャーロットの夢は打ち砕かれた。新しい領主としてロンドンからやってきたウィクリフ伯爵は、非常に頭がよく、有能で、厳格な方だと噂されていたが、実際に会った伯爵は驚くほどハンサムで、小さな子供にも優しかった。心を奪われたシャーロットは、彼の妻になれたらと願ったのだった。でもシャーロットには、叶わぬ夢を見ている時間はなかった。家族を養うため、社交界でそれなりの夫を見つけなければならないのだ。ところが、シャーロットの社交界での後見役を、伯爵が買って出たことで、彼女のあきらめかけていた恋心が複雑に揺れ動いて…。
失恋と失業の傷心旅行でイタリアを訪れたジョディは、山道でタイヤがパンクしたところをロレンツォに助けられる。場違いなほどの高級車で通りかかった彼は、とてもハンサムで、おそろしく尊大だった。それもそのはず、彼は公爵だという。驚くジョディに、ロレンツォは突拍子もない提案をした。「君を助けた見返りに、1年だけ、僕の妻になってほしい」一族の事情で、形だけでもすぐに結婚する必要があるという彼は、君だって僕と結婚すれば元恋人を見返せるぞ、とたたみかけた。恋人も仕事もなくしたみじめな私が、公爵の妻になるですって?
婚外子として生まれたベッカは、大富豪である伯父に疎まれ、妹を大学に通わせるための援助を乞うたが、邪険に追い払われた。半年後、伯父の邸宅に呼び出され、不思議に思いつつも向かうと、そこにいたのは、伯父の娘ラリサの婚約者、セオだった。聞けば、ラリサは一族の株を浮気相手に譲り渡す文書を残したまま、事故に遭って、今は昏睡状態にあるのだという。「きみはラリサによく似ている。だから、呼んだ」浮気相手からくだんの文書を取り戻すために、ラリサのふりをしろと!?即座に拒んだベッカに、セオが悪魔のように冷徹な声で告げた。「妹の未来を捨てる気か。報酬は弾む。いい大学にやりたいんだろう?」
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作家ローレンス・ブロックは頭を悩ませていたーエドワード・ホッパーの絵から紡いだアンソロジー『短編画廊』の第2弾を計画しているのだが、いったい今度は誰の絵をモチーフにすべきか。思い悩んだ末、ブロックはある考えにたどり着く。何もひとりの画家でなくていい。今度は作家たちに、好きに名画を選んでもらおう。かくして、ジェフリー・ディーヴァーはラスコー洞窟壁画を。S.J.ローザンは葛飾北斎を。リー・チャイルドはルノワール、ジョイス・キャロル・オーツはバルテュス…といった具合に、今回も個性豊かなアートから物語が生まれ、新たなる“芸術×文学”の短編集が完成する。名だたる作家17人による文豪ギャラリー第2弾。
病院での夜勤のあと、ピクシーは兄の話を聞いて耳を疑った。面倒を見るのがいやで、私の子を捨ててきたですって?いいえ、兄のめあては子供の父親ギリシア富豪トールのお金だ。1年半前、ピクシーはトールに純潔を捧げて身ごもったが、妊娠を告げると、“君を知らない”と彼に追い払われたのだった。急いで会いに行った彼は、今もハンサムで堂々としていて、ピクシーは安っぽい自分の格好を恥ずかしく思った。でも昔と同じ屈辱を味わってでも、トールには真実を伝えよう。どうか母親失格だといって、彼があの子を奪いませんように…。
エジンバラの高級ホテルに仕事の話で呼びだされたケイトリンは、豪華な部屋の広間にいる人物を見て愕然とした。砂漠の国の君主カディルーわたしの息子の父親がなぜここに?5年前、スコットランドで地所の購入を考えている彼と出会い、漆黒の瞳の誘惑に抗えず熱い一夜を過ごして純潔を捧げた。夜明け前に彼が忽然と姿を消すとは夢にも思わずに。やがて予想外の妊娠に気づいた彼女はカディルについて調べた末、その身分と不実を知り、子どものことは秘密にしようと決めたのだ。だが今、真相を知ったカディルの手に母子とも落ちるしかなく…。
その日、バイオレットは真昼の誘拐劇の被害者となった。モンテ・ブランコ王国の王子、ハビエル・デラクルスによって。彼の兄マテオ王にカジノで負けたバイオレットの父親が、娘を王に売ったというのだ。パパがそんなことするなんて…!抵抗むなしく、彼女は贅を尽くした異国の王宮に閉じ込められ、王との謁見までの数日間、ハビエルとともに過ごすことになる。国民にも怖れられるほど強面の王子に国を案内され、街を歩き、ダンスを教わるうち、バイオレットは彼に強く惹かれていく。兄王のそばにいても、きっと私はもう、弟しか目に入らない…。
ケータリングサービスを営むジェーンは、ある夜、ずっと避けてきた男性、大富豪のガブリエルと会ってしまう。ジェーンの元夫とガブリエルの元妻は不倫関係にあったのだが、ふたりは3年前、共に交通事故で亡くなった。ガブリエルがジェーンを捜していると聞き、怖くなった彼女は、名前も髪の色も変え、過去を捨てて逃げたのだった。ところがガブリエルはジェーンの正体に気づいていないらしく、花束や食事の誘いで、情熱的に交際を迫ってくる。拒まなければならないのに、ジェーンは彼に惹かれていき…。
看護師のステイシーは、新任医師の顔を見て愕然とした。忘れ得ぬ男性がー愛しい娘の父親ノアが目の前にいる。3年前、ふたりは強烈に惹かれあい、めくるめく一夜を過ごした。そしてステイシーは小さな命を授かり、独りで懸命に育ててきた。ファーストネームしか知らない男性を見つけるすべはなかったのだ。記憶と違わず魅惑的なノアに再び強く惹かれるステイシー。娘のことを話す勇気が出ないまま、彼との距離は急速に近づいた。しかし、ついに意を決して真実をノアに伝えると、彼の顔からすべての表情が消えてなくなり、冷たい声が虚ろに響いた。「予防措置はとっていた。あの頃、君は本当に独り身だったのか?」
憧れの人と初めて結ばれ、トリシアは幸せに酔いしれた。相手の名はカイル・ハモンド、世界有数の億万長者だ。施設で育ったトリシアは彼との温かい家庭を夢見たが、翌日、突然カイルの父親が心臓発作で亡くなり、事態は急変する。カイルの妹が、トリシアが父から薬を奪ったとでっちあげたせいで、トリシアは彼の怒りを買い、絶縁されてしまった。6年後、ようやく立ち直ったトリシアを、皮肉な運命が待ち受けていた。彼女の勤め先を買収した大企業の社長が、なんとカイルだというのだ!新しいボスとしてやってきた彼は冷徹に彼女を見据え、握手さえ拒んだ。彼は私をどうしようというの?恐ろしい予感にトリシアは身震いした。
昼はフラワーショップの店員、夜はウェイトレスをしながら、4歳の息子を育てる未婚の母ゾウイ。そんな彼女の家に、新聞社に勤める独身貴族のクープが間借り人として引っ越してくる。明るく楽しいクープと触れ合ううち、息子が彼になつくようになり、しだいにゾウイも惹かれていくが、男性に傷つけられた過去があって…(『すてきな同居人』)。敵対する両家の跡取りであるフルールとマットは愛し合い、密かに結婚式を挙げた。だがその夜、フルールの母とマットの父が駆け落ち。この地を出ようと言うマットに、フルールは家族のために残ると告げるほかなかった。以来、音信不通になり、妊娠に気づいた彼女は世間の冷たい視線に耐え、彼の子を産み育ててきた。6年後ー(『秘密のウエディング』)。幼い娘の子育てを優先して昇進の話を断ったナタリーは、閑職に追いやられた。准男爵家出身のエリート社長ラファエルが気分を害して、こんな仕打ちをしたに違いない。同僚と残業中、ナタリーが社長のことを“冷血な暴君”と呼んで憎まれ口をたたいていたところ、彼女の背後に、ラファエル本人が美しい顔を歪ませて立っていた!(『甘美な嘘』)。
ローラは地味な容姿のせいか、20代も終わりでいまだに独身だ。ある日、ローラの名付け親がレイロフという友人を伴って訪ねてきた。そのハンサムなオランダ人医師を見るなり、ローラは目をみはった。包容力と落ち着きのある大人の彼は、まさに思い描いてきた理想の男性。しかし、レイロフが心を奪われたのは、見るからに華やかな妹だった。ほどなく婚約した二人を、ローラは胸の痛みをこらえながら祝福した。ところが移り気な妹は、出会ったばかりの別の男性と駆け落ちし、婚約破棄をレイロフに伝える役目をローラに押しつけた。ローラがありのままを告げると、レイロフは彼女を見据え、驚くべき言葉を口にした!「それなら、君と結婚したっていいわけだ」
ベスことエリザベスは里親の家を転々としたつらい生い立ちゆえ、極力、人との関わりを避けて生きてきた。だが、このままではいけないと、苦手なパーティに参加し、知的でなおかつ容姿端麗な実業家のダンと出逢う。初対面なのになぜか懐かしさを覚えたエリザベスは、お堅い自分を捨て、フルネームも素性も明かさぬまま、彼と夢のような一夜を分かち合った。人生で初めて知る喜び…。でも、あまりに性急すぎたかも…。ふと我に返った彼女は、眠るダンを置いて、彼のもとから姿を消した。彼の子を身ごもったとわかったのは、それから数カ月後のことだった。さらには、ダンと会うことはもう二度とないと思っていたのに、彼が謎の女性“ベス”の正体を突き止め、エリザベスの家へやってきた!