出版社 : ベストセラーズ
池ノ端七軒町の長屋に住む嶋右近は、伝説的名刀匠・左文字の末裔として生まれ、その技術を仕込まれる一方で、剣技の習得にも才を見せた。いまや鑑定師として名を馳せていた右近はある日、浅草寺の近くで薄汚い老爺から古錆びた一本を買い求め、それが大業物・孫六兼元であることを知る。折しも江戸の町では噂の盗賊・稲葉小僧が世情を騒がせ、残虐な連続殺人が起きるが、その裏には妖刀村正をめぐる秘密が隠されていた。仇敵との最後の戦いに右近の剛剣が唸りを上げる。
浅草駒形町の船宿で船頭を生業にする小佐々銑十郎。二年前まで肥前大村藩の勘定方から近習を務めていたが、ひとつの失態が、実父であり筆頭家老の逆鱗に触れ、お役罷免となり勘当を言い渡された。妻子とも別れ、浪々の身となった銑十郎は、旧知の札差・大黒屋籐兵衛の計らいで下町に居を構え、籐兵衛が持ち込む萬請負をやっていた。家出人の連れ戻しや、町に巣食う無頼人を叩き出す見事な手腕を見せる銑十郎だったが、兄分の仇と恨む無宿人が、虎視耽々と彼の命を狙っていた…。
慶長二十年、大坂夏の陣において、真田幸村の猛撃に徳川旗本衆は総崩れとなり、家康の命もあわやという土壇場、ひとり踏みとどまり、御大将の窮地を救った初代から数えること、百三十年。時は八代将軍の御世が終わりを告げる頃。下膨れの童顔に大きな瞳。眉間には「桃割れきず」。八百八町、その名を知らぬ者なき茶乙女家七代目、留主水之介康景。「身の生業も旗本の、分を超えた人助け。只今参上仕る!」。
そちの嫁とりは、天下の一大事ー朋友、田沼意次によれば、縁組は前将軍、吉宗のお声がかりらしい。窮した留主水之介はあの手この手を使うが…。九月末の深更、ついに婚礼の支度が相整う。花嫁は熊本藩主の妹君で、名は冴姫。その花嫁が遁走した。捨て台詞は「奪いに来るのを待つ。心して参れ」。じゃじゃ馬姫に一目ぼれした留主之介にふりかかる災難とは?時代小説界の気鋭が放つ幻の続編。
紀伊国屋文左衛門の影の用心棒を務める浪人・鬼怒玄三郎。師と仰ぐ佐貫炎十郎とともに、裏稼業の元締め・明石の文蔵が持ち込む標的を闇の裡に仕置きし、修羅場を潜り抜けてきた。奸智と策謀で俄成金となった材木商の奈良屋茂左衛門は、文左衛門を目の仇と狙い、目障りな玄三郎に次々と刺客を放ってくる。この茂左衛門同様、幕府御用の利権に係わって、しこたま儲けた役人と似非医者たち。悪遊びにうつつを抜かし、江戸の庶民をいたぶる悪党どもを、玄三郎の怒りの剣が斬る。
盂蘭盆が近づくと、毎年お江戸の富裕な商家を襲って店中の者を叩き斬る“意趣斬葵之介”が本所に現われた。情の厚さと顔の怖さで「鬼不動」と呼ばれる御用聞きの井蔵は、名岡っ引き「天眼通の才吉」の忘れ形見で、養女のお蔦と下手人の捕縛に挑む。そのほか、死んだはずの父親が不幸にした娘へ恩返しをする一話、怪談「置いてけ堀」をめぐる騒ぎを加えた全三篇を収録。シリーズ好評の第三弾。
江戸を捨て、佐倉で寺子屋の師匠として暮らす旗本の次男坊・結城拓馬は、新勝寺門前の大店・成田屋の一人娘はつと狂おしいほどのひとときを過ごし、成田で暮らすことを考えはじめる。そんな拓馬の様子から、別れの日が遠くないことを察した寄宿先の立花家の妻・鈴が忍んできて、激しく拓馬を求める。さらに、二人の痴態を盗み見ていた鈴の娘・綾も褥に引き込んで、ときのたつのも忘れた三つ巴の妖しい蜜戯が繰り広げられる…。好評「やわひだ」シリーズ第3弾。
自らの出生の秘密に苦悶する元亀岡藩士、如月夢之介が忽然と姿を消して、早一年。渡世人、霧立の甚五郎は、おかま侍こと堀内新之丞の助言によって、ようやく夢之介との再会を果たす。しかし、夢之介は新たな秘剣を体得し、腕はさらに凄みを増していたものの、心は死人同然だった…。満開の桜に浮かれる大江戸では、般若の面をつけた謎の刺客が次々と亀岡藩士を殺めていた。その狙いは?夢之介は陰謀に揺れる亀岡藩を救うことができるのか?好評シリーズ第2弾。
化け物退治稼業で糊口を凌ぐ月村四十郎に、そば屋に毎夜現れる閻魔さま退治の仕事が舞い込んだ。騒ぎは四十郎の活躍で一件落着するが、なんと閻魔の正体は人間、しかも、かの北町奉行遠山金四郎の密偵だった。何故?さらには金四郎から行方不明になった西洋の大砲を探し出せとの密命が下る。南町奉行鳥居耀蔵と遠山金四郎との確執に巻き込まれ、深川一帯を歩き回る四十郎。そこへ謎の女が接近。敵なのか味方なのか?江戸の町を奔走する四十郎に突如刺客が襲いかかる。
献残屋「蓬莱屋」の番頭だった箕之助は、暖簾を分けてもらい芝三丁目に「大和屋」という店を出した。その年、京からの勅使一行が増上寺にも参詣するということで、二百八十畳もの畳を総入れ替えすることになった。箕之助はその仕事を請け負った畳屋「青葉屋」に不穏な動きがあることを知り、田町の街道筋で用心棒を務める日向寅治郎らと十年前の事件をあぶりだす。また増上寺の一件は浅野内匠頭の刃傷沙汰の発端となり、その後、意外な忠臣蔵の裏面史が浮き彫りにされていく。
本所の一膳飯屋「井筒」の看板娘、お蔦は、かの長谷川平蔵に「天眼通」と呼ばれた名親分の忘れ形見。顔は悪いが情には厚い御用聞き「不動の井蔵」に育てられた。幼い日、井筒を囲んで背比べした初恋の人、虎吉との再会で、御用達茶道具屋「洗心堂」の主が襲われた事件そっちのけで舞い上がるお蔦とやきもきする井蔵。そのほか、井蔵の隠し子騒動に、清之介の恋が絡んだ中篇、全三編を収めた好評のシリーズ第二弾。
縁あって佐倉で寺子屋の師匠として暮らすことになった旗本の次男・結城拓馬は、大店の娘・なおと成田山に詣でた帰り、茶屋の娘を助けるために浪人と立ち会い、討ち果たす。はじめて人を斬った異様な昂りのなか、拓馬は川原でなおに荒々しく挑みかかっていった。佐倉に戻ってからも自分のなかに潜んでいた獣のような激情に気づいた拓馬は、教え子の母・忍や寄宿する立花家の妻・鈴を相手に、自らの男らしさを示すかのように、激しく濃厚な蜜戯を繰り広げていくのであった…。好評「やわひだ」シリーズ第2弾。
玉の輿を願う本所の一膳飯屋「井筒」の看板娘、お蔦はかの長谷川平蔵に「天眼通の才吉」と呼ばれた名親分の忘れ形見。顔は悪いが情にはもろい、御用聞き「鬼不動の井蔵」に育てられた。実父譲りの「天眼通」で謎に近づき、養父譲りの情の厚さで謎から遠のく、お蔦の父娘二人三脚の捕物劇、その顛末やいかに?捕物帳に新ヒロイン誕生!こまやかな筆致が冴える、女流新人作家のデビュー作。
江戸屋敷勤番の侍だった月村四十郎。この男、“からす”につきまとわれているので鳥四十郎と綽名されている。病気の妻を抱え、用心棒家業で糊口を凌いでいたが、ある日昔の剣術道場の仲間に誘われ、用心棒仲間も嫌がる化け物退治を引き受けるようになった。江戸市中で起こる幽霊騒ぎ。見かけに似合わぬ繊細な小太刀を遣う四十郎は、化け物退治をつぎつぎとこなしていく。今日もまた江戸のどこかで“妖かし斬り”が…。恐怖のなかにも笑いが溢れる書下ろし長編時代小説。
戦国時代に編み出された秘剣・水鏡をめぐる剣の妙(戸部新十郎「水鏡」)、弓の名手の浪人父娘が仇討ちの旅に疲れた兄妹を救う爽やかな人情譚(澤田ふじ子「鳴弦の娘」)、馬を制御するための道具・鼻ねじりでサーベルと戦う奇抜な武芸の物語(佐江衆一「鼻くじり庄兵衛」)、素手の武芸・柔術家の才能と心の成長のズレを描く師弟の悲劇(池波正太郎「柔術師弟記」)など、武芸の妙技が堪能できる秀作8篇を収録。細谷正充・編の好評アンソロジー第4弾。
如月夢之介は、亀沼藩剣術指南役だった父の仇を討つため、山に篭って厳しい剣術の修行を重ねてきた。そんな彼に江戸家老、大滝主膳暗殺の密命が下る。藩の財政を窮地に陥れた主膳こそ、夢之介の仇の相手でもあった。藩のため、そしておのれのために主膳を討たねばならぬ。意を決して江戸に向かう夢之介を正体不明の刺客が襲う。危うく難を脱した夢之介だが、行く手には数々の想像を絶する卑劣な罠が…。
岩鉄こと南町奉行所同心、岩本鉄次郎はこのところ調子がでない。追っている盗賊「女郎蜘蛛」にはいつも逃げられてしまう。何せお江戸は広く、賊がどこに現われるのやら、まるで見当もつかない。思わず長ったらしい息を吐けば、十文字屋のおてんば娘に「恋わずらい」といわれる始末。岩鉄はもう一度、溜め息をついた。中年同心のせつない恋ごころをかなえるべく、深川で一番のじゃじゃ馬小町が一肌脱いだ。好評の第2弾。